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第四十一話 呆気ない果たし
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最初合格したのを知ったとき、正直実感が湧かなかった。母との約束はいとも簡単に果たせてしまった。六人目の科学士になれたことはもちろんうれしいのだが、いまいちピンと来ていなかった。実感は湧かなかったが、母との約束を果たすことができて安堵はした。
そんないまいち波に乗っていない私とは別にカトリナさんもフリッツさんは大いに喜んでくれた。自分の行いで他人を喜ばせられたと思うと自然と私も嬉しくなった。
「本当におめでとう、ベレッタは私たちの自慢の家族です!」
「本当によくやった。きっとエリーナの喜んでくれてる。今日は少し豪華な食事でも用意しよう」
言葉通りその日の夕食は豪華な品々が並んだ。見た目だけでなく、どれも唸るほど美味しい品々ばかりだった。
食事がひと段落ついて、一息ついているのを見計らって、私は二人へ言った。
「私、早ければ明日にでもヘーゼルに帰るつもりです。明日色々書類ものを終わらせたら、向こうに行くつもりです」
二人のおっとりとした目と目が合った。それは優しさからくるものなのか単に眠いだけなのかは定かではないけれど、その場でそれに反対する人は一人もいなかった。
「構いませんよ。早く行ってあげてください。きっとエリーナも待ってますよ」
「ありがとうございます。では、少し準備したいのでお先に失礼します」
私は先に二階に上がって、早速次の日の準備をした。荷物を詰める…とはいっても、自分の私物なんてものはほとんど持っていなかった。そもそもこの家に運ばれたときは丸腰だったのだから当然といえば当然だが。結局鞄にはカトリナさんがくれたあのエプロンとあの端麗なワンピースしか入れなかった。スカスカの小さい鞄を閉じて、私はそのままベッドに大の字になってダイブした。もう明日の今頃は向こうのベッドで寝ているだろう。そうなるとここで寝るのは今日で最後かもしれない。私は白い天井をぼんやりと眺めた。白くて綺麗な天井。そして窓の外にはきれいなお月様が輝いていた。部屋の電気を落として、私は寝る体制に移行した。月明かりがぼんやりと部屋を照らしている。柔らかなシーツに包まれながら私は眠った。
そんないまいち波に乗っていない私とは別にカトリナさんもフリッツさんは大いに喜んでくれた。自分の行いで他人を喜ばせられたと思うと自然と私も嬉しくなった。
「本当におめでとう、ベレッタは私たちの自慢の家族です!」
「本当によくやった。きっとエリーナの喜んでくれてる。今日は少し豪華な食事でも用意しよう」
言葉通りその日の夕食は豪華な品々が並んだ。見た目だけでなく、どれも唸るほど美味しい品々ばかりだった。
食事がひと段落ついて、一息ついているのを見計らって、私は二人へ言った。
「私、早ければ明日にでもヘーゼルに帰るつもりです。明日色々書類ものを終わらせたら、向こうに行くつもりです」
二人のおっとりとした目と目が合った。それは優しさからくるものなのか単に眠いだけなのかは定かではないけれど、その場でそれに反対する人は一人もいなかった。
「構いませんよ。早く行ってあげてください。きっとエリーナも待ってますよ」
「ありがとうございます。では、少し準備したいのでお先に失礼します」
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