私のための小説

桜月猫

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83話

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 喫茶店は相変わらず微妙な空気。

≪それも全てマスターのせいですよ≫

 え~。

≪え~、じゃありません。ストーリー構成とかをマトモに考えず、その場のノリと勢いだけで書き進めて、それに付き合わされて振り回される私達の身にもなってください≫

 いや、ロマ。お前は登場人物じゃないんだから振り回させるもなにもないだろ?

≪そんなことはありません。眠たいからとか、自分が楽しみたいからといった理由で投げ出された執筆の続きを無理矢理やらされている私だって十分振り回されている側なんですよ!≫

 そのためにお前を造り出したんだから、振り回されていると思うこと自体が間違いなんだよ!

≪そんな自分本意の考え方で執筆しているから登場人物達からは嫌われて、読者もなかなか増えないんですよ!≫

 まぁ、別に登場人物達に嫌われていても、読者がなかなか増えなくても気にはしないけどな。俺が楽しめればそれでいいんだし。

≪やっぱり最悪ですね。マスター≫

 俺にとっては最高だから問題なし。

「なぁ、そろそろ喧嘩はやめて話をすすめてくれへんか」
≪はっ!≫

 人の言葉にハッとするロマ。

 そうだな。話を進めるか。

「そういえば、なんで桜達に報告する必要があるの?」

 気持ちを切り替えた白は、その理由がわからずに首を傾げた。

「それは、色々と手伝ってもらえたりするからな。それに、もしもの時になっていきなり手伝ってくれと言われても戸惑うだけだろ」
「そうですね」
「だから、先に報告しとくんだよ。もしもの時にはよろしくって意味も込めてな」

 白は納得して頷いていた。

「そういうわけだから、ヨロシクな」

 公に言われ、桜達は苦笑した。

「あはは~。ヨロシクなって言うけど~、基本公って1人でやっちゃうんだよね~」
「そんなことねーよ」
「あるって~。自分で首を突っ込んだ厄介事に他人を巻き込む気はないくせに~」

 暁から微笑みを向けられた公は頭を掻いた。

「それじゃあ、こうして報告する理由が本当にないのじゃないですか?」

 白が首を傾げていると、暁が微笑んだ。

「そうなんだけど~、昔それで僕達をかなり心配させたことがあったからね~。だから、なにもなくてもとりあえずは報告するようにしてくれてるんだよ~」
「そうなのですね」

 納得した白は公に微笑みかけると、公はなんともいえない表情で頭を掻いた。

 ここでもう1度過去編に飛んでみるか。

≪止めてください、マスター。どうせグダグダになってまた変な空気になるだけなんですから≫

 しかし、気になっている読者がいるだろうし。

≪グダグダな過去編では説明になっていないので止めてください≫

 ぶー。

「まぁ、そういうわけだから」

 俺とロマを無視して公が桜と楓にそう言うと、2人はため息を吐いた。

「わかったわよ」
「無茶だけはしないでね」
「わかってるさ」

 話がまとまったのを見て庵が公の後ろから首に手をかけた。

「さて、公。この少女が一体誰なのか、俺達にもわかるように説明してくれないか?」

 殺気のこもった問いに公はため息を吐いてから白のことを説明した。

「この前の夏祭りの時といい、なんでお前の回りにはこうも女子が集まってくるんだよ!」

 嘆きながら庵は公の首を絞めにかかった。

「やめい」

 蛙のチョップを頭に食らった庵は公の首から手を離して頭を押さえた。

「そもそも、そういう出会いは作者が決めているんだから、文句なら作者に言え」
「おい!作者!」

 公に言われた通り俺に向かってきた庵。

 なんだ?

「俺にも出会いを作れ!」

 え~。すでにあった出会いにも気づかないヤツに新たな出会いを用意してやったところで無意味だからイヤだね。

「なに!?すでに出会いがあっただと!」

 驚いている庵の後ろでは朧月が呆れていた。

「どういうことだ!」

 どうもこうも、お前にも出会いはあった、と言っているんだよ。それに、主人公じゃないお前にそうそう出会いがあるわけないだろ。

「なっ!」

 だから、すでにあった出会いを大切にするんだな。と、いっても、その出会いにすら気づいてないお前にはムリなことだろうけどな。

「だったら、俺も主人公にしろ!そして出会いをたくさんプリーズ!」

 だったら、まずすでにあった出会いを消化してからやってこい!それすら消化できずに主人公を名乗るなんて100年早いわ!

「ぐっ!」

 フハハハハ!

「でも、それを言い出したら、俺も主人公としてはダメなんじゃねーか?」

 どうしてだ?

「出会いを全て消化しきってるわけじゃねーからな」

 そこら辺はもとからある主人公補正という能力できちんと補正されているから気にするな。

「スゲー無駄な能力だな」
「うらやましい能力だな!」

 本気でうらやましがっている庵の姿に、公は盛大にため息を吐いた。

「出来るのならお前にこの能力をやりたいくらいだよ」
「だってさ、作者!だから、俺に主人公補正の能力を移してくれよ!」

 そんなことムリだ!

 俺がムリだと言うと庵はかなり落ち込んだ。

「なぜだー!なぜ俺が主人公じゃねーんだよ!」

 庵が主人公の物語だと、ギャグだけにしかならないからな~。

 俺の呟きに朧月や蛙が「プッ!」と吹き出した。

「そこ!笑うな!」

 庵が2人を指差して怒るが、2人は本格的に笑いだした。
 そんな2人を睨む庵。

「作者も作者だ!俺が主人公だったとしても、シリアスや恋愛もある話になるさ!」

 ギャグオンリーの物語しか思い浮かばないんだけど?

「そうそう。お前にシリアスや恋愛はムリだって」

 朧月は庵の肩に手を乗せた。

「そんなことあるかー!」

 その手を払いながら叫んだ庵。

「作者が言ってただろ。すでにあった出会いに気づけてない時点で、今のお前に恋愛はムリだ」
「ぐっ!」
≪ところで、かなり話が反れていっている気がするのですが≫
『あっ』

 ここまで反れたんだから、余計に反れても大丈夫だよな。

「大丈夫なわけあるか!」
「ダメに決まってるでしょ」
「私の話は?」

 どうしよっかな~。このまま外れに外れまわるのも楽しいしな~。

≪マスター。これ以上脱線して話を進めないのであれば、私が進めてさせていただきますよ≫

 えぇ~。

「そうだよ。ロマが進めてくれればいいんじゃないか」
「それが1番だね~」
「ロマ頼めるかしら」
≪りょうか≫

 はい。ロマは強制退場。またそのうち執筆を頼むから、それまでは大人しくしててね。

『ロマー!』

 頼みの綱であるロマが強制退場させられたので、公達は悲痛な叫び声をあげた。
 その姿を見ながら俺は「あっはっは」と笑うのだった。
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