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8,リカイシャ

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【心愛の場合】
 どのくらい眠ったのかな、わたしは。
夢からさめて何事もなかったがいい。
お母さん、お父さん助けて。
わたしを一人にしないで。
また置いていくの?
炎はふたりの道をさえぎった。

「ダメっ、行かないでえええええ!」

いつの間にか目を覚ますと、わたしは泣いていた。
あれ?夢だったの?

すると頭上から大きな手が現れる。
「ひっ」
その手はわたしの頭を優しく撫でていた。
「え?」
『大丈夫だ、オレがいる。何も心配しなくていい』
「あなた・・・・・さっきの」
フランケンの怪物の男、たしか名前は・・・・・。
『ゼオンだ、オレの名前。お前は?』
月神心愛つきがみ ここあです・・・・・」
『ココアか、いい名だ。かわいい』
見た目がこんなにコワいのに話してみると、そうでもない。
けど今わたしは何で高いところにいるの?
「ひゃああああ」
真下を見ると自分はゼオンのにいた。
巨人が小人を捕まえたみたいに。
わたしが、小人ってこと?いやいや、それはないわ。
「あの・・・・・放してください」
『それはできないな。今、ココアはケガをしている。だからオレが治した』
頭の上にクエスチョンマークがつく。
わたしどこか、ケガしたかな。
でも何か違和感を感じる。
「あ!」
右足に少し傷が見えていた。
転んだあとなのかも。
いつの間にか、不器用に包帯で包んである。
「どうしてそこまで・・・・・わたしあなたを怖がったのに」
『ココアはいい奴だ。
ゼオンの青い瞳は真剣だった。
とてもウソをついているようには思えない。
「あ、ありがとう」
『感謝された。オレ、嬉しい。感謝されたのはじめてだ。なぁ、オレのをきいてくれ』
「えと、話をきくから放してください。逃げないから」
ゼオンがうなずくと、ゆっくりとわたしを下す。
腰が抜けた気がして思わず、すわりこんでしまった。
(でも、お願いってなんだろう?)
ゼオンが近づき、手を差し伸べた。
『ココア。オレのになってくれ』
「え?家族?どういうこと」
『オレはずっと孤独だった。見捨てられた存在そのものだ。だがココアは違う』
友達ならわかるけど、家族ってもしかして。
わたしは少しゼオンの瞳をよく見つめる。
さびしそうな目、わたしと同じ。
とりあえず、話ぐらいは聞いてみようかな。
「まだよくわからないけれど、ゼオンは一人がイヤなのよね。それはわたしも同じ。でもわたしには兄さん。牙狼兄さんがいる。ここに引っ越してきて不安だけれど」
『なら、その兄を探そう。きっとオレの友と一緒だ』
わたしは強くうなずき、牙狼兄さんを探すことにした。
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