49 / 56
第15章-3
しおりを挟む
「勘違いじゃないですか。男が色っぽいって…」
「ほんとだよ。もともときれいな子だなって思ってみてたけど、前回会ったとき、あ、今までと全然違うって思った」
その東雲の台詞にどきっとする。前回会ったのは6月だ。2月の終わりに大澤と初めて寝てから何度か体を重ねて、すこしは慣れたころだったと思う。
「だからてっきり誰かいるんだと思ったんだけど」
おそるおそる隣りに立っている東雲を見上げた。その整った顔が近づいたかと思うと、唇にさっと触れて離れていく。現実感がなく、東雲が身を起こすのをぼんやりと見ていた。
「いま…、キス、しました?」
「うん、したね」
「なんで?」
「かわいかったから」
「…かわいいって、男だし」
「そうだね、でもほんとにかわいいんだ。いやだった?」
「いいえ」
いやじゃないです、という返事は考える前にしていた。
悪びれずに笑う東雲を見ていると、さっきから動揺している心臓がさらにどきどきし始めた。
「それってなんか、口説かれてるみたいに聞こえます」
「そうだよ、口説いてるつもりなんだけどな。俺、どう?」
え、これって告白?
東雲さんはおれが好きなの?
「どうって言われても、え…本気、ですか?」
「もちろん。そうだな、受験が終わったら、俺とつき合ってみる?」
受験が終わるのは2月だろうか。それまで待ってくれるらしい。
「子供には興味なかったはずなんだけど、祐樹のことはとても気になった。だから何度も誘ってみたんだ」
あ、呼び捨てにされた。
とくんとひとつ、胸が鳴る。
「最初から、おれを…好きだった?」
「うーん、そこまでは言わないな。さっきも言ったけど、子供だと思ってたし。でもちょっといいな、気になるなって感じでたまに会いたい、みたいなね」
「つまり成長度合いを確認する感じ?」
その言葉に東雲が声を上げて笑う。ああ、プライベートの笑い方、となぜかうれしくなる。
「いやまあ、そう言ったら身もふたもないというか。ああでも、うーん、そうなのかも。無意識に俺好みに育つか見守ってたのかな」
なんか変態おやじっぽいな、とひとりで仏頂面になる。そんなところも悪くないと思う。
「それで、おれは東雲さん好みに育ちました?」
「育ってなきゃ口説かない。一緒にドライブデートしてるだけでも良かったけど、急に大人っぽくなってなんだか憂い顔が色っぽいし、6月に鎌倉に行ったとき、あ、もう恋愛対象になったなって感じたんだ」
臆面なく口説き文句を繰り出してくる東雲に、祐樹はくらくらしていた。
東雲みたいな大人の男性に告白されるなんて、現実だとは思えない。からかわれてるんじゃないかと疑うが、東雲にそんなことをする理由がない。
どうしよう…。
「祐樹は何人か彼女いたみたいだけど、男もオッケー?」
核心に触れてくる質問に、はいと答えた。大澤以外にじぶんの性癖を打明けるのは初めてだ。
「どっちかというと女の子が苦手みたいで…」
「それはラッキーだな。…どう、俺とつき合ってみる?」
「あの、…時間ください」
即決できなくて逃げを打ったのに、東雲は余裕の笑みでうなずいた。
「さっきも言ったけど返事はまた今度でいいよ。…そうだな、受験が終わったらまたドライブしようか」
「…はい、すみません」
「謝らなくていいよ。最初から即オッケーが出るなんて思ってない。むしろもう会わないって言われるかもって覚悟してたから」
東雲みたいな人でもそんな覚悟で告白するのかと驚いた。しかもあいてはじぶんだ。東雲から見たら10歳も年下の子供相手なのに。
「ほんとだよ。もともときれいな子だなって思ってみてたけど、前回会ったとき、あ、今までと全然違うって思った」
その東雲の台詞にどきっとする。前回会ったのは6月だ。2月の終わりに大澤と初めて寝てから何度か体を重ねて、すこしは慣れたころだったと思う。
「だからてっきり誰かいるんだと思ったんだけど」
おそるおそる隣りに立っている東雲を見上げた。その整った顔が近づいたかと思うと、唇にさっと触れて離れていく。現実感がなく、東雲が身を起こすのをぼんやりと見ていた。
「いま…、キス、しました?」
「うん、したね」
「なんで?」
「かわいかったから」
「…かわいいって、男だし」
「そうだね、でもほんとにかわいいんだ。いやだった?」
「いいえ」
いやじゃないです、という返事は考える前にしていた。
悪びれずに笑う東雲を見ていると、さっきから動揺している心臓がさらにどきどきし始めた。
「それってなんか、口説かれてるみたいに聞こえます」
「そうだよ、口説いてるつもりなんだけどな。俺、どう?」
え、これって告白?
東雲さんはおれが好きなの?
「どうって言われても、え…本気、ですか?」
「もちろん。そうだな、受験が終わったら、俺とつき合ってみる?」
受験が終わるのは2月だろうか。それまで待ってくれるらしい。
「子供には興味なかったはずなんだけど、祐樹のことはとても気になった。だから何度も誘ってみたんだ」
あ、呼び捨てにされた。
とくんとひとつ、胸が鳴る。
「最初から、おれを…好きだった?」
「うーん、そこまでは言わないな。さっきも言ったけど、子供だと思ってたし。でもちょっといいな、気になるなって感じでたまに会いたい、みたいなね」
「つまり成長度合いを確認する感じ?」
その言葉に東雲が声を上げて笑う。ああ、プライベートの笑い方、となぜかうれしくなる。
「いやまあ、そう言ったら身もふたもないというか。ああでも、うーん、そうなのかも。無意識に俺好みに育つか見守ってたのかな」
なんか変態おやじっぽいな、とひとりで仏頂面になる。そんなところも悪くないと思う。
「それで、おれは東雲さん好みに育ちました?」
「育ってなきゃ口説かない。一緒にドライブデートしてるだけでも良かったけど、急に大人っぽくなってなんだか憂い顔が色っぽいし、6月に鎌倉に行ったとき、あ、もう恋愛対象になったなって感じたんだ」
臆面なく口説き文句を繰り出してくる東雲に、祐樹はくらくらしていた。
東雲みたいな大人の男性に告白されるなんて、現実だとは思えない。からかわれてるんじゃないかと疑うが、東雲にそんなことをする理由がない。
どうしよう…。
「祐樹は何人か彼女いたみたいだけど、男もオッケー?」
核心に触れてくる質問に、はいと答えた。大澤以外にじぶんの性癖を打明けるのは初めてだ。
「どっちかというと女の子が苦手みたいで…」
「それはラッキーだな。…どう、俺とつき合ってみる?」
「あの、…時間ください」
即決できなくて逃げを打ったのに、東雲は余裕の笑みでうなずいた。
「さっきも言ったけど返事はまた今度でいいよ。…そうだな、受験が終わったらまたドライブしようか」
「…はい、すみません」
「謝らなくていいよ。最初から即オッケーが出るなんて思ってない。むしろもう会わないって言われるかもって覚悟してたから」
東雲みたいな人でもそんな覚悟で告白するのかと驚いた。しかもあいてはじぶんだ。東雲から見たら10歳も年下の子供相手なのに。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
one night
雲乃みい
BL
失恋したばかりの千裕はある夜、バーで爽やかな青年実業家の智紀と出会う。
お互い失恋したばかりということを知り、ふたりで飲むことになるが。
ーー傷の舐め合いでもする?
爽やかSでバイな社会人がノンケ大学生を誘惑?
一夜だけのはずだった、なのにーーー。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

零れる
午後野つばな
BL
やさしく触れられて、泣きたくなったーー
あらすじ
十代の頃に両親を事故で亡くしたアオは、たったひとりで弟を育てていた。そんなある日、アオの前にひとりの男が現れてーー。
オメガに生まれたことを憎むアオと、“運命のつがい”の存在自体を否定するシオン。互いの存在を否定しながらも、惹かれ合うふたりは……。 運命とは、つがいとは何なのか。
★リバ描写があります。苦手なかたはご注意ください。
★オメガバースです。
★思わずハッと息を呑んでしまうほど美しいイラストはshivaさん(@kiringo69)に描いていただきました。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる