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 夕暮れの陽射しが差しこむ部屋でチーズやフルーツをつまんでワインを飲みながらじゃれあった。
 リカルドとしては飲まなきゃやってられないという気分だったが、アキトが楽しげにリカルドに触れてくるので、酔いが回るにつれてささくれていた気持ちは落ち着いた。
 なんだか不思議なテンションでアキトとキスを交わす。

 それを眺めていたミケーレが「俺も混ぜてよ」とベッドに上がって来た。
 天蓋付きのベッドは大人の男が三人いても余裕の広さで、アキトはのびのびと体を投げ出した。
 ミケーレがアキトに口づける。リカルドは横に肩ひじをついて転がった。アキトはリラックスした表情だ。

 ミケーレはあちこちを啄みながらゆっくりとアキトの服を脱がせた。
「きめが細かいな、東洋人の肌って」
「そう?」
「うん。吸いついてくる」
 しっとり汗を浮かべたアキトの背中にも胸にもミケーレはいくつもキスを落とした。乳首を吸われるとそこからさざ波のような快感が広がり、アキトは身を震わせた。

 じょじょにアキトの肌が染まっていく様子をリカルドは見つめている。自分で抱くときにはこんな風に見られないから、ある意味なかなか得難いチャンスではある。
 ちょっとばかりイラっとしてしまうのはしょうがない。

「リカルド」
 視線を感じたアキトがねだる調子で呼んだ。
 リカルドの複雑な心中などわかっているくせに、素知らぬふりでかわいがって欲しいと請う。ちっ、性悪め。

「こっち来いよ。アキトのいい顔、見せてやるから」
 ミケーレは楽しげに笑う。酔っていてもからりとした声で屈託ない。二人に誘われるとまあこれもいいかとリカルドも諦めた。
 どうせ一晩のお遊びだ。
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