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第五話 不安と決心
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今日は街へ買い物へ行く日だ。いつもなら喜んで行くところだが、今日はあまり気乗りしなかった。きっと妙に現実味のあるあの夢のせいだ。ここ数日毎日見ている悪夢。おかげで行きの森ではずっと不安に駆られていた。やっとの思いで街へ着き買い物をする。しかし、私はことあるごとに敏感になっていた。体に何かが当たれば、石を投げつけられたように感じ、地元の子の声が聞こえるだけでビクッとしてしまう。笑い声が聞こえるだけで自分のことを笑っているように感じる有様だ。
「………ダ……す」
「3…0ダル…す」
「お客さん!」
店主のおじさんに大きめな声で呼ばれ、ヒィっと声を出してしまった。
「300ダルですよ」
「あぁ…すみません」
そう言って代金を支払って店を後にした。我ながら情けない出来事だった。買い物を終え、家路につく。間違いなく、生活に支障をきたしている。早くなんとかしなければ。悩んでいるうちにもう家に着いてしまった。
かなり疲れた私はベッドで横になった。あれからずっと「邪念」が頭から離れない。あの邪念のせいできっと悪い夢を昨日見たのだ。そして毎日同じような夢をみる。
鬱蒼とした森に住んでいる…確かにそうかもしれない。
クズ人間…世間から見たら私はきっとそうなのだろう。
しかし、母をバカにする発言だけは許せなかった。もし周りに誰もいなかったら、はっ倒して何発も殴って、薬品か何かを使って復讐を…って私、何考えてるんだろう。あれはただの夢。夢なんだ。つまり現実じゃない。復讐するとか考えた自分に嫌気がさす。頭を冷やそう。少しはこのごろの空想癖も治るかもしれない。そのあと私はしばらく部屋に閉じこもった。
頭を冷やす。けれども雑念は振り払えなかった。そして私はついにある決心をする。この病を治すには真実のみだと。私は母に全てを聞く決心をした。しかし、思い出すのはあの不安。たわいのない会話をして笑い合うあの時間を失うかもしれない不安。もうお母様と呼べなくなるかもしれない不安。でもこれはきっといつかは知ることになること。それが今になるだけ、と思うと幾分か心が楽になった気がする。
決心したその日のこと。夕食を終え、一息つく時間。母は暖炉の前で珈琲を片手に座っている。私はキッチンから母の顔色を伺う。しかし、生憎ここからは顔が見えない。私は諦めて自分のカップに珈琲を注ぐ。それを持って母に近づいた。
「横でご一緒しでもいいですか?」
「もちろんいいわよ」
快く許可を得られた。母の横にあった椅子にゆっくり腰掛ける。いくら春先とはいえ、この森だとまだまだ寒い季節。この暖炉は毎年重宝してしている見慣れていたもので、火の勢いを一定にしてくれる優れもの。いつも同じ火の大きさのはずなのに、今日は火が一段と大きく感じた。きっと部屋に存在する音は暖炉から発せれれるパチパチとした音だけだろう。ただ、私は自分の心臓の鼓動しか聞こえなかった。今まで怖くて言い出せなかったことを言おうと、私は重い口を開けた。
「お母様…」
「どうしたの?」
私は寸前まで聞くかどうか悩んでいた。やっぱりなんでもないって言えば丸く収まる。そういうのは簡単。けれどもう逃げたくない。逃げてはいけない。喉元まできて突っかかっていた言葉を吐き出した。
「私は…………お母様の娘ですか……?」
心臓が今までにないぐらい早く鼓動している。今にもはち切れそうなぐらいに。暖炉の火はより一層強くなっている。母は私と目を合わせたあと暖炉に目をやった。そして…
「いつか。いつか聞かれる日が来ると思ったわ…」
「………ダ……す」
「3…0ダル…す」
「お客さん!」
店主のおじさんに大きめな声で呼ばれ、ヒィっと声を出してしまった。
「300ダルですよ」
「あぁ…すみません」
そう言って代金を支払って店を後にした。我ながら情けない出来事だった。買い物を終え、家路につく。間違いなく、生活に支障をきたしている。早くなんとかしなければ。悩んでいるうちにもう家に着いてしまった。
かなり疲れた私はベッドで横になった。あれからずっと「邪念」が頭から離れない。あの邪念のせいできっと悪い夢を昨日見たのだ。そして毎日同じような夢をみる。
鬱蒼とした森に住んでいる…確かにそうかもしれない。
クズ人間…世間から見たら私はきっとそうなのだろう。
しかし、母をバカにする発言だけは許せなかった。もし周りに誰もいなかったら、はっ倒して何発も殴って、薬品か何かを使って復讐を…って私、何考えてるんだろう。あれはただの夢。夢なんだ。つまり現実じゃない。復讐するとか考えた自分に嫌気がさす。頭を冷やそう。少しはこのごろの空想癖も治るかもしれない。そのあと私はしばらく部屋に閉じこもった。
頭を冷やす。けれども雑念は振り払えなかった。そして私はついにある決心をする。この病を治すには真実のみだと。私は母に全てを聞く決心をした。しかし、思い出すのはあの不安。たわいのない会話をして笑い合うあの時間を失うかもしれない不安。もうお母様と呼べなくなるかもしれない不安。でもこれはきっといつかは知ることになること。それが今になるだけ、と思うと幾分か心が楽になった気がする。
決心したその日のこと。夕食を終え、一息つく時間。母は暖炉の前で珈琲を片手に座っている。私はキッチンから母の顔色を伺う。しかし、生憎ここからは顔が見えない。私は諦めて自分のカップに珈琲を注ぐ。それを持って母に近づいた。
「横でご一緒しでもいいですか?」
「もちろんいいわよ」
快く許可を得られた。母の横にあった椅子にゆっくり腰掛ける。いくら春先とはいえ、この森だとまだまだ寒い季節。この暖炉は毎年重宝してしている見慣れていたもので、火の勢いを一定にしてくれる優れもの。いつも同じ火の大きさのはずなのに、今日は火が一段と大きく感じた。きっと部屋に存在する音は暖炉から発せれれるパチパチとした音だけだろう。ただ、私は自分の心臓の鼓動しか聞こえなかった。今まで怖くて言い出せなかったことを言おうと、私は重い口を開けた。
「お母様…」
「どうしたの?」
私は寸前まで聞くかどうか悩んでいた。やっぱりなんでもないって言えば丸く収まる。そういうのは簡単。けれどもう逃げたくない。逃げてはいけない。喉元まできて突っかかっていた言葉を吐き出した。
「私は…………お母様の娘ですか……?」
心臓が今までにないぐらい早く鼓動している。今にもはち切れそうなぐらいに。暖炉の火はより一層強くなっている。母は私と目を合わせたあと暖炉に目をやった。そして…
「いつか。いつか聞かれる日が来ると思ったわ…」
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