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そんな毎日を送って約一週間。日曜日を挟んでもなお、彼女への扱いが変わることはなかった。そんな簡単に変わらないことは、僕もよく分かってはいるが。放課後、決まって彼女はいつもの面子に痛ましい行いを受ける。僕はやはり隠れてしまう。そして、同じように、終わった後に僕は彼女に近づく。毎度、一緒に車に乗って帰る、その繰り返し。一つ気がかりなのは、あっち側の人間が少しづつ増えてる気がすることぐらいか。
そして、ある日、またまた車に乗せてくれて乗っているとき、夏海のお母さんから、ある頼みを受ける。
「翔くん、明日ちょっと頼み事をしてもいい?」
「いいですよ。何ですか?」
「実は明日、私少し仕事が忙しくて、車で迎えれなさそうだから、電車で一緒に夏海と帰ってくれない?」
電車で彼女と帰るなんて、本心では歓迎していたが、やはりまだ目立ってしまう恐怖心はあった。でも、車に乗せてもらってるのに、無下に断るのも失礼だし、なぜか、誰にも見られないかもしれない、という無根拠な自信が僕を支配した。
「別に構いませんよ。どうせ暇なので」
ありがとう、と言って再び夏海のお母さんはハンドルを握り直した。この会話の間、夏海はずっとただ窓の外の景色をぼーっと眺めていた。
その晩、僕はあまり眠れなかった。それが見られる恐怖からくるものなのか、彼女と一緒に帰れるという興奮からなのかは、分からなかった。
眠れなかったとはいえ、いつの間にか僕は寝ていて、起きたらもう朝だった。朝、チャチャっと準備して、家を出た。そして、今日もまた、この満員電車に揺られることになる。僕はカバンからイヤホンを取り出して、耳につけた。最近の流行りとかわからないし、あまり興味もなかったから、僕は一昔流行った曲ばかり聞いてた。満員電車も辛いが、こうして音楽を聞いていると幾分かマシな気がする。小説も音楽も、僕にとって一種の現実逃避策だ。
やっと学校の最寄駅について、しばらく歩いたのち目的地についた。教室に着けば、すでに夏海は席に座っていた。僕が横の席に向かうと、彼女が気づいて少し笑いながら頭を下げたので、僕の一瞥した。
席に座ると、僕のスマホが鳴った。取り出せば、差出人は隣のお方。
『おはよう翔くん』
「おはよう」
騒がしい教室の中、僕らはただスマホの画面に目を落としていた。
『お母さんから聞いた?今日の放課後の話。ごめんね、わざわざ』
「いいよ、こっちの別に暇だったし」
昨日とほとんど同じことを伝えた。
『そう、ありがとう。今日も頑張ろうね』
一番頑張って耐えているであろう彼女に頑張ろう、なんて言われてしまった。本当なら僕から言うべき言葉なのに。
「そうだね、お互い頑張ろう」
送った瞬間に始業のチャイムが鳴った。僕は前の方に指差した。彼女も気づいてくれたみたいだ。今日も始業した。今日もいつも通り、だと思っていた。
そして、ある日、またまた車に乗せてくれて乗っているとき、夏海のお母さんから、ある頼みを受ける。
「翔くん、明日ちょっと頼み事をしてもいい?」
「いいですよ。何ですか?」
「実は明日、私少し仕事が忙しくて、車で迎えれなさそうだから、電車で一緒に夏海と帰ってくれない?」
電車で彼女と帰るなんて、本心では歓迎していたが、やはりまだ目立ってしまう恐怖心はあった。でも、車に乗せてもらってるのに、無下に断るのも失礼だし、なぜか、誰にも見られないかもしれない、という無根拠な自信が僕を支配した。
「別に構いませんよ。どうせ暇なので」
ありがとう、と言って再び夏海のお母さんはハンドルを握り直した。この会話の間、夏海はずっとただ窓の外の景色をぼーっと眺めていた。
その晩、僕はあまり眠れなかった。それが見られる恐怖からくるものなのか、彼女と一緒に帰れるという興奮からなのかは、分からなかった。
眠れなかったとはいえ、いつの間にか僕は寝ていて、起きたらもう朝だった。朝、チャチャっと準備して、家を出た。そして、今日もまた、この満員電車に揺られることになる。僕はカバンからイヤホンを取り出して、耳につけた。最近の流行りとかわからないし、あまり興味もなかったから、僕は一昔流行った曲ばかり聞いてた。満員電車も辛いが、こうして音楽を聞いていると幾分かマシな気がする。小説も音楽も、僕にとって一種の現実逃避策だ。
やっと学校の最寄駅について、しばらく歩いたのち目的地についた。教室に着けば、すでに夏海は席に座っていた。僕が横の席に向かうと、彼女が気づいて少し笑いながら頭を下げたので、僕の一瞥した。
席に座ると、僕のスマホが鳴った。取り出せば、差出人は隣のお方。
『おはよう翔くん』
「おはよう」
騒がしい教室の中、僕らはただスマホの画面に目を落としていた。
『お母さんから聞いた?今日の放課後の話。ごめんね、わざわざ』
「いいよ、こっちの別に暇だったし」
昨日とほとんど同じことを伝えた。
『そう、ありがとう。今日も頑張ろうね』
一番頑張って耐えているであろう彼女に頑張ろう、なんて言われてしまった。本当なら僕から言うべき言葉なのに。
「そうだね、お互い頑張ろう」
送った瞬間に始業のチャイムが鳴った。僕は前の方に指差した。彼女も気づいてくれたみたいだ。今日も始業した。今日もいつも通り、だと思っていた。
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