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第7章-3
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「じゃあなに、ひとりでこんなとこにいるってことは、彼女へのクリスマスプレゼントでも探しに来た?」
ずばり言い当てられて、祐樹は黙り込んだ。そんな祐樹を見て、本多はますます楽しげな顔をする。
「え、まじでそうなの。あー、そうかあ。いいねー、楽しいでしょ」
否定もできず、祐樹はあいまいに笑った。いえいえ、楽しいというよりなんだか大変なんです。女子大生が欲しがるものなんて、祐樹にはさっぱり思いつかない。
1時間ほどあちこちのショップを覗いたけれど、綾乃が喜びそうなものが何なのか、まったくわからなくてため息をつきたい気分だった。
兄に相談しようものなら、どんなからかいやいたずらを仕掛けられるかわかったものではないので、とりあえずひとりで来たのだが、女子の流行に詳しい河野あたりを連れてくるべきだったかもしれないと、かるく途方に暮れていたところで本多に会ったのだ。
「まあ、そうですね。おれのことより本多先輩は? ひとりで買い物ですか?」
「ん、いや。この後、連れと合流してコンパ。クリスマスまでに彼女を作りたいって奴らのセッティング」
コンパの幹事を頼まれたらしい。その口ぶりだと本多には彼女がいるようだ。
「女子大生って、どんなものをもらったら喜びますか?」
たぶんもてるだろうし、大学生の本多ならいいアイディアを持っているかもしれないと訊いてみた。
「彼女へのプレゼント? そりゃアクセサリーとかクリプレの定番だろうけど。つき合ってどんくらいなの?」
「夏からだから、5か月目」
「へえ、まあまあか。下世話なこと、聞いていい?」
「してません」
質問を先取りして答えると、本多が爆笑した。
「あー、素直なお答えありがとう。…ならアクセサリーじゃないほうがいいか? 予算の都合もあるだろうし、安っぽいアクセ贈るより…、んー、ファッション時計とかは? スウォッチとか流行りだし手ごろだし、いろんなデザインあるから。なんなら彼女と一緒に見に来るのもありかもよ」
意外とまじめに答えてもらえて、祐樹がびっくりした顔になる。本多はくすりと笑った。
「年上の彼女はけっこう大変?」
「たぶんそうでもないと思うんですけど。なんていうか、弟みたいな扱いっていうか」
「あー、なるほどね。でもそろそろ弟扱いは終わりって感じかな?」
何とも答えようがなくて祐樹は黙りこむ。そうなのかもしれないと思う。綾乃だって本当は祐樹にリードしてもらいたいときもあるだろう。
「じゃあ、祐樹はクリスマスエッチか。頑張れよ」
「違いますって」
からかわれて顔が赤くなるのを自覚する。
10月の祐樹の誕生日に綾乃は「祐樹の雰囲気に合うと思って」とマフラーと手袋のセットをプレゼントしてくれた。
やわらかなウールのきれいな水色のセットは男子校では浮いている気もしたが、祐樹は毎日それを使っていた。それくらいしか綾乃の気持ちに応えてあげられることがない気がしていた。
そのときは祐樹が実力テスト真っ最中だったので、テスト終わりに一緒にランチをして、プレゼントをもらっておとなしく家に帰った。とくにデートということにはならなかった。
クリスマスはまだどういうことになるか約束していない。
ひとり暮らしをしている綾乃の部屋で会うことになれば、たぶんそういう雰囲気になるのだろう。祐樹はまだ覚悟ができていない。内心では怯んでいるが、どうすればいいのかよくわからなかった。
つき合って半年って、ちょうどいいタイミングだよな。
先週、雑談のなかで言われた河野の言葉を思い出す。祐樹より河野のほうがよほど前のめりだ。
ちょうどいいタイミングってなんだよ。おれはべつに一緒にしゃべって楽しく過ごせればそれで満足なんだけど。でも綾乃は期待してるんだろうか。
そういう河野はつき合いはじめて3か月の彼女とのデートに力が入っている。その熱さを目の当たりにして、祐樹はますますじぶんの恋愛テンションの低さを自覚させられた。
おれって恋愛に関心なさすぎる? それとも初心者だからこんなもの? 相手から告白されるのじゃなく、じぶんから好きになったらちがうんだろうか。もっと積極的に会いたがったり、相手を欲しがったりする?
そんなじぶんが想像できなくて、祐樹は戸惑ってしまう。
ずばり言い当てられて、祐樹は黙り込んだ。そんな祐樹を見て、本多はますます楽しげな顔をする。
「え、まじでそうなの。あー、そうかあ。いいねー、楽しいでしょ」
否定もできず、祐樹はあいまいに笑った。いえいえ、楽しいというよりなんだか大変なんです。女子大生が欲しがるものなんて、祐樹にはさっぱり思いつかない。
1時間ほどあちこちのショップを覗いたけれど、綾乃が喜びそうなものが何なのか、まったくわからなくてため息をつきたい気分だった。
兄に相談しようものなら、どんなからかいやいたずらを仕掛けられるかわかったものではないので、とりあえずひとりで来たのだが、女子の流行に詳しい河野あたりを連れてくるべきだったかもしれないと、かるく途方に暮れていたところで本多に会ったのだ。
「まあ、そうですね。おれのことより本多先輩は? ひとりで買い物ですか?」
「ん、いや。この後、連れと合流してコンパ。クリスマスまでに彼女を作りたいって奴らのセッティング」
コンパの幹事を頼まれたらしい。その口ぶりだと本多には彼女がいるようだ。
「女子大生って、どんなものをもらったら喜びますか?」
たぶんもてるだろうし、大学生の本多ならいいアイディアを持っているかもしれないと訊いてみた。
「彼女へのプレゼント? そりゃアクセサリーとかクリプレの定番だろうけど。つき合ってどんくらいなの?」
「夏からだから、5か月目」
「へえ、まあまあか。下世話なこと、聞いていい?」
「してません」
質問を先取りして答えると、本多が爆笑した。
「あー、素直なお答えありがとう。…ならアクセサリーじゃないほうがいいか? 予算の都合もあるだろうし、安っぽいアクセ贈るより…、んー、ファッション時計とかは? スウォッチとか流行りだし手ごろだし、いろんなデザインあるから。なんなら彼女と一緒に見に来るのもありかもよ」
意外とまじめに答えてもらえて、祐樹がびっくりした顔になる。本多はくすりと笑った。
「年上の彼女はけっこう大変?」
「たぶんそうでもないと思うんですけど。なんていうか、弟みたいな扱いっていうか」
「あー、なるほどね。でもそろそろ弟扱いは終わりって感じかな?」
何とも答えようがなくて祐樹は黙りこむ。そうなのかもしれないと思う。綾乃だって本当は祐樹にリードしてもらいたいときもあるだろう。
「じゃあ、祐樹はクリスマスエッチか。頑張れよ」
「違いますって」
からかわれて顔が赤くなるのを自覚する。
10月の祐樹の誕生日に綾乃は「祐樹の雰囲気に合うと思って」とマフラーと手袋のセットをプレゼントしてくれた。
やわらかなウールのきれいな水色のセットは男子校では浮いている気もしたが、祐樹は毎日それを使っていた。それくらいしか綾乃の気持ちに応えてあげられることがない気がしていた。
そのときは祐樹が実力テスト真っ最中だったので、テスト終わりに一緒にランチをして、プレゼントをもらっておとなしく家に帰った。とくにデートということにはならなかった。
クリスマスはまだどういうことになるか約束していない。
ひとり暮らしをしている綾乃の部屋で会うことになれば、たぶんそういう雰囲気になるのだろう。祐樹はまだ覚悟ができていない。内心では怯んでいるが、どうすればいいのかよくわからなかった。
つき合って半年って、ちょうどいいタイミングだよな。
先週、雑談のなかで言われた河野の言葉を思い出す。祐樹より河野のほうがよほど前のめりだ。
ちょうどいいタイミングってなんだよ。おれはべつに一緒にしゃべって楽しく過ごせればそれで満足なんだけど。でも綾乃は期待してるんだろうか。
そういう河野はつき合いはじめて3か月の彼女とのデートに力が入っている。その熱さを目の当たりにして、祐樹はますますじぶんの恋愛テンションの低さを自覚させられた。
おれって恋愛に関心なさすぎる? それとも初心者だからこんなもの? 相手から告白されるのじゃなく、じぶんから好きになったらちがうんだろうか。もっと積極的に会いたがったり、相手を欲しがったりする?
そんなじぶんが想像できなくて、祐樹は戸惑ってしまう。
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