紡ぐ者

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【第5章 八岐大蛇討伐戦線】

第4節 大蛇討伐 次

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ゴオオオオオ!
「なんて熱量だ。結界がなければどうなっていたことか……」
周りの木々が燃え上り、黒い煙が立ち昇っている。頭上では八岐大蛇が複数の首をうねらせていた。
「こっからが本番ってわけか……」
疾風は八岐大蛇の逆鱗を見上げる。
「やっと弱点を見せてくれたんだ、速攻で貫いてやるよ。」
「でもあの場所までどうやって行くつもりだい?」
「ちっ、それが問題だよな……」
疾風は肩をすくめる。1つの頭がこちらに迫る。
「どうやら、話し合いの時間はくれないみたいだ。」
近づくやいなや、凄まじい速さで噛みついてくる。口からは少量の炎が漏れている。
「さっきより獰猛になってるんだけど?!これ倒せるの?」
樫茂は春蘭に問いかけるように話す。その間に首を斬ってみると先程とは違い、あっさりと斬れた。
「硬質化が解除された?熱を帯びて軟化した?どちらにせよ、こちらにとっては好都合だ。」
しかし逆鱗を貫かいことには八岐大蛇を倒すのは不可能に近い。頭は何度斬り落としてもすぐに再生する。軟化しているとはいえ戦闘が長引くほどこちらが不利になるのは明白だ。そのうえ、今の散らばっている状態で炎を吐かれれば全滅の可能性もある。
(ここから届くか?いや無理だな。)
春蘭は苦笑いをする。額から汗が数滴程流れ落ちる。ロビンは八岐大蛇の動きからあることに疑問を持つ。
「なんであの首は動かないんだ?」
「どうゆうこと?」
ロビンは上空の1つの首を指差す。
「こっちを攻撃するんなら全部の頭でかかってきたほうが絶対すぐ終わるはずなのに、2つぐらいは絶対動かさないんだよな。」
「逆鱗があるからじゃないのかい?」
「1つは逆鱗があるから動かさないってので合ってると思うんだよ。そう考えた場合、もう1つのほうを動かさないのは流石に違和感があるんだよ。」
「確かにそうだね。」
樫茂は春蘭と疾風の下へ向かいロビンの感じた違和感を伝える。
「それは確かに妙だな。」
春蘭は上空の首と辺りを動き回る首を見比べる。
「……あの首は…呼吸をしているからなのか?」
「それは違うと思うよ。」
「どうしてだい?」
樫茂に否定され、春蘭は聞き返す。
「もし呼吸をしているのなら、赤熱化前もああいった動きを見せるはずだ。しかし見せてこなかった。」
「赤熱化後で変わったことが関係しているのか。なら理由は明白だな。」
疾風は自信アリ気な表情で2人に話す。
「あの首は逆鱗を守ってるんだろう。それしか考えられない。」
「まあそれが1番しっくりくる理由だろうね。そもそもの話、あんなところまで僕たちの攻撃は届かないけど…」
「結局問題はそれなんだよなぁ…」
疾風は少し気を落とすが、複数の頭がこちらに迫ってくる。
「まじで休ませてくれねえな。」
ドォン!ドォン!ドォォォン!
八岐大蛇の胴体でいくつかの爆発が起こる。
「前線部隊の攻撃か。できたら上のやつを狙ってほしいが……難しいか。」
「しかし効果が薄いな。先程までは効いていたのに。」
ロビンは春蘭の下に駆け寄る。
「前線部隊のほうに戻っていいか?作戦を立て直したい。」
「…わかった、時間は稼ぐ。」
「センキュ。」
ロビンは八岐大蛇から飛び降りて前線部隊の下へ向かう。

「あ、ロビンだ。」
アリスは誰よりも早く、ロビンの姿を見つける。
「状況は?」
「面倒なことになった。作戦を立て直す。」
アリスの質問に簡単に答えると、隊員たちを集める。
「面倒なことと聞いたが…何があった?」
「それを話す前にいい情報を伝える。あいつの逆鱗を見つけた。」
「どこにあったの?!あれだけ探して見つからなかったのに!」
アリスはロビンの服の襟を掴みながら声をあげて尋ねる。
「アリスが見つけられなかったのは仕方のないことだ。見ればわかると思うが、今のあいつは赤熱化している。逆鱗はあいつが赤熱化すると同時に現れた。」
「弱点を見つけたなら後は倒すだけでしょ。何が面倒なの?」
ロビンはアリスを剥がす。
「まず今のあいつだが、魔法による攻撃が効きづらくなっている。そのかわり、武器による攻撃が有効だ。」
「これは問題じゃないんだよ。厄介なのはあれだ。」
ロビンは高い場所にある2つの頭を指差す。
「あの2つの頭のうちの角の生えてる方。あれ首元に逆鱗がある。もう1つの方は多分だが、逆鱗を守ってる可能性がある。」
「高さ的に武器ではきついわね。それに魔法も効果が薄いと来たか。……倒せるの?」
美桜が弱気な発言をする。
「2つくらい方法が無くわないんだが………」
ロビンは自信なさげに喋る。
「1つは飛行魔法を使って近づく方法だけど……シンプルに危険なんだよな……。」
「もう1つは八岐大蛇の体内から逆鱗付近まで向かう方法。八岐大蛇の攻撃を受ける心配はないけど、今のあいつの状態からして体内はとんでもない高温になってると思うんだ。」
「……どっちがいいと思う?」
「絶対前者でしょ。」
美桜は呆れたように返す。
「ねえ。1つ思ったんだけど……」
「何か気づいたのかい?」
「うん、まず私も前者の方法がいいとは思ったよ。だけど……どうやって逆鱗を貫くの?」
「え?普通に剣で貫くんじゃないの?」
「いや、逆鱗って首元にあるじゃん。」
「あ……」
アリスの言葉にロビンは思わず声が出る。
「確かに……あの高さまで行けたとしても逆鱗を貫けるかと言われると、首を縦には振れないな。」
「やっぱり体内から行くしかないのか。」
「それはただの自殺行為よ。」
ロビンは美桜の言葉にぐうの音もでない。
「じゃあどうするんだよ!」
「うーん……そうねぇ。」
「動きを止めるとかでいんじゃねえの?」
白兎が1つの方法を提案する。
「動きを止める……あの巨体のか?」
「かなりムズいだろうけど1で現実的っしょ。」
新沙は深く考える。
(動きを止める……間違いなく1番現実的で最も安全な方法。たが、あの巨体を止めるのにどれほどの魔力が必要になる?)
どこからか純連が現れた。
「うお!急にいなくなったと思ったら、どこ行ってたんだ?!」
「ちょっと日本支部に。はいこれ。」
「なにこれ?」
ロビンは純連から5枚の御札を受け取る。
「さっきの話を聞いて団長から貰ってきたわ。動きを止めるんでしょ?これを八岐大蛇に貼ってきて。」
純連は定位置に戻り結界を張り直す。
「……一応聞くぞ。八岐大蛇の動きを止める方向でいいんだな?」
全員から意義の言葉は発せられなかった。
「じゃあ戻るわ。作戦通り頼むぜ。」
ロビンはそう言い残し春蘭たちの下に向かう。

「ふう…だめだ、終わる気がしねぇ…」
疾風はすでに満身創痍の状態だった。疲れ切った体に八岐大蛇の体温が追い打ちをかける。ロビンが離れてから首を斬り続けている。硬質化しないぶん幾分かましだが、何度も相手にし続けるといくら天級魔道士とはいえ体力的にはかなり苦しい状態だ。疾風に2つの頭が襲いかかる。
(ヤベッ!)
ザシュッ!
ロビンは2つの頭を斬り落とす。
「大丈夫か?!」
「悪い、助かったぜっ、ぅ」
「本当に大丈夫か?!」
疾風は辛そうな表情をする。
「お前は……平気なのか?」
「平気って…何が?」
「こいつの……体温だ。」
「え?俺は何も感じないけど。」
「な…に?」
疾風は力尽き、その場に倒れ込む。丁度いいタイミングで樫茂がこちらに来る。
「疾風が限界だ。」
「ああ、というか僕もそろそろ限界だ。ずっと首を相手にし続けて消耗しているし、そこに八岐大蛇の体温が加わってさらに体力を奪われる。君も気をつけるんだ。」
樫茂はロビンに警告をすると疾風を担いで前線部隊の下に向かう。
「樫茂も疾風と同じだ。コイツの体温が以上に高いか……なんで俺は影響を受けないんだ?」
しかし考えている暇などない。ロビンは御札を取り出し八岐大蛇に貼りに向かう。
「これどこに貼ればいいんだ?そういえば一緒に変な紙も貰ったよな。……これだこれ。」
ロビンは変な紙を開いてみる。それは説明書のようなものだった。
「この御札を……五方陣になるように貼る。」
横には丁寧に使用例も描かれていた。
(なにこれ?ほんとになにこれ?)
「まあ考えるだけ無駄だ。」
ロビンは紙をしまうと御札を貼りに向かう。走った先に春蘭の姿を確認する。涼しい顔をしているが大分消耗しているように見える。
「春蘭!新しい作戦を考えてきたぞ!」
「やっと来たか。その手に持ってるものは?」
「ああこれ?御札。コイツの動きを止めるためのものだ。」
春蘭は全てを理解したような表情をする。
「貸してくれ、御札は僕が貼る。ロビンは……首の相手をしていてくれ。」
「うぇ?!」
「まあ…頑張れ!」
春蘭はロビンから御札を受け取ると貼りに向かう。6本の首がロビンのほうを見る。
「………。」
(まじで言ってんの?1、2本ならいいんだよ。でも6本は聞いてないよ?!)
ロビンは自分の頬を叩いて鼓舞すると刀を抜く。
(やるしかねえな。あいつもあの状態からして影響を受けてるんだ。今まともやりあえるのは俺しかいないってわけか。)
6本の首が一斉に襲いかかる。
「さっきからウネウネウネウネと……気持ち…悪いんだよぉおお!」
ロビンの一太刀が襲いかかる首を全て斬り落とす。ロビンは自分でも何が起きたのか分からず唖然とする。
「俺ってもしかして相当強い?」
途端に体の奥底から自信が溢れてきた。
「あいつの方は……まあ大丈夫か。」

「これでいいかな。」
春蘭は御札を貼り終えたことを通信機でロビンに伝える。
「オッケー。団長に連絡するぜ。」
春蘭は通信機をしまう。
「うっ……」
春蘭は突然、目眩に襲われる。体がかなり熱くなっている。
(まずい!長くコイツの体温を浴びすぎた。一旦ここを離れよう。ロビンは……)
「春蘭!さっさと下がれ!」
後ろから怒鳴るような声が聞こえる。振り返ると疾風が八岐大蛇に飛び乗ってきた。
「あいつのことが気になるような顔してるが自分の身を案じろ!」
「しかし…」
「あいつはどうも八岐大蛇の体温の影響を受けていないらしい。理由は分からんがな。とにかくお前がやられると面倒だ。」
「……わかったよ。……死ぬなよ。」
「俺を誰だと思ってる。」
パンッ!
2人は手を交わすと春蘭は八岐大蛇から飛び降りて前線部隊の下に向かう。

「やっぱり魔法の効果が薄いな。」
前線部隊は攻撃の手を緩めること無く続けているが、効果がまるで見られない。
「やっぱり俺が行くしかないっしよ!」
「それはできない。あいつの近くに長時間いると先程の者のように身体に悪影響を及ぼす。」
「それだとロビンも危なくない?」
「ロビンなら大丈夫よ。」
焦る美桜に対してアリスは冷静に返す。
「なんで?」
「なぜか分からないけどロビンって、炎とか熱に対して異様なほど耐性が高いのよね。」
「八岐大蛇の近くにまともにいられるのはロビンだけってわけね。でも耐性が無くても少しはいられるんでしょ?」
「本当に少ししかいられないぞ。一応熱を防ぐ方法が無くわないが……」
「教えてくれる?」
アリスが新沙の言葉に食いつく。
「そうか、お前は飛行魔法が使えるのか。お前になら問題ないかもしれない。こっちにこい。」
新沙に連れられ前線部隊から少し離れなた木の陰で会話をする。
「熱を防ぐ方法は……まず寒冷系の魔法を使えるか?」
アリスは氷を作り出す。
「なら問題ないな。それを霧のようにして自分の周りに発生させるんだ。」
アリスは言われたとおりにやってみる。体から冷気が溢れているような見た目になる。
「これは……成功なの?」
「使ったことがないから分からないが、多分成功だろう。」
「八岐大蛇の近くに向かう場合はそれを使うといい。でなければすぐにこっちに戻って来る羽目になるぞ。」
アリスは静かに頷く。前線部隊に戻ると何やら騒ぎが起きていた。
「何があった?」
「隊長!八岐大蛇の様子が……」
「様子?」
新沙とアリスは八岐大蛇のほうを見る。八岐大蛇が首を上にあげてウネウネと動かしている。
「何をしているんだ?」
純連は八岐大蛇を見ていると何か嫌な予感がした。

「なん……だ?」
「気をつけろ、何か来る。」
ロビンは上空を見上げながら疑問の声を出す。八岐大蛇が首をウネウネと動かしているからだ。先程まで攻撃してきていたのにも関わらず、突然首を上げこの動きを始めたのだ。先程の炎とは違う。
ドクン……
「?」
ロビンは足に振動を感じる。
ドクンドクン!
「また……鼓動…」
ドクンドクンドクン!
「しかも……速い?!」
ドクンドクンドクンドクン!
「なんか面倒な気がするなぁ!」
ロビンは八岐大蛇の首を斬り落とそうとする。しかし先程のようにうまく斬ることができない。1つの頭がこちらに迫る。
カキィン!
ロビンは刀を八岐大蛇の首に振るうが刀が弾かれてしまう。
「なっ…硬い?!それより刀が!」
「ロビン!逃げろ!」
頭が口に何かを溜めている。
「あ、マズイ……」
次の瞬間、八岐大蛇はロビン目掛けて炎を吐き出した。それに便乗するかのように他の7つの首も炎を辺りに吐き出す。膨大な量の炎により近隣の森林や山々で火災が起こる。

「なんかコッチに来てない?」
「みんな、結界の内側に!」
大量の炎が山を覆う。かろうじて結界で炎を防ぐがあまりの量に結界がもつか分からない。
「なんか……ヤバそうじゃない?純連ー。もちそう?」
「………。」
(めっちゃ集中してる。声かけるのやめとこ。)
少しして炎が止む。純連は地面に手をつく。
「大丈夫ですか?!」
「問題ないわ。心配ありがとう。」
純連は少し疲れているように見える。
「あの、一旦休んだらどうですか。」
「そうね……少し休むは。」
純連は岩に腰掛ける。
「アリスちゃん、こっちに来て。」
アリスは純連の横に座る。
「あなたは顔に出していないけど、ロビン君のことが心配なんでしょ?」
「え?そりゃ、まあ、うん。幼馴染みだもん。」
「いいわね、そういうの。」
純連は前を向く。
「あなたに言いたいことがあるの。」
「なんですか?」
「あなたには……八岐大蛇の下に向かってもらうわ。」
「え?私が行って何か役に立つんですか?」
「あなたは飛行魔法が使える。私も使えるけどここを離れることができない。」
純連は結界を出す。
「それにこの結界。炎を防ぐのには十分だけどさっきみたいに量でゴリ押されるとかなりきついの。あの炎は威力も桁違いだしね。」
「……もしかして……もう結界がもたないかもしれないってこと?」
「ええ、その可能性があるわ。だから、次に炎を吐かれる前に倒してしまう必要があるわ。」
「これ以上私たちが攻撃しても八岐大蛇とってはかすり傷にもならない。だって頭部を切断しても再生しちゃうのよ。胴体に傷をつけてもすぐに再生するわ。」
アリスは立ち上がる。
「待って。」
アリスは立ち止まる。
「あなた、結界は使える?」
「簡易的なものなら使えるわ。」
「それが知りたかっただけよ。健闘を祈るわ。」
アリスは再び歩き始め八岐大蛇に向かう。
「…行っちゃった。でも、これが……おそらく最後のチャンス。これ以上戦闘が長引いたら、八岐大蛇を倒すことは絶望的になるわ。」

「危ねえな。で、どうすんだこれ?」
「どうすんだ?じゃねえよ。なんで炎をもろに喰らって生きてんだよ?!」
ロビンは八岐大蛇の炎に呑み込まれたが火傷1つ負っていない。
「言っただろ。俺は熱に対して強いって。」
「そうは言っても流石に異常だろ。辺りを見ろ!山火事で木が燃え尽きてるぞ。」
ドン!
山のほうから何かの凄まじい音がした。
「今の、何の音だ?」
「分からん。だがヤバいやつなのはわかる。」
足元を見ると八岐大蛇の鱗が紫色に変色している。
「うわ!なんだこれ?!」
「どうやら首のほうも同じみたいだな。それに……」
疾風たちが苦しめられた八岐大蛇の体温が下がっている。
「まるで……炎が固まった感じだな。」
ロビンは指で叩いてみる。
「もしや……離れろ。」
疾風は魔法を八岐大蛇の胴体目掛けて放つ。しかしあまり効果が見られない。
「予想通りか……面倒なことになったな。この状態では武器による攻撃も魔法攻撃も一切が通用しない。」
「は?嘘だろ?」
「本当だ。今のコイツの倒し方は逆鱗を貫く以外存在しない。」
ロビンは逆鱗を見上げる。場所はわかっているが攻撃が届かないため手出しができない。
「それに俺は、これはまだ序の口だと考えている。」
「序の口?」
「このままいくと、倒すことは不可能になるんじゃないのか?」
「流石に無いだろ。」
「そう思いたいところだが……こういう奴を見ているとそういう気がするんだよ。」
「どちらにせよとっとと潰す。行くぞ!」
すると八岐大蛇は8本の首全てで攻撃を仕掛けてくる。
「やっと首を降ろしてきたか。待ちくたびれてんだよぉ!」
疾風は逆鱗目掛けて一直線に突っ込む。
「おい!流石に無防備過ぎるだろ!」
「もらったぁ!」
ズリュ!
疾風の剣が八岐大蛇の逆鱗を貫く。
「よーし終わった終わった。意外と呆気なかったな。」
疾風は剣を抜き、鞘にしまう。
「帰るぞ~。」
「いや、倒せてないぞ。」
「え?」
「だって……普通に動いてるもん。」
ロビンは疾風の後ろを指差す。振り返ると逆鱗を貫いたはずの首が動いている。
「なんで生きてんのコイツー?!逆鱗刺したら死ぬんじゃねえのか?!」
確かに逆鱗を貫いた。しかし八岐大蛇はそんなことお構いなしに攻撃を仕掛けてくる。しかも今までのように噛みつきや頭突きではなく、詠唱してからの魔法による攻撃だ。
「なんで魔法も使えるんだよぉ!」
八岐大蛇が詠唱を始めると山に風が集まりだした。
「何をする気か分からんが、殺られる前に殺る。それだけだ!」
ロビンは魔纏を使い首を斬りつける。しかし斬ることはできずそもそも刃が通らない。
「なっ……」
八岐大蛇が空を見上げて雄叫びをあげる。同時に竜巻が発生する。それに続くように3本の首が竜巻に向かって炎を吐く。
「コイツら……知能があるのか?!」
「応援呼ぶか?」
「いや、駄目だ。全滅する可能性が高い。」
「でも……それだと防戦一方だぞ。」
八岐大蛇の攻撃は先程よりも激しさを増している。
「後ろ!」
「お前もだ!」
2人の後ろから八岐大蛇の魔法が飛んでくる。
「「はっ!」」
2人の人影が魔法を弾く。その後ろからアリスも現れる。
「春蘭、樫茂。お前ら、体は大丈夫なのか?」
「うん。…さてと、面倒なことになったね。」
「ロビン!」
「アリス?なんでいんの?」
「なんか行けって言われたから来た。飛行魔法を使えるからかな。」
「これで役者は揃ったな。今度こそ、八岐大蛇を討伐する。」





「ふーん。あっさり食われるかと思ってたけど、意外と頑張ってるな。」
1人の男が市内のビルの屋上からこちらを見ていた。
「あいつが炎に対して耐性を持ってるのは予想外だが……まあ俺の敵ではないだろう。」
男はビルから飛び降り、姿を消した。
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