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第7章:運命
刑罰
しおりを挟むノクティスを含めて皆が席に着くなり、レーヴ陛下は話を始めた。
内容は僕を歓迎する舞踏会で、愚かにも僕を襲った例の伯爵の刑罰を死ぬまで鉱山奴隷にする、という報告だ。
それを聞いた時、ちょっぴり僕は肝が冷えた。
まさに原作のジョシュアが科された刑罰だったからだ。
なんだか今日はやけに原作の内容を思い起こすような話ばかり耳にする。
「失礼ですが、なぜ極刑ではないのでしょうか?」
ふと問いかけたのは、にこやかに微笑みながらも全身から真っ黒なオーラを放つノクティスだった。
「生きていればまた不埒な考えを起こすかもしれません。それによりジョシュア王子が危険におかされないかが心配なのです」
僕としては一瞬で死を迎える極刑よりも、死ぬまで鉱山奴隷として生きて罪を償うことの方がより重い罰だと思える。
貴族として生きてきた人間が鉱山奴隷にまで身分を落とされるのはこのうえない屈辱でもあるし。
なにより、この世には生きることの方がよっぽど難しかったりもするから。
まあでも僕のことを考えて怒っているノクティスの横顔がセクシーで、思わず顔の筋肉がでろでろに緩みそうだ。
「僕は別に構いませんよ? そもそも今回の件はそちらに一任していますし、是非を問うのはアンニーク国王陛下ですから。それに大公が心配するようなことが起きた時は……。さすがに言わなくても分かるでしょう?」
「理解いただき感謝する。しかし、ベルデ大公が気にかけるのも当然かと思う。私としても二人に伝えたかったのはまさにそのことだ」
その時、レーヴ陛下の双眸が鋭く光った。
「どんなに小さなことであろうと王子に無礼を働いた時には——殺して構わない」
声音はまるで深い怒りを孕んでいるのに、無感情なようにも思えて歪な印象を受けた。
「ふーん。なら僕がもし視界に入り込んで不愉快だったから殺したとしても?」
「帝国法は罪人には適用されない。また二人に罪を問うことがないように誓約書を作成するつもりだ。いかがだろうか?」
それなら特に言うこともないだろう。ノクティスも不満そうだが納得はしたようだ。
反対する気はないと微笑み返した僕は、ここらで以前お願いしていた件の進捗を聞くことにした。
「それから、帝都全域での調査はどうなっていますか?」
舞踏会事件で伯爵とグルだった近衛団長を、断罪した日のことだ。
お願いごとはないかと聞かれた僕は、星夏祭で起きる魔物の襲来を防ぐために帝都全域で異常な魔素反応がある場所や、瘴気の根源がないか探してほしいと依頼していた。
「帝都の捜査は完了している。残るのは城と……皇族のみ入ることが許されている禁域のみとなる」
「そうですか」
原作では、街中に魔物がなだれ込み、被害をうけたと明確に描写されていたのは帝都のなかでも中心部だった。
それを考えると帝都から外れた場所だとは考えにくい。
けれど……
「では残りの場所を捜索しても見つからない場合は、帝都の外にまで範囲を広げてください」
レーヴ陛下がわずかに訝しげな表情を浮かべるが、僕は逆に胸を張った。
「この僕がただで浄化してあげるんですから、むしろラッキーなことでしょう?」
なんせこの天才的な僕が浄化をするんだもの! むしろ感謝してほしいぐらいだよね。
ノクティスだけを守ればいいところを、心が広いため他の犠牲者を出さないように気遣っているのだから!
輝かんばかりの自信を見せつけられて返す言葉もないのか、レーヴ陛下は目を逸らすと「わかった」と承諾したのだった。
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