紡ぐ者

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【第14章 《王》】

第3節 陽焔は滾る

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「うおっ?!」
「くうぅ……」
2人は黒い炎を避けながら少しずつニグレードに近づく。近づくにつれて、黒い炎は勢いを増す。
「くそ……どうすりゃいいんだ。というか、ロビンはまだ起きないのか?!」
ロビンは青の背中でぐったりしている。意識はあるようだが、動く様子は全くない。
「…き…!」
「………。」
「お……!」
「……ん…」
「起ーきーてー!」
ロビンの目の前にはアリスがいた。起きろと言わんばかりにロビンを揺らす。
「ん?アリ……ス?」
ロビンはアリスに手を伸ばすが、手が触れる直前にアリスの姿は消えてしまう。目の前にはニグレードに必死に抵抗する2人の姿が見えた。
「………。……げっ?!今もしかしてやばい状況?!」
「やっと起きたか……早く行け。」
青は尻尾を使ってロビンを背中から落とす。
「へっ……やっと起きたか。待ちくたびれたぜ!」
玖羽は刀を抜いてこちらに駆け寄るロビンに気づく。ロビンは全身に炎を纏っている。ニグレードもロビンに気づく。
(あれは……太陽の炎……。)
「どけ!」
ニグレードは2人を振り払うと、ロビンに急接近する。
「へぇ、お前のほうから来てくれるんだ。移動する手間が省けたぜ。」
「貴様こそ、ようやくその力を見せたか。」
ニグレードはロビンに黒い炎を伸ばす。ロビンは刀で黒い炎を断ち切る。
「っ?!」
そのままニグレードに刀を振り下ろす。
「燃えろ!」
ロビンは刀をニグレードに突き刺すと、刀にありったけの炎を込める。
「ぐっ……あぁぁぁ!」
ニグレードは苦しそうな叫び声をあげる。
「はぁ……!ふぅ……一瞬驚いたが…………やはり、脆いな。」
「脆い?」
ロビンはニグレードの言葉に疑問を持つ。
「貴様のその力は明らかに弱い。貴様が未熟なだけか、それ以外か。我が知っている限りでは貴様の炎はかなり弱い。」
「お前、何年生きてんだ?いや、何年前に封印されたんだ?」
ロビンは純粋な質問を持ちかける。
「昔過ぎて憶えてなどいない。貴様に我からも聞こう。話している暇はあるのか?」
ロビンは背後から殺気を感じる。背後から黒い炎が迫る。
「っと!危ねえな。」
ロビンはニグレードを軽く飛び越える。
「貴様、憑依もしているのか。」
「正解。」
ロビンはニグレードに近接して攻撃を仕掛ける。
「単調な攻撃ばかり……見飽きたぞ!」
ニグレードハロビンを振り払うと、黒い炎の竜巻を放つ。竜巻は瓦礫を巻き込みながら迫ってくる。
「美桜、任せるぜ。」
「はいはい、せいっ!」
美桜は薙刀を大きく振る。切先から旋風が放たれ、竜巻をニグレードに押し返す。
「おのれ……」
「青の力を使わなくても、私は強いよ。」
「お前は青だけの奴だと思ってたぜ。見直した。」
「ちょっと!私をそんな評価で見てたの?!」
2人は少し揉める。
「何してんだ……」
ロビンは2人を横目にして、ニグレードに応戦する。ロビンとニグレードの攻防は、時間が経つにつれて激しさを増す。一瞬の隙が命取りとなるほどだ。
「お前、疲れてきたんじゃないか?」
「それは貴様のほうだろう。実体を持たない我は疲れとは無縁だ。」
「へ~、そうですかそうですか。」
ロビンはニグレードから距離をとる。
「なら、3人同時に相手したらどうだ?」
「別に構わないが。そのほうが早く終わる。」
ニグレードは3人を挑発する。
「なんか作戦があるのか?」
玖羽がロビンの耳元で囁く。
「あいつと戦ってて思ったんだが……以外と隙が多いんだよ。3人で戦ったらダメージを簡単に蓄積させれるんじゃないか?」
「……やってみる価値はあるな。」
3人は互いの顔を見て頷く。
「ふん。3人がかりでくるとは……何人こようが関係ない。まとめて焼き尽くしてくれる。」
「くるぞ!」
ニグレードは辺りに黒い炎を縦横無尽にまき散らす。
「無茶苦茶な野郎だなぁ!」
玖羽はニグレードの側面に短剣で攻撃を仕掛ける。
「させるか!」
ニグレードはすぐに黒い炎で玖羽を追い払う。
「こっちもいるわ…よ?!」
美桜が背後から奇襲を仕掛けるが、床から吹き出る黒い炎に行く手を阻まれる。
「本当にしつこい奴等だ。」
ニグレードは辺りを見渡してあることに気づく。
(あいつはどこに行った?)
ロビンの姿がない。完全に見失っている。
「貴様、あいつはどこだ?」
「さあね?」
美桜は口角をあげながらしらを切る。
「俺は上だあ!」
ニグレードの頭上からロビンが刀を振り下ろす。刀が触れた瞬間、青い光が再び見える。しかし、先程よりも長く残った。
「???」
ロビンは自分でも何か分からず困惑する。
(まさかこいつ……)
ニグレードはロビンを振り払うと、ロビンの首元を黒い炎で囲う。
「貴様、あれを使えるのか?」
「あれってなんだ?」
「その様子を見るに、とぼけているわけではないようだな。」
ニグレードは黒い炎を首元から離すと、背後から飛んできた短剣を炎で弾く。
「敵に背中を見せるって……どういう神経してんだ?」
「さぁな?強者の余裕というやつだろう。」
ニグレードは体を分裂して、一箇所に集まる。
「だいぶ力が馴染んできたな。そろそろ潮時か……」
「何を言って……」。
突然、玖羽の体が遺跡の壁へと吹き飛ばされる。
「……って?!」
「玖羽!お前、何をした?!」
「何って、ただあいつを壁にふっ飛ばしただけだが?」
「ふっ飛ばしたって……一体どうやって?」
ロビンは冷静さを維持するが、言葉から怒りが溢れている。
「簡単だ。今この遺跡内は我の魔力で充満している。ふむ……その顔を見るにいつやったか?、と聞いたそうだな。答えは最初に我が張った結界だ。」
「結界が?」
美桜は顎に手を当てて考え込む。
(結界は防御や妨害に使うもの。魔力を充満させることなんて本来はできないはず……)
「そこの女は結界について詳しいようだな。結界を使って魔力を充満させた原理を教えてやろう。今は気分がいい。」
ニグレードは上から2人を見下ろしながら、意気揚々と話をする。
「先程までの戦闘、我は貴様にひたすら黒い炎を浴びせ続けた。この黒い炎は我が生み出しているのではない。大気中の魔力を変換しているのだ。そこの太陽の人が使う炎も同じ原理だ。」
「……何が言いたい?」
「あ……使い続ければいずれ大気中の魔力が尽きる。そしてこの結界は……!」
「その通りだ。人間にしては察しが良いな。この結界は外部との接触を断つと同時に、内側の大気中の魔力を無限に増幅させる。そしてこの魔力は我の意思で思うがままに操ることができる。そして貴様らは呼吸をするたびに魔力を取り込む。これが意味することがわかるな?」
ロビンはニグレードに刀を向ける。
「つまり……いつでも俺たちを殺せるってことだな。さっきも玖羽のことも、体内にある魔力で体を押したんだろ?」
「半分正解、とだけ言っておこう。」
ニグレードは目を細める。不敵な笑みを浮かべているようだ。
「我はあいつの体を押したのではない。爆破したんだ。内側からな。」
「ッッ?!!ちっ……この……悪魔が!」
ロビンはニグレードの頭上から刀を力いっぱい振り下ろす。刀がニグレードに触れた瞬間、ロビンの刀が青い光に包まれる。
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