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 それに不安でもあるよな。
 タンジュの華語はそこまで流暢じゃない。だから会話の内容がはっきりはわからず、遼玲が騙されるんじゃないか、何かあまい話に誘惑されてるんじゃないかと心配になってしまうのだ。
「心配しなくても、用事の話しかしてないよ」
 本当は情報を集めるために世間話も色々しているが噓も方便だ。
「わかってる。リャオリンが彼らのことを何にも思ってないってことは」

「うん。李清や茶舗の店主が親切なのは、草原の民に嫁いだ若い東方人が苦労してるんだろうって同情してるからだと思うよ」
 みんな自分の妹か娘のように思っている気がする。
「そうかもな。彼らからすれば俺がリャオリンをこき使ってるように見えるんだろう」
 タンジュが自分をこき使ってる? 遼玲は首を傾げた。
「それはないと思うけど?」
 どちらかというと自分がタンジュを引っ張りまわしている自覚はある。

 遼玲が何か言ったり作ったりするたびに、セタンもアリマもインシも驚いている。それをタンジュはうまく話して、遼玲がしたいようにさせてくれているのだ。
「バリクの東方人から見たらって話だ。オルダでの様子を彼らは知らないからな」
「それもそうか。だけど彼らとのつき合いは今後のことも考えても大事だと思う」
「ああ。確かに」
「それに冷静に考えて。孟健が言ったように、この先はますます物々交換は減って銭や金銀で取引することが増えて行くだろ?」
 さすがにそれは否定できなくて、タンジュはしぶしぶ頷いた。

「その時に備えて、今から道を作っておきたいんだ」
「道?」
「そう。羊や牛は育てるまでに時間がかかる。必要な時にすぐ換金できる物を作っておくのは大事だと思う」
「……そうかもしれないな」
「だけど、それを売る道は商人じゃない草原の民には作れない。だったら孟健の案に乗ってもいいんじゃない? 反応がよくて高値で売れるなら西で売ればいい。いまいちだったら東で売る。そのためにバリクの商売人に手数料を払ったとしても損はしないだろ?」
 タンジュは遼玲をしばらく見つめて、息を吐いた。

「わかった。リャオリンの言い分が正しいと思う。でもリャオリンはできるだけ顔を出さないで欲しい。西への交渉は孟健を通じてしてもらおう」
 タンジュが納得してくれたのでほっとした。
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