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【第10章 砂漠の都市】
第1節 砂塵の彼方 〜幻影〜
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ブロロロロロ…
5人を乗せた車は砂漠の中を走る。辺りに砂煙が巻き起こってきた。
「まずいな、砂嵐が起きそうだ。車を止めてくれ。」
車が止まるとガレジストは降りて外の様子を見る。
「しばらく足止めだ。」
「なあ。あそこに何か見えないか?」
ロビンは外を指差す。その先には集落らしきものが見える。
「行ってみよう。俺に着いてこい。」
5人は集落を目指して歩き出す。集落に着く頃には、辺りの砂煙が激しくなっていた。
「ここは廃村か?」
建物は廃れている。しかし所々から物音がする。
「見て!」
ガーネットが1つの建物を指差す。窓から光がかすかに漏れている。
コンコンッ……
ガレジストはドアをノックする。
ガチャ…
「おや、どういった御用でしょう。」
「砂嵐が起きそうで避難してきた。」
「おおそうでしたか。どうぞ、お入りください。」
老人は快く5人を迎える。
「この砂嵐の中、大変だったでしょう。水をお持ちします。」
「………。」
ロビンは老人を見ていた。
「なんか怪しくないか?」
「えぇ。水は砂漠では貴重なはずよ。」
「まあくれるって言うんだ。遠慮せず貰おうぜ。」
「あんたは遠慮ということを覚えたほうがいいわよ。」
玖羽は足を組んで座っている。老人はコップに水を淹れて戻ってきた。
「こちら、お水です。」
「あぁ、ありがとう。」
5人は水を飲む。
(ん?なんか……変だ。)
ロビンは目眩がしてきた。ロビンは椅子にもたれ掛かって意識を失う。
「起きなさい。」
「う……んあ?」
「まだ寝ぼけてるの?」
美桜が冷たい視線を送る。
「あれ?ここは?」
2人は薄暗い空間にいた。2人は鎖で壁に繋がっている。
「罠よ。してやられたわ。」
「やっぱり怪しいと思ったんだよ。」
「いや、それは違うわ。外を見て。」
ロビンは格子の隙間から外を見る。
「あれ?さっきまで村にいたはずたよな?」
「そうよ。」
「なんで街中にいるんだ?それにこの街って…」
「そう、ラスベガスよ。」
2人はラスベガスのとある建物に監禁されている。
「何があったんだ?」
「あの水に睡眠薬が入っていたわ。眠らされてここに運ばれたみたい。」
「青を使ってなんとかできないか?」
「青を使えるわけないでしょ!こんなところで呼んだら大変なことになるわよ。」
「呼んだか?」
「今は出てくるな!」
美桜は青を叱りつける。青は大人しく引っ込む。
「ねえロビン。少しお願いがあるんだけど。」
「なんだ?変なこと言うなよ。」
「背中かいて。さっきからかゆくて仕方ないんだけど。」
ロビンは美桜の背中をかく。
「もうちょっと左。行き過ぎ。あーそこそこ。」
(何してんだろ俺……)
ロビンは自分にガッカリする。
「この鎖どうする?」
「誰かに切ってもらうしかないわ。」
「武器は?」
「あそこ。」
美桜は顎で武器の場所を教える。ちょうど目の前に見える。しかし、鎖で繋がれているので届かない。
「青に取って来てもらうのはどうだ?」
「でも切れないでしょ。」
「九尾!起きろ!」
ロビンは九尾を呼ぶが声が届かない。
「どうすんだこれ?」
「最悪、誰かが来るのを待つしかないわ。」
ロビンは腰を下ろす。
(何か方法はないのか?いや待てよ??青使えば問題なくね?)
「青で妖刀を取ってきてくれないか?」
「なんで?」
「いいから早く。」
美桜は青に命令する。
「ほらよ。取ってきたぞ。」
「起きろ九尾。」
「なんだ?起きてるぞ。」
ロビンは九尾を憑依する。
「よし。これでいける。」
ロビンは鎖を引き千切る。
ガキインッ!
刀で美桜の鎖も断ち切る。
「さて……行くか。」
2人はそれぞれの武器を持って建物から出る。
「これが………ラスベガス!」
ロビンは両手を広げる。
「仲間を探しましょ。私たちと同じならこの街のどこかにいるはずよ。」
2人は仲間を探す。
「!?」
ドンッ!
ロビンは背後から襲いかかるコンパルゴに気づく。
「お前……どこから?!」
ロビンは刀で斬りかかる。コンパルゴはボヤけて消える。
「消えた?!」
ロビンは辺りを警戒する。
「美桜?」
美桜の姿がない。先程まで後ろにいたはずだ。それどころか街がやけに静かになっている。
「くそっ、どうなってんだ?」
ロビンは困惑する。
「!美桜!」
遠くに美桜を見つける。美桜はどこかへと歩いていってしまう。
「待て!」
ロビンは美桜を追いかける。
「どこに行った?」
美桜は建物の上からこちらを見下ろしていた。後ろを向いてすぐにその場から離れていってしまう。
「おい少し止まれ!」
ロビンは建物の上に飛び上がるが美桜の姿はなかった。後ろを向くと街の真ん中に美桜の姿が見える。
(いつの間に?!)
ロビンは街の真ん中に向かって走る。
「あれ?いない?!」
美桜の姿はそこにはなかった。
(なんだこの感じ……翻弄されている?)
ロビンは後ろを振り返り、その場から離れようとする。
「なんだ?!」
ロビンは地面から出てきた何かに足を掴まれる。
「くそっ!離せ!」
ロビンは何かの手を切り落とす。何かは地面の中に潜っていった。
(今のはなんだ?この世の者とは思えない姿だったぞ。)
何かは全身が紫色でヘドロに覆われたような不気味な姿をしていた。
「この街から離れたほうが良さそうだな。」
ロビンは街の外を目指す。
街の外まではあと少しだ。ロビンは何も考えず、ただひたすら走り続けた。
グニャアァ……
街の外に足を踏み出した途端、周りの景色が渦を巻くように歪み始めた。
「うわぁぁぁ!」
ロビンは歪みに飲み込まれる。
「なんだここ?」
玖羽は不思議な空間に閉じ込められていた。そこは遺跡のような場所だ。
「ふむ……人が来た痕跡はないな。」
玖羽は遺跡の扉に触れる。扉に魔力が流れているのを感じる。
「ちょっと刺激すれば……」
ドガアァァン!
玖羽は扉を爆破して中に入る。中は機械仕掛けのような構造になっている。歯車の1つを動かせそうだ。
ガラガラ…
「動かしたはいいが……何か変わったか?」
遺跡の中に変化は見られない。玖羽は遺跡の扉を開けて外に出る。
「ッ?!なんだこりゃ?!」
外には一面の草原が広がっていた。
「さっきまでとは全然違うぞ。何が起きてるんだ?」
玖羽はハッとする。
「まさか……あの歯車が原因か!」
玖羽は遺跡に戻り、歯車を動かす。
ガラガラ…
再び扉を開けると、体中に寒波が襲いかかる。
「だぁーもぉー!」
玖羽は急いで扉を閉める。
(何がどうなってんだ?)
玖羽は焦りすぎて呼吸が荒くなる。
「意味が分かんねえ。」
(そういえば、なんで扉が直ってるんだ?)
玖羽は遺跡に入るとにきに、確かに扉を爆破した。その時扉は木っ端微塵になったはずだ。
「もしや……」
玖羽は扉を爆破する。扉の先には見覚えのある景色が見えた。
「ふう……やっと出られた。」
玖羽はすぐさま遺跡から離れる。
(こんなところにいられるか!)
ガラッ!
「なっ?!」
地面が崩れ、玖羽は谷底に真っ逆さまに落ちてしまう。
「ハア……ハア……私……何してるの?」
美桜はひたすら螺旋階段を登っている。どこまで登っても先が見えない。
「この高さから落ちたら一発でアウトね。」
美桜は少し休憩することにする。
(服がひっついて気持ち悪い。)
美桜は汗を拭う。少ししたらまた登り始める。
「この階段……一体どこに繋がってるの?」
疑問を抱えるが、足を止めない。上から光が差し込んでくる。
「やっと……頂上?」
美桜は最後の階段を登る。目の前には鉄製のはしごがある。美桜ははしごに手をかけてゆっくり登る。
「嘘……でしょ?」
はしごを登ると、そこには大地が広がっていた。雲が下に見える。
「ここは……天国?」
美桜は自分の頬をつねる。しっかり痛みがあるので天国ではない。
「まるでおとぎ話の世界ね。」
美桜は川の水を汲む。水は現実のものとは思えないほど透き通っていた。川には見たこともない魚が泳いでいる。
「不思議な場所……」
遠くに水車小屋を見つける。
ギィ……
小屋の中には人の気配はない。しかし、誰かが生活していた跡はある。美桜は食器を調べる。
「このお皿……何で出来てるの?」
美桜が手にとった皿は不思議な素材で作られていた。指で叩くと、普通の皿と同じような音がするが、驚くほどに軽い。青が顔を出す。
「これはジュラルミンでできているな。」
「ジュラルミン?なにそれ?」
「鉄のように硬く、アルミのように軽い素材だ。」
「そんなものがあるんだ。」
青はすぐに引っ込む。美桜は皿を元の場所に戻す。
美桜は小屋の外に出る。
「すぅ~、はぁ。空気がおいしいわ。」
青が再び顔を出す。
「それにしてもこの景色……見覚えがあるな。」
青はそう呟くとすぐに戻る。美桜は川に沿って歩く。しばらく進むと湖があった。湖の真ん中には小島がある。
「ねえ青。あそこまで運んでくれる?」
青は素直に言うことを聞く。
ザバッ!ザバッ!
湖の中から2つの水流が襲ってくる。
「なにあれ?!」
「分からん。とにかく逃げるぞ!しっかり捕まってろ!」
青は全速力で空を翔ける。美桜は振り落とされないようにしっかり掴まっている。
「うわっ!」
美桜は水流に腕を掴まれる。水流が青の角に攻撃する。
「ぐっうぅ!」
青は美桜の中に戻る。美桜は湖に落下する。
ザバァァン!
「ここは?」
ガーネットは館の中のベットの上で目を覚ました。
「お目覚めですか?」
「え?」
ガーネットは執事のような人に声をかけられる。
「坊ちゃまがお待ちです。準備ができましたら、私目に声をおかけください。」
執事は部屋から出る。
(誰?)
ガーネットは執事のことを全く知らない。言われた通り、準備を終えると執事に声をかける。
「ではこちらへ。」
ガーネットは執事に着いていく。とある部屋の前で執事が振り返る。
「どうぞ中へ。私はここでお待ちしております。」
執事は扉を開ける。部屋の中にはリッパなダイニングテーブルがあり、机上には豪勢な食事が用意してある。テーブルの奥には1人の男性が座っている。
「君か。席についてくれ、遠慮はするな。」
ガーネットは椅子に座る。
「失礼だが、君の名前を聞かせて欲しい。」
「まずは自分から名乗るべきでは?」
ガーネットは男性を警戒する。
「失礼、君の言うとおりだ。僕はレイサム・ハース。気軽にレイサムと呼び給え。」
「私はガーネット・クローヴァー。よろしく。」
ガーネットは少し冷たい態度をとるが、レイサムは気にしていない様子だ。もしくは、気づいていないだけかもしれない。
「聞きたいことが沢山あるだろう。なんでも聞いてくれ。」
「ここはどこ?」
「ここはラスベガスにある僕の屋敷だ。君は砂漠で倒れていた。僕たちが通らなければ危ないところだった。」
ガーネットは少し警戒を解く。
「私の周りに他の人はいなかった?」
「周辺には君しかいなかった。君を救助した後、周辺を捜索したが君以外は誰もいなかったね。」
「そう……」
ガーネットは少し心配になる。
「質問は終わりかい?終わりなら、僕からも少し質問させてもらう。」
「君は何者だ?」
ガーネットは強い視線を向ける。
「どういう意味?」
「そのままの意味だ。その服装で、なおかつ1人で砂漠にいるのはどう考えても不自然だ。それに……」
レイサムは後ろからガーネットの槍を取り出す。
「君の近くに落ちていた物だ。心当たりはあるか?」
「心当たりも何も……私の所有物よ。」
「この紋章、君は何かの兵隊か?」
「兵隊、ねえ。少し惜しいとだけは言っておくわ。」
ガーネットはレイサムから槍を受け取る。真っ先に槍先を見る。
「刃こぼれはしてない。丁寧に持ってきてくれたようね。」
ガーネットは扉に手をかける。
「どこに行く気だ?」
「私にはやるべきことがある。」
ガーネットは振り返る。
「一応忠告しておくわ。この街は、少ししたら大災害に見舞われる。避難するなら今の内にしたほうがいいわよ。」
ガーネットは部屋を出る。レイサムは啞然としていた。
「大災害?何を言っている?」
パチンッ!
レイサムは指を鳴らし、衛兵を呼ぶ。
「あいつの後を追え。怪しい動きがあったら取り押さえろ。」
衛兵はガーネットの後を追う。
「ふぅ……まさか、本当に来ちゃうとは……」
ガーネットはラスベガスの空を見上げる。
「………。」
衛兵は物陰からガーネットを監視していた。
「うん。5人、か。」
ガーネットは衛兵の視界から突如として消える。
「なっ?!どこに行った?」
衛兵は戸惑う。急に目の前から人が消えたのだから当然だ。
ドンッ!ガンッ!ゴスッ!グンッ!ゲシッ!
ガーネットは背後から衛兵を気絶させる。
「5人で勝てると思ったのかしら?」
ガーネットは痕跡を消してその場を去る。
「ちっ、使えねえ衛兵だ。まあいい。あいつの目を欺くことはできた。」
レイサムの姿が変わり始める。
「こっからは俺のターンだ。」
コンパルゴは館の壁を突き破って外に出る。レイサムはコンパルゴの変装だった。ガーネットはそのことを知らない。
「場所はもうわかってる。逃げられると思うなよ?」
コンパルゴはガーネットを追う。
5人を乗せた車は砂漠の中を走る。辺りに砂煙が巻き起こってきた。
「まずいな、砂嵐が起きそうだ。車を止めてくれ。」
車が止まるとガレジストは降りて外の様子を見る。
「しばらく足止めだ。」
「なあ。あそこに何か見えないか?」
ロビンは外を指差す。その先には集落らしきものが見える。
「行ってみよう。俺に着いてこい。」
5人は集落を目指して歩き出す。集落に着く頃には、辺りの砂煙が激しくなっていた。
「ここは廃村か?」
建物は廃れている。しかし所々から物音がする。
「見て!」
ガーネットが1つの建物を指差す。窓から光がかすかに漏れている。
コンコンッ……
ガレジストはドアをノックする。
ガチャ…
「おや、どういった御用でしょう。」
「砂嵐が起きそうで避難してきた。」
「おおそうでしたか。どうぞ、お入りください。」
老人は快く5人を迎える。
「この砂嵐の中、大変だったでしょう。水をお持ちします。」
「………。」
ロビンは老人を見ていた。
「なんか怪しくないか?」
「えぇ。水は砂漠では貴重なはずよ。」
「まあくれるって言うんだ。遠慮せず貰おうぜ。」
「あんたは遠慮ということを覚えたほうがいいわよ。」
玖羽は足を組んで座っている。老人はコップに水を淹れて戻ってきた。
「こちら、お水です。」
「あぁ、ありがとう。」
5人は水を飲む。
(ん?なんか……変だ。)
ロビンは目眩がしてきた。ロビンは椅子にもたれ掛かって意識を失う。
「起きなさい。」
「う……んあ?」
「まだ寝ぼけてるの?」
美桜が冷たい視線を送る。
「あれ?ここは?」
2人は薄暗い空間にいた。2人は鎖で壁に繋がっている。
「罠よ。してやられたわ。」
「やっぱり怪しいと思ったんだよ。」
「いや、それは違うわ。外を見て。」
ロビンは格子の隙間から外を見る。
「あれ?さっきまで村にいたはずたよな?」
「そうよ。」
「なんで街中にいるんだ?それにこの街って…」
「そう、ラスベガスよ。」
2人はラスベガスのとある建物に監禁されている。
「何があったんだ?」
「あの水に睡眠薬が入っていたわ。眠らされてここに運ばれたみたい。」
「青を使ってなんとかできないか?」
「青を使えるわけないでしょ!こんなところで呼んだら大変なことになるわよ。」
「呼んだか?」
「今は出てくるな!」
美桜は青を叱りつける。青は大人しく引っ込む。
「ねえロビン。少しお願いがあるんだけど。」
「なんだ?変なこと言うなよ。」
「背中かいて。さっきからかゆくて仕方ないんだけど。」
ロビンは美桜の背中をかく。
「もうちょっと左。行き過ぎ。あーそこそこ。」
(何してんだろ俺……)
ロビンは自分にガッカリする。
「この鎖どうする?」
「誰かに切ってもらうしかないわ。」
「武器は?」
「あそこ。」
美桜は顎で武器の場所を教える。ちょうど目の前に見える。しかし、鎖で繋がれているので届かない。
「青に取って来てもらうのはどうだ?」
「でも切れないでしょ。」
「九尾!起きろ!」
ロビンは九尾を呼ぶが声が届かない。
「どうすんだこれ?」
「最悪、誰かが来るのを待つしかないわ。」
ロビンは腰を下ろす。
(何か方法はないのか?いや待てよ??青使えば問題なくね?)
「青で妖刀を取ってきてくれないか?」
「なんで?」
「いいから早く。」
美桜は青に命令する。
「ほらよ。取ってきたぞ。」
「起きろ九尾。」
「なんだ?起きてるぞ。」
ロビンは九尾を憑依する。
「よし。これでいける。」
ロビンは鎖を引き千切る。
ガキインッ!
刀で美桜の鎖も断ち切る。
「さて……行くか。」
2人はそれぞれの武器を持って建物から出る。
「これが………ラスベガス!」
ロビンは両手を広げる。
「仲間を探しましょ。私たちと同じならこの街のどこかにいるはずよ。」
2人は仲間を探す。
「!?」
ドンッ!
ロビンは背後から襲いかかるコンパルゴに気づく。
「お前……どこから?!」
ロビンは刀で斬りかかる。コンパルゴはボヤけて消える。
「消えた?!」
ロビンは辺りを警戒する。
「美桜?」
美桜の姿がない。先程まで後ろにいたはずだ。それどころか街がやけに静かになっている。
「くそっ、どうなってんだ?」
ロビンは困惑する。
「!美桜!」
遠くに美桜を見つける。美桜はどこかへと歩いていってしまう。
「待て!」
ロビンは美桜を追いかける。
「どこに行った?」
美桜は建物の上からこちらを見下ろしていた。後ろを向いてすぐにその場から離れていってしまう。
「おい少し止まれ!」
ロビンは建物の上に飛び上がるが美桜の姿はなかった。後ろを向くと街の真ん中に美桜の姿が見える。
(いつの間に?!)
ロビンは街の真ん中に向かって走る。
「あれ?いない?!」
美桜の姿はそこにはなかった。
(なんだこの感じ……翻弄されている?)
ロビンは後ろを振り返り、その場から離れようとする。
「なんだ?!」
ロビンは地面から出てきた何かに足を掴まれる。
「くそっ!離せ!」
ロビンは何かの手を切り落とす。何かは地面の中に潜っていった。
(今のはなんだ?この世の者とは思えない姿だったぞ。)
何かは全身が紫色でヘドロに覆われたような不気味な姿をしていた。
「この街から離れたほうが良さそうだな。」
ロビンは街の外を目指す。
街の外まではあと少しだ。ロビンは何も考えず、ただひたすら走り続けた。
グニャアァ……
街の外に足を踏み出した途端、周りの景色が渦を巻くように歪み始めた。
「うわぁぁぁ!」
ロビンは歪みに飲み込まれる。
「なんだここ?」
玖羽は不思議な空間に閉じ込められていた。そこは遺跡のような場所だ。
「ふむ……人が来た痕跡はないな。」
玖羽は遺跡の扉に触れる。扉に魔力が流れているのを感じる。
「ちょっと刺激すれば……」
ドガアァァン!
玖羽は扉を爆破して中に入る。中は機械仕掛けのような構造になっている。歯車の1つを動かせそうだ。
ガラガラ…
「動かしたはいいが……何か変わったか?」
遺跡の中に変化は見られない。玖羽は遺跡の扉を開けて外に出る。
「ッ?!なんだこりゃ?!」
外には一面の草原が広がっていた。
「さっきまでとは全然違うぞ。何が起きてるんだ?」
玖羽はハッとする。
「まさか……あの歯車が原因か!」
玖羽は遺跡に戻り、歯車を動かす。
ガラガラ…
再び扉を開けると、体中に寒波が襲いかかる。
「だぁーもぉー!」
玖羽は急いで扉を閉める。
(何がどうなってんだ?)
玖羽は焦りすぎて呼吸が荒くなる。
「意味が分かんねえ。」
(そういえば、なんで扉が直ってるんだ?)
玖羽は遺跡に入るとにきに、確かに扉を爆破した。その時扉は木っ端微塵になったはずだ。
「もしや……」
玖羽は扉を爆破する。扉の先には見覚えのある景色が見えた。
「ふう……やっと出られた。」
玖羽はすぐさま遺跡から離れる。
(こんなところにいられるか!)
ガラッ!
「なっ?!」
地面が崩れ、玖羽は谷底に真っ逆さまに落ちてしまう。
「ハア……ハア……私……何してるの?」
美桜はひたすら螺旋階段を登っている。どこまで登っても先が見えない。
「この高さから落ちたら一発でアウトね。」
美桜は少し休憩することにする。
(服がひっついて気持ち悪い。)
美桜は汗を拭う。少ししたらまた登り始める。
「この階段……一体どこに繋がってるの?」
疑問を抱えるが、足を止めない。上から光が差し込んでくる。
「やっと……頂上?」
美桜は最後の階段を登る。目の前には鉄製のはしごがある。美桜ははしごに手をかけてゆっくり登る。
「嘘……でしょ?」
はしごを登ると、そこには大地が広がっていた。雲が下に見える。
「ここは……天国?」
美桜は自分の頬をつねる。しっかり痛みがあるので天国ではない。
「まるでおとぎ話の世界ね。」
美桜は川の水を汲む。水は現実のものとは思えないほど透き通っていた。川には見たこともない魚が泳いでいる。
「不思議な場所……」
遠くに水車小屋を見つける。
ギィ……
小屋の中には人の気配はない。しかし、誰かが生活していた跡はある。美桜は食器を調べる。
「このお皿……何で出来てるの?」
美桜が手にとった皿は不思議な素材で作られていた。指で叩くと、普通の皿と同じような音がするが、驚くほどに軽い。青が顔を出す。
「これはジュラルミンでできているな。」
「ジュラルミン?なにそれ?」
「鉄のように硬く、アルミのように軽い素材だ。」
「そんなものがあるんだ。」
青はすぐに引っ込む。美桜は皿を元の場所に戻す。
美桜は小屋の外に出る。
「すぅ~、はぁ。空気がおいしいわ。」
青が再び顔を出す。
「それにしてもこの景色……見覚えがあるな。」
青はそう呟くとすぐに戻る。美桜は川に沿って歩く。しばらく進むと湖があった。湖の真ん中には小島がある。
「ねえ青。あそこまで運んでくれる?」
青は素直に言うことを聞く。
ザバッ!ザバッ!
湖の中から2つの水流が襲ってくる。
「なにあれ?!」
「分からん。とにかく逃げるぞ!しっかり捕まってろ!」
青は全速力で空を翔ける。美桜は振り落とされないようにしっかり掴まっている。
「うわっ!」
美桜は水流に腕を掴まれる。水流が青の角に攻撃する。
「ぐっうぅ!」
青は美桜の中に戻る。美桜は湖に落下する。
ザバァァン!
「ここは?」
ガーネットは館の中のベットの上で目を覚ました。
「お目覚めですか?」
「え?」
ガーネットは執事のような人に声をかけられる。
「坊ちゃまがお待ちです。準備ができましたら、私目に声をおかけください。」
執事は部屋から出る。
(誰?)
ガーネットは執事のことを全く知らない。言われた通り、準備を終えると執事に声をかける。
「ではこちらへ。」
ガーネットは執事に着いていく。とある部屋の前で執事が振り返る。
「どうぞ中へ。私はここでお待ちしております。」
執事は扉を開ける。部屋の中にはリッパなダイニングテーブルがあり、机上には豪勢な食事が用意してある。テーブルの奥には1人の男性が座っている。
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ガーネットは椅子に座る。
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「聞きたいことが沢山あるだろう。なんでも聞いてくれ。」
「ここはどこ?」
「ここはラスベガスにある僕の屋敷だ。君は砂漠で倒れていた。僕たちが通らなければ危ないところだった。」
ガーネットは少し警戒を解く。
「私の周りに他の人はいなかった?」
「周辺には君しかいなかった。君を救助した後、周辺を捜索したが君以外は誰もいなかったね。」
「そう……」
ガーネットは少し心配になる。
「質問は終わりかい?終わりなら、僕からも少し質問させてもらう。」
「君は何者だ?」
ガーネットは強い視線を向ける。
「どういう意味?」
「そのままの意味だ。その服装で、なおかつ1人で砂漠にいるのはどう考えても不自然だ。それに……」
レイサムは後ろからガーネットの槍を取り出す。
「君の近くに落ちていた物だ。心当たりはあるか?」
「心当たりも何も……私の所有物よ。」
「この紋章、君は何かの兵隊か?」
「兵隊、ねえ。少し惜しいとだけは言っておくわ。」
ガーネットはレイサムから槍を受け取る。真っ先に槍先を見る。
「刃こぼれはしてない。丁寧に持ってきてくれたようね。」
ガーネットは扉に手をかける。
「どこに行く気だ?」
「私にはやるべきことがある。」
ガーネットは振り返る。
「一応忠告しておくわ。この街は、少ししたら大災害に見舞われる。避難するなら今の内にしたほうがいいわよ。」
ガーネットは部屋を出る。レイサムは啞然としていた。
「大災害?何を言っている?」
パチンッ!
レイサムは指を鳴らし、衛兵を呼ぶ。
「あいつの後を追え。怪しい動きがあったら取り押さえろ。」
衛兵はガーネットの後を追う。
「ふぅ……まさか、本当に来ちゃうとは……」
ガーネットはラスベガスの空を見上げる。
「………。」
衛兵は物陰からガーネットを監視していた。
「うん。5人、か。」
ガーネットは衛兵の視界から突如として消える。
「なっ?!どこに行った?」
衛兵は戸惑う。急に目の前から人が消えたのだから当然だ。
ドンッ!ガンッ!ゴスッ!グンッ!ゲシッ!
ガーネットは背後から衛兵を気絶させる。
「5人で勝てると思ったのかしら?」
ガーネットは痕跡を消してその場を去る。
「ちっ、使えねえ衛兵だ。まあいい。あいつの目を欺くことはできた。」
レイサムの姿が変わり始める。
「こっからは俺のターンだ。」
コンパルゴは館の壁を突き破って外に出る。レイサムはコンパルゴの変装だった。ガーネットはそのことを知らない。
「場所はもうわかってる。逃げられると思うなよ?」
コンパルゴはガーネットを追う。
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『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
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