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第1章

1-1 いつもどおりの朝のはずなのに

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その日の朝、なんだか目の調子がおかしかった。

洗面所の鏡に映る自分がいつもと少し違って見える気がする。

(気のせい? うーん、寝る前にスマホ弄りすぎたかな)

今ハマっている恋愛ゲームについつい夢中になってしまい、時間を見て慌てて布団に潜り込んだのが明け方だ。

(今回のイベは推しメインだったからな……うん、やれるだけのことはやった。

ランキングはもうなるようになれ、だ)

少しの諦めを満足感で蓋をして、鏡に意識を戻す。

あくびで涙を無理やり誘い出してからもう一度顔を洗ってみた。

(曇ってる感じは収まったけど……後で目薬でも買っておこう)

普通にしている分には支障がないので、いつも通りに身支度を整えているうちに目の不調のことは

すっかり忘れてしまった。



───マンションのエントランスを出て、バス停まで歩いていると……

(……あれ?)

いつもの光景のはずなのに、少し違和感を覚えた。

ところどころに、うっすらと線のようなものが張り巡らされている……ように見える。

ゆらゆらと頼りなく、浮かんでは消えるもの、消えたらそれっきりのものも。

(蜘蛛の糸?)

それにしては、どこからどう張られているのかわからないほど長いものもあり、

うっかり横切っても触れた感触もなくすり抜けていく。

(なんだろう……)

幾度となく瞬きをしてみるけれど、本数は違えど線のような”糸”は目には映っている。

それに、私以外はだれもその”糸”のことを気にしていない様子だ。



乗り込んだバスの中でも、電車の中でも、いくつかの”糸”は見えていた。

(目に傷でもついちゃったかな……眼科に行った方がいいのかもしれない)

週末土曜日の予定を考えながら、職場に辿り着いた。


「おはようございます」

挨拶をしながら部署の入り口をくぐると……

「……!?」


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