幻影の讃美歌

ごさまる

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第三章

〜過去の記憶〜⑬代償〜

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「・・・予期せぬ事だが・・この際だ・・お前の魂を利用させてもらう事にした・・。
その為には、自害されては使い物にならんからな・・。」

アザゼルの短刀には、一滴の血もついていない。
何故なら・・アザゼルより一瞬速く、天使神はアザゼルの首を跳ねたのだ。

「・・・・・・なんて事を・・・ちくしょお・・。」

ミカエルの目の前に・・無機質に転がるアザゼルの頭部・・。

薄れてゆく意識の中、天使神達の話す声が聞こえる。

「・・「器」無き今、我々が先に「主」を探しだし「力」を手に入れる・・。」

「人間界を「浄化」しながら・・ゆっくりと確実に「主」を探しだす・・。」

「・・時間はたっぷりある・・四半世紀かかろうとも・・必ず・・「刈り取る」だけだ・・。」

「そこでだ・・こいつの体と魂を代償に我々の力を少しだが分け与える・・。
こいつには、働いてもらう・・。」

「こやつも、もはや虫の息・・」

「眠いな・・・俺も・・ここまでか・・?・・」

ミカエルは静かに目を閉じた。


                            ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「♪アハッ・・まだ・・来てはいけないのだ・・」

「・・誰だ?・・お前は・・?ガキか・・?」

「♪アハッ・・いずれまた・・」

遠ざかる夢の中、顔に冷たい感覚を覚え、重たい瞼をうっすら開けてみた。

ユサユサユサユサッ!!パシッパシッッ!!

「おいっ!起きろって!!パシッ!!ミカエルっ!」

《・・・・アザゼル・・?・・なのか?・・?》

声を出したいが喉につかえて声が出ない。

力を瞼に集中して、目を見開いた。
すると、それに気付いたアザゼルは、

「よしっ!気付いたなっ!今、水を飲ませてやるって!!待ってなっ!」

そう言うと、アザゼルは椅子から立ち上がり、外の井戸まで水をくみに出ていった。

《・・・・・・・・?夢か・・?》

見開いた目を、出来る限りキョロキョロ動かした。

見覚えのある丸太小屋の天井・・、俺の服に・・俺の・・靴・・。

《・・!!間違いないっ!・・ここは俺の家だ・・
何故だ?・・あの時・・俺もアイツも確実に殺られた筈だ・・しかも・・アイツは、首を切り落とされた・・なのに・・何故だ・・・・?・・》

ギィィ・・。
コツコツコツコツ!  井戸から戻ったアザゼルは、

「平気か?ミカエル?とりあえず水を飲めよ。」

よっこらしょと、ミカエルの背中に腕を回すと、ゆっくりと水を飲ませた。

ゴクゴクゴクゴクッ。

「ゲホッゲホッゲホッッ!・・」

「おい♪おいっ、ゆっくり飲めねぇのか?」

「・・・・あぁ・・すまねぇ・・助かった・・。」







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