幻影の讃美歌

ごさまる

文字の大きさ
上 下
68 / 117
第三章

〜過去の記憶②〜ミカエルと言う名の男〜

しおりを挟む
時代は、はるか遠くにさかのぼり、この地に人間も、そして神と呼ばれる者達も、共に平和に共存していた頃。

なんの争いもなく、たくさんの人間が分け隔てなく、そして同じく神も同様、互いの地を行き来していた。

神が寝床としている地を「聖地」と呼び、人間が寝床にしている地を「人界」と呼んだ。

二つの地には、境界もなく互いの居どころと言うだけの世界。

そんな平和な刻が、誰もが「永遠」に続くだろうと・・誰一人として疑いもせず静かに刻が過ぎていった。

「よっこらしょっとっ!!
んじゃっ!!とりあえず、この野菜を「聖地」まで運べばいいんだな?
へへっ、褒美は・・飛びきり旨い赤ワインでって事で宜しくなっ♪」

「ハハハっ!わかった!!わかった!!いつも助かるぜっ!!本当ありがとなっ♪ミカエルっ♪」

「ほぉ~~?今日はやけに優しいんだなっ?
あっ!もしかして・・妹のヨシアが帰って来るのかっ?」

「そう・・!!その、もしかしての日なんだよ!!
遂に怪我の具合が回復して・・、やっと・・やっと・・人界に戻れると聖地より手紙が届いたんだ!!」

「・・やっと・・やっとだなっ!!ウオーッ!!
やったなっっ!!アザゼルッ!!」

ミカエルは、力強くアザゼルを抱き締めながら、そしてアザゼルは、顔をグシャグシャに泣きながら互いに喜びに騒いだ。

小さな丸太小屋の中で、喜びに騒ぐ二人の男。

その名は、「ミカエル」と「アザゼル」。

二人は仲の良い幼なじみで、共に両親を病で亡くして以来、助け合いながら互いの丸太小屋を行き来していた。

アザゼルには、歳の離れた妹が一人いて、庭先で夢中になって神の使いと呼ばれている「麒麟」の背に乗り遊んでいた。

その最中・・勢い余って麒麟の背から落ち、背骨を負傷する大怪我をおった。

「ギヤアアア~!!お兄ちゃあ~ん痛いよお兄ちゃん・・ウワアアアアアアア~」

ヨシアの泣き叫ぶ声に、薪割りをしていたアザゼルは、すぐに駆け寄りヨシアを抱き起こした。

「大丈夫かっ!?ヨシアッ!?しっかりしろっ!!」

「ウワアアア~、麒麟さんの背中から・・落っこちちゃったあ!背中が・・痛いよぉ・・お兄ちゃん・・。」

「・・すまぬ・・この私がつい、はしゃいでしまったせいだ・・誠に申し訳ない・・。」

麒麟は、面目無さそうに小さな声でアザゼルとヨシアに謝るのだった。

同じくヨシアの泣き叫ぶ声に、遅れながらもミカエルが息を切らし走って来た。

「お、お~~いっ!ハァハァ・・大丈夫かあ~!!」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。

光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。 最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。 たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。 地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。 天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね―――― 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

私の真似ばかりをしている貴方は、私より上に届くことはできないの

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
レオノーラは社交界のファッションリーダーと呼ばれるほどのお洒落好きである。 ビビアンはそんなレオノーラの恰好をいつも真似ばかりしている。 レオノーラが髪型を変えれば髪型を、ドレスのデザインを変えれば、即座にその真似をして同じものを揃えるという具合に。 しかしある日とうとうビビアンが「レオノーラは私の真似をしているのだ」と言い出すようになってしまい……。 全5話

【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」  信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。  私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。 「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」 「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」 「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」  妹と両親が、好き勝手に私を責める。  昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。  まるで、妹の召使のような半生だった。  ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。  彼を愛して、支え続けてきたのに…… 「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」  夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。  もう、いいです。 「それなら、私が出て行きます」  …… 「「「……え?」」」  予想をしていなかったのか、皆が固まっている。  でも、もう私の考えは変わらない。  撤回はしない、決意は固めた。  私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。  だから皆さん、もう関わらないでくださいね。    ◇◇◇◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです。

処理中です...