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第二章:愛が欲しい妖魔【哀愁の狂走曲】アイシュウ ノ カプリチオ
EP1:もう一人の王
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この八月、リリカが様々な依頼を引き受けた後の話だ。
リリカが今日も書斎でファイルを整理していた時だった。
窓際からコンコン、と音が鳴っていた。
「何かしら?・・・・・・・あら」
窓にいたのは複数の蝙蝠たち。
こんな季節に何をしに来たのだろうと、普通なら彼らは暗い場所がお似合いなはず。
けれど、不気味に鳴く蝙蝠たちはリリカを見つめているようにもみえた。
声をかけようかと窓を開けようとしたその時。
『開けるな!娘よ!』
突然背後から大きな影が現れ、マントに包みこまれる。
振り返るとそこにいたのは、父のリベリオンだった。
なぜか目を血走らせており怒っている感じ。
驚いたリリカは文句を言おうとしたが逆らう事ができずぐっとこらえた。
「お父さん・・・・・・?あれはいったいなんなの?」
『あれはヴァンパイア達だな、客人かどうか確かめてくる。絶対に窓を開けようとするなよ?色々と面倒だからな』
リベリオンはそう言うと窓に近づき、蝙蝠たちを見上げる。
キッ、と睨みつけたのか蝙蝠たちは慌てているような速さで窓から離れる。
しかし一匹だけは窓から離れようとはしなかった。
リベリオンは一匹を見逃し、窓を開けた。
「え?開けるなって言われているのに・・・・・まさか」
『ああ、こいつは客人のようだ。だが不思議だな、まさか人間ではなく俺のような者が来るとはな・・・・・』
「そうだったの、けれど・・・・・困ったわね。これじゃあ依頼人じゃなければ、ファイルなんて」
『少しは俺のような者にも耳を傾けてくれないか?もしや、怖くて怖気づいたのか?』
リリカにとっては依頼人=悩める人に光の道へ歩みだす者という解釈をしている。
しかし怪異相手に依頼なんて仕事にはならない・・・・だが今日のリベリオンは様子がおかしい。
これは、初めての試みかもしれない。
霧島刑事になんて言おう、あの人は恩人だが怪異だ。
リリカはリベリオンをじっと見つめる。
「まぁ、お話なら聞いてもいいかもしれないわね。悪しき怪異でもなさそうだし。油断はできないけれど」
『よく言ったぞ、さすがは心霊捜査官だ。リリカがこのくらいで放棄しようとしたらどうしようかと考えていたが、迷いはあれど覚悟は決まったようだな』
リベリオンは高笑いでご機嫌だ。
リリカは大きな溜息をつき気づいたのは自分だと罰が悪い顔。
蝙蝠がリリカの前でひらひらと飛ぶ、しかしそれがどんどん大きくなり。
赤い霧に包まれる。
中略
見えない、どこだろうか。
霧が消え去り、振り向くとそこにいたのは。
人ならざる者、人間離れした顔立ちの男。
見た目から少しずつ恐怖心を感じ、オーラが半端ない。
生気がないような、屍のような感じ。
自分は今から彼と対話するのかと感じると緊張してきた。
今まで依頼者が人間だったから。
怪異相手なんて、ハジメテ。
「こんにちは、あなたみたいなお客様は初めてですわ。その・・・・・」
震えが止まらない、緊張で冷や汗が止まらない。
いつもなら普通に冷静に話せるのに、怪異相手だとなぜか緊張する。
(どうしたの?私、しっかりして。相手は怪異だけれど今は話を聞くだけじゃない。なんでそんな簡単な事ができないの?)
笑顔で接しているのに何もかもうまくいかない。
もし相手が幽霊ならまだマシかなと思っていた時期もあった。
女子高生、大学生の好青年、教師、様々な相手と会話してきたが。
「ごめんなさい、私少し緊張しているんですの、だからお手柔らかに・・・・・」
おかしい、こんなにも言葉が出なくなることなんてあるのか。
無視すれば良かったと後悔したその時。
『震えているな、私の見た目と禍々しいオーラに怖気づいている人間の娘。これがリベリオンの言っていた候補なのだろう』
地の底から響く低い声、話した瞬間に恐怖心が多くなる。
この感じ、リベリオンと似ている。
『そうだ、彼女は俺の娘であり未来の妻だ。余計な事をしたらただでは済まんぞ』
「えっと・・・・・とりあえずお座りください。立ち話もなんですから今からお茶を・・・・・」
リリカが後ずさりをしようとした途端。
二人は、笑顔でリリカの頭を撫でた。
「なっ・・・・・・!?失礼、ごめんあそばせ!」
思わず二人に蹴りを入れ、リリカはその場を去った。
【~数分後~】
「あの、お話とはいったい?なんでしょうか」
リリカが質問すると、彼は優雅にイスに座りながら赤ワインを飲む。
そして語った。
『先程は窓から失礼した。ミス・リリカ。私はリベリオンと共に王の座を頂こうとしていた者だ。名をキース・クラックと言う。まず結論から言わせていただくが。私は、リベリオン同様魔界を追放された身だ。なにも、別に悪しき事はしていない。彼とは知り合いで友でもある』
同時に左側に座っていたリベリオンが説明する。
『以前にも話をしたと思うが、リリカ。俺達は玉座争いで負けた者は魔界から追放すると話した。しかし、キースは優秀な王になるべき逸材だ。そんな彼がなぜここにいるのか。理由は俺と同じだ』
リリカは思い出した、高校生の時にクラスメートの少女に取り憑いたリベリオン。
それは魔力を抑える為に温存していたが、リリカは許せず彼女を助け彼を説得した。
嫌な予感を感じながらリリカは話す。
「それで、キースさんの悩みは?」
『霊力が強い人間に取り憑く、つまり自由が欲しいのだ』
リリカが今日も書斎でファイルを整理していた時だった。
窓際からコンコン、と音が鳴っていた。
「何かしら?・・・・・・・あら」
窓にいたのは複数の蝙蝠たち。
こんな季節に何をしに来たのだろうと、普通なら彼らは暗い場所がお似合いなはず。
けれど、不気味に鳴く蝙蝠たちはリリカを見つめているようにもみえた。
声をかけようかと窓を開けようとしたその時。
『開けるな!娘よ!』
突然背後から大きな影が現れ、マントに包みこまれる。
振り返るとそこにいたのは、父のリベリオンだった。
なぜか目を血走らせており怒っている感じ。
驚いたリリカは文句を言おうとしたが逆らう事ができずぐっとこらえた。
「お父さん・・・・・・?あれはいったいなんなの?」
『あれはヴァンパイア達だな、客人かどうか確かめてくる。絶対に窓を開けようとするなよ?色々と面倒だからな』
リベリオンはそう言うと窓に近づき、蝙蝠たちを見上げる。
キッ、と睨みつけたのか蝙蝠たちは慌てているような速さで窓から離れる。
しかし一匹だけは窓から離れようとはしなかった。
リベリオンは一匹を見逃し、窓を開けた。
「え?開けるなって言われているのに・・・・・まさか」
『ああ、こいつは客人のようだ。だが不思議だな、まさか人間ではなく俺のような者が来るとはな・・・・・』
「そうだったの、けれど・・・・・困ったわね。これじゃあ依頼人じゃなければ、ファイルなんて」
『少しは俺のような者にも耳を傾けてくれないか?もしや、怖くて怖気づいたのか?』
リリカにとっては依頼人=悩める人に光の道へ歩みだす者という解釈をしている。
しかし怪異相手に依頼なんて仕事にはならない・・・・だが今日のリベリオンは様子がおかしい。
これは、初めての試みかもしれない。
霧島刑事になんて言おう、あの人は恩人だが怪異だ。
リリカはリベリオンをじっと見つめる。
「まぁ、お話なら聞いてもいいかもしれないわね。悪しき怪異でもなさそうだし。油断はできないけれど」
『よく言ったぞ、さすがは心霊捜査官だ。リリカがこのくらいで放棄しようとしたらどうしようかと考えていたが、迷いはあれど覚悟は決まったようだな』
リベリオンは高笑いでご機嫌だ。
リリカは大きな溜息をつき気づいたのは自分だと罰が悪い顔。
蝙蝠がリリカの前でひらひらと飛ぶ、しかしそれがどんどん大きくなり。
赤い霧に包まれる。
中略
見えない、どこだろうか。
霧が消え去り、振り向くとそこにいたのは。
人ならざる者、人間離れした顔立ちの男。
見た目から少しずつ恐怖心を感じ、オーラが半端ない。
生気がないような、屍のような感じ。
自分は今から彼と対話するのかと感じると緊張してきた。
今まで依頼者が人間だったから。
怪異相手なんて、ハジメテ。
「こんにちは、あなたみたいなお客様は初めてですわ。その・・・・・」
震えが止まらない、緊張で冷や汗が止まらない。
いつもなら普通に冷静に話せるのに、怪異相手だとなぜか緊張する。
(どうしたの?私、しっかりして。相手は怪異だけれど今は話を聞くだけじゃない。なんでそんな簡単な事ができないの?)
笑顔で接しているのに何もかもうまくいかない。
もし相手が幽霊ならまだマシかなと思っていた時期もあった。
女子高生、大学生の好青年、教師、様々な相手と会話してきたが。
「ごめんなさい、私少し緊張しているんですの、だからお手柔らかに・・・・・」
おかしい、こんなにも言葉が出なくなることなんてあるのか。
無視すれば良かったと後悔したその時。
『震えているな、私の見た目と禍々しいオーラに怖気づいている人間の娘。これがリベリオンの言っていた候補なのだろう』
地の底から響く低い声、話した瞬間に恐怖心が多くなる。
この感じ、リベリオンと似ている。
『そうだ、彼女は俺の娘であり未来の妻だ。余計な事をしたらただでは済まんぞ』
「えっと・・・・・とりあえずお座りください。立ち話もなんですから今からお茶を・・・・・」
リリカが後ずさりをしようとした途端。
二人は、笑顔でリリカの頭を撫でた。
「なっ・・・・・・!?失礼、ごめんあそばせ!」
思わず二人に蹴りを入れ、リリカはその場を去った。
【~数分後~】
「あの、お話とはいったい?なんでしょうか」
リリカが質問すると、彼は優雅にイスに座りながら赤ワインを飲む。
そして語った。
『先程は窓から失礼した。ミス・リリカ。私はリベリオンと共に王の座を頂こうとしていた者だ。名をキース・クラックと言う。まず結論から言わせていただくが。私は、リベリオン同様魔界を追放された身だ。なにも、別に悪しき事はしていない。彼とは知り合いで友でもある』
同時に左側に座っていたリベリオンが説明する。
『以前にも話をしたと思うが、リリカ。俺達は玉座争いで負けた者は魔界から追放すると話した。しかし、キースは優秀な王になるべき逸材だ。そんな彼がなぜここにいるのか。理由は俺と同じだ』
リリカは思い出した、高校生の時にクラスメートの少女に取り憑いたリベリオン。
それは魔力を抑える為に温存していたが、リリカは許せず彼女を助け彼を説得した。
嫌な予感を感じながらリリカは話す。
「それで、キースさんの悩みは?」
『霊力が強い人間に取り憑く、つまり自由が欲しいのだ』
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