10 / 56
第3章-2
しおりを挟む
「すいません。仲が悪いわけじゃないですよ。末っ子で年がちょっと離れてるんで、わりとかまってもらえるというか、かわいがられてるとは思いますけど」
「ああ、年の離れた末っ子はかわいいかもな」
というよりも、正直言うと、上のふたりは祐樹をかなりかわいがっている。祐樹が小学生のころは「うちの祐樹はだれよりかわいい」などと真剣な顔でいって猫かわいがりしていたほどだ。
それに焼きもちを焼いた三男にはしょっちゅう意地悪をされて、けんかばかりしていたが。でもそんなことを大澤に告げるのはなんだか恥ずかしくて、どうでもいい質問を返した。
「大澤先輩は兄弟いるんですか?」
「生意気な中3の妹が一人」
「へえ」
あからさまに興味のない相づちに、大澤が声をあげて笑う。だってほんとに興味ないし、と祐樹はポテトをかじる。
「じゃあ、俺が質問するよ。好きな食べ物は?」
「お寿司、焼肉、ピザ、唐揚げ、ラーメン」
やけくそ気味に祐樹は返事する。
「なんかいかにも小学生男子って感じだな。あー、でも俺の好物とそんな変わんないか。んー、好きな歌手とか、音楽は?」
「家に兄たちのCDが転がってるんで適当に借りて聞く感じで」
「具体的には?」
「スティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、サイモン&ガーファンクル、ローリングストーンズ、マイケル・ジャクソン、エアロスミス、とか」
「ずいぶん大人っぽい曲を聴いてるんだな。お兄さんたちの好みだろうけど。洋楽好き?」
「はい。ノリがいいのが好きみたいです」
「いや、お兄さんたちじゃなくて、祐樹の好み」
「わかりません。あったら聞くけど、買ってまで聞きたいのってないんで」
「そうか。じゃあ、好きな女の子のタイプは?」
祐樹は顔をしかめた。つい2ヶ月前まで小学生だった祐樹には、女子は面倒な生き物という認識しかない。私立中学に来て男子しかいないのでほっとしたというのも正直なところだ。
「女子は好きじゃない」
「お、問題発言だな」
「あいつら、人のことかわいいとか女の子みたいとかバカにするから嫌なんだ」
急に小学生に戻ったように言い募る。
無理もない、と大澤は祐樹のふてくされた顔を見る。ふてくされてもそこらの女子よりよっぽどかわいい顔をしている。
小学生女子からしたらじぶんよりかわいい男子なんて、目障りだったり意地悪したくなったりするだろう。あるいは気になっても告白なんかできない、微妙な存在だったかもしれない。
「まあまあ、祐樹はほんとにかわいいし、っと、ごめんごめん」
ぎろりともう一度睨まれて大澤は悪びれずに肩をすくめる。
「でもきっと高校生くらいになって背が伸びたら、すごくもてるよ。お兄さんたちは祐樹に似てる?」
「全然。兄3人は父親似なんです。背も高いしまあまあかっこいいんだと思います。けっこうもてるし彼女とかいるみたいだし。おれだけ母親似なんで、親戚からはちょっとタイプが違うって言われます」
「そうかあ、かっこいいお兄さんたちとかわいい祐樹か。いいなあ、おまえん家、楽しそうだ。俺も男兄弟がよかったな」
「楽しくないです。騒がしいし、兄たちはでかいんで邪魔だし」
「あ、そうなの?」
「3人とも先輩と同じくらいかな。180まではないと思いますけど、けっこう背が高いです」
「へえ、じゃあ祐樹もそのうち背が伸びそうだな」
そのあともぽつぽつと一問一答を繰り返して、祐樹が得た大澤の情報は数学と科学が得意、近くの女子高に通う同じ年の彼女がいる、好きな果物は梨とみかんなどなど。
同じだけの祐樹についての情報も与えたわけだが、いったい何の役に立つんだか。
「ああ、年の離れた末っ子はかわいいかもな」
というよりも、正直言うと、上のふたりは祐樹をかなりかわいがっている。祐樹が小学生のころは「うちの祐樹はだれよりかわいい」などと真剣な顔でいって猫かわいがりしていたほどだ。
それに焼きもちを焼いた三男にはしょっちゅう意地悪をされて、けんかばかりしていたが。でもそんなことを大澤に告げるのはなんだか恥ずかしくて、どうでもいい質問を返した。
「大澤先輩は兄弟いるんですか?」
「生意気な中3の妹が一人」
「へえ」
あからさまに興味のない相づちに、大澤が声をあげて笑う。だってほんとに興味ないし、と祐樹はポテトをかじる。
「じゃあ、俺が質問するよ。好きな食べ物は?」
「お寿司、焼肉、ピザ、唐揚げ、ラーメン」
やけくそ気味に祐樹は返事する。
「なんかいかにも小学生男子って感じだな。あー、でも俺の好物とそんな変わんないか。んー、好きな歌手とか、音楽は?」
「家に兄たちのCDが転がってるんで適当に借りて聞く感じで」
「具体的には?」
「スティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、サイモン&ガーファンクル、ローリングストーンズ、マイケル・ジャクソン、エアロスミス、とか」
「ずいぶん大人っぽい曲を聴いてるんだな。お兄さんたちの好みだろうけど。洋楽好き?」
「はい。ノリがいいのが好きみたいです」
「いや、お兄さんたちじゃなくて、祐樹の好み」
「わかりません。あったら聞くけど、買ってまで聞きたいのってないんで」
「そうか。じゃあ、好きな女の子のタイプは?」
祐樹は顔をしかめた。つい2ヶ月前まで小学生だった祐樹には、女子は面倒な生き物という認識しかない。私立中学に来て男子しかいないのでほっとしたというのも正直なところだ。
「女子は好きじゃない」
「お、問題発言だな」
「あいつら、人のことかわいいとか女の子みたいとかバカにするから嫌なんだ」
急に小学生に戻ったように言い募る。
無理もない、と大澤は祐樹のふてくされた顔を見る。ふてくされてもそこらの女子よりよっぽどかわいい顔をしている。
小学生女子からしたらじぶんよりかわいい男子なんて、目障りだったり意地悪したくなったりするだろう。あるいは気になっても告白なんかできない、微妙な存在だったかもしれない。
「まあまあ、祐樹はほんとにかわいいし、っと、ごめんごめん」
ぎろりともう一度睨まれて大澤は悪びれずに肩をすくめる。
「でもきっと高校生くらいになって背が伸びたら、すごくもてるよ。お兄さんたちは祐樹に似てる?」
「全然。兄3人は父親似なんです。背も高いしまあまあかっこいいんだと思います。けっこうもてるし彼女とかいるみたいだし。おれだけ母親似なんで、親戚からはちょっとタイプが違うって言われます」
「そうかあ、かっこいいお兄さんたちとかわいい祐樹か。いいなあ、おまえん家、楽しそうだ。俺も男兄弟がよかったな」
「楽しくないです。騒がしいし、兄たちはでかいんで邪魔だし」
「あ、そうなの?」
「3人とも先輩と同じくらいかな。180まではないと思いますけど、けっこう背が高いです」
「へえ、じゃあ祐樹もそのうち背が伸びそうだな」
そのあともぽつぽつと一問一答を繰り返して、祐樹が得た大澤の情報は数学と科学が得意、近くの女子高に通う同じ年の彼女がいる、好きな果物は梨とみかんなどなど。
同じだけの祐樹についての情報も与えたわけだが、いったい何の役に立つんだか。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
あの日、北京の街角で4 大連デイズ
ゆまは なお
BL
『あの日、北京の街角で』続編。
先に『あの日、北京の街角で』をご覧くださいm(__)m
https://www.alphapolis.co.jp/novel/28475021/523219176
大連で始まる孝弘と祐樹の駐在員生活。
2人のラブラブな日常をお楽しみください。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
【完結】スーツ男子の歩き方
SAI
BL
イベント会社勤務の羽山は接待が続いて胃を壊しながらも働いていた。そんな中、4年付き合っていた彼女にも振られてしまう。
胃は痛い、彼女にも振られた。そんな羽山の家に通って会社の後輩である高見がご飯を作ってくれるようになり……。
ノンケ社会人羽山が恋愛と性欲の迷路に迷い込みます。そして辿り着いた答えは。
後半から性描写が増えます。
本編 スーツ男子の歩き方 30話
サイドストーリー 7話
順次投稿していきます。
※サイドストーリーはリバカップルの話になります。
※性描写が入る部分には☆をつけてあります。
10/18 サイドストーリー2 亨の場合の投稿を開始しました。全5話の予定です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる