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第三十四話 お礼
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私はカトリナさんの手を強く握った。こんなところで逸れてしまったら、一生出会えないような人の数。カトリナさんも私の手を握り返してくれた。どんどん歩いていって、やがて大きな建物の前についた。周りの建物とは二回り大きい建物。
「ここは百貨店と言って、いろんな店が揃っていてなんでも買えるところです」
百貨店…正直入るのも怖いぐらいの大きな建物。カトリナさんがいなかったらまず間違いなく入らない。カトリナさんは慣れた足どりで私を先導してくれた。私はついて回っただけだが、色々買った。今日の具材や日用品、雑貨から何まで。ここでは本当になんでも売っている。人間は売ってないけど…
長く感じた百貨店での買い物も終わり、やっと外に出られた。私は街をもう一回見渡す。どこを見ても人だらけだが、奥の方にあるものに目を奪われた。最初に見た、あのガラスで覆われたワンピースだ。ああいうのを何と呼ぶんだったか、確かショ…ショ…
「あれはショウウィンドウというんです」
そうだ、ショウウィンドウだ。昔、本で読んだことがある。
「近くに行って見て見ましょうか」
そう言ってカトリナさんは私を引っ張っていった。そしてあのショウウィンドウの前についた。近くで見るとより一層美しい。ただの青ではなく上品で美しい紺碧のワンピースに私は見惚れてしまった。するとカトリナさんは無言で私を店の中に引き連れた。引き連れた挙句、私に否応なくワンピースを着せた。とっても肌触りが良くて、美しい。よく見ると細かな刺繍まで施されている。鏡で自分の姿を見た。ワンピースはとても美しい。でも私なんかが着てもいいようなものではないように感じた。ただでさえ醜い私がより一層引き立てられている感じがして、申し訳なさでいっぱいになってしまった。一方で私の耳にはこんな言葉が届いてきた。
「あら、とっても素敵ね。やっぱり、ベレッタには青が似合いますね」
「そうです、お客様。これ以上ないほど綺麗ですよ」
髭を生やした店主のおじさんも加勢する。
「でも…こんな豪華な服、私には不釣り合いで…」
「いや、そんなことない。この服もマネキンが着てる時よずっと輝いているわ。ねえ店主?」
「えぇ、他の誰かが来た時よりも、一番綺麗に見えますよ」
「ということでこれ買います」
「ありがとうございます」
私が言葉を発する前に契約成立してしまった。
「カトリナさんちょっと待ってください、こんな高そうな服を私なんかに…」
「大丈夫よ、これぐらい買ってあげられる。それに、今日までちゃんとした服買ってあげられなかったですから」
いやいや、今私が来ている服だって、十分高級品のように感じる。肌触りも抜群。
「えっ…でも…」
すでにカトリナさんが代金を支払った。もうこれは私のものになったらしい。複雑な気持ちを抱きつつ帰路についた。あの帰り道もかなり気まずかった。
「あの…カトリナさん…?」
「どうして私にそんなによくしてくれるのですか?もう私、どうやってお返しすれば…」
「『家族』だからですよ、ベレッタ。家族の一員に何かをするのに理由はいりません。それにベレッタが喜んでいる姿が私にとっての最高のお礼ですよ」
どれだけ私に優しくしてくれれば気が済むのか。家族ですらない私を家族だからという理由で尽くしてくれるカトリナさん。もらったワンピースが入った手提げを持ちながら感極まって泣いてしまった。私をカトリナさんはそっと抱いてくれた。温もりを感じながら泣き続ける私は何だか懐かしいような思いが込み上げてきた。
喜んでいる姿がお返しと言われたにも関わらず、私はただ泣くことしかできなかった。
「ここは百貨店と言って、いろんな店が揃っていてなんでも買えるところです」
百貨店…正直入るのも怖いぐらいの大きな建物。カトリナさんがいなかったらまず間違いなく入らない。カトリナさんは慣れた足どりで私を先導してくれた。私はついて回っただけだが、色々買った。今日の具材や日用品、雑貨から何まで。ここでは本当になんでも売っている。人間は売ってないけど…
長く感じた百貨店での買い物も終わり、やっと外に出られた。私は街をもう一回見渡す。どこを見ても人だらけだが、奥の方にあるものに目を奪われた。最初に見た、あのガラスで覆われたワンピースだ。ああいうのを何と呼ぶんだったか、確かショ…ショ…
「あれはショウウィンドウというんです」
そうだ、ショウウィンドウだ。昔、本で読んだことがある。
「近くに行って見て見ましょうか」
そう言ってカトリナさんは私を引っ張っていった。そしてあのショウウィンドウの前についた。近くで見るとより一層美しい。ただの青ではなく上品で美しい紺碧のワンピースに私は見惚れてしまった。するとカトリナさんは無言で私を店の中に引き連れた。引き連れた挙句、私に否応なくワンピースを着せた。とっても肌触りが良くて、美しい。よく見ると細かな刺繍まで施されている。鏡で自分の姿を見た。ワンピースはとても美しい。でも私なんかが着てもいいようなものではないように感じた。ただでさえ醜い私がより一層引き立てられている感じがして、申し訳なさでいっぱいになってしまった。一方で私の耳にはこんな言葉が届いてきた。
「あら、とっても素敵ね。やっぱり、ベレッタには青が似合いますね」
「そうです、お客様。これ以上ないほど綺麗ですよ」
髭を生やした店主のおじさんも加勢する。
「でも…こんな豪華な服、私には不釣り合いで…」
「いや、そんなことない。この服もマネキンが着てる時よずっと輝いているわ。ねえ店主?」
「えぇ、他の誰かが来た時よりも、一番綺麗に見えますよ」
「ということでこれ買います」
「ありがとうございます」
私が言葉を発する前に契約成立してしまった。
「カトリナさんちょっと待ってください、こんな高そうな服を私なんかに…」
「大丈夫よ、これぐらい買ってあげられる。それに、今日までちゃんとした服買ってあげられなかったですから」
いやいや、今私が来ている服だって、十分高級品のように感じる。肌触りも抜群。
「えっ…でも…」
すでにカトリナさんが代金を支払った。もうこれは私のものになったらしい。複雑な気持ちを抱きつつ帰路についた。あの帰り道もかなり気まずかった。
「あの…カトリナさん…?」
「どうして私にそんなによくしてくれるのですか?もう私、どうやってお返しすれば…」
「『家族』だからですよ、ベレッタ。家族の一員に何かをするのに理由はいりません。それにベレッタが喜んでいる姿が私にとっての最高のお礼ですよ」
どれだけ私に優しくしてくれれば気が済むのか。家族ですらない私を家族だからという理由で尽くしてくれるカトリナさん。もらったワンピースが入った手提げを持ちながら感極まって泣いてしまった。私をカトリナさんはそっと抱いてくれた。温もりを感じながら泣き続ける私は何だか懐かしいような思いが込み上げてきた。
喜んでいる姿がお返しと言われたにも関わらず、私はただ泣くことしかできなかった。
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