47 / 56
第15章-1 流れゆく日々
しおりを挟む
高校3年の1年間、祐樹は誰ともつき合わなかった。
どんなかわいい女の子に告白されてもすべて断ってしまう祐樹に、周囲はあれこれうわさしたが祐樹は一切構わなかった。
「祐樹、今年はまたどうしちゃったの?」
河野が聞いてきたのは6月になるころだった。
「去年はとっかえひっかえかと思えば、3年になってから彼女作ってないじゃんか」
「んー、ちょっと勉強に集中しようかと思って。2年のときかなり成績下がったから取り戻すのが大変なんだ。今年は受験だし」
もうすっかり板についた王子さまの微笑みで祐樹は隙のない返事を返した。
仮面の王子さまはますます磨きがかかり、いまでは感情的に怒ったり赤面したりする祐樹を見るのはまれなことになっていた。
河野への返事は半分嘘で半分本当だった。成績がかなり下がったのは事実だが、2年の後半からは大澤が見てくれてすでに持ち直していた。
でも去年の祐樹の乱行ぶりを知っていた河野は納得したようだ。
「成績、そんなにヤバかったの? まあな、去年は俺もびっくりしたもんな。次々に彼女、変えちゃってさ。いや、どの子ももめてなかったからいいんだけどさ」
河野は初めての彼女と、ケンカしながらまだ続いている。それをうらやましいと思うときもあるが、その熱さを見聞きしても以前のようなもやもやや焦りは感じなくなった。
大澤の家庭教師はいまも続いていた。
真面目に勉強を見てもらっているおかげで、3年になってからもじりじりと成績は上がってきている。このまま頑張れば大澤の通う大学も狙えるかもしれないと、担任はほくほくしていた。
祐樹の学校行事や大澤のアルバイトの都合などで外で会うこともあるが、おおむね月に2,3回は大澤の部屋で会っていた。
大澤との仲は相変わらず先輩後輩のままで、部屋に行ったときはそんな流れになればセックスもした。そうかといって恋人というわけではなく、以前に比べて特別親しくなったというわけでもなかった。
いままでと変わらないスタンスで、祐樹も大澤も特定の彼女は作らないままで一定の距離を保ったつき合いが続いていた。
大澤が社会人になれば、こんなつき合い方が続くとは思わない。先に社会人になった彼女と別れたという話は、じぶん達にも当てはまると思う。
もちろん大澤と祐樹は恋人ってわけではないのだが、忙しい社会人になるだろう大澤が大学生になった祐樹と会い続ける理由も必要もない。
受験が終われば、もう家庭教師はいらなくなるのだ。もとの先輩後輩に戻ればまた、年に数回、きっかけがあれば会うという間柄に戻るのだろう。
それにいまの関係は、祐樹にとっては安心できる相手に心地よく甘やかしてもらっているという状態だが、大澤にとってはメリットはないと祐樹にだってわかっていた。
たぶん祐樹の受験が終わって大澤が大学を卒業するまでの、期間限定の関係なんだろうなと祐樹はぼんやり思っている。
ゲイじゃない大澤にいつまでも寄りかかっているわけにはいかない。そのときが来たら、きちんと終わりにしなければ。
どんなかわいい女の子に告白されてもすべて断ってしまう祐樹に、周囲はあれこれうわさしたが祐樹は一切構わなかった。
「祐樹、今年はまたどうしちゃったの?」
河野が聞いてきたのは6月になるころだった。
「去年はとっかえひっかえかと思えば、3年になってから彼女作ってないじゃんか」
「んー、ちょっと勉強に集中しようかと思って。2年のときかなり成績下がったから取り戻すのが大変なんだ。今年は受験だし」
もうすっかり板についた王子さまの微笑みで祐樹は隙のない返事を返した。
仮面の王子さまはますます磨きがかかり、いまでは感情的に怒ったり赤面したりする祐樹を見るのはまれなことになっていた。
河野への返事は半分嘘で半分本当だった。成績がかなり下がったのは事実だが、2年の後半からは大澤が見てくれてすでに持ち直していた。
でも去年の祐樹の乱行ぶりを知っていた河野は納得したようだ。
「成績、そんなにヤバかったの? まあな、去年は俺もびっくりしたもんな。次々に彼女、変えちゃってさ。いや、どの子ももめてなかったからいいんだけどさ」
河野は初めての彼女と、ケンカしながらまだ続いている。それをうらやましいと思うときもあるが、その熱さを見聞きしても以前のようなもやもやや焦りは感じなくなった。
大澤の家庭教師はいまも続いていた。
真面目に勉強を見てもらっているおかげで、3年になってからもじりじりと成績は上がってきている。このまま頑張れば大澤の通う大学も狙えるかもしれないと、担任はほくほくしていた。
祐樹の学校行事や大澤のアルバイトの都合などで外で会うこともあるが、おおむね月に2,3回は大澤の部屋で会っていた。
大澤との仲は相変わらず先輩後輩のままで、部屋に行ったときはそんな流れになればセックスもした。そうかといって恋人というわけではなく、以前に比べて特別親しくなったというわけでもなかった。
いままでと変わらないスタンスで、祐樹も大澤も特定の彼女は作らないままで一定の距離を保ったつき合いが続いていた。
大澤が社会人になれば、こんなつき合い方が続くとは思わない。先に社会人になった彼女と別れたという話は、じぶん達にも当てはまると思う。
もちろん大澤と祐樹は恋人ってわけではないのだが、忙しい社会人になるだろう大澤が大学生になった祐樹と会い続ける理由も必要もない。
受験が終われば、もう家庭教師はいらなくなるのだ。もとの先輩後輩に戻ればまた、年に数回、きっかけがあれば会うという間柄に戻るのだろう。
それにいまの関係は、祐樹にとっては安心できる相手に心地よく甘やかしてもらっているという状態だが、大澤にとってはメリットはないと祐樹にだってわかっていた。
たぶん祐樹の受験が終わって大澤が大学を卒業するまでの、期間限定の関係なんだろうなと祐樹はぼんやり思っている。
ゲイじゃない大澤にいつまでも寄りかかっているわけにはいかない。そのときが来たら、きちんと終わりにしなければ。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる