心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲

幽刻ネオン

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第二章:愛が欲しい妖魔【哀愁の狂走曲】アイシュウ ノ カプリチオ

EP4:少女の正体

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 床がギシギシと耳障りな音を立てる。
どこもかしこも、窓はひび割れイスや机が散乱していた。
教室だったであろう部屋も独特な木材の強い匂いがする。
懐中電灯を持ちながら探索する二人。
人間であるリリカは霊感が強く、視えないモノまで視えてしまう。
吸血鬼の王であるキースは、歩いた瞬間から血の匂いが散乱し場を一気に不気味に変える。
「いないわね、そう簡単には現れないか」
『生きていようが、そうでなくても必ず彼女を見つけてみせる。さすがの私でも我慢ができないものだ』
「だからって私の血を頂いたって無駄よ。私には退が流れているんですもの。あなたにとっては毒にすぎないわ」
『それは、という言い訳かな?友は普通に頂いているのだろう。矛盾しているではないか』
言い訳タイムが続き、二人はお互いのプライドを捨てることができない。
すると、コツコツとローファーの音が聴こえた。
気配に気づくリリカとキースが背後を振り返る。

そこにいたのは、制服姿の少女だった。
どこか痩せていて顔が青白く凛とした瞳に、緑色の綺麗なロングヘアー。
彼女が笑っているようにはとてもみえなかった。
「もしかして、あなたが噂されている家出少女?はじめまして」
『お初にお目にかかる、ああなんて君はとても可愛らしいのだろうか』
二人が挨拶し、少女もお辞儀をして挨拶した。
「はじめまして。えっと・・・・・お名前は?」
「心霊捜査官の黄昏リリカよ。あなたを助けに来ました」
『キース・クラックだ。魔界から来た最恐吸血鬼ヴァンパイアロード。いごお見知りおきを』
少女は心霊捜査官と最恐吸血鬼というとんでもない人物に出会い思考が一旦停止した。
が、すぐに質問するわけでも驚くわけでもなく自己紹介した。

「なるほど。わたしはジュリアといいます。珠玉の(じゅ)と書いて理科の(理)と書いて亜人の(亜)と書いて珠理亜です。苗字は忘れました」
珠理亜と呼ばれた彼女は二人を見つめて笑った。
そして今からリリカが交渉をはじめようとしたとき。
キースが『私に任せてくれないか』とすごい鬼の形相でリリカを睨みつける。
リリカは「いいけれど、危ないことはしないでね」と頷いた。
こうして不思議な交渉が始まった。
キースから語りだす。
『ジュリア、君はなぜここにいる?まさかそこにいる娘と同じようにと言うことなのだろうか。それとも幽霊なのだろうか。どちらでも構わんが私はどうしても君を助けたい。どんな些細な事でも構わん。この吸血鬼の王である私に全て話してみるといい』
「えーっと、わたしは生きてます・・・・・もうそこまで噂になっていたんですね。実を言うとわたしは孤児院から抜け出してここを住処にしていました。もうあまり何も食べていません。なぜならわたしは捨てられたも同然の人間なので。はい、簡潔に言えば・・・・そうですね」
その瞬間、珠理亜の瞳から大粒の涙があふれ出てきた。
急に窓ガラスが割れて、散乱していたイスが飛んでくる。
「・・・・・・わたしは、使なんです」
リリカは悲鳴をあげ、珠理亜の姿を疑う。
その時、リリカの影から一人の青年が現れた。
警官帽にブレザー制服、銀髪にピアス付き、腕には包帯を巻いているのが特徴の男。
もう一人の心霊捜査官。
「白夜亨・・・・?なんのつもり?」
「心配になって来てみたらまさかの展開だ。オレたちは少し離れて二人を見守ろうぜ?」
助けに来たのは亨(リョウ)。
半人半魔の魔人で父親譲りの魔力を扱える能力者だ。
とりあえず、亨の言う通りにリリカは離れた。
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