65 / 76
第7章:運命
刑罰
しおりを挟むノクティスを含めて皆が席に着くなり、レーヴ陛下は話を始めた。
内容は僕を歓迎する舞踏会で、愚かにも僕を襲った例の伯爵の刑罰を死ぬまで鉱山奴隷にする、という報告だ。
それを聞いた時、ちょっぴり僕は肝が冷えた。
まさに原作のジョシュアが科された刑罰だったからだ。
なんだか今日はやけに原作の内容を思い起こすような話ばかり耳にする。
「失礼ですが、なぜ極刑ではないのでしょうか?」
ふと問いかけたのは、にこやかに微笑みながらも全身から真っ黒なオーラを放つノクティスだった。
「生きていればまた不埒な考えを起こすかもしれません。それによりジョシュア王子が危険におかされないかが心配なのです」
僕としては一瞬で死を迎える極刑よりも、死ぬまで鉱山奴隷として生きて罪を償うことの方がより重い罰だと思える。
貴族として生きてきた人間が鉱山奴隷にまで身分を落とされるのはこのうえない屈辱でもあるし。
なにより、この世には生きることの方がよっぽど難しかったりもするから。
まあでも僕のことを考えて怒っているノクティスの横顔がセクシーで、思わず顔の筋肉がでろでろに緩みそうだ。
「僕は別に構いませんよ? そもそも今回の件はそちらに一任していますし、是非を問うのはアンニーク国王陛下ですから。それに大公が心配するようなことが起きた時は……。さすがに言わなくても分かるでしょう?」
「理解いただき感謝する。しかし、ベルデ大公が気にかけるのも当然かと思う。私としても二人に伝えたかったのはまさにそのことだ」
その時、レーヴ陛下の双眸が鋭く光った。
「どんなに小さなことであろうと王子に無礼を働いた時には——殺して構わない」
声音はまるで深い怒りを孕んでいるのに、無感情なようにも思えて歪な印象を受けた。
「ふーん。なら僕がもし視界に入り込んで不愉快だったから殺したとしても?」
「帝国法は罪人には適用されない。また二人に罪を問うことがないように誓約書を作成するつもりだ。いかがだろうか?」
それなら特に言うこともないだろう。ノクティスも不満そうだが納得はしたようだ。
反対する気はないと微笑み返した僕は、ここらで以前お願いしていた件の進捗を聞くことにした。
「それから、帝都全域での調査はどうなっていますか?」
舞踏会事件で伯爵とグルだった近衛団長を、断罪した日のことだ。
お願いごとはないかと聞かれた僕は、星夏祭で起きる魔物の襲来を防ぐために帝都全域で異常な魔素反応がある場所や、瘴気の根源がないか探してほしいと依頼していた。
「帝都の捜査は完了している。残るのは城と……皇族のみ入ることが許されている禁域のみとなる」
「そうですか」
原作では、街中に魔物がなだれ込み、被害をうけたと明確に描写されていたのは帝都のなかでも中心部だった。
それを考えると帝都から外れた場所だとは考えにくい。
けれど……
「では残りの場所を捜索しても見つからない場合は、帝都の外にまで範囲を広げてください」
レーヴ陛下がわずかに訝しげな表情を浮かべるが、僕は逆に胸を張った。
「この僕がただで浄化してあげるんですから、むしろラッキーなことでしょう?」
なんせこの天才的な僕が浄化をするんだもの! むしろ感謝してほしいぐらいだよね。
ノクティスだけを守ればいいところを、心が広いため他の犠牲者を出さないように気遣っているのだから!
輝かんばかりの自信を見せつけられて返す言葉もないのか、レーヴ陛下は目を逸らすと「わかった」と承諾したのだった。
139
お気に入りに追加
5,836
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。