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1巻
1-2
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お父様のおかげで、僕の予定は一部を除いて順調だった。
一部というのはもちろん、兄妹たちによる反対運動だ。
お父様から報告があってからというもの、三人はそれはもう酷い荒れようだった。
お菓子で取引しようとしたり、人間の恐ろしさを語ってきたり、エステレラに至っては僕が婚約を撤回するまで断食してやると脅したり。
けれど、偶然にも僕が体調を崩したおかげで、兄妹たちの猛攻撃は緩和した。
きっと僕の不調をストレスによるものだと勘違いしたのだろう。
実際は、寝る間も惜しんで大公との出会いを妄想していたせいなのだが。
それはさておき、お父様が「ジョシュアの幸せを願うなら、自由にさせてあげなさい」と三人に言ってくれたそうだ。
側近からそんな話を聞いた時は、ほんの少しだけ感動したものである。
そんな騒がしくも温かな日々が流れ、出立の日はついに明日へと迫っていた。
ただ、気にかかることがひとつ。
まだ幼いエステレラが、むっつりと拗ねたまま部屋に籠りきりであることだ。
「何度考えても受け入れがたい。私たちの可愛いジョシュアを大公のもとに嫁がせるだなんて。……ジョシュア、やはり今からでも考え直さない?」
「考え直さない。だって僕、大公が好きだし」
長兄のレネは顔を合わせるたびにこれだ。
今日も昨日もこのところずーっと、まったく同じ会話をしている。
色気が増したと城内で噂になるほど頭を悩ませている内容が、僕を心変わりさせよう、なのだから呆れる。
以前は勝手なことをしたと罪悪感を抱いたが、何度も聞いているとそんな気持ちも薄れてくるものだ。
レネの嘆きをあしらいながら読書を続けていた僕は、全く想定していなかった質問にギクリとした。
「なあ、毎回好きだとは言うが、そもそもお前は大公と会ったことがないだろ?」
核心をついたのは、なんと次兄のシエルだったのだ。
行くな、やめろ、ここにいろ、としか言われてこなかったために油断していた。
急に押し黙った僕を二人が訝しむ。
シエルは壁に寄りかかって腕を組み、ツンとした視線を向けてきていた。一言も聞き逃さないぞと言うように、三角の猫耳はピンと立ち上がっている。
答えに詰まってしまった僕は、平静を装いつつ、なんと言うべきか思案した。
確かに一度も会ったことはない。
「設定」を知識として知っていようとも、本当に小説通りとは限らないわけだし。
何よりこの二人を納得させられる理由が……
「大変な思いをしているみたいだから、僕が守ってあげたいなー、的な?」
自分でも疑問に思っていたことへの答えを、探りながら口にしたせいか、その言葉はどこか自信なさげに響いた。
それはもちろん二人も同じように聞こえたらしく、これまでの比ではないほどに猛反対してくる。
「いいかいジョシュア。そんな同情心で行くなんて相手にも失礼だし、何よりジョシュアも後悔をすることになるよ?」
「そうだ。魔物が活発化している土地だなんて、危険に自ら飛び込むようなものだ! お前はそうでなくとも体が弱いのに」
チクチク、チクチク、いつまでも小言が続く。
僕だってね、推しへの気持ちが恋なのか同情なのか分からなくて、悩んだことがありましたよ。
異性間での恋愛が当然とされる前世。男だった僕がベルデ大公に向けていた気持ちに恋愛感情はなく、あくまで好きなキャラクターだった。
でも、この同性婚も当たり前の世界に転生し、生まれた時から男の婚約者がいた僕にとって、推しへの想いが恋愛感情に変わるのは自然なことだった。
何より、彼の存在は、苦しかったあの頃の僕を支えてくれたから……
それにほら、推し活をしていれば一度は聞くだろ?
推しと結婚したいな~、って何気ないぼやきを。
気づいたらそれになっちゃったわけだよ。
ましてや僕は、次元という、どうしたって乗り越えることが不可能であった壁を乗り越えてしまったのだ。
確かに最初は、大公が本当に存在しているという事実に、ただドキドキするだけだった。
憧れの人に会ってみたいという想いや、どうにかして大公を救ってあげられないだろうかという葛藤。
それらは時間が経つにつれて僕の心に広がり、いつしか大公のことを考えない日はなくなった。
物語でしか知らない大公の姿ではなく、本当のありのままの大公に会いたいと。
好きなもの、嫌いなものを教えてほしい。くだらない話を真っ先に聞ける存在になりたい。
それを恋と呼ぶにはまだまだ未熟なのかもしれないけれど。
それでも会いたいという気持ちは消えず、彼が今もまだ孤独であるならば、少しでも力になりたいのだ。
これでも、「推し」と「好き」を勘違いしているかもしれないという疑念から、自分の欲を優先させるのに期限を設けたのだ。
その期限とは、大公が死んでしまう日。つまり、その日まで半年を切っても彼の傍に誰もいなかったら、僕が幸せにすると!
大公を思い守ってくれる他の誰かがいるならば、僕は婚約者に立候補する気などなかった。
でも大公は……もうとっくに適齢期を迎えているのに、誰からも見合い話がないのだ。
大公が断っているわけじゃなくて、ほんっとうに婚約話が持ち上がらない。
確かに、冷遇された皇族で、皇帝とは赤の他人よりも遠い関係性で、そのうえ治めている領地には魔物が闊歩している。
そんな環境に飛び込もうとする令嬢がいたら、とち狂ったのかな? と思うだろう。
でもさ、僕の推しだぞ?
あんなにかっこいいのに、みんな見る目がなさすぎないか?
いったい、大公のどこが不満だって言うんだ⁉
大公の傍にいられるのなら、僕はたとえ火の中水の中だろうと、喜んで参るというのに。
そうして自分で決めた期限を迎えて、僕は行動に出たのだ。誰も大公に手を伸ばさないのなら、僕が少しぐらい欲を出してもいいじゃないかと。
「とにかく好きなの! 会いたいの!」
「だから会ったこともない奴のどこが好きなんだって聞いてるんだろ」
シエルめ、しつこいぞ。普段はそこまで深掘りしてこないくせに。
会ったこともない相手の好きなところ?
そんなの間違いなく――
「顔しかないけど?」
ズバッと言い切った僕に、二人は絶句した。
「会ったことはないけど、姿絵は見たしね」
それはもう、記憶通りの美しい姿だった。
一枚だけなんとかして手に入れた姿絵は、丁重に額縁に入れて、僕の部屋に飾ってある。
うっとりしながら思い返していると、ぽんと肩を叩かれた。
振り仰ぐと、悟ったように二人が言う。
「いつでも好きな時に帰ってきなさい」
「ああ。辛くなったらすぐに戻ってこい」
おい、失礼だな。僕をただのメンクイだと思うなよ。
こう見えても、顔だけで推しを決めるタイプではないぞ。
それに、どんなに辛くとも半年は絶対に大公にしがみつくと決めているのだ。
大公が治める領地を侵す瘴気を浄化できるのは、半年後に来るあの瞬間しかない。だからそれまでは何があろうと、僕がここへ帰ってくることはない。
二人は僕がすぐに飽きて戻ってくると思っているみたいだが、それは言わないでおこう。
でないとまた騒ぎ出すだろうから。
出発当日、僕は大勢の獣人に見送られて国を出た。そこにはもちろん妹の姿もあった。
エステレラとは昨夜、二人きりで話し合い、一緒にひとつのベッドで眠ったのだ。
拗ねていたのは、僕の体を心配していたからだそうだ。
それを聞いて、僕は自分の魔力を用いて作製したペンダントを贈った。
そのペンダントは僕の魔力と繋がっていて、僕に何かあればすぐに異変を教えてくれる代物だ。
逆になんの知らせもなければ、僕が元気でいることの証明になる。
だから、心配してくれるエステレラに僕が帰るまで大切に持っていてと、約束をしたのだ。
ペンダントを大切に胸に握りしめて、可愛い可愛い僕の妹は言った。
『あたくしを置いていくのですから、絶対にその男をものにしてくださいませね』
四兄妹の中で一番恐ろしくて強かなのは、もしや妹なのかもしれない。
そんな圧力にも等しい応援を胸に、澄んだ青空のもと、僕は推しに会うために出発したのだった。
第二章 ベルデ領にて
大公の住む領地についたのが数時間前。そして大公の屋敷に到着したのが数分前。
そして今、客室に通された僕を出迎えてくれたのが──
「……」
海を越え、でこぼこな道を越え、すっかり疲労困憊していた体に活力が満ちていくのを感じる。
目前に存在するキラキラとしたその姿を目にして、何を言えるというのか。
もはや言葉など必要ない。この尊さを形容することは神でさえできないだろう。
とうとい……
ただ、そればかりが頭の中を埋めつくしていた。
「王子、聞いていらっしゃいますか?」
ふと響いた、鼓膜をくすぐるような甘い声音に、胸がキュンとした。
ああっ、原作と同じだ。
切れ長の双眸は、それはもう吸い寄せられそうなほど美しい紫色だった。優しさが滲んでいるような、無垢で素晴らしい瞳である。
先ほどから言葉に詰まりっぱなしの僕に、推しは困ったように首を傾げた。
すると、なんということでしょう……
動きに合わせてサラサラな黒髪が揺れて、ふわりといいにおいがこちらまで漂ったのだ。
ああ、神よ、推しよ! 僕の心臓は停止する寸前だ!
もう、頭を揺らしただけでいいにおいがするなんて、違法なのでは?
存在自体が可愛いしかっこいいしで、犯罪なのでは?
あの雄っぱい……今にもシャツのボタンが弾け飛びそうなあの胸に抱きついて、クンクンしたい。
ゴロゴロ、と鳴りそうな喉をぐっと押さえていると、ソファに座る推し――ベルデ大公が脚を組み替えた。
「──ッ⁉」
その瞬間の色気と言ったらもう!
ただソファに腰掛けているだけなのに、絵画のような存在感。鍛え抜かれた肉体美が服の上からでもよく分かるし、窮屈そうに組まれた長い脚もスタイルの良さを伝えてきて──もう、むしゃぶりついてもいいですか?
「……殿下?」
「ハッ! 失礼しました。なんでしたっけ?」
「遠路はるばる出向いてくださった殿下にこんなことを言うのは心苦しいのですが……私は誰とも婚約するつもりはないのです」
「……はい」
なんてことだ。
柔和で華やかな美しい風貌だけではなく、所作まで洗礼されているだと。
吐息ひとつさえ尊くて、僕は彼の言葉を理解する前に頷いていた。
その刹那、柔らかな雰囲気にわずかながら冷たいものが混ざる。
春の陽だまりに、突然冷たい雨粒がひとつ弾けるような、一瞬の変化。
僕は思わず自分の頬をビンタして、ようやく頭を切り替えた。
「今のお返事は、承諾していただけたということでしょうか?」
「ごほん。失礼、少々疲れていたようで話をうまく呑み込めておりませんでした。先ほどのお返事は承諾という意味ではありません。大公のお気持ちを伺っても、僕は貴方の婚約者になることを望みます」
「困りましたね。私のほうも意思は変わらないので」
ニコリと微笑んだ僕に、大公も同じく微笑みかけてくる。
けれどその瞳には軽蔑や猜疑といった、とても友好的とは言えない感情が見え隠れしていた。
今は品行方正で紳士らしい態度を崩さずに微笑んでくれるけれど、本来は冷たくて無骨な男なのだ。
僕は、ふっと口端を上げた。
推しには悪いが、僕もこれでも悪役王子なんでね!
そう簡単に引くつもりは毛頭ない。
「でも、僕たち獣人の助けが必要なんですよね? 大公がここで断るのなら、助けも不要ということでよろしいのでしょうか?」
「……意地悪なことをおっしゃる。私でなくとも、貴方ならば――」
「僕は大公が良いのです。他の誰でもない貴方がいい」
言葉を遮り僕は言った。続けて、核心に迫ることにする。
「それに、僕の前ではいい人ぶらなくて結構です。本当は言いたいのでしょう? さっさと消え失せろって。違います?」
「……」
部屋の中が静まり返る。
この場に同席する、僕を除いた皆が表情を硬くした。
大公は、先ほどまでの友好的な眼差しはどこへ行ったのか、殺気を向けてくる。
「そうですか。王子には丁寧な物言いよりも、はっきりと告げるほうがいいみたいですね……」
その刹那、大公の雰囲気が一瞬にして荒々しく、酷薄なものへと塗り替わった。
「王子の言う通り。俺はお前と婚約する気はない。……顔を見るのも煩わしい、こう言えば、今すぐにでも消えてくれるのだろうか?」
冷たい眼差しと、かすかな嘲笑を浮かべて、彼は言った。
触れれば切り捨てられるような緊張感が部屋中を支配する。
圧倒されるような雰囲気に僕は身を震わせて縮こまる――のではなく、興奮していた。
だって、だって、これぞまさしくキケンな男ッ! 僕の推しの姿!
陰のあるオーラはむしろ色気に深みを持たせ、退廃的でいて見入ってしまうような引力がある。
初めて生で見られたダークモードの大公に、僕の胸はドッキドキだった。
「もったいない。僕なら貴方を幸せにできるのに……」
「……幸せだと? 笑えもしない戯言だ」
だが、すっと冷め切った紫の瞳はすぐに僕から離れてしまった。
まるで興味がないと言うかのように。
……ああ。そうか。
大公にとって僕はいらないものなのだ。
彼が唯一欲しているのは主人公であるサナの心だけ。
確かに僕の言う「幸せ」に、彼女との婚約は含まれていない。
けれど。
「奇遇ですね。僕も、僕のような台詞を見栄で口にする者がいたら、軽蔑し嘲笑していたと思います。……ですが」
僕の思いを舐めてもらっちゃ困るのだ。
推しへの愛は無限大! 前世から受け継いだ大公へのラブは、そう簡単には消えないのだよ!
僕は深く深く呼吸をして、告げる。
「──貴方が大好きです。だから、僕と結婚してくだされば、僕の命を懸けてでも貴方を幸せにします!」
はっきりと断言した僕に再び紫色の瞳が向けられた。
彼に見られている。たったそれだけで、体温が上がる。
数拍の無音が続き、やがて大公が気怠そうに口を開いた。
「命を懸けてでも? 縋る者の常套句だな。死ぬほど好きとは、執着に目がくらんだ馬鹿な奴らが口にするものだと思っていたが」
それは要するに、僕もその馬鹿な奴だとおっしゃりたいんですね、分かります。
確かに泥沼恋愛小説でも、「死ぬほど愛している」と縋るのはよくある展開だ。
だが、甘い。
こちとら推しが冷たく人を寄せつけない人間だということはよく知っているのだ。
大公が言葉ひとつで揺れてくれるとは、はなから思っていない。
今のは僕の告白──そう、公開告白をしたまでのこと!
大公に想い人がいると分かっていても、僕は大公が好きだと告げたかったのだ。
だって今を逃したらきっと、この思いを隠したまま婚約者のふりをすることになるのだろうから……
けれど、ここからは王子として取引しよう。
決して断ることのできない、唯一貴方の傍にいることができる取引を。
「では、こうしましょう。六ヶ月間だけ、僕を貴方の婚約者にしてください」
「こちらになんの得が?」
「あるでしょう、困っていることが。ここの土地の瘴気問題──僕が解決してあげると言ったら?」
大公が息を呑み、瞳をわずかに見開いた。
思っていた通りの反応だ。
なのに、馬鹿な僕はチクリと胸を刺す痛みに苛まれる。
全てがどうでもいいと思っている大公が、唯一この地を守ろうとする理由。
それには彼女──サナの願いが関わっているから。
この土地をかつての美しい緑溢れる場所へと戻せれば、彼女はきっと花がほころぶような笑顔で喜ぶだろう。
だから、大公はここを離れないのでしょう?
命を懸けられるほど愛した女の故郷だから。
そして、幼い頃の大公とサナが初めて出会った、宝物のような場所だから。
「その保証は? 六ヶ月後、お前が約束を守る保証。そもそも解決できるという確証もない」
「うーん、そうですね……。あっ! 今日から二週間が過ぎた頃に魔素の流れが変わりますよ」
「それが証拠になると?」
「まあ、言葉で説明するよりも実際に経験すれば分かるでしょうから。六ヶ月の期間を承諾する前に、たった二週間だけ様子を見ればいい。僕の言葉が本当かどうか」
僕が二週間と言ったのは、決して当てずっぽうではなかった。
魔素とは魔力の源であり、大地や大気に多く含まれている。
この世界で自身の魔力を使用して魔法を扱うには、魔素が必要不可欠だ。
しかし、その魔素がうまく循環できず一か所に留まると、淀みとなり、瘴気の根源が発生する。そうなれば、自然に消滅することはまずない。
根源は瘴気の影響を受けて穢れた魔素を取り込み、肥大化していく。すると新たな魔素が穢れるのも速くなってしまう。
瘴気の根源がある森は、この大公の屋敷や領民が暮らす居住区とは離れた場所にあると聞いていた。
それほどの距離があっても、じわじわとしみ込むように、この周辺の魔素にまで穢れが付き始めているのだ。本来であれば魔力に呼応して心地よく感じる魔素の流れが、ここではピリピリと肌を突き刺すような痛みを伴う。
過去にも何度か似たようなことがあった。ここまで酷いとおおよそ二週間後には、瘴気の根源が新たに穢れた魔素を取り込み、肥大化することだろう。そうなれば、この地は今よりも濃い瘴気に包まれてしまう。
「……」
「もしかして、獣人なら誰でも分かることかもしれないって考えています? 残念ですが、獣人の中でも魔法に長けた者にしか分かりませんよ。まっ、僕の言うことが信じられないなら、他の獣人を招いてみたらいいかと。……わざわざ人間のためにここまで来てくれるかどうかは分かりませんが」
今日一番の笑顔を浮かべて僕は言った。ある種の嫌味だ。
僕はこの見た目なので侮られることが多い。そのためか、気づけば人をおちょくるのが大変上手になってしまった。
けれど、こうでもしなきゃ、疑り深い大公が僕の提案を受け入れるとは思えない。
まあ、僕は一度交わした約束は必ず守るタイプだ。時期が来たら、大公の答えがどうであろうと、瘴気の根源は浄化してやるつもりでいる。
「どうです? 僕と婚約したくなったでしょう」
悩みあぐねているところを煽るように重ねて微笑みかけると、大公は不満そうに眉を顰めた。
「……二週間だ。お前の言うことがでたらめだと判断したら速攻追い出す。いつでもここから出て行けるようにしておけ」
「はーい!」
言い終えるなり、大公はソファから立ち上がって扉へ向かう。
入室して扉から少し逸れた場所に立ったままの僕には一瞥もくれずに。
ただただ遠くを見つめるばかりの紫の瞳は、冷たく、空虚だった。
彼はどんな世界を生きているのだろう。
彼の瞳が見つめる世界がいつか温かくなればいいと、柄にもなく願ってしまった。
* * *
客室で王子との話が終わり執務室に戻ると、共に引き揚げた部下が声をかけてきた。
「あの、ベルデ大公、本当に婚約するのですか」
興味から生まれたその問いかけに、腹の底が冷えるようだった。
「……お前は何を企んでいるか分からない者と、婚姻関係を結べるのか?」
「し、失礼いたしました……」
淡々と部下の言葉を否定すれば、気配がすっと縮こまるのを感じる。
鬱陶しさを晴らすように前髪を掻き上げた。
どこにいても、信じられるのは己だけである。
傍に置いている彼らのことも、信頼しているわけではない。
しかし、それはあちらも同じ気持ちだろう。
部下として使っているのは、与えられたから受け取っただけのこと。
同様に、これまで与えられた命に逆らうつもりもなければ、そもそもそんな考えを抱いたこともなかった。
だが、今回の婚約話だけは別である。
俺にとって、獣人との婚姻だけはとうてい受け入れがたい話だった。
瘴気の問題の解決に向けて、他種族に協力依頼を出したことは皇后から伺っていた。
しかし、他種族にとって人間とは裏切りの象徴。自分たちが過去に犯した罪を理解しているだけに、誰も彼らの返事など期待してはいなかっただろう。
なのに、その予想をひっくり返す出来事が起きた。
それが今回の婚約話である。
元々、人間と他種族の仲はこれほどまでに険悪ではなかった。昔は種族の壁などはなく、皆が仲良く暮らしていたのだ。
しかし、その平和を壊したのが人間だった。
魔法を操る他種族を奴隷にし、戦争を仕掛けたことで、互いの間に結ばれていた絆は散ってしまったのだ。
俺のように、人間の中にもわずかながら魔力を持ち魔法を扱う者は存在する。しかし、それは他種族に比べると魔法と呼ぶことさえ憚られる程度のもの。
人間の魔法は属性ごとに分類されており、使用できるのは多くともふたつの属性まで。
一方、他種族には属性などという概念さえなく、火も水も光も闇も──全てを自在に操る。
まるで、神聖で気高き、創造神のように。
だから欲したのだろう。自由自在に魔法を操る力を。
そうして人間は罪を犯した。唯一どの種族よりも秀でていた、数の多さを武器にして。傲慢にも、彼らの力を所有したいと、欲をかいたのだ。
結果、人間は他種族から軽蔑される存在となった。
今はぎりぎりで平和条約は続いているものの、関係は冷え切っている。
ここオウトメル帝国がいくら人間が治める国の中で一番の大国であっても、獣人からの手助けを得ようなど、おかしな話なのだ。
……しかし。
広大な海を渡った先にある、獣人の国からやってきた箱入りの第三王子、ジョシュアとの婚約話が届いた時、オウトメル帝国の王宮はまるで蜂の巣をつついたような騒々しさだった。
どう扱っていいか分からないのは、皆同じ気持ちだったのだろう。断ることも是と言うこともできず、結局この日を迎えてしまった。
いったい、獣人側にはどんな企みがあるのか。
帝国では常にその話題でもちきりだった。
獣人が人間と婚約を結ぼうとしてくることさえ異常な出来事だ。
なのに人間の──過ちの末に生まれた存在として育てられた男との婚約を条件にしたのだから、こちらの混乱はさらに大きかった。
俺の出生を知る者たちは、さぞ今回のことを内心で愉しんでいるに違いない。
いわく付きの皇子と、存在自体が謎に包まれた獣人の王子。
二人の末路がどうなるのか、他人だからこそ愉しくて仕方がないのだろう。
俺としては、王子を今すぐにでも追い返したいぐらいだ。
下手な噂を立てられる前に、全てを終わらせてしまいたい。
だが、レーヴ皇帝はそれを許さないだろう。
だから王子の「二週間」の提案を受け入れ、少しの間だけ様子を見ることにした。
そもそもここでの生活が長く続くはずがない。きっと一週間ともたずに、この地から泣いて出て行くだろうから。
「お前はどう思う。甘やかされて育った者が、この土地で生きていけると思うか?」
「……残念ですが、それは厳しいのでは」
部下の返答は曖昧なものではあったが、その実、確信があるような声音だった。
先ほど初めて対面した王子の姿が脳裏に浮かぶ。
幸福の糸で編まれた、甘く柔らかな世界で育ったことがひと目で分かる姿が。
艶やかな白銀の髪に、穢れなど知らないような透き通った水色の瞳。人間の国では見ることのできない耳や尻尾だが、手入れされていることは一目瞭然だった。
何より、今にも折れてしまいそうな細い腰や手足で、いったいどうして瘴気の問題を解決できるというのか。
魔物もろくに狩ることさえできないだろうに。
傷ひとつない美しい肌のその手で、醜い魔物の息の根を止められるとでも?
楽観的であるのは構わないが、王子が思うほどここは易しい世界ではない。
ベルデ領では、瘴気の影響により穢れた雪――魔雪が降る。魔雪は触れるものの魔力を穢す。そのせいでこの土地は干からび、草木も育たぬ劣悪な環境だった。
魔雪は一年を通して降り続けているにもかかわらず、積もることはない。
ただ触れた瞬間に穢れを残して消える存在。
美しい雪とは似ても似つかない魔雪を見て思う。
まるで、己のようだと。
瞼を閉じればいつだって思い出せる情景は、この土地ではもう見られないのだろう。
かつての美しかったあの頃の景色は、どこを探してもないのだ。眩い初夏の日差しのように、みずみずしく、透明感に満ちた景色は消えてしまった。
道行く者たちもすっかりと変わった。至るところで色鮮やかな笑顔が咲いていた町では今、息を殺すように重たいローブを被り、生き急ぐようにして歩く者しかいない。
魔雪に触れると、人々の魔力も穢れてしまう。そのせいで、子供たちは外で遊ぶことを知らずに育つ。
青い草がどこまでも続く広大な土地を自由に走り回る喜びも。汗ばんだ肌を風が撫でる心地よさも。腹の底から喜びが湧き上がるような眩い笑顔も。
それを教えてくれた唯一の彼女も、ここにはもういない。
記憶に眠る彼女の姿が浮かび上がろうとした時。
それを弾くようにして、生意気な笑みを浮かべる王子の顔が浮かんだ。不敵に笑い、だが瞳は真っ直ぐに、毅然とこちらを見つめる姿が。
「……命を懸けるだと? 獣人国の王子はとち狂っているのか」
救いなど求めていない。
誰の手も求めていない。
穢れた命だと、捨てられたあの瞬間から……
誕生してわずかな数秒でさえ愛されなかった自分の役目は、ただ輝かしい思い出が残るこの地を守ることだけだ。
「王子についてだが」
「はい」
「王族だからと過度な待遇はしなくていい。使用人も必要最低限にしろ。どうせすぐに泣き言を言って出て行くだろうからな」
「分かりました。そのように手配いたします」
去っていく部下の背中から視線を外し、窓の外を眺めた。
重く、不幸を混ぜ込んだような灰色の空。
寒くもないのに降り続ける呪われた雪。
見慣れた景色のはずなのに、心がわずかにざわめく。
「……いったい何を企んでいるんだ?」
気づけば眉間に皺が寄り、強く拳を握っていた。
一部というのはもちろん、兄妹たちによる反対運動だ。
お父様から報告があってからというもの、三人はそれはもう酷い荒れようだった。
お菓子で取引しようとしたり、人間の恐ろしさを語ってきたり、エステレラに至っては僕が婚約を撤回するまで断食してやると脅したり。
けれど、偶然にも僕が体調を崩したおかげで、兄妹たちの猛攻撃は緩和した。
きっと僕の不調をストレスによるものだと勘違いしたのだろう。
実際は、寝る間も惜しんで大公との出会いを妄想していたせいなのだが。
それはさておき、お父様が「ジョシュアの幸せを願うなら、自由にさせてあげなさい」と三人に言ってくれたそうだ。
側近からそんな話を聞いた時は、ほんの少しだけ感動したものである。
そんな騒がしくも温かな日々が流れ、出立の日はついに明日へと迫っていた。
ただ、気にかかることがひとつ。
まだ幼いエステレラが、むっつりと拗ねたまま部屋に籠りきりであることだ。
「何度考えても受け入れがたい。私たちの可愛いジョシュアを大公のもとに嫁がせるだなんて。……ジョシュア、やはり今からでも考え直さない?」
「考え直さない。だって僕、大公が好きだし」
長兄のレネは顔を合わせるたびにこれだ。
今日も昨日もこのところずーっと、まったく同じ会話をしている。
色気が増したと城内で噂になるほど頭を悩ませている内容が、僕を心変わりさせよう、なのだから呆れる。
以前は勝手なことをしたと罪悪感を抱いたが、何度も聞いているとそんな気持ちも薄れてくるものだ。
レネの嘆きをあしらいながら読書を続けていた僕は、全く想定していなかった質問にギクリとした。
「なあ、毎回好きだとは言うが、そもそもお前は大公と会ったことがないだろ?」
核心をついたのは、なんと次兄のシエルだったのだ。
行くな、やめろ、ここにいろ、としか言われてこなかったために油断していた。
急に押し黙った僕を二人が訝しむ。
シエルは壁に寄りかかって腕を組み、ツンとした視線を向けてきていた。一言も聞き逃さないぞと言うように、三角の猫耳はピンと立ち上がっている。
答えに詰まってしまった僕は、平静を装いつつ、なんと言うべきか思案した。
確かに一度も会ったことはない。
「設定」を知識として知っていようとも、本当に小説通りとは限らないわけだし。
何よりこの二人を納得させられる理由が……
「大変な思いをしているみたいだから、僕が守ってあげたいなー、的な?」
自分でも疑問に思っていたことへの答えを、探りながら口にしたせいか、その言葉はどこか自信なさげに響いた。
それはもちろん二人も同じように聞こえたらしく、これまでの比ではないほどに猛反対してくる。
「いいかいジョシュア。そんな同情心で行くなんて相手にも失礼だし、何よりジョシュアも後悔をすることになるよ?」
「そうだ。魔物が活発化している土地だなんて、危険に自ら飛び込むようなものだ! お前はそうでなくとも体が弱いのに」
チクチク、チクチク、いつまでも小言が続く。
僕だってね、推しへの気持ちが恋なのか同情なのか分からなくて、悩んだことがありましたよ。
異性間での恋愛が当然とされる前世。男だった僕がベルデ大公に向けていた気持ちに恋愛感情はなく、あくまで好きなキャラクターだった。
でも、この同性婚も当たり前の世界に転生し、生まれた時から男の婚約者がいた僕にとって、推しへの想いが恋愛感情に変わるのは自然なことだった。
何より、彼の存在は、苦しかったあの頃の僕を支えてくれたから……
それにほら、推し活をしていれば一度は聞くだろ?
推しと結婚したいな~、って何気ないぼやきを。
気づいたらそれになっちゃったわけだよ。
ましてや僕は、次元という、どうしたって乗り越えることが不可能であった壁を乗り越えてしまったのだ。
確かに最初は、大公が本当に存在しているという事実に、ただドキドキするだけだった。
憧れの人に会ってみたいという想いや、どうにかして大公を救ってあげられないだろうかという葛藤。
それらは時間が経つにつれて僕の心に広がり、いつしか大公のことを考えない日はなくなった。
物語でしか知らない大公の姿ではなく、本当のありのままの大公に会いたいと。
好きなもの、嫌いなものを教えてほしい。くだらない話を真っ先に聞ける存在になりたい。
それを恋と呼ぶにはまだまだ未熟なのかもしれないけれど。
それでも会いたいという気持ちは消えず、彼が今もまだ孤独であるならば、少しでも力になりたいのだ。
これでも、「推し」と「好き」を勘違いしているかもしれないという疑念から、自分の欲を優先させるのに期限を設けたのだ。
その期限とは、大公が死んでしまう日。つまり、その日まで半年を切っても彼の傍に誰もいなかったら、僕が幸せにすると!
大公を思い守ってくれる他の誰かがいるならば、僕は婚約者に立候補する気などなかった。
でも大公は……もうとっくに適齢期を迎えているのに、誰からも見合い話がないのだ。
大公が断っているわけじゃなくて、ほんっとうに婚約話が持ち上がらない。
確かに、冷遇された皇族で、皇帝とは赤の他人よりも遠い関係性で、そのうえ治めている領地には魔物が闊歩している。
そんな環境に飛び込もうとする令嬢がいたら、とち狂ったのかな? と思うだろう。
でもさ、僕の推しだぞ?
あんなにかっこいいのに、みんな見る目がなさすぎないか?
いったい、大公のどこが不満だって言うんだ⁉
大公の傍にいられるのなら、僕はたとえ火の中水の中だろうと、喜んで参るというのに。
そうして自分で決めた期限を迎えて、僕は行動に出たのだ。誰も大公に手を伸ばさないのなら、僕が少しぐらい欲を出してもいいじゃないかと。
「とにかく好きなの! 会いたいの!」
「だから会ったこともない奴のどこが好きなんだって聞いてるんだろ」
シエルめ、しつこいぞ。普段はそこまで深掘りしてこないくせに。
会ったこともない相手の好きなところ?
そんなの間違いなく――
「顔しかないけど?」
ズバッと言い切った僕に、二人は絶句した。
「会ったことはないけど、姿絵は見たしね」
それはもう、記憶通りの美しい姿だった。
一枚だけなんとかして手に入れた姿絵は、丁重に額縁に入れて、僕の部屋に飾ってある。
うっとりしながら思い返していると、ぽんと肩を叩かれた。
振り仰ぐと、悟ったように二人が言う。
「いつでも好きな時に帰ってきなさい」
「ああ。辛くなったらすぐに戻ってこい」
おい、失礼だな。僕をただのメンクイだと思うなよ。
こう見えても、顔だけで推しを決めるタイプではないぞ。
それに、どんなに辛くとも半年は絶対に大公にしがみつくと決めているのだ。
大公が治める領地を侵す瘴気を浄化できるのは、半年後に来るあの瞬間しかない。だからそれまでは何があろうと、僕がここへ帰ってくることはない。
二人は僕がすぐに飽きて戻ってくると思っているみたいだが、それは言わないでおこう。
でないとまた騒ぎ出すだろうから。
出発当日、僕は大勢の獣人に見送られて国を出た。そこにはもちろん妹の姿もあった。
エステレラとは昨夜、二人きりで話し合い、一緒にひとつのベッドで眠ったのだ。
拗ねていたのは、僕の体を心配していたからだそうだ。
それを聞いて、僕は自分の魔力を用いて作製したペンダントを贈った。
そのペンダントは僕の魔力と繋がっていて、僕に何かあればすぐに異変を教えてくれる代物だ。
逆になんの知らせもなければ、僕が元気でいることの証明になる。
だから、心配してくれるエステレラに僕が帰るまで大切に持っていてと、約束をしたのだ。
ペンダントを大切に胸に握りしめて、可愛い可愛い僕の妹は言った。
『あたくしを置いていくのですから、絶対にその男をものにしてくださいませね』
四兄妹の中で一番恐ろしくて強かなのは、もしや妹なのかもしれない。
そんな圧力にも等しい応援を胸に、澄んだ青空のもと、僕は推しに会うために出発したのだった。
第二章 ベルデ領にて
大公の住む領地についたのが数時間前。そして大公の屋敷に到着したのが数分前。
そして今、客室に通された僕を出迎えてくれたのが──
「……」
海を越え、でこぼこな道を越え、すっかり疲労困憊していた体に活力が満ちていくのを感じる。
目前に存在するキラキラとしたその姿を目にして、何を言えるというのか。
もはや言葉など必要ない。この尊さを形容することは神でさえできないだろう。
とうとい……
ただ、そればかりが頭の中を埋めつくしていた。
「王子、聞いていらっしゃいますか?」
ふと響いた、鼓膜をくすぐるような甘い声音に、胸がキュンとした。
ああっ、原作と同じだ。
切れ長の双眸は、それはもう吸い寄せられそうなほど美しい紫色だった。優しさが滲んでいるような、無垢で素晴らしい瞳である。
先ほどから言葉に詰まりっぱなしの僕に、推しは困ったように首を傾げた。
すると、なんということでしょう……
動きに合わせてサラサラな黒髪が揺れて、ふわりといいにおいがこちらまで漂ったのだ。
ああ、神よ、推しよ! 僕の心臓は停止する寸前だ!
もう、頭を揺らしただけでいいにおいがするなんて、違法なのでは?
存在自体が可愛いしかっこいいしで、犯罪なのでは?
あの雄っぱい……今にもシャツのボタンが弾け飛びそうなあの胸に抱きついて、クンクンしたい。
ゴロゴロ、と鳴りそうな喉をぐっと押さえていると、ソファに座る推し――ベルデ大公が脚を組み替えた。
「──ッ⁉」
その瞬間の色気と言ったらもう!
ただソファに腰掛けているだけなのに、絵画のような存在感。鍛え抜かれた肉体美が服の上からでもよく分かるし、窮屈そうに組まれた長い脚もスタイルの良さを伝えてきて──もう、むしゃぶりついてもいいですか?
「……殿下?」
「ハッ! 失礼しました。なんでしたっけ?」
「遠路はるばる出向いてくださった殿下にこんなことを言うのは心苦しいのですが……私は誰とも婚約するつもりはないのです」
「……はい」
なんてことだ。
柔和で華やかな美しい風貌だけではなく、所作まで洗礼されているだと。
吐息ひとつさえ尊くて、僕は彼の言葉を理解する前に頷いていた。
その刹那、柔らかな雰囲気にわずかながら冷たいものが混ざる。
春の陽だまりに、突然冷たい雨粒がひとつ弾けるような、一瞬の変化。
僕は思わず自分の頬をビンタして、ようやく頭を切り替えた。
「今のお返事は、承諾していただけたということでしょうか?」
「ごほん。失礼、少々疲れていたようで話をうまく呑み込めておりませんでした。先ほどのお返事は承諾という意味ではありません。大公のお気持ちを伺っても、僕は貴方の婚約者になることを望みます」
「困りましたね。私のほうも意思は変わらないので」
ニコリと微笑んだ僕に、大公も同じく微笑みかけてくる。
けれどその瞳には軽蔑や猜疑といった、とても友好的とは言えない感情が見え隠れしていた。
今は品行方正で紳士らしい態度を崩さずに微笑んでくれるけれど、本来は冷たくて無骨な男なのだ。
僕は、ふっと口端を上げた。
推しには悪いが、僕もこれでも悪役王子なんでね!
そう簡単に引くつもりは毛頭ない。
「でも、僕たち獣人の助けが必要なんですよね? 大公がここで断るのなら、助けも不要ということでよろしいのでしょうか?」
「……意地悪なことをおっしゃる。私でなくとも、貴方ならば――」
「僕は大公が良いのです。他の誰でもない貴方がいい」
言葉を遮り僕は言った。続けて、核心に迫ることにする。
「それに、僕の前ではいい人ぶらなくて結構です。本当は言いたいのでしょう? さっさと消え失せろって。違います?」
「……」
部屋の中が静まり返る。
この場に同席する、僕を除いた皆が表情を硬くした。
大公は、先ほどまでの友好的な眼差しはどこへ行ったのか、殺気を向けてくる。
「そうですか。王子には丁寧な物言いよりも、はっきりと告げるほうがいいみたいですね……」
その刹那、大公の雰囲気が一瞬にして荒々しく、酷薄なものへと塗り替わった。
「王子の言う通り。俺はお前と婚約する気はない。……顔を見るのも煩わしい、こう言えば、今すぐにでも消えてくれるのだろうか?」
冷たい眼差しと、かすかな嘲笑を浮かべて、彼は言った。
触れれば切り捨てられるような緊張感が部屋中を支配する。
圧倒されるような雰囲気に僕は身を震わせて縮こまる――のではなく、興奮していた。
だって、だって、これぞまさしくキケンな男ッ! 僕の推しの姿!
陰のあるオーラはむしろ色気に深みを持たせ、退廃的でいて見入ってしまうような引力がある。
初めて生で見られたダークモードの大公に、僕の胸はドッキドキだった。
「もったいない。僕なら貴方を幸せにできるのに……」
「……幸せだと? 笑えもしない戯言だ」
だが、すっと冷め切った紫の瞳はすぐに僕から離れてしまった。
まるで興味がないと言うかのように。
……ああ。そうか。
大公にとって僕はいらないものなのだ。
彼が唯一欲しているのは主人公であるサナの心だけ。
確かに僕の言う「幸せ」に、彼女との婚約は含まれていない。
けれど。
「奇遇ですね。僕も、僕のような台詞を見栄で口にする者がいたら、軽蔑し嘲笑していたと思います。……ですが」
僕の思いを舐めてもらっちゃ困るのだ。
推しへの愛は無限大! 前世から受け継いだ大公へのラブは、そう簡単には消えないのだよ!
僕は深く深く呼吸をして、告げる。
「──貴方が大好きです。だから、僕と結婚してくだされば、僕の命を懸けてでも貴方を幸せにします!」
はっきりと断言した僕に再び紫色の瞳が向けられた。
彼に見られている。たったそれだけで、体温が上がる。
数拍の無音が続き、やがて大公が気怠そうに口を開いた。
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それは要するに、僕もその馬鹿な奴だとおっしゃりたいんですね、分かります。
確かに泥沼恋愛小説でも、「死ぬほど愛している」と縋るのはよくある展開だ。
だが、甘い。
こちとら推しが冷たく人を寄せつけない人間だということはよく知っているのだ。
大公が言葉ひとつで揺れてくれるとは、はなから思っていない。
今のは僕の告白──そう、公開告白をしたまでのこと!
大公に想い人がいると分かっていても、僕は大公が好きだと告げたかったのだ。
だって今を逃したらきっと、この思いを隠したまま婚約者のふりをすることになるのだろうから……
けれど、ここからは王子として取引しよう。
決して断ることのできない、唯一貴方の傍にいることができる取引を。
「では、こうしましょう。六ヶ月間だけ、僕を貴方の婚約者にしてください」
「こちらになんの得が?」
「あるでしょう、困っていることが。ここの土地の瘴気問題──僕が解決してあげると言ったら?」
大公が息を呑み、瞳をわずかに見開いた。
思っていた通りの反応だ。
なのに、馬鹿な僕はチクリと胸を刺す痛みに苛まれる。
全てがどうでもいいと思っている大公が、唯一この地を守ろうとする理由。
それには彼女──サナの願いが関わっているから。
この土地をかつての美しい緑溢れる場所へと戻せれば、彼女はきっと花がほころぶような笑顔で喜ぶだろう。
だから、大公はここを離れないのでしょう?
命を懸けられるほど愛した女の故郷だから。
そして、幼い頃の大公とサナが初めて出会った、宝物のような場所だから。
「その保証は? 六ヶ月後、お前が約束を守る保証。そもそも解決できるという確証もない」
「うーん、そうですね……。あっ! 今日から二週間が過ぎた頃に魔素の流れが変わりますよ」
「それが証拠になると?」
「まあ、言葉で説明するよりも実際に経験すれば分かるでしょうから。六ヶ月の期間を承諾する前に、たった二週間だけ様子を見ればいい。僕の言葉が本当かどうか」
僕が二週間と言ったのは、決して当てずっぽうではなかった。
魔素とは魔力の源であり、大地や大気に多く含まれている。
この世界で自身の魔力を使用して魔法を扱うには、魔素が必要不可欠だ。
しかし、その魔素がうまく循環できず一か所に留まると、淀みとなり、瘴気の根源が発生する。そうなれば、自然に消滅することはまずない。
根源は瘴気の影響を受けて穢れた魔素を取り込み、肥大化していく。すると新たな魔素が穢れるのも速くなってしまう。
瘴気の根源がある森は、この大公の屋敷や領民が暮らす居住区とは離れた場所にあると聞いていた。
それほどの距離があっても、じわじわとしみ込むように、この周辺の魔素にまで穢れが付き始めているのだ。本来であれば魔力に呼応して心地よく感じる魔素の流れが、ここではピリピリと肌を突き刺すような痛みを伴う。
過去にも何度か似たようなことがあった。ここまで酷いとおおよそ二週間後には、瘴気の根源が新たに穢れた魔素を取り込み、肥大化することだろう。そうなれば、この地は今よりも濃い瘴気に包まれてしまう。
「……」
「もしかして、獣人なら誰でも分かることかもしれないって考えています? 残念ですが、獣人の中でも魔法に長けた者にしか分かりませんよ。まっ、僕の言うことが信じられないなら、他の獣人を招いてみたらいいかと。……わざわざ人間のためにここまで来てくれるかどうかは分かりませんが」
今日一番の笑顔を浮かべて僕は言った。ある種の嫌味だ。
僕はこの見た目なので侮られることが多い。そのためか、気づけば人をおちょくるのが大変上手になってしまった。
けれど、こうでもしなきゃ、疑り深い大公が僕の提案を受け入れるとは思えない。
まあ、僕は一度交わした約束は必ず守るタイプだ。時期が来たら、大公の答えがどうであろうと、瘴気の根源は浄化してやるつもりでいる。
「どうです? 僕と婚約したくなったでしょう」
悩みあぐねているところを煽るように重ねて微笑みかけると、大公は不満そうに眉を顰めた。
「……二週間だ。お前の言うことがでたらめだと判断したら速攻追い出す。いつでもここから出て行けるようにしておけ」
「はーい!」
言い終えるなり、大公はソファから立ち上がって扉へ向かう。
入室して扉から少し逸れた場所に立ったままの僕には一瞥もくれずに。
ただただ遠くを見つめるばかりの紫の瞳は、冷たく、空虚だった。
彼はどんな世界を生きているのだろう。
彼の瞳が見つめる世界がいつか温かくなればいいと、柄にもなく願ってしまった。
* * *
客室で王子との話が終わり執務室に戻ると、共に引き揚げた部下が声をかけてきた。
「あの、ベルデ大公、本当に婚約するのですか」
興味から生まれたその問いかけに、腹の底が冷えるようだった。
「……お前は何を企んでいるか分からない者と、婚姻関係を結べるのか?」
「し、失礼いたしました……」
淡々と部下の言葉を否定すれば、気配がすっと縮こまるのを感じる。
鬱陶しさを晴らすように前髪を掻き上げた。
どこにいても、信じられるのは己だけである。
傍に置いている彼らのことも、信頼しているわけではない。
しかし、それはあちらも同じ気持ちだろう。
部下として使っているのは、与えられたから受け取っただけのこと。
同様に、これまで与えられた命に逆らうつもりもなければ、そもそもそんな考えを抱いたこともなかった。
だが、今回の婚約話だけは別である。
俺にとって、獣人との婚姻だけはとうてい受け入れがたい話だった。
瘴気の問題の解決に向けて、他種族に協力依頼を出したことは皇后から伺っていた。
しかし、他種族にとって人間とは裏切りの象徴。自分たちが過去に犯した罪を理解しているだけに、誰も彼らの返事など期待してはいなかっただろう。
なのに、その予想をひっくり返す出来事が起きた。
それが今回の婚約話である。
元々、人間と他種族の仲はこれほどまでに険悪ではなかった。昔は種族の壁などはなく、皆が仲良く暮らしていたのだ。
しかし、その平和を壊したのが人間だった。
魔法を操る他種族を奴隷にし、戦争を仕掛けたことで、互いの間に結ばれていた絆は散ってしまったのだ。
俺のように、人間の中にもわずかながら魔力を持ち魔法を扱う者は存在する。しかし、それは他種族に比べると魔法と呼ぶことさえ憚られる程度のもの。
人間の魔法は属性ごとに分類されており、使用できるのは多くともふたつの属性まで。
一方、他種族には属性などという概念さえなく、火も水も光も闇も──全てを自在に操る。
まるで、神聖で気高き、創造神のように。
だから欲したのだろう。自由自在に魔法を操る力を。
そうして人間は罪を犯した。唯一どの種族よりも秀でていた、数の多さを武器にして。傲慢にも、彼らの力を所有したいと、欲をかいたのだ。
結果、人間は他種族から軽蔑される存在となった。
今はぎりぎりで平和条約は続いているものの、関係は冷え切っている。
ここオウトメル帝国がいくら人間が治める国の中で一番の大国であっても、獣人からの手助けを得ようなど、おかしな話なのだ。
……しかし。
広大な海を渡った先にある、獣人の国からやってきた箱入りの第三王子、ジョシュアとの婚約話が届いた時、オウトメル帝国の王宮はまるで蜂の巣をつついたような騒々しさだった。
どう扱っていいか分からないのは、皆同じ気持ちだったのだろう。断ることも是と言うこともできず、結局この日を迎えてしまった。
いったい、獣人側にはどんな企みがあるのか。
帝国では常にその話題でもちきりだった。
獣人が人間と婚約を結ぼうとしてくることさえ異常な出来事だ。
なのに人間の──過ちの末に生まれた存在として育てられた男との婚約を条件にしたのだから、こちらの混乱はさらに大きかった。
俺の出生を知る者たちは、さぞ今回のことを内心で愉しんでいるに違いない。
いわく付きの皇子と、存在自体が謎に包まれた獣人の王子。
二人の末路がどうなるのか、他人だからこそ愉しくて仕方がないのだろう。
俺としては、王子を今すぐにでも追い返したいぐらいだ。
下手な噂を立てられる前に、全てを終わらせてしまいたい。
だが、レーヴ皇帝はそれを許さないだろう。
だから王子の「二週間」の提案を受け入れ、少しの間だけ様子を見ることにした。
そもそもここでの生活が長く続くはずがない。きっと一週間ともたずに、この地から泣いて出て行くだろうから。
「お前はどう思う。甘やかされて育った者が、この土地で生きていけると思うか?」
「……残念ですが、それは厳しいのでは」
部下の返答は曖昧なものではあったが、その実、確信があるような声音だった。
先ほど初めて対面した王子の姿が脳裏に浮かぶ。
幸福の糸で編まれた、甘く柔らかな世界で育ったことがひと目で分かる姿が。
艶やかな白銀の髪に、穢れなど知らないような透き通った水色の瞳。人間の国では見ることのできない耳や尻尾だが、手入れされていることは一目瞭然だった。
何より、今にも折れてしまいそうな細い腰や手足で、いったいどうして瘴気の問題を解決できるというのか。
魔物もろくに狩ることさえできないだろうに。
傷ひとつない美しい肌のその手で、醜い魔物の息の根を止められるとでも?
楽観的であるのは構わないが、王子が思うほどここは易しい世界ではない。
ベルデ領では、瘴気の影響により穢れた雪――魔雪が降る。魔雪は触れるものの魔力を穢す。そのせいでこの土地は干からび、草木も育たぬ劣悪な環境だった。
魔雪は一年を通して降り続けているにもかかわらず、積もることはない。
ただ触れた瞬間に穢れを残して消える存在。
美しい雪とは似ても似つかない魔雪を見て思う。
まるで、己のようだと。
瞼を閉じればいつだって思い出せる情景は、この土地ではもう見られないのだろう。
かつての美しかったあの頃の景色は、どこを探してもないのだ。眩い初夏の日差しのように、みずみずしく、透明感に満ちた景色は消えてしまった。
道行く者たちもすっかりと変わった。至るところで色鮮やかな笑顔が咲いていた町では今、息を殺すように重たいローブを被り、生き急ぐようにして歩く者しかいない。
魔雪に触れると、人々の魔力も穢れてしまう。そのせいで、子供たちは外で遊ぶことを知らずに育つ。
青い草がどこまでも続く広大な土地を自由に走り回る喜びも。汗ばんだ肌を風が撫でる心地よさも。腹の底から喜びが湧き上がるような眩い笑顔も。
それを教えてくれた唯一の彼女も、ここにはもういない。
記憶に眠る彼女の姿が浮かび上がろうとした時。
それを弾くようにして、生意気な笑みを浮かべる王子の顔が浮かんだ。不敵に笑い、だが瞳は真っ直ぐに、毅然とこちらを見つめる姿が。
「……命を懸けるだと? 獣人国の王子はとち狂っているのか」
救いなど求めていない。
誰の手も求めていない。
穢れた命だと、捨てられたあの瞬間から……
誕生してわずかな数秒でさえ愛されなかった自分の役目は、ただ輝かしい思い出が残るこの地を守ることだけだ。
「王子についてだが」
「はい」
「王族だからと過度な待遇はしなくていい。使用人も必要最低限にしろ。どうせすぐに泣き言を言って出て行くだろうからな」
「分かりました。そのように手配いたします」
去っていく部下の背中から視線を外し、窓の外を眺めた。
重く、不幸を混ぜ込んだような灰色の空。
寒くもないのに降り続ける呪われた雪。
見慣れた景色のはずなのに、心がわずかにざわめく。
「……いったい何を企んでいるんだ?」
気づけば眉間に皺が寄り、強く拳を握っていた。
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