幻影の讃美歌

ごさまる

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第二章

〜さ迷えるもの〜

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「ねぇ!ねっ!ハデスのおじちゃんっ!昔みたいに剣術教えてよっ!ねっ!いいでしょっ!」

おもむろにハデスは、立ち上がり

「・・あぁ、いいだろう、さぁ先に剣を抜け・・」

「やったぁ!さすがハデスのおじちゃんっ!
それじゃ!行くよーっ!」

シャキーンと短めな剣を鞘から抜き取ると、思いっきりハデス目掛けて走り出した。

カキンッ!カキンッ!シュバッ!カキンッ!

二人の様子を見ながら、ミーミルが話の続きを話し始めた。


「・・我慢出来ずに、無我夢中でパンを食べていると父親が起きてきた・・一人パンを食べているロネに「お前は、親不孝だ」と・・また暴力が始まった。
騒がしさに母親も起き出し、暴力は更にエスカレートしていった・・
何度も何度も何度も何度も・・許しをこいても止まない二人の暴力に・・とうとうロネは・・」

「ち、ちょっと待って・・!まさか・・」

「・・・・・・・・・・・・・・死んだ。」

「そんな・・」

「・・時代も時代だ・・ロネの死は瞬く間に知られ二人は、ギロチンにかけられた。
その後ロネの遺体は村で唯一の大木・・桜の木の横に埋葬された・・
そして死者の世界の番人であったハデスは、母親と父親の魂を「冥界」へと落としたのだった。
しかし・・ロネは、自分が死んだ事を理解出来ずに・・今でも両親を探してさ迷い続けている・・
自分が死んだ事も・・そして両親が死んだ事もわからずに・・」

「なぜ・・あんな酷い両親を探してるの?」

優は、困惑した表情でミーミルに聞いた。

「それは・・どんな親であれ・・ロネにとって大切な家族だからだと・・。」


「・・・こんなのっ・・切なすぎるよ・・」



シャキーン、カキンッ!ザッザッーッ!

「ねっ!ハデスのおじちゃんっ!僕さ、剣術上手くなったでしょ!?」

あどけない顔で、ハデスとたわむれるロネ。

過去に悲惨な出来事が襲ったにも関わらず、ロネの表情は笑顔を振りまいていた。

「・・ねぇ・・ミーミル・・どうしてトンネル内にロネは、いるの?・・」

「・・浮かばれない魂・・こうして、さ迷い続けている・・いつか両親と出会う事を信じてな・・
だが、永遠にそれは叶わぬ事・・」

「どうして!?」

「・・冥界に落ちた二人の魂は、二度と冥界から出ることは出来ない。
永遠に罪を償いながら地獄の苦しみを受け続ける・・
だが・・ロネは、違う・・本来なら「楽園」に行けるはずだが、己の死に気付いていないがためにトンネルの中で、両親を探し、さ迷い続けている・・」


「・・悲しすぎるよ。
ねぇ?・・ミーミル・・私以外の皆は、この事知っていたの?」

「あぁ、知ってるさ・・半世紀以上前の話だからな」







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