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第10章-3

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 大学生の試験が終わり、祐樹のスピーチコンテストも終わった3月の始めに、大澤カップルと4人で遊びに行くことになった。

 まだ寒いのにテーマパークは学生や観光客であふれていて、4人でいくつものアトラクションに長いあいだ並んで乗った。

 こんなに並ぶと知らなかった祐樹は、大澤たちがいてよかったと安堵していた。綾乃とふたりだったら時間を持て余したかもしれない。

 そんなことを考えながら行列に並んでいたが、まえでいちゃついている見知らぬカップルを見て、ふとじぶんの考えに疑問を持った。

 綾乃とふたりだけだと気づまりだろうか、あんなふうに楽しく過ごせただろうか。ジェットコースターに乗ったりパレードを見たり、楽しく遊びながらも頭のすみに疑問は残った。

 大澤の車で女の子ふたりを送って行ったあと、夜の街を走りながら大澤がさりげない調子で話しかけた。

「祐樹、綾乃とつき合ってて楽しい?」
「…なんでそんなこと訊くんですか?」

「いや、なんていうか。前からそうだったけど、冷めてるっていうのか、優しいけど熱がないっていうのか。綾乃としたんだろ? なのに冷静なんだな」

「知ってたんですか」

「しゃべったからって怒るなよ。綾乃、うれしかったんだろ。受け身な祐樹がちゃんと綾乃を欲しがってくれたから」

 そんなふうに思わせていたとは知らなくて、ちょっといたたまれない気持ちになる。年上だからといってやはりリードされっぱなしはよくなかったのだ。

 あの後、綾乃とはほぼ会うたびにセックスしていた。一度したら、誘わないといけないような気がして、そして誘えば綾乃は断らなかった。きっと祐樹がしたがっていると思っているのだろう。

 本音を言うなら、相変わらず祐樹には欲望がよくわからないし、ときめきも実感できない。セックスはそれなりに気持ち良くはなれるが、河野がいうような切羽詰って彼女を抱きたいという気持ちになったことはない。

 これは淡白とか言っていいものだろうか?

「大澤先輩は彼女とやりたくてたまんないってときってありますか?」
「そりゃあるよ」

「もし、そのとき彼女がその場にいなかったら?」
「あ? やりたいときにか? それは我慢するかじぶんでするしかないだろ」

「…そうですよね。彼女のこと考えてするんですよね?」
「そうだけど…。どうした、祐樹?」

 さっきからおかしな質問をしているのはわかっていた。でもこんなことを訊けるのは大澤しかいない気がする。同級生にはとても訊けないし、身内である兄たちにはなおのこと言えない。

 おれは大澤先輩には甘えているのかもしれないと思う。いやじゃないし嫌いじゃないけど、苦手だと思っている大澤に。2年間、週に1度は顔を見に中等部まで通ってきてくれていた、おせっかいでやさしい先輩に。

「おれ、最近ちょっとおかしいんです」

 そう告げたものの具体的なことは何も口にしない祐樹に、信号待ちで車を停めた大澤がちらりと目をやった。
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