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第3章-2

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「すいません。仲が悪いわけじゃないですよ。末っ子で年がちょっと離れてるんで、わりとかまってもらえるというか、かわいがられてるとは思いますけど」

「ああ、年の離れた末っ子はかわいいかもな」

 というよりも、正直言うと、上のふたりは祐樹をかなりかわいがっている。祐樹が小学生のころは「うちの祐樹はだれよりかわいい」などと真剣な顔でいって猫かわいがりしていたほどだ。

 それに焼きもちを焼いた三男にはしょっちゅう意地悪をされて、けんかばかりしていたが。でもそんなことを大澤に告げるのはなんだか恥ずかしくて、どうでもいい質問を返した。

「大澤先輩は兄弟いるんですか?」
「生意気な中3の妹が一人」

「へえ」

 あからさまに興味のない相づちに、大澤が声をあげて笑う。だってほんとに興味ないし、と祐樹はポテトをかじる。

「じゃあ、俺が質問するよ。好きな食べ物は?」
「お寿司、焼肉、ピザ、唐揚げ、ラーメン」

 やけくそ気味に祐樹は返事する。 

「なんかいかにも小学生男子って感じだな。あー、でも俺の好物とそんな変わんないか。んー、好きな歌手とか、音楽は?」

「家に兄たちのCDが転がってるんで適当に借りて聞く感じで」
「具体的には?」

「スティービー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、サイモン&ガーファンクル、ローリングストーンズ、マイケル・ジャクソン、エアロスミス、とか」

「ずいぶん大人っぽい曲を聴いてるんだな。お兄さんたちの好みだろうけど。洋楽好き?」

「はい。ノリがいいのが好きみたいです」
「いや、お兄さんたちじゃなくて、祐樹の好み」

「わかりません。あったら聞くけど、買ってまで聞きたいのってないんで」

「そうか。じゃあ、好きな女の子のタイプは?」

 祐樹は顔をしかめた。つい2ヶ月前まで小学生だった祐樹には、女子は面倒な生き物という認識しかない。私立中学に来て男子しかいないのでほっとしたというのも正直なところだ。

「女子は好きじゃない」
「お、問題発言だな」

「あいつら、人のことかわいいとか女の子みたいとかバカにするから嫌なんだ」
 急に小学生に戻ったように言い募る。

 無理もない、と大澤は祐樹のふてくされた顔を見る。ふてくされてもそこらの女子よりよっぽどかわいい顔をしている。

 小学生女子からしたらじぶんよりかわいい男子なんて、目障りだったり意地悪したくなったりするだろう。あるいは気になっても告白なんかできない、微妙な存在だったかもしれない。

「まあまあ、祐樹はほんとにかわいいし、っと、ごめんごめん」

 ぎろりともう一度睨まれて大澤は悪びれずに肩をすくめる。

「でもきっと高校生くらいになって背が伸びたら、すごくもてるよ。お兄さんたちは祐樹に似てる?」

「全然。兄3人は父親似なんです。背も高いしまあまあかっこいいんだと思います。けっこうもてるし彼女とかいるみたいだし。おれだけ母親似なんで、親戚からはちょっとタイプが違うって言われます」

「そうかあ、かっこいいお兄さんたちとかわいい祐樹か。いいなあ、おまえん家、楽しそうだ。俺も男兄弟がよかったな」

「楽しくないです。騒がしいし、兄たちはでかいんで邪魔だし」

「あ、そうなの?」
「3人とも先輩と同じくらいかな。180まではないと思いますけど、けっこう背が高いです」

「へえ、じゃあ祐樹もそのうち背が伸びそうだな」

 そのあともぽつぽつと一問一答を繰り返して、祐樹が得た大澤の情報は数学と科学が得意、近くの女子高に通う同じ年の彼女がいる、好きな果物は梨とみかんなどなど。

 同じだけの祐樹についての情報も与えたわけだが、いったい何の役に立つんだか。

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