座敷わらしのプテロ

ゆまは なお

文字の大きさ
上 下
6 / 12

6

しおりを挟む
 結局、三度達して俺はぐったりと体を投げ出した。脱力感が半端ない。
 正直いってめちゃくちゃよかった。それがいたたまれない。
 男は満足そうに俺の髪を撫でて、頬にキスをする。
「おいしかった、ありがとう。生き返った」
 礼を言われたが何とも複雑だ。
 でも確かに男の体はほかほかと温かく、存在感が増している。

「悪かった、しんどいだろう」
「なんで?」
 単純に三回いっただけとは違うだるさだ。
「俺が補給してやれたらいいが、さすがに今は無理だ」
「補給って?」
「性交すれば敏明はもっと早く回復する。今は一方的に搾取されたから体が辛いだろう?」
 成功? なんの話だ。
 大きなあくびが出た。
「寝ていいぞ。この家はもう安泰だ」
 微笑んだ男がまだ何か話していたが、俺はもう目を開けていられなかった。
 吸い込まれるような眠りに入ってしまい、この後どうなるかなんて予想もしていなかった。

 目が覚めたら、布団の中だった。
 ここはどこだ?
 見慣れない天井を見上げてぼんやりと考える。そうだ、祖母の家だ。
 寝返りしたら窓の外にかなり傾いた太陽が見えた。
 着いたのは昼前だったはずだ。掃除に来たら座敷わらしと名乗る男がいて…。
 その先は思い出したくなかったが、一気に思い出してしまい、俺は頭を抱えた。

 本当に座敷わらしだったのか。
 でも俺の知る座敷わらしは着物姿の子供だ。人のいない部屋でいたずらするが家に幸運をもたらすと言う。俺に見られたから育ったみたいに話していたが、座敷わらしが育つなんて聞いたことがない。
 …いやいや本当に座敷わらし認定していいのか? 
 もしかしたらこの家に住みついた不法侵入者だったのかも。祖母がいない間にこっそり忍び込んだとか。
 でもあいつは祖母の名前を知っていた。俺の名前も、十歳の夏休みに急に帰ったことも、好きだった駄菓子も。
 何よりおかしな力で俺を動けなくした。
 俺の常識は座敷わらし説を否定したがるが、目の前の事実がその存在を認めろと言う。

 
しおりを挟む

処理中です...