6人目の魔女

Yakijyake

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第十話 会話

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私が玄関を開くと二人と目があった。二人の表情に僅かな翳りを感じた。悲しいような、哀れんでいるような目。しかし、すぐに母は表情を戻し
「お帰りなさい。茶葉はありましたか?」
「えぇ、すぐに淹れます」
キッチンへ行き紅茶の準備をする。私は不思議に思った。なぜ珈琲ではなく紅茶にしたのか。普段珈琲はよく飲むので家に常備しているが、紅茶はあまり飲まない。まぁ、飲みたくなったと言われたらそれ以上何もないけど。そしてもう一つはあの表情の翳り。何か重たい話でもしたのだろうか。とはいえこの時私はあまり気にして無かった。コップ三つに均等に紅茶を淹れた。そしてリビングに持って行き配った。
「どうぞ、お母様、ベール少尉」
「ありがとう、ベレッタ」
「ありがとう。でも少尉なんて言わずさん付けで大丈夫だよ」
私は母の横に座った。紅茶を一回啜り私は聞いてみた。
「私がいない間、どんな話をしてらっしゃったのですか?」
ベールさんが先に口を開いた
「実は…」
すると母はそれを遮るように
「私はベールさんの…人生相談に乗っていたのよ」
「人生相談…?」
「そう、彼ね、彼女ができないとかって。ね?ベールさん?」
「あ、あぁ。そうなんだ。なかなか女の人に好かれなくてね」
「でも初対面の人にそんなこと聞くなんて。ベールさん意外と大胆ですね。」
うふふっと笑う母。
「そ、そうですね…ハハハ」
乾いた笑いをするベールさん。私も微笑んで対応する。しかし、なんか変な感じではあったが、なんか話の内容がしょうもなくてよかった。重たい話をしていたら、きっと私は逃げ出したくなっていただろう。
しばらく歓談した後、ベールさんは帰ることになった。彼曰く帰りは自分一人でもなんとかなると。私は玄関先まで見送りしようと思います彼に近づいた。
「気をつけて。またこちらに来る機会があればぜひ寄ってください」
頭を下げながら言った。
「…………」
なぜか彼は無言だった。私は彼が何も言わないので顔を上げた瞬間。
いきなり私の頭を撫でた。
「あなたのお母さんは優しい人だ。もし何かあったら。お母さんを守ってやってくれ」
顔は被った帽子が影になって表情が読み取れない。しかし、声は何かを噛み締めているような声だった。私がベールさんに聞き返す前に彼はすでに発ってしまった。
当時は意味が分からなかった。私が母を守る?しかもなんでこんな悲しげな声で?何を言っているのだろうと思った。しかし、私はのちに知ることになる。
これは嘘をついてしまった彼なりの私への暗示だったことを。
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