座敷わらしのプテロ

ゆまは なお

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 昨夜、あの男に抱かれたと思うと落ち着かない。
 しかもあんなエロい抱き方をされて気持ちよくなるとは予想外だったし…、いや思い出すな。あれは事故だ。
 プテロがバッグとレジ袋を持ってきて、まずお茶のペットボトルを開けてごくごくと飲んだ。ふーっと思わず息をつく。
 気まずくてプテロと目を合すことができない。
 のろのろと縁側に出て、昨日の夕食用に買った唐揚げ弁当を黙って食べながら、どうしたものかなと思う。
 プテロも横に座り、荒れた庭を眺めている。

 夢で過去を見てさすがに俺も悪かったと反省していた。
 プテロは一途に待っていたのに俺は全部忘れていて、しかも出て行けと言われて。
 約束を裏切られた落胆が怒りになって逆上した気持ちも理解できた。
 でも一緒に暮らすのは…どうなんだ?

「…あのさ」
 黙って庭を眺めていたプテロが俺を見た。
「わかっている。出て行けばいいんだろう」
 静かな表情で淡々と言った。
「え?」
「昨夜は悪かった」
 先に謝られて、俺は焦った。

「いや、俺も悪かったと思ってる。いきなり出て行けって言われたら怒るよな。ていうか、約束忘れててごめん」
「思い出したのか?」
「うん。昨日夢で見たよ。プテロかわいかった」
「育ってしまって残念だった?」
「え? そんなことはないけど」
「じゃあ、俺はここにいていいのか?」
 俺はためらいながらうなずく。

「でも、ああいうことはなしで」
「ああいうことって?」
「だから、昨日みたいな」
「抱くのはダメってことか?」
 ズバリと言われて赤面する。

「どうして?」
「生気があればいいんだろ?」
「まあそうだが」
 プテロは納得いかないという表情で首を傾げた。
「あんなに気持ちよかったのに?」
 俺は黙り込む。
 快感の問題じゃない、アイデンティティの問題だ。
 でもプテロには理解できないらしい。
 妖怪だもんな、感覚が違うのだろう。

「まあいい。俺がその気にさせたらいいんだろ?」
「ならないよ」
「そうか?」
「そう!」
「では気長に口説くとしよう」
 涼しい顔でプテロは笑う。
 俺とプテロの同居が決まった瞬間だった。

 完



この話をベースに13万字に改稿して電書バト様から電子書籍化しました。
1月15日に各サイトで配信されますので、ぜひご覧ください。

kindleなら読み放題設定しています。
どうぞ遊びに来てくださいねm(__)m

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