私のための小説

桜月猫

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87話

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 ふう。

「なぁ」

 俺がやりきった気持ちで息を吐いていると、公が声をかけてきた。

 なに?

「なにじゃねーよ。唐突に始まった84~6話までの話はなんだよ」

 えっ?庵が主人公になりたいって言ってたから、その願いを叶えるために庵が主人公になるように中学の物語を書いてやったんだけど?

「いやいや!あれのどこが主人公なんだよ!」

 庵が文句を言ってきた。

 お前がメインなんだから十分主人公だろ。

「確かにな」
「えぇ。庵が主人公だったね」
「夢が叶ってよかったじゃねーか」
「ちょっと待て!」

 味方と思っていた公達が俺側に回ったことに庵が焦りだした。

「なんでそこで納得するんだよ!」
「いや、お前らしい物語だったぞ」

 朧月は庵の肩に手を乗せた。

「やめい!」

 朧月の手を払った庵は立ち上がった。

「さっきの話のどこが俺らしいんだよ!」
「バカなところ」
「アホなところ」
「ボケなところ」

 朧月・蛙・公の3連続の容赦ない言葉に、庵は「ガバッ!」と言いながら座り、机に倒れこんだ。

「こんな主人公イヤだ~」

 せっかく庵が主人公の物語を書いてやったのにワガママだな~。

「だって、小学生達や3歳児や悪ガキ達と年下にやられまくってるってダサいだろ」

 ちなみに、挟まったお前を蹴り飛ばした少女も年下だからな。

「さらにダサいじゃねーか!」

 庵が泣き出した横では朧月や蛙は笑っていた。

「確かにダサいな」
「でも、それも庵らしいけどな」
「笑うな!」

 2人に吠える庵。
 しかし、2人は気にした様子もなく笑い続けていた。

「だってな~」

 朧月が蛙を見ると、蛙は笑いながら庵に言った。

「3歳児の三輪車に負けたんだろ?」
「うぐっ」

 蛙の言葉に胸をえぐられた庵はまた机に倒れこんだ。

「やっぱりお前にはギャグ主人公がお似合いだな」

 朧月が笑いながら庵の背中を叩いた。

「これ絶対俺の物語じゃねーだろ」

 いやいや。お前の物語だって。

「ちげーよ」

 はぁ。じゃあどんな物語を期待してたんだ?

「そりゃあ、ギャグもそこそこありながらも、恋愛とか青春とかもある学生生活の物語に決まってるだろ」

 アハハハハ!そんなのお前には似合わないって!

「そうだな」
「庵じゃそんな物語の主人公にはなれねーよな」

 笑っている朧月や蛙を見て庵はふて腐れて机に倒れこんだ。

「くそ。なんで俺はこんな扱いなんだよ」

 庵がボソッと呟いた瞬間、

「バカ」

 と朧月。

「アホ」

 と蛙。

「ボケ」

 と公。

『だからだろうな』

 またしてもやって来た3人の容赦のない言葉に庵は真っ白に燃え尽きた。

「ってか、作者」

 庵が燃え尽きたのを見た公は呆れながら俺に声をかけてきた。

 なに?

「予告もなにもなしで84話からいきなり中学生の庵が主人公の物語を始めたから、絶対読者がついてこれてねーぞ」

 そんなことないって。この物語を読んでくれてる読者なら、「あっ、また作者が面白いこと始めたんだな」って思いながら楽しんで読んでくれてるさ。

「面白いことじゃなくておかしなことだろ?」

 面白いことだ。

「え~」

 だってお前達も笑って楽しんでいただろ?

「あ~」

 庵の物語を楽しんで見ていた公は頭を掻いた。

 だから、面白いことなんだよ。

「あの~」

 白が手をあげた。

 なに?

「なに?じゃないですよ!何度も言っていますけど!今って私の話のはずですよね!?」

 あ~。忘れてた。テヘッ。

「全く可愛くないです」
「可愛くないな」
「可愛くないね~」
「気持ち悪い」

 ちょっと待って!白、公、暁の「可愛くない」ってのはわかるけど、桜の「気持ち悪い」はヒドくないか!?

「ヒドくないわよ」

 しれっと辛辣な言葉を吐いてくる桜。

「それで、私の話はどうなってるんですか!」

 あ~。うん。脱線することばかり考えてたから本編についてなにも考えてないや。

「この駄作者!」

 おぉっ。

 まさか白が叫ぶとは思っていなかったので、公達も驚いていた。

 アハハハハ。

「笑い事じゃないですよ!」
「まぁ、確かに笑い事では済まされないな」
「ですよね」

 わかってるって。ロマ。

≪………………………≫

 あれ~?ロマ!なんで無視するんだよ!

≪めんどくさいことを頼まれそうな気がしたからですけど≫

 いやいや!マスターからの呼び出しがあったんだからすぐに反応しろって!

≪イヤです≫

 どうしよう!ロマが反抗期だ!

「いや。お前みたいな作者がマスターだったら誰でも反抗期に入るって」

 なんだとー!

「うるせーなー」
≪それで、なんですか?≫

 諦めたロマがため息を吐きながら反応した。

 今から本編の内容を考えるからその間の執筆よろしく。

≪やっぱり面倒事じゃないですか≫

 どこが?

≪だって、物語の流れがなにもない状態で執筆の続きをしろって言われてもムリですからね≫

 でも、そうしないと俺が本編の内容を考えられないし。

≪だったら1度この87話を終わらせて88話にいけばいいじゃないですか≫

 それはなんかイヤだ。だからテーマトークしといて。テーマは『今やりたいこと』で。じゃあ、よろしく。

 そう言ってマスターは奥へ消えていきました。

≪それで、皆さんが今したいことってなんですか?≫
「作者を殴りたい」

 白が拳を握りながら物騒なことをいいだしました。

≪それいいですね≫
「でしょ」
「確かに。1発ガツンと殴り飛ばしてやりてーな」

 公をはじめ、桜や朧月、机に倒れこんでいる庵まで拳を握りしめました。

≪皆さんは登場人物なのでマスターの無茶にずっと付き合わされていますから、1発殴る権利は十分あると思いますよ≫
「でも、殴る機会がないからな~」

 公達はため息を吐きました。

≪でしたら、私がきか≫


          ◇


 公が待ち合わせ場所の喫茶店で待っていると、雛がやって来た。

「すいません。お待たせしましたか?」
「いや。俺も今来たって!作者!」

 公が突然叫んだので、雛はビクッとなったうえに戸惑っていた。

「あの~」
「あぁ。ごめん。ちょっと作者と話があるから飲み物でも注文して待っててくれるかな?」
「はい」

 雛は笑顔で頷くとメニューを見はじめた。

「でだ、作者」

 なに?

≪マスターのバカ野郎!≫

 へっ?ぐはっ!

 ロマに殴られた俺。

 なぜ殴られた!?

≪私を含め、今までにマスターに迷惑をかけられた人達の恨み辛みがこもった1発です!≫
「ロマ。ありがとう」
≪いえ≫
「それでだ、作者」

 なにっ!

「この場面転換はなんだ?」

 本編の続きを思いついたから場面転換しただけだよ?

「だったら一言なにか言えよ!登場人物も読者も誰もついていけてないんだからな!」

 大丈夫大丈夫。読んでいけばおのずとわかるから。

「お前な~」

 続きが思い付いたら安心して眠くなってきたからあとは88話から始めるから~。

「おい!」
≪マスター!≫

 おやすみ~。
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