91 / 125
90話
しおりを挟む
回りの目に気づいたことにより、2人が恥ずかしがって静かになったので、公は雛に話しかけた。
「雛。この2人が今回の件に関係ある2人なのか?」
「はい。白の友達の赤と青です」
雛から白の友達と紹介された2人の表情はどこか暗かった。
「赤、青。この人は家出した白を保護してくれている公様です」
雛の説明に2人がバッと公のほうを向いた。
「どうも」
『どうも』
公が軽く頭を下げると2人も軽く頭を下げ、そしてじっと公を見つめた。
その視線を受けながら公は雛に問いかけた。
「そういえば、雛と白はどういう関係なんだ?」
「白は幼なじみで妹みたいな存在です」
そう言う雛の表情も少し暗くなった。
その様子を見た公は頭を掻いた。
<家出をした白の話だから楽しい話になるとは思っていないけど、はじめからそんな顔して話してたら最後までもたないよ>
俺の言葉に雛・赤・青の3人は顔を見合わせた。
<話の内容が内容だから笑って話せとは言わないけど、もう少し普通に話してもいいんじゃないかい?>
「それもそうですね」
雛の表情から暗さがなくなった。
「じゃあ、白の家出の理由とか教えてくれるか?」
雛が落ち着いたのを見て、公が話を進めるために問いかけた。
公の問いに雛は赤と青に視線を向けた。
雛の視線をうけた2人は頷いた。
それを見て、雛は公を見つめた。
「ちゃんとした理由は本人に聞かないとわからないけど、考えられる理由は2つあります。1つは家庭の理由です」
「家庭の理由か」
「はい。白と家族との仲は悪くはありません。ただ、白の将来に関してだけいえば、白は父親と対立しています」
「対立?」
公が首を傾げていると、雛が説明を始めた。
「はい。白の将来の夢は歌手です。しかし、父親からは、『歌手なんて売れるかどうかもわからない、収入をえられるかどうかもわからない歌手になるなんて認めない』と言われたらしいのです。それから白は将来のことで何度か父親と言い争ったことがあるので、今回の家出にも関係していると思います」
雛の説明を聞いた公は顎に手をあてて少し考えた。
それから雛を見ると、
「もう1つの考えられる理由はなに?」
「それは」
「それは、私達から説明させてください」
赤が雛の説明を止め、隣では青も頷いていた。
「いいの?」
『はい』
心配そうな雛に2人は力強い頷きを返し、公を見つめた。
「もう1つの考えられる理由は学校でのいじめです」
その言葉に、公はあまりいい表情をしなかった。
その表情を見た3人は表情を暗くした。
<はいはい>
俺は手を叩いた。
<公。気持ちはわからなくはないが、今は話を聞くことが優先なんだからそんな表情するなよ>
「あぁ。すまない」
公は軽く頬を叩いて表情を戻した。
<それに、3人も話すって決めたんだろ?なら、最後まで説明を頑張らないとな>
「そう、ですね」
「頑張ります」
気合いを入れ直した赤と青は説明を続けた。
「いじめが始まったのは去年の夏からです」
「いじめを始めたのは春に転校してきた大企業の令嬢でした」
「理由は自分のもとにつかなかったから」
「やっていることは基本無視です。そして、それは高校生になった今でも続いています」
あまりにも低レベルのいじめに公は額に手を当てて呆れていた。
「でも、赤や青がいるなら、いじめが理由になることはないんじゃないの?」
すると、2人は顔を見合わせた。
「私達はいじめが始まってからも白と一緒にいようとしたんです」
「だけど、白が『私と一緒にいると2人にも迷惑がかかるから』と言って私達を遠ざけているのです」
「う~ん」
公はなんともいえない表情をしながら頭を掻いた。
「やっぱりいじめは家出に関係ないな」
そう決めつけた公の言葉に3人は驚いていた。
<俺もそう思うね>
「ど、どうしてそう思うのですか?」
赤は公に迫った。
「そもそも、1年もいじめを受け続けていたのに今さらそれを理由に家出するとは思えない。それに、俺が初めて白と会った時、白はボディーガードに終われていた。だから、家出の理由は父親との喧嘩だろう」
公の考えを聞いた3人は納得したように頷いた。
「それに、もしいじめが家出した理由だったとしたら、2人にも責任があるんじゃないか?」
『!!』
そんなことを言われるとは思わなかった赤と青は驚きながら公を見た。
「だってそうだろ。2人はそのいじめを止めさせるわけでも、白を助けるわけでもなかったんだからな」
「それは白が私達を遠ざけているからで」
「それを受け入れている時点でいじめに加担しているようなものなんだよ」
『そんなことは!』
<はいはい>
俺は言い争いになりそうだったので話に割り込んだ。
<今はいじめについて話す時じゃないんじゃないかい>
「そうだな」
『はい』
3人が落ち着いたので、俺は公に問いかけた。
<それで、話を聞いたうえで公はどうするつもりなんだ?>
その答えが気になる3人は公を見つめた。
「とりあえずはどうもする気はないな」
公の答えに3人はポカンとした。
「何もしないの?」
「あぁ何もしない」
「じゃあ、雛先輩を呼び出して白のことを聞いたのですか?」
赤の少し睨むような視線に公は頭を掻いた。
「雛を呼び出したのは、雛に聞けば白のことをなにか少しぐらい知ることが出来るかな?ぐらいの軽い理由だからな~。だから、まさかここまで深い話を聞けると思ってなかったし、家出の理由が家の事情なら他人である俺が首を突っ込むわけにもいかないからなにもしないんだよ」
公の言い分を理解した赤は何も言わなくなったが、それでも公を睨むように見ることはやめなかった。
そんな赤の態度にため息を吐きながら立ち上がった公は、雛に微笑みかけた。
「雛。今日はありがとな」
「いえ。お役に立ててなによりです」
雛が微笑み返すと、公は伝票を手に取った。
「ここの支払いはやっておくから」
「いえ。自分の分は」
「いいから」
財布を取り出そうとした雛を公が制した。
<雛。ここは素直に公に払わしてあげなよ。それが男ってものなんだからさ>
「わかりました。ご馳走になります」
「あぁ。またな」
「はい」
雛の笑顔に見送られ、公はレジへと向かった。
「雛。この2人が今回の件に関係ある2人なのか?」
「はい。白の友達の赤と青です」
雛から白の友達と紹介された2人の表情はどこか暗かった。
「赤、青。この人は家出した白を保護してくれている公様です」
雛の説明に2人がバッと公のほうを向いた。
「どうも」
『どうも』
公が軽く頭を下げると2人も軽く頭を下げ、そしてじっと公を見つめた。
その視線を受けながら公は雛に問いかけた。
「そういえば、雛と白はどういう関係なんだ?」
「白は幼なじみで妹みたいな存在です」
そう言う雛の表情も少し暗くなった。
その様子を見た公は頭を掻いた。
<家出をした白の話だから楽しい話になるとは思っていないけど、はじめからそんな顔して話してたら最後までもたないよ>
俺の言葉に雛・赤・青の3人は顔を見合わせた。
<話の内容が内容だから笑って話せとは言わないけど、もう少し普通に話してもいいんじゃないかい?>
「それもそうですね」
雛の表情から暗さがなくなった。
「じゃあ、白の家出の理由とか教えてくれるか?」
雛が落ち着いたのを見て、公が話を進めるために問いかけた。
公の問いに雛は赤と青に視線を向けた。
雛の視線をうけた2人は頷いた。
それを見て、雛は公を見つめた。
「ちゃんとした理由は本人に聞かないとわからないけど、考えられる理由は2つあります。1つは家庭の理由です」
「家庭の理由か」
「はい。白と家族との仲は悪くはありません。ただ、白の将来に関してだけいえば、白は父親と対立しています」
「対立?」
公が首を傾げていると、雛が説明を始めた。
「はい。白の将来の夢は歌手です。しかし、父親からは、『歌手なんて売れるかどうかもわからない、収入をえられるかどうかもわからない歌手になるなんて認めない』と言われたらしいのです。それから白は将来のことで何度か父親と言い争ったことがあるので、今回の家出にも関係していると思います」
雛の説明を聞いた公は顎に手をあてて少し考えた。
それから雛を見ると、
「もう1つの考えられる理由はなに?」
「それは」
「それは、私達から説明させてください」
赤が雛の説明を止め、隣では青も頷いていた。
「いいの?」
『はい』
心配そうな雛に2人は力強い頷きを返し、公を見つめた。
「もう1つの考えられる理由は学校でのいじめです」
その言葉に、公はあまりいい表情をしなかった。
その表情を見た3人は表情を暗くした。
<はいはい>
俺は手を叩いた。
<公。気持ちはわからなくはないが、今は話を聞くことが優先なんだからそんな表情するなよ>
「あぁ。すまない」
公は軽く頬を叩いて表情を戻した。
<それに、3人も話すって決めたんだろ?なら、最後まで説明を頑張らないとな>
「そう、ですね」
「頑張ります」
気合いを入れ直した赤と青は説明を続けた。
「いじめが始まったのは去年の夏からです」
「いじめを始めたのは春に転校してきた大企業の令嬢でした」
「理由は自分のもとにつかなかったから」
「やっていることは基本無視です。そして、それは高校生になった今でも続いています」
あまりにも低レベルのいじめに公は額に手を当てて呆れていた。
「でも、赤や青がいるなら、いじめが理由になることはないんじゃないの?」
すると、2人は顔を見合わせた。
「私達はいじめが始まってからも白と一緒にいようとしたんです」
「だけど、白が『私と一緒にいると2人にも迷惑がかかるから』と言って私達を遠ざけているのです」
「う~ん」
公はなんともいえない表情をしながら頭を掻いた。
「やっぱりいじめは家出に関係ないな」
そう決めつけた公の言葉に3人は驚いていた。
<俺もそう思うね>
「ど、どうしてそう思うのですか?」
赤は公に迫った。
「そもそも、1年もいじめを受け続けていたのに今さらそれを理由に家出するとは思えない。それに、俺が初めて白と会った時、白はボディーガードに終われていた。だから、家出の理由は父親との喧嘩だろう」
公の考えを聞いた3人は納得したように頷いた。
「それに、もしいじめが家出した理由だったとしたら、2人にも責任があるんじゃないか?」
『!!』
そんなことを言われるとは思わなかった赤と青は驚きながら公を見た。
「だってそうだろ。2人はそのいじめを止めさせるわけでも、白を助けるわけでもなかったんだからな」
「それは白が私達を遠ざけているからで」
「それを受け入れている時点でいじめに加担しているようなものなんだよ」
『そんなことは!』
<はいはい>
俺は言い争いになりそうだったので話に割り込んだ。
<今はいじめについて話す時じゃないんじゃないかい>
「そうだな」
『はい』
3人が落ち着いたので、俺は公に問いかけた。
<それで、話を聞いたうえで公はどうするつもりなんだ?>
その答えが気になる3人は公を見つめた。
「とりあえずはどうもする気はないな」
公の答えに3人はポカンとした。
「何もしないの?」
「あぁ何もしない」
「じゃあ、雛先輩を呼び出して白のことを聞いたのですか?」
赤の少し睨むような視線に公は頭を掻いた。
「雛を呼び出したのは、雛に聞けば白のことをなにか少しぐらい知ることが出来るかな?ぐらいの軽い理由だからな~。だから、まさかここまで深い話を聞けると思ってなかったし、家出の理由が家の事情なら他人である俺が首を突っ込むわけにもいかないからなにもしないんだよ」
公の言い分を理解した赤は何も言わなくなったが、それでも公を睨むように見ることはやめなかった。
そんな赤の態度にため息を吐きながら立ち上がった公は、雛に微笑みかけた。
「雛。今日はありがとな」
「いえ。お役に立ててなによりです」
雛が微笑み返すと、公は伝票を手に取った。
「ここの支払いはやっておくから」
「いえ。自分の分は」
「いいから」
財布を取り出そうとした雛を公が制した。
<雛。ここは素直に公に払わしてあげなよ。それが男ってものなんだからさ>
「わかりました。ご馳走になります」
「あぁ。またな」
「はい」
雛の笑顔に見送られ、公はレジへと向かった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

夫より強い妻は邪魔だそうです
小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」
夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。
この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。
そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……
お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。
雪桜
キャラ文芸
✨ 第6回comicoお題チャレンジ『空』受賞作
阿須加家のお嬢様である結月は、親に虐げられていた。裕福でありながら自由はなく、まるで人形のように生きる日々…
だが、そんな結月の元に、新しく執事がやってくる。背が高く整った顔立ちをした彼は、まさに非の打ち所のない完璧な執事。
だが、その執事の正体は、なんと結月の『恋人』だった。レオが執事になって戻ってきたのは、結月を救うため。だけど、そんなレオの記憶を、結月は全て失っていた。
これは、記憶をなくしたお嬢様と、恋人に忘れられてしまった執事が、二度目の恋を始める話。
「お嬢様、私を愛してください」
「……え?」
好きだとバレたら即刻解雇の屋敷の中、レオの愛は、再び、結月に届くのか?
一度結ばれたはずの二人が、今度は立場を変えて恋をする。溺愛執事×箱入りお嬢様の甘く切ない純愛ストーリー。
✣✣✣
カクヨムにて完結済みです。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※第6回comicoお題チャレンジ『空』の受賞作ですが、著作などの権利は全て戻ってきております。

jumbl 'ズ
井ノ上
キャラ文芸
青年、大吉は、平凡な日々を望む。
しかし妖や霊を視る力を持つ世話焼きの幼馴染、宮森春香が、そんな彼を放っておかない。
春香に振り回されることが、大吉の日常となっていた。
その日常が、緩やかにうねりはじめる。
美しい吸血鬼、大財閥の令嬢、漢気溢れる喧嘩師、闇医者とキョンシー、悲しき天狗の魂。
ひと癖もふた癖もある連中との出会い。
そして、降りかかる許し難い理不尽。
果たして、大吉が平穏を掴む日は来るのか。

マスクなしでも会いましょう
崎田毅駿
キャラ文芸
お店をやっていると、様々なタイプのお客さんが来る。最近になってよく利用してくれるようになった男性は、見た目とは裏腹にうっかり屋さんなのか、短期間で二度も忘れ物をしていった。今度は眼鏡。その縁にはなぜか女性と思われる名前が刻まれていて。
ぬらりひょんのぼんくら嫁〜虐げられし少女はハイカラ料理で福をよぶ〜
蒼真まこ
キャラ文芸
生贄の花嫁は、あやかしの総大将と出会い、本当の愛と生きていく喜びを知る─。
時は大正。
九桜院さちは、あやかしの総大将ぬらりひょんの元へ嫁ぐために生まれた。生贄の花嫁となるために。
幼い頃より実父と使用人に虐げられ、笑って耐えることしか知らぬさち。唯一の心のよりどころは姉の蓉子が優しくしてくれることだった。
「わたくしの代わりに、ぬらりひょん様に嫁いでくれるわね?」
疑うことを知らない無垢な娘は、ぬらりひょんの元へ嫁ぎ、驚きの言葉を発する。そのひとことが美しくも気難しい、ぬらりひょんの心をとらえてしまう。
ぬらりひょんに気に入られたさちは、得意の洋食を作り、ぬらりひょんやあやかしたちに喜ばれることとなっていく。
「こんなわたしでも、幸せを望んでも良いのですか?」
やがて生家である九桜院家に大きな秘密があることがわかり──。
不遇な少女が運命に立ち向い幸せになっていく、大正あやかし嫁入りファンタジー。
☆表紙絵は紗倉様に描いていただきました。作中に出てくる場面を元にした主人公のイメージイラストです。
※エブリスタと小説家になろうにも掲載しておりますが、こちらは改稿版となります。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる