33 / 53
33
しおりを挟む
「リサ。ありがとう。凄く助かった」
「よかった。わたしに出来る事だってあるね」
「本当。わたしもそうだと思った」
リサの言葉にわたしも頷いて笑いあった。三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだ。リサのおかげで問題が片付きそうだ。わたしがホッとしているとリサが家の事を聞いてきた。何も教えてもらえない事が不安みたいだ。少しでも教えてほしいのだろう。
「パル。お母さんも何も言わないけど、大丈夫なの?本当は大変なんじゃないの?ウチって潰れちゃうの?」
「リサ」
リサの視線がさまよっている。不安が瞳に表れていて。知らない事は不安につながるから、教えない事が更に不安を誘っているように思えた。親心としては心配させたくないんだろうけど、勝手に話をしていいのか、クライアントの意向が気になる。リサに嘘はつきたくない、でも心配もさせたくない。わたしとしては複雑な立場だ。沈黙する事をしかできないわたしをリサが攻めてきた。
「パルも話してくれないの?どうして私だけだめなの?」
「リサ。ゴメンね。わたしが勝手に話すわけにはいかないの。おじさん達の判断が必要だから」
「どうしてよ。わたしばっかり」
リサが唇を噛みしめ床を見つめる。その瞳には涙が滲んでいるように見えた。慰めたいし、全てを話して安心させてあげたい気がする。それが出来たらリサはどれだけ安心だろうか。わたし自身も、罪悪感に気を病むこともないだろう。自分自身の罪悪感と闘いながら、息を吸い込み冷静になろうと努める。その上で私自身にできる最大限の約束をする。
「リサ、おじさんに相談するわ、リサに話していいか許可を取るから。その上でリサに話をするから。時間を頂戴。お願い」
「いいわよ。どうせお父さんは許可なんてくれないわ。どうせ何も教えてはくれないもの。それはパルも一緒でしょ?いつも同じことを言うじゃない。お父さんの許可がいるからって。お父さんは関係ないでしょ?友達でしょ?どうして話してくれないの?そんなに私だけのけ者にしたいの?そんなにわたしが信用できない?」
「違うわ。本当に勝手に話せないの。リサだけのけ者にしてるわけないよ。おじさんの許可がいるのは本当なの。約束を破るやけにはいかないの。それは信じて」
「いいわよ。どうせ答えは同じでしょ」
それだけ言うとリサは玄関の方へ消えていった。わたしはリサの信用を無くしてしまったみたいだ。
コンサルティングをしたくてこの話に飛びついてしまったけど、間違てしまったのかもしれない。私にはまだ早い事だったのかもしれない。まさか、こんなにリサとの考えがズレてしまうなんて思ってもいなかった。
自分で選んだことなのに悲しくなってくる。このままだとリサと仲良くする事は難しいかもしれない。
自分で決めたことなのにグズグズと悩んでしまう。依頼を受けることで友達とけんかになるなんて考えてもいなかった。知り合いからの依頼は受けない方が良いと、前の生活をしていた時に聞いた事があったけど、その時は意味が分からなかった。わたしがその立場に立った事がなかったから。でも、その立場になって始めてわかる。すべてを丸く収めることは難しい事なのだと思い知らされた。
「よかった。わたしに出来る事だってあるね」
「本当。わたしもそうだと思った」
リサの言葉にわたしも頷いて笑いあった。三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだ。リサのおかげで問題が片付きそうだ。わたしがホッとしているとリサが家の事を聞いてきた。何も教えてもらえない事が不安みたいだ。少しでも教えてほしいのだろう。
「パル。お母さんも何も言わないけど、大丈夫なの?本当は大変なんじゃないの?ウチって潰れちゃうの?」
「リサ」
リサの視線がさまよっている。不安が瞳に表れていて。知らない事は不安につながるから、教えない事が更に不安を誘っているように思えた。親心としては心配させたくないんだろうけど、勝手に話をしていいのか、クライアントの意向が気になる。リサに嘘はつきたくない、でも心配もさせたくない。わたしとしては複雑な立場だ。沈黙する事をしかできないわたしをリサが攻めてきた。
「パルも話してくれないの?どうして私だけだめなの?」
「リサ。ゴメンね。わたしが勝手に話すわけにはいかないの。おじさん達の判断が必要だから」
「どうしてよ。わたしばっかり」
リサが唇を噛みしめ床を見つめる。その瞳には涙が滲んでいるように見えた。慰めたいし、全てを話して安心させてあげたい気がする。それが出来たらリサはどれだけ安心だろうか。わたし自身も、罪悪感に気を病むこともないだろう。自分自身の罪悪感と闘いながら、息を吸い込み冷静になろうと努める。その上で私自身にできる最大限の約束をする。
「リサ、おじさんに相談するわ、リサに話していいか許可を取るから。その上でリサに話をするから。時間を頂戴。お願い」
「いいわよ。どうせお父さんは許可なんてくれないわ。どうせ何も教えてはくれないもの。それはパルも一緒でしょ?いつも同じことを言うじゃない。お父さんの許可がいるからって。お父さんは関係ないでしょ?友達でしょ?どうして話してくれないの?そんなに私だけのけ者にしたいの?そんなにわたしが信用できない?」
「違うわ。本当に勝手に話せないの。リサだけのけ者にしてるわけないよ。おじさんの許可がいるのは本当なの。約束を破るやけにはいかないの。それは信じて」
「いいわよ。どうせ答えは同じでしょ」
それだけ言うとリサは玄関の方へ消えていった。わたしはリサの信用を無くしてしまったみたいだ。
コンサルティングをしたくてこの話に飛びついてしまったけど、間違てしまったのかもしれない。私にはまだ早い事だったのかもしれない。まさか、こんなにリサとの考えがズレてしまうなんて思ってもいなかった。
自分で選んだことなのに悲しくなってくる。このままだとリサと仲良くする事は難しいかもしれない。
自分で決めたことなのにグズグズと悩んでしまう。依頼を受けることで友達とけんかになるなんて考えてもいなかった。知り合いからの依頼は受けない方が良いと、前の生活をしていた時に聞いた事があったけど、その時は意味が分からなかった。わたしがその立場に立った事がなかったから。でも、その立場になって始めてわかる。すべてを丸く収めることは難しい事なのだと思い知らされた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる