心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲

幽刻ネオン

文字の大きさ
上 下
18 / 19
第三章:因縁に憑かれた兄妹【因縁の恋想曲】インネン ノ セレナーデ

EP6:憑かれた兄妹の勝負事

しおりを挟む
 あれから西園寺兄妹の様子が気になったリリカは、書斎内をウロウロしていた。
それを面白がって見ていたリベリオンと、影から現れた亨が話す。
『どうした?娘が落ちつかないなんて珍しいな。もしかして、二人の事が心配か?』
『気持ちはすげぇ分かるけどよ。決断をしなきゃいけないのはあの兄妹だぜ?」
「わかってる。・・・・・ただ、少しだけ嫌な予感がするのよ。一週間の猶予はさすがにマズかったと心の中で反省しているわ」
自分がなんとかする、とは言ったものの本当は憑いている怪異がどれだけ強力か。
幻魔と妖魔、しかも一生戦い続ける相手。
これは西園寺兄妹の身体が限界を迎えるリスクである。
「スロベニアの伝承で尚且つ、を持つ。写真に写っていたのが人の姿。だけれど・・・・・・私ったらどうしてもっと早く気が付かなかったんだろう!」
リリカは一週間の猶予を与えると宣言したが、責任は重い。
依頼者任せでも、失敗は許せない。
ひとつ考えられるのは・・・・・。
(ふたりが性格的におとなしい子と気楽な子でも豹変したら手がつけられないわ。何か策は・・・・・)
その時、ドアがギィーッと音をたてながら開く。

嫌な予感がした。
振り返ると、そこにいたのは西園寺兄妹だった。
だが、どこか
妹の朝歌はおどおどしていておとなしい感じだったが、なぜか綺麗な笑みを浮かべている。
兄の凍夜はガラが悪く自由きままな感じだったが、目つきがさらに悪くなり悪い顔をしていた。
「・・・・・朝歌さんと凍夜さんね、なぜ?」
ふたりは約束を破っていた。
そう、朝歌は白いワンピース姿で凍夜は黒のパーカー姿。
リリカはある考えに息詰まる。
「まさか・・・・・・」

そして黙っていたふたりが話し出す。
あたし、なんだか我慢できなくなってしまって。その、イメチェンしてみました』
、オレ様は今とってもむしゃくしゃしてんだよ。てめぇに会いたくてな』
いつもの西園寺兄妹が、気持ち悪いくらいに別人になっていた。
悔しくなったリリカは舌打ちをすると、ふたりに向かって叫ぶ。
「朝歌さん、凍夜さん。いえ・・・・・クルースニクとクドラク!ふたりを無理矢理こんな目に合わせたのね!」
『あっ!わかりますかぁ?ふふっ、はただアナタと勝負がしたいだけなんですよぉ』
『本当に間抜けだったよ。所詮は人間。がトウヤの心の中で想っていた欲望が強くてなあ。てめぇと闘いたいんだよ』
西園寺兄妹は既に取り憑かれていて、既に本人としての自我を失っていた。
言葉遣いが、二重人格そのもので魔力に憑かれている。
クルースニクとクドラクは朝歌と凍夜を気に入っているらしい。
「油断した私は馬鹿だったわ。あなたたちはいつまでも争い続ける者。いい加減二人から離れなさい。さもないと地獄へと送り込んであげるわ」
ふたりはリリカを見下して馬鹿にしたような目で笑った。
『それはこちらのセリフですよぉ。あたしは。絶対に負けたくないから・・・・・!』
『たかが人間の女に何ができる?俺様は。そして二度と俺様に逆らえないようにするためにな・・・・・!』
クルースニクとクドラクは、リリカを煽っていた。
ここまで厄介な怪異だとは思わなかったけれど。
ただ一つだけ、許せない部分があった。

「そう・・・・・そこまで勝負したいのね。いいわ、それなら私にも考えがあるわ」
危険な賭けになりそうだが、ここまで来たからにはやるしかない。
すると、亨は瞳を輝かせリリカに近づく。
まるで自分も参加したいと願う少年のように。
「私と亨、クルースニクとクドラクで勝負しましょう。負けた人が勝った人の条件を必ず守ること。構わないわね?」
「ちなみにオレたちが勝ったらおとなしく、お前らはだ。恨みっこナシだぜ?」
クルースニクとクドラクが互いを見つめあい、高笑いをしながら納得した。
朝歌と凍夜を救うにはこれしかない。
『いいですねぇ♡2対2の勝負ですかあ。今回ばかりは協力してくださいね?クドラク?』
『いいだろう。そのバトル受けて立つぜ。クルースニクは気に食わねえが、黄昏と白夜を地獄に落とせるなら本望だ。俺様達が勝ったら、この二人の兄妹に。そして二度と本人に戻れないようにしてやる』
尋常じゃないオーラが二人を苦しめている。
朝歌と凍夜は今頃ふたりに弄ばれキツイ思いをしているだろう。
なんとしてでも、勝たなければいけない。
リリカと亨は、リベリオンに耳打ちをする。
(作戦なんだけれども、私的には勝てる自信があるものといえばこれなの)
(ふむ。歌、体力勝負、度胸試し、か。しかし相手はスロベニアの吸血鬼どもだ。審判は俺がしよう。二人を見届けなければいけないからな)
(マジかよ。この中だったら歌か度胸試しだな。相手は怪異に憑かれている。無理に引き剝がすと厄介だ。なんだよ?イカサマ、ズルはしないぜ)

三人はこの勝負事がとても厄介事になると確信してしまう。
黄昏リリカ、白夜亨の最大のピンチでもあった。
勝てないではすまない、なんとしてでも勝たなければいけない。
リベリオン・ファントムは吸血鬼の王らしく、ふたりに話しかけた。
『おや、君たちはクドラクとクルースニクだったな。魔界からの刺客か。まさかこの俺の名も忘れているわけではあるまいな?』
『アナタは・・・・・・確か倒すことすら難しいヴァンパイアでしたよねぇ?』
『これはこれは!?リベリオン・ファントム様ではありませんか!失礼、俺様としたことが貴方の名を忘れるなど、とんでもありませんぜ。ヴァンパイアたちの間でも有名だったような』
一瞬、ふたりの足が震えていることに気が付いたリリカと亨は見逃さなかった。
リベリオンは魔界を追放された身、次期魔王候補の一人だ。
その正体は、ヴォクシー。
伝説の吸血鬼で、リリカの母、黄昏有栖と結ばれた男。
現在は人間界で霧島と名乗り、心霊捜査官の刑事で偉い人。
本当の父親はヴォクシーだが、現在はリベリオンだ。
『その勝負事、俺が見てもいいだろうか?審判は必要だろう』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

夜葬の村

中岡 始
ホラー
山奥にひっそりと存在する「夜葬の村」。 この村では、死者を普通の墓に埋葬せず、「夜葬」と呼ばれる奇妙な儀式が行われているという。 新聞記者・相沢直人は、その噂の真相を確かめるため、村へ足を踏み入れる。そこでは、村人たちが外部の人間を極端に警戒し、夜ごとに不気味な儀式を執り行っていた。そして村の墓地には、墓石の代わりに木の板が立ち並び、そこには「夜葬された者たち」の名前が刻まれていた。 取材を進めるうちに、村に関わった者たちが次々と奇妙な現象に巻き込まれていく。 山道で道に迷った登山者が見つけたのは、土の中から覗く自分自身の手。 失踪した婚約者を探す女性が辿り着いたのは、彼の名が刻まれた木の墓標。 心霊YouTuberが撮影した白装束の少女は、カメラからも記憶からも完全に消え去る。 村の医者が往診に訪れると、死んだはずの男が「埋めるな」と呟く。 ──そしてある日、村は突如として消失する。 再び村を訪れた相沢直人が見たものは、もぬけの殻となった集落と、増え続けた木の板。 そこに刻まれた名前の最後にあったのは、「相沢直人」。 なぜ、自分の名前がここにあるのか? 夜葬された者たちは、どこへ消えたのか? 本当に滅びたのは、村なのか、それとも── この村では、「死んだ者」は終わらない。 そして、夜葬は今も続いている……。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本当にあった怖い話】

ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、 取材や実体験を元に構成されております。 【ご朗読について】 申請などは特に必要ありませんが、 引用元への記載をお願い致します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

究極?のデスゲーム

Algo_Lighter
ホラー
気がつくと、見知らぬ島に集められた参加者たち。 黒いフードを被った謎のゲームマスターが告げる—— 「これは究極のデスゲームだ」。 生き残るのはただ一人。他の者に待つのは"ゲームオーバー"のみ。 次々に始まる試練、迫りくる恐怖、そして消えていく敗者たち。 しかし、ゲームが進むにつれて、どこか違和感を覚え始める主人公・ハル。 このデスゲーム、本当に"命がけ"なのか……? 絶望と笑いが交錯する、予測不能のサバイバルゲームが今、幕を開ける!

処理中です...