28 / 95
5-2
しおりを挟む「そう言えば、孝弘って黄色いお店は結構行くの?」
「は? なに急に」
「こないだ青木さんと話してたから」
セックスの後のまったりとした空気の中、何となく気になってやっぱり訊いてしまった。しっとりと肌を密着させている今なら訊ける気がしたからだ。
日常の中で言い出したら責めるみたいな感じになりそうで、業務の一環なのにそんなふうに言いたくなくて。でも少し気にはなっていた。
「ああ、あれ。アテンドすることはあるけど、ぶっちゃけあの手の店でエッチしたことないよ」
孝弘は祐樹の髪を撫でながら、ごくあっさり言う。嘘をついているようには見えないが、本当だろうか。
いや別に過去のことを責めるつもりはないのだけれど。そもそも責めるようなことでもないし。自分だってセフレのような友人が何人かいたりした訳だし、…仕事で行く店とそれとはまた違うだろうけど。
こんな言い訳する時点で、実はかなり気にしてる?
「そうなの?」
「うん。なんか金払ってまでしてもらうのは気が引けるっていうか、おねーさんたちが仕事でしてくれると思うと「お疲れ様です」って感じでその気になれないっていうか」
「…そうなんだ」
そういうものだろうか。ノンケの男はかわいい女の子が奉仕してくれるとなったら、受け入れるものかと思っていた。大好物ではなくても料理が出されたら一応箸はつけようか的な?
例えば逆の立場で、自分が男の子にサービスされる店に行ったとして…、据え膳が並んでたら…うーん? 祐樹は心の中で首を傾げた。
知らない男に抱かれたくないな。抱けるかと言われても微妙だ。
いや、そもそもこの設定が間違っているのか? ゲイ向けの風俗があることは知っているが、祐樹は行ったことがないし、行きたいと思ったこともない。
「そもそも好きじゃない相手としてもしょうがないし。つーか、したくない」
「それはわかる」
「心配してた?」
「心配っていうか…、どうなのかなって……」
祐樹の強がりを孝弘は読み取ったようだ。
にやりと笑うと、うれしいと耳元にキスして囁いた。
「ホントは気にしてたんだろ?」
「…うん」
今度は素直にうなずいたら、孝弘が額にかるく口づけた。まだ落ち着き切っていない皮膚がざわざわと音をたてたみたいだ。孝弘の手に撫でられて気持ちよくてうっとりする。
「かわいいなあ。風俗嬢なんかに興味ないから」
「わかってるよ」
「マジでしないから」
「うん、よかった」
「そう言えば、こっちってゲイ向けの店ってあるの?」
ふと思いついて尋ねたら、孝弘がえ?という顔をした。きょとんとした後、首をかしげる。
「えー、どうだろ? たぶんあるだろうけど俺は知らないな」
やり手のコーディネーターもさすがにそこまでリサーチしてないようだ。
「あっても祐樹は行ったらダメだから」
真剣な顔で言うのがおかしい。
接待でそんな店行くわけないだろうに。いや、プライベートのほうか、この言い方は。ますますないって。
「行かないよ。興味ないし」
「祐樹、絶対モテるんだろーな」
「行かないってば。ただあるのかなって思っただけ」
「ああ、でも噂は聞いたことあるな」
「なんの?」
「北京の話だけどさ、いわゆるハッテン場っていうか、そういう人たちが集まる公園があるって」
「へえ、やっぱあるんだ。…どこ?」
「ん? 気になる?」
そんなことを言いながらちゅ、ちゅと鎖骨から首筋にキスが降りてくる。
「いや。行きたいとかじゃないから」
「でも知りたいんだ」
からかうように孝弘の言った公園は、王府井や故宮からもほど近い大きな公園で意外な感じがした。
5
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

幸せな復讐
志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。
明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。
だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。
でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。
君に捨てられた僕の恋の行方は……
それぞれの新生活を意識して書きました。
よろしくお願いします。
fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる