霊感兄妹の大冒険 古城にはモンスターがいっぱい⁉

幽刻ネオン

文字の大きさ
上 下
1 / 16

第1章 はじまりは突然に!?

しおりを挟む
 森の奥にある、とある建物が大きくそびえ立つ。
西洋のお城にも見えなくもない。
いや、あれは間違いなく古城だ。
夜だから余計に、不気味に見えてくる。
人気もなくただそこにあるだけ。
そんな時だった。
大きな扉の前に一人の人物がいた。
開けるのをためらっているのだろうか。
なぜ後ろ向きなのかが謎である、中に入ったあとなのだろうか。
その人物は息切れしている、今にも倒れそうだ。
すると大粒の雨が降ってきてその人物の身体にあたる。
何かを恐れたのか走り出していた。
「来ないで...! 私が悪かった。だから許して……!」
男か女の声すらもわからない中性的な声が叫びだす。
すると扉が急に開きだし、そこから黒い手が現れその人物の身体を掴む。
「え……」
叫び声とともに、その人物は吸い込まれるように扉の中へと入る。
雨は朝になるまで激しく降っていた……。


 S県若田市けんわかたしのとある一軒家いっけんやで、にぎやかな声が聞こえてくる。
とても楽しそうな雰囲気が伝わっているよう。
ここがその自宅だ。
リビングには長いソファーに四人の人物が座っていた。
どの子も見た目からして個性的。
「今日から冬休み! 何をしようかなー」
真ん中に座っているピンクのスタジャンに白のスカートがとくちょうの女の子。
ハーフアップの黒髪にルビーのようなキレイな赤い瞳。
彼女の名前は、すめらぎあやね。
皇家の三女で中学二年生。
「ふふっ。お姉ちゃん、今日もご機嫌ですわね」
左側に座っている水色のロリータワンピースがとくちょうの女の子。
セミロングヘアの金髪、優しくておっとり系。
彼女の名前は、エミリー・スメラギ。
皇家の末っ子で中学一年生。
小学生まではイギリスに留学していた。
外人のような名前だが、生粋きっすいの日本人である。
「おいおい、気持ちが昂るのもいいが宿題も忘れるなよ?」
右がわに座っているショートヘアの緑髪にモスグリーン色のチャイナ服に黒のジャケットにジーンズがとくちょう。
彼女の名前は、皇憂炎スメラギ・ユーエン
皇家の長女で中学三年生。
男装だんそうをしているのは自分を守るためだとか。
彼女も小学生までは香港ホンコン留学りゅうがくしていた。
こちらも、れっきとした日本人。
「どうだか。冬休みはこうも騒がしいのか」
憂炎の隣に座っている藍色あいいろのライダージャケットに黒のダメージジーンズ姿の青年。
黒髪のミディアムにピアスとネックレスには十字架じゅうじかがとくちょう。
彼の名前は、皇大我タイガ
皇家の長男で高校二年生。
この『兄妹』はとても仲良し。
「わかってるよ。お姉ちゃん、私はちゃんとできる子だし」
「とか言ってすぐに後悔するのが、お前だからな」
「あ……姉さん。言い過ぎよ」
「ははっ。今日も平和だな」
今日は四人で他愛のない雑談をしていた。
こうやって面と向かって話すのは久々だから騒がしいのも無理はない。
冬休み期間がはじまり、どこの学生もみんなこんな感じだろう。
この皇家も、本当は家族と話せばもっと良かったのだが。
「今日もお母さんとお父さん、お仕事で忙しいね」
「ええ。少し残念ですわ……たまには家に帰ってきてもいいのに」
あやねとエミリーは親に話したいことがありすぎて落ち着かないのだ。
釘を刺すかのごとく、憂炎と大我はぶっきらぼうに言う。
「あまえるな。気持ちは分からなくもないが二人は今が踏ん張りどきなんだぜ? 少しは大人になったらどうだ」
「同感だ。少しは危機感ききかんを持って行動してほしいものだな」
二人の発言にイラっとした、あやねが文句を言う。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。なにもそこまで言わなくてもいいでしょ? エミリーもそう思うよね?」
「えっ……わたくしはその。ケンカはやめてください……」
今にも泣きそうな末っ子の顔を見た三人は気まずくなる。
そう、エミリーは争い事やケンカが大嫌いでその場面に直面するといつも泣き出すのだ。
これにはさすがにまずいと思いお互い顔を見合わせた。
「ご、ごめん。エミリー……私が言い過ぎたね」
「つい感情が高ぶったようだ……。すまない」
「やれやれだぜ……まったく」
エミリーは安心してほっと胸をなでおろす。
あやねは笑っていて、憂炎は怒っているときが多いからエミリーはそれでも心配してくれると信じている。
兄の大我は影で見守るようにする。
普通の家庭ではあまりないのだが、皇家では日常茶飯事にちじょうさはんじだ。
優しい姉だからすぐ仲直りをする。
エミリーを泣かせたらいちばん危険だ。
「わかればいいのよ。姉さんこそ会いたいのは変わりませんものね」
「ぐっ……。まあ否定はしないが……そうだよ」
「お姉ちゃん、正直だなー」
「どうした? 恥ずかしくて何も言えなくなったようだな」
「大我まで……!?ウソが嫌いなだけだ! 勘違いするなよ……」
「はーい、でもそんなお姉ちゃんも大好きだよ。わたしは」
あやねの純粋じゅんすいな告白にほほを赤面し、舌打ちする憂炎。
となりでエミリーがくすくす、と両手をおさえながら笑っていた。
そんな平和な日常が続くのかと思ったときだった。
突然、受話器じゅわきに置いてある電話が鳴りだし憂炎が出る。
びっくりしたエミリーがおびえて、子ウサギのように震えるのをあやねが優しく抱きしめた。
大我は憂炎の仕草を見て何かを察したようだ。
「きゃっ……いったいなんですの?」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんがなんとかしてくれるから」
「静かにしろ……。はい、もしもし?」
なんだか憂炎の様子がおかしくなり口調が悪くなることに気づいた三人。
すると親の名前をあげた瞬間しゅんかん、二人は叫び声をあげた。
「ええっ!?」
「……ああ、わかった。今からパソコンを出す。じゃあまたあとで」
冷ややかな声色で着信を切ると二人が飛び出してきた。
きっと、内容が知りたくて仕方がないのだろう。
「ねえ! いま……お母さんとお父さんって言ったよね」
「いったい何があったのですか!?」
「今から説明する! まず落ち着いてそこに座れ。準備するから待っていろ」
「すぐに終わるだろうな」
二人は「は、はいっ!」と強くうなずきながら言う通りにソファーに座る。
大我はくだらない、と無愛想ぶあいそうな顔で腕を組み座る。

憂炎がノートパソコンを取り出し、リモートオンラインツールのサイトにアクセスしている。
どういった内容にしろ、憂炎がこんなにも焦り出すなんて珍しい。
アイディーやパスワードを素早いタイピングで打ちこむ。
「これで映るはず……おっ、きた」
画面が二人の人物に切りかわり、あやねとエミリーは喜びの悲鳴をあげた。
やっと会いたかった親がこうして今、画面越がめんごしにいるから。
「お母さん、お父さん! 久しぶり、元気にしてた?」
「ああ……お母さま、お父さま。二人にあえてわたくしとっても嬉しいわ!」
二人の期待に母、凛子りんこは笑顔で手を振って応える。
だが、憂炎と大我の顔色を察した父、霧人キリヒトは無言のままだった。
「はーい! もちろん元気よ。わたしはもう……子どもたちの顔を見られて嬉しいわ」
「うん! あれ? どうかしたの?」
「二人に会えて嬉しくないのですか……?」
心配そうに二人は憂炎と大我を見るが霧人の顔を見たままだ。
凛子はそれに察したのか少し困った顔になる。
憂炎は無視して話しかける。
「父さん。さっきの話の
「ああ。お前たちにしか頼めないからな」
あやねとエミリーがそわそわしながら耳打ちをする、緊迫きんぱくな空気が苦手なためかなんとかごまかしているみたいのようだ。
(お姉ちゃん、どうしたんだろ)
(元気がありませんね、わたくしたち何か悪いことしましたの?)
我に返った憂炎は二人の方を見て、そして冷徹な声で話す。
「二人とも、いい雰囲気をぶちこわして悪いが。ここから父さんが真面目な話をするらしい。黙ってよく聞くんだ。母さん、またメールとかで伝えてくれ」
「憂炎は相変わらずね。でも、安心して任せられるわ。大我も妹の面倒めんどうをお願い。わたしは残念ながら仕事に戻るけど二人のことよろしくね。それじゃあ、また!」
スーツ姿の凛子が手を振りながら仕事場へと走って向かっていった。
残った霧人が真ん中に座り真剣しんけんな目で語りだした。
「あやね、エミリー、憂炎、大我。久しぶりだな。感動の再開はここまでだ、ここからは父さんからの大事なお願いを聞いてほしい。一回しか言わないからよく聞け」
ごくりとつばをのみこむ、あやねとエミリー。
憂炎と大我は、強くうなずいた。
電話に出た本人が一番冷静なのは妹たちを無駄むだに心配させたくはないから。
そして霧人は話し出した。
「お前たちには、別荘近べっそうちかくにある古城こじょうの調査をしてもらう。冬休みはそこに泊まり行きなさい。管理人かんりにんには連絡してある」
それは四人にとって一種のはじまりにすぎなかった。
なぜか、それは内容があまりにも長すぎるからだ。
大我が父の話す内容に頭を抱えたのは、ひみつ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あやかし達の送り屋をやっています! 〜正反対な狐のあやかし双子との出会い〜

巴藍
児童書・童話
*第2回きずな児童書大賞にて、ファンタジー賞を受賞しました。 みんなには見えない不思議なナニカが見える、小学五年生の長月結花。 ナゾの黒い影に付きまとわれたり、毎日不思議なナニカに怖い思いをしながら過ごしていた。 ある日、結花のクラスにイケメン双子の転校生がやってくる。 イケメン双子の転校生には秘密があって、なんと二人は狐の『あやかし』……!? とあるハプニングから、二人の『送り屋』のお仕事を手伝うことになり、結花には特別な力があることも発覚する。 イケメン双子の烈央と星守と共に、結花は沢山のあやかしと関わることに。 凶暴化した怪異と戦ったり、神様と人間の繋がりを感じたり。 そんな不思議なナニカ──あやかしが見えることによって、仲違いをしてしまった友達との仲直りに奮闘したり。 一人の女の子が、イケメン双子や周りの友達と頑張るおはなしです。 *2024.8/30、完結しました!

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

処理中です...