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「あー、マズイ。うまい寿司が食べたくなった」
「うん、おれも」
「祐樹のせいだろ、どうしてくれんの」
「えー、おれのせいなの」
八つ当たりに近い言いがかりに祐樹は笑っている。
「広州ジャスコの回転寿司のせいじゃない?」
「そうか、ジャスコのせいか」
そう言いながら大連赴任前に祐樹が連れて行ってくれた寿司屋を思い出した。都内ではなく、浦安のほうにある寿司メインの海鮮料理店だった。回転はしないが気取らない感じの店で、何を食べてもおいしかった。
「浦安の店、思い出した。マグロがウマい店」
「あ、それは思い出させないで欲しかった」
祐樹がちょっと顔をしかめる。
「もう思い出したから無理」
「あー、あの店の白子ポン酢が好きなんだけど」
「いいね、白子も。あの店のマグロと大トロ、また食べたいな」
「うーん。次に日本に帰るのっていつだろう。春節?」
「かな? 特に決めてないけど」
「うん。あー、なんか本格的に寿司が食べたい気分になってきた」
「でも日本料理屋とかホテルの寿司屋の感じじゃないんだよな」
孝弘が唇を尖らせると、祐樹もうんうんとうなずく。
「そうなんだよね。なんだろ、漁師メシっていうか、がっつり海鮮丼とかあればいいのにね。マグロの中おちとかでいいんだけど」
「そうそう、そう言う感じ。上品じゃないやつっていうか、ここらにないよな」
「あ、あそこがいい。横浜に泊まった時、連れてってくれた朝市」
「ああ。三崎港」
「あそこのマグロ、おいしかったなあ」
二人して軽くため息をつく。
スーパーのフードコートで何を話してるんだか。
「ま、ないものねだりしても仕方ないな」
「そうだね。帰国のお楽しみにしとこうよ」
そう言って立ち上がった。
短い冬の昼はもう終わろうとしている。
外に出ると夕暮れ前で、空が暮れていくのが美しかった。歩いている間に夕焼け空に変わっていき、青とオレンジのグラデーションの空に海の暗い青が映えている。
祐樹が空を眺めているのを後ろから見ていたが「カメラ貸して」ともらってカメラを構えた。祐樹の写真を撮っておこうと思いついたのだ。なんかかわいい顔してるし。
「はい、こっち向いて」
「おれを撮るの?」
祐樹は苦笑したけれど、おとなしく撮らせてくれた。
後でこっそりアルバムに入れておこう。考えてみたら祐樹の写真はほとんど持っていない。と言うより写真を撮る習慣がない。そもそもカメラを持ち歩かないし。
でもこれからはまめに撮ろうかなと思うくらいには柔らかな笑顔を浮かべている。
残りのフィルムは二枚だった。少し時間を置いて祐樹と夕焼けと海を撮ったらフィルムが終わって巻き取りの音が聞こえた。
「あ、終わった?」
「36枚って結構たくさんだったな」
広報室の指示で、36枚撮りのフィルム1本分の写真を撮った。フィルムは現像せずに広報室に送って欲しいと言うことだったので巻き取った後に取り出して祐樹がカバンにしまった。
「でも案外撮れたな」
市内の風景や路上の人々、食べ物や街角の露店などを撮っていたらいつの間にか撮り終っていた。
「うん。結構面白かったね」
大連らしい風景を意識してこんなふうに街に出かけたことはなかったから、孝弘にも今日はとても新鮮だった。
祐樹にとっては街中の人に声を掛けて写真を撮らせてもらうなんてことが初めてだったから、意外にも会話が弾んでみんな親切だったと喜んでいる。
「うん、おれも」
「祐樹のせいだろ、どうしてくれんの」
「えー、おれのせいなの」
八つ当たりに近い言いがかりに祐樹は笑っている。
「広州ジャスコの回転寿司のせいじゃない?」
「そうか、ジャスコのせいか」
そう言いながら大連赴任前に祐樹が連れて行ってくれた寿司屋を思い出した。都内ではなく、浦安のほうにある寿司メインの海鮮料理店だった。回転はしないが気取らない感じの店で、何を食べてもおいしかった。
「浦安の店、思い出した。マグロがウマい店」
「あ、それは思い出させないで欲しかった」
祐樹がちょっと顔をしかめる。
「もう思い出したから無理」
「あー、あの店の白子ポン酢が好きなんだけど」
「いいね、白子も。あの店のマグロと大トロ、また食べたいな」
「うーん。次に日本に帰るのっていつだろう。春節?」
「かな? 特に決めてないけど」
「うん。あー、なんか本格的に寿司が食べたい気分になってきた」
「でも日本料理屋とかホテルの寿司屋の感じじゃないんだよな」
孝弘が唇を尖らせると、祐樹もうんうんとうなずく。
「そうなんだよね。なんだろ、漁師メシっていうか、がっつり海鮮丼とかあればいいのにね。マグロの中おちとかでいいんだけど」
「そうそう、そう言う感じ。上品じゃないやつっていうか、ここらにないよな」
「あ、あそこがいい。横浜に泊まった時、連れてってくれた朝市」
「ああ。三崎港」
「あそこのマグロ、おいしかったなあ」
二人して軽くため息をつく。
スーパーのフードコートで何を話してるんだか。
「ま、ないものねだりしても仕方ないな」
「そうだね。帰国のお楽しみにしとこうよ」
そう言って立ち上がった。
短い冬の昼はもう終わろうとしている。
外に出ると夕暮れ前で、空が暮れていくのが美しかった。歩いている間に夕焼け空に変わっていき、青とオレンジのグラデーションの空に海の暗い青が映えている。
祐樹が空を眺めているのを後ろから見ていたが「カメラ貸して」ともらってカメラを構えた。祐樹の写真を撮っておこうと思いついたのだ。なんかかわいい顔してるし。
「はい、こっち向いて」
「おれを撮るの?」
祐樹は苦笑したけれど、おとなしく撮らせてくれた。
後でこっそりアルバムに入れておこう。考えてみたら祐樹の写真はほとんど持っていない。と言うより写真を撮る習慣がない。そもそもカメラを持ち歩かないし。
でもこれからはまめに撮ろうかなと思うくらいには柔らかな笑顔を浮かべている。
残りのフィルムは二枚だった。少し時間を置いて祐樹と夕焼けと海を撮ったらフィルムが終わって巻き取りの音が聞こえた。
「あ、終わった?」
「36枚って結構たくさんだったな」
広報室の指示で、36枚撮りのフィルム1本分の写真を撮った。フィルムは現像せずに広報室に送って欲しいと言うことだったので巻き取った後に取り出して祐樹がカバンにしまった。
「でも案外撮れたな」
市内の風景や路上の人々、食べ物や街角の露店などを撮っていたらいつの間にか撮り終っていた。
「うん。結構面白かったね」
大連らしい風景を意識してこんなふうに街に出かけたことはなかったから、孝弘にも今日はとても新鮮だった。
祐樹にとっては街中の人に声を掛けて写真を撮らせてもらうなんてことが初めてだったから、意外にも会話が弾んでみんな親切だったと喜んでいる。
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