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10,魔女と伯爵の謎
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夕方になった。
結局、牙狼と心愛はストーカー夫妻とは顔を合わせず夕食を済ませた後にすぐ部屋へと向かった。
部屋へ戻ると、グラッドとゼオンが待っていたぞと言わんばかりに待ち構えていた。
「いたのか・・・・・心愛、そろそろ」
「うん。あの二人についてだよね」
事故物件だと明かされショックが大きい牙狼と心愛。
それならば一番調べなきゃいけないのは魔女と伯爵についてだ。
「なぁ、グラッド。頼みたいことがあるんだ」
「ゼオンも。信じてくれるかどうかはわからないけれど」
心配そうにもじもじ震えている心愛、考え事をしていて難しい表情の牙狼。
そんな二人を見てグラッドとゼオンは言った。
『信じるさ。どんな事でも』
『ココアとガロウがいつまでも悲しい顔でいるのは耐えられない。オレにできることがあれば言え』
「あ、ありがとう」
「うん。正直に話すね・・・・・」
月神双子は怪物の男たちに今まで何があったのかを詳しく話した。
その瞬間、グラッドとゼオンが黙り込んだ。
「というわけなんだ。あ?どうしたんだよ」
「に、兄さん。なんだか様子がおかしいよ?」
牙狼と心愛が焦りだすと、二人は急に抱き着いてきた。
何か地雷を踏んでしまったのかとパニックになる月神双子。
「おい・・・・・・グラッド、どうしたんだよ?」
「ひっ・・・・・ゼオン、何するの?」
『メアリーとブラン?ああ、あの人間たちのことか。彼らは近いうちに君たちを襲うぞ』
『ニンゲンじゃないだろう。アイツらは本物だ。というか・・・・・』
いつの間にかグラッドとゼオンは本来の姿であろう、怪物に変化していた。
それを見た牙狼と心愛は、悲鳴をあげる。
『牙狼君、心愛ちゃん。俺達は君らの味方だ。安心しろ』
『ああそうだ。目覚めさせたのがメアリーとブランなら話は早い。お客さん呼びもあえてだ』
(どういう事だ?アイツらが人間じゃないだと?)
(も、もしかして・・・・・)
心愛は顔を青ざめながら思い出した。
それも学校で聞いたウワサ話程度だったが。
「兄さん。あのね、わたしこんな話を聞いてしまったのだけれど・・・・・」
「き、聞かせてくれよ。どんな些細な事でも」
心愛はふかーく深呼吸して心を落ち着かせた。
それに反応したグラッドとゼオンも心愛の話に興味を持った。
「うん。あれは放課後の教室で、聞いた話なんだけど・・・・・」
【事故物件とストーカー夫妻の真実】
「ねぇねぇ聞いた?月神さんたちの新しい家のウワサ」
「聞いたよ。マジで怖かったよね」
わたしが日直日誌を書いている時に、クラスメートの立花さんたちの声が聞こえたの。
本当は聞きたくなかったんだけれど・・・・・・でも内容が怖かったんだ。
七木さんが話したの。
「確かあそこに住んでる外国人の二人ってさ。殺人鬼と科学者らしいよ」
「え、それって肝試しに行ったときに由香から聞いたよ!夜な夜な子どもを探して見つかったら永遠に帰れることはないっていう。あれマジだったの?」
立花さんが大げさに語りだした。
「マジらしいよ。なんでも無事に帰れることはできたんだけれどね。でもこれで終わりじゃないの」
前川さんが続けて話に入り込んだけれど・・・・・。
「そうそう。あそこの家って幽霊屋敷でしょ?幽霊が出るんじゃなくて怪物が出てくるんだって。科学者が作った失敗作の大男と、血まみれの男。あれは聞いたとき鳥肌たったね」
「事故物件っていわれるのも納得~。月神さんたちかわいそー」
わざと聞こえているようにイジワルしてた。
クスクスと立花さんが笑いだすと、わたしはすぐに職員室に逃げた。
だから学校なんて行きたくなかったの。
★
「心愛・・・・・・そんなことが」
「だから言いたくなかったの。わたし、ここにね。はじめて入ったときに、メアリーさんとブランさんが笑っているようには見えなかった。悲しそうな目をしてたの」
牙狼は今の話を聞いてもう一度、グラッドとゼオンを見つめる。
この家には、幽霊じゃなくて怪物が出る。
血まみれの男と失敗作の大男。
「本当なのか?」
『血まみれか、随分と言われようだな。あながち間違ってはいないが』
『失敗作の大男か。たしかにオレはそれで生み出されたようなものだからな』
「そんな・・・・・」
もしかしたら一番危険なのは、グラッドとゼオンではなく。
ストーカー夫妻かもしれない。
『それに俺は、ブランによって寝床をここに持ってきたんだ。子どもたちに血を吸わせるように子孫を残すために、な』
『メアリーは、白い服を着ながら毎日考え事をしていたぞ。もっといい実験体ができるように、な』
心愛が悲鳴をあげて腰をぬかした。
涙を流しながら牙狼に抱きつく。
「兄さん、どうしよう。このままじゃ、わたしたち何もかも・・・・・おしまいよ!」
「あきらめんな!心愛。確かに俺も二人の様子がおかしいのは気にしてたからな。よし!」
牙狼の瞳にはメラメラと燃えている、怒りだ。
心愛だってこの状況をなんとかしたい。
「俺達は双子だろ?ならそれらしいやり方で、あいつらの化けの皮をはがいてやろうぜ」
「でもどうやって?」
しゅんとした心愛の肩に、ゼオンが優しく手を置いた。
『安心しろ、オレがいる。ココアは大事な家族だから』
牙狼の背後には、グラッドが優しく抱きしめた。
『俺も守ってやろう。大好きな友だからな』
グラッドとゼオンは月神双子を襲うどころか、守ろうとしてくれる。
まだ不安だけど。
「あっ! 俺にいい考えがあるぜ」
「兄さん?」
牙狼は三人に耳元でひそひそと語りかけた。
これがうまくいくかどうかはわからないが。
「ほ、ほんとに?」
『いいだろう!面白い。牙狼君は勇気があるな』
『ココア。やられっぱなしもイヤだろう?』
たしかに、火事とはいえ不審火で親を失った哀しみは戻らない。
だけど今、この家で危険がせまろうとしているのは間違いない。
一かバチかかけるしかない。
「・・・・・・わかった、その作戦。乗るよ」
心愛は覚悟を決め、涙をぬぐう。
そして月神双子は勇気を出してこう言った。
もう二度と、不幸にはなりたくないと。
「ゼオン。わたしはあなたの家族になります。だから、わたしを実験体に変身させて」
「グラッド。俺はお前の家族になるぜ。だから、俺の血を吸っていいぞ」
グラッドとゼオンは満面の笑みで強くうなずいた。
牙狼がマントに包まれ、心愛が大きな手で抱きしめられ。
『ありがとう、牙狼』
グラッドは牙狼の首筋に優しくキスをした。
『ココアを、オレは信じる』
ゼオンは心愛の身体に優しく鎖でつないだ。
結局、牙狼と心愛はストーカー夫妻とは顔を合わせず夕食を済ませた後にすぐ部屋へと向かった。
部屋へ戻ると、グラッドとゼオンが待っていたぞと言わんばかりに待ち構えていた。
「いたのか・・・・・心愛、そろそろ」
「うん。あの二人についてだよね」
事故物件だと明かされショックが大きい牙狼と心愛。
それならば一番調べなきゃいけないのは魔女と伯爵についてだ。
「なぁ、グラッド。頼みたいことがあるんだ」
「ゼオンも。信じてくれるかどうかはわからないけれど」
心配そうにもじもじ震えている心愛、考え事をしていて難しい表情の牙狼。
そんな二人を見てグラッドとゼオンは言った。
『信じるさ。どんな事でも』
『ココアとガロウがいつまでも悲しい顔でいるのは耐えられない。オレにできることがあれば言え』
「あ、ありがとう」
「うん。正直に話すね・・・・・」
月神双子は怪物の男たちに今まで何があったのかを詳しく話した。
その瞬間、グラッドとゼオンが黙り込んだ。
「というわけなんだ。あ?どうしたんだよ」
「に、兄さん。なんだか様子がおかしいよ?」
牙狼と心愛が焦りだすと、二人は急に抱き着いてきた。
何か地雷を踏んでしまったのかとパニックになる月神双子。
「おい・・・・・・グラッド、どうしたんだよ?」
「ひっ・・・・・ゼオン、何するの?」
『メアリーとブラン?ああ、あの人間たちのことか。彼らは近いうちに君たちを襲うぞ』
『ニンゲンじゃないだろう。アイツらは本物だ。というか・・・・・』
いつの間にかグラッドとゼオンは本来の姿であろう、怪物に変化していた。
それを見た牙狼と心愛は、悲鳴をあげる。
『牙狼君、心愛ちゃん。俺達は君らの味方だ。安心しろ』
『ああそうだ。目覚めさせたのがメアリーとブランなら話は早い。お客さん呼びもあえてだ』
(どういう事だ?アイツらが人間じゃないだと?)
(も、もしかして・・・・・)
心愛は顔を青ざめながら思い出した。
それも学校で聞いたウワサ話程度だったが。
「兄さん。あのね、わたしこんな話を聞いてしまったのだけれど・・・・・」
「き、聞かせてくれよ。どんな些細な事でも」
心愛はふかーく深呼吸して心を落ち着かせた。
それに反応したグラッドとゼオンも心愛の話に興味を持った。
「うん。あれは放課後の教室で、聞いた話なんだけど・・・・・」
【事故物件とストーカー夫妻の真実】
「ねぇねぇ聞いた?月神さんたちの新しい家のウワサ」
「聞いたよ。マジで怖かったよね」
わたしが日直日誌を書いている時に、クラスメートの立花さんたちの声が聞こえたの。
本当は聞きたくなかったんだけれど・・・・・・でも内容が怖かったんだ。
七木さんが話したの。
「確かあそこに住んでる外国人の二人ってさ。殺人鬼と科学者らしいよ」
「え、それって肝試しに行ったときに由香から聞いたよ!夜な夜な子どもを探して見つかったら永遠に帰れることはないっていう。あれマジだったの?」
立花さんが大げさに語りだした。
「マジらしいよ。なんでも無事に帰れることはできたんだけれどね。でもこれで終わりじゃないの」
前川さんが続けて話に入り込んだけれど・・・・・。
「そうそう。あそこの家って幽霊屋敷でしょ?幽霊が出るんじゃなくて怪物が出てくるんだって。科学者が作った失敗作の大男と、血まみれの男。あれは聞いたとき鳥肌たったね」
「事故物件っていわれるのも納得~。月神さんたちかわいそー」
わざと聞こえているようにイジワルしてた。
クスクスと立花さんが笑いだすと、わたしはすぐに職員室に逃げた。
だから学校なんて行きたくなかったの。
★
「心愛・・・・・・そんなことが」
「だから言いたくなかったの。わたし、ここにね。はじめて入ったときに、メアリーさんとブランさんが笑っているようには見えなかった。悲しそうな目をしてたの」
牙狼は今の話を聞いてもう一度、グラッドとゼオンを見つめる。
この家には、幽霊じゃなくて怪物が出る。
血まみれの男と失敗作の大男。
「本当なのか?」
『血まみれか、随分と言われようだな。あながち間違ってはいないが』
『失敗作の大男か。たしかにオレはそれで生み出されたようなものだからな』
「そんな・・・・・」
もしかしたら一番危険なのは、グラッドとゼオンではなく。
ストーカー夫妻かもしれない。
『それに俺は、ブランによって寝床をここに持ってきたんだ。子どもたちに血を吸わせるように子孫を残すために、な』
『メアリーは、白い服を着ながら毎日考え事をしていたぞ。もっといい実験体ができるように、な』
心愛が悲鳴をあげて腰をぬかした。
涙を流しながら牙狼に抱きつく。
「兄さん、どうしよう。このままじゃ、わたしたち何もかも・・・・・おしまいよ!」
「あきらめんな!心愛。確かに俺も二人の様子がおかしいのは気にしてたからな。よし!」
牙狼の瞳にはメラメラと燃えている、怒りだ。
心愛だってこの状況をなんとかしたい。
「俺達は双子だろ?ならそれらしいやり方で、あいつらの化けの皮をはがいてやろうぜ」
「でもどうやって?」
しゅんとした心愛の肩に、ゼオンが優しく手を置いた。
『安心しろ、オレがいる。ココアは大事な家族だから』
牙狼の背後には、グラッドが優しく抱きしめた。
『俺も守ってやろう。大好きな友だからな』
グラッドとゼオンは月神双子を襲うどころか、守ろうとしてくれる。
まだ不安だけど。
「あっ! 俺にいい考えがあるぜ」
「兄さん?」
牙狼は三人に耳元でひそひそと語りかけた。
これがうまくいくかどうかはわからないが。
「ほ、ほんとに?」
『いいだろう!面白い。牙狼君は勇気があるな』
『ココア。やられっぱなしもイヤだろう?』
たしかに、火事とはいえ不審火で親を失った哀しみは戻らない。
だけど今、この家で危険がせまろうとしているのは間違いない。
一かバチかかけるしかない。
「・・・・・・わかった、その作戦。乗るよ」
心愛は覚悟を決め、涙をぬぐう。
そして月神双子は勇気を出してこう言った。
もう二度と、不幸にはなりたくないと。
「ゼオン。わたしはあなたの家族になります。だから、わたしを実験体に変身させて」
「グラッド。俺はお前の家族になるぜ。だから、俺の血を吸っていいぞ」
グラッドとゼオンは満面の笑みで強くうなずいた。
牙狼がマントに包まれ、心愛が大きな手で抱きしめられ。
『ありがとう、牙狼』
グラッドは牙狼の首筋に優しくキスをした。
『ココアを、オレは信じる』
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