私のための小説

桜月猫

文字の大きさ
上 下
81 / 125

80話

しおりを挟む
 11年前。
 公(5歳)は園児ヤンキー、通称園ヤン5人の前に立ちはだかっていた。

「またお前か」
「どうしていつも俺達がくろと遊ぼうとすると邪魔をする」
「これのどこが遊びだ」

 公の後ろでは白に瓜二つの黒が全身砂まみれ状態で座っていた。

「遊びだよ。なぁ、黒」

 声をかけられた黒はビクッとなった。

「違うだろ」
「お前には聞いてねーよ」

 イライラして公に殴りかかる園ヤンA。
 公はその拳を受け止めると園ヤンAを睨み付けた。

「テメー!」

 キレた園ヤンAがさらに殴りかかると、他の園ヤン達も殴りかかった。
 公はその拳を全て避けていき、足を引っかけてこかした。

「キサマ~」

 こかされた園ヤン達が公を睨み付けていると、桜達が保育士を連れてやって来ていたので、園ヤン達は慌てて逃げていった。

「こら、待ちなさい」

 保育士は園ヤン達を追っていき、桜達は公のもとへやって来た。

「公。大丈夫?」
「あぁ、俺は大丈夫だ」

 公が微笑みかけると、桜と楓は公が無事なことにホッとしていた。
 公は振り返ると黒に手を差し出した。

「大丈夫か?」
「ありがとう」

 はにかみながら黒は公の手を握って立ち上がった。

「あ~あ~。砂まみれになっちゃって~」

 暁が黒の背中をはたいて砂を落としていく。

「自分でするから大丈夫だよ」
「なら、黒はまず顔を拭きなさい」

 楓が濡れたハンカチを差し出すと、黒ははにかみながらハンカチを受け取って顔を拭き始めた。
 その間に公・桜・暁の3人で服についた砂をはたいて落とした。

「ありがとう」
「これぐらいどうってことないさ」
「でも、あの園ヤン達はどうにかしたいよね~」
「そうね。私達の中の誰かと同じ組だったらよかったんだけど、黒だけ違う組になっちゃったからね」

 組分けは公と楓が星組、黒が月組、桜と暁が雪組であり、月組には園ヤン5人のうち3人が集まっているという最悪の状況だった。

「僕は大丈夫だから」

 黒ははにかんだ。

「無理すんなよ」

 公が頭を撫でると、黒はさらにはにかんだ。

「お義兄さま。私の頭も撫でてほしいですわ」
「私もー!」

 いつの間にかやって来ていた舞と夢が公の腕に抱きついた。
 なので、要望通りに公が舞と夢の頭を撫でてやると、暁が近づいてきて頭を差し出した。

「僕も~」
「はいはい」

 暁の頭を撫でてやると嬉しそうに微笑んだ。すると、すすっと楓も近づいてきたので楓の頭を撫でた。
 その光景を羨ましそうに桜が見ていると、

「ほら。恥ずかしがってなで」

 いつの間にか桜の背後に回った黒が、強引に公の前に桜を押し出した。

「なっ!」
「なんだ?桜も撫でてほしいのか?」
「っ!」

 素直になれずに公を睨んでからそっぽを向いた桜だが、徐々にうつ向くと頭を公へ差し出した。

「撫でて」

 微かにだが、確かに言った桜の言葉に、公は微笑みながら桜の頭を撫でた。
 うつ向いているため公からは見えないが、楓達からは桜が嬉しそうに口元を緩めているのが見えているので、その姿を微笑ましく見ていた。

「はーい!みんな、時間だから部屋に戻ろうねー!」

 保育士の言葉でハッとした桜は、一目散に教室へと戻っていった。

「私達も戻りましょうか」
「そうだな」

 公と楓が教室に入ると、彩先生が入ってきた。

「それじゃあ、午後はお歌でも歌いましょうか」
『はーい!』

 園児の元気のいい返事に彩は微笑むと、ピアノを弾き始めた。

「グーチョキパーで、グーチョキパーで、ナニ作ろ。ナニ作ろ。右手はグーで、左手もグーで、シャドウボクシング」

 すると、公や楓をはじめ、園児全員がシャドウボクシングを始めた。

「はい」

 彩先生が手を叩くと、園児達はシャドウボクシングを止めた。

「はい。グーチョキパーで、グーチョキパーで、ナニ作ろ。ナニ作ろ。右手はパーで、力をためて、ビンタ」
『パーン!』

 公は楓を、楓は公を軽くビンタをした。他の園児は隣同士でビンタをしあった。

 ん?なに?えっ?あっ、読者の皆さんすいません。現代の喫茶店にいる高校生の公達がわーわー言ってるもんでね。わかったよ!話終わりに聞くから。
 ふぅ。静かになったから続きをどうぞ。

 互いにビンタをしあった園児達は頬を押さえて座り込んだ。

「続きは………ムリね」

 苦笑した彩先生。

「彩先生」

 ぷるぷる震えながら園児の1人が手を上げた。

「なんですか?」

 すると、手を上げた園児は勢いよく立ち上がった。

「お父さんにも殴られたことないのに!」
「はい。鉄板ネタをありがとう」

 彩先生にお礼を言われた園児は笑顔で座った。
 それから時間がたってお迎えの時間になり、公と舞と夢のお迎えとして史がやって来た。

「公、舞、夢。帰ろう」
「お義姉ちゃん」
「お姉さま」

 舞と夢は史に抱きついた。

「黒。帰ろうか」

 黒の家は両親は共働きなので、いつも公達と帰り、公の家で両親が迎えに来るのを待っているのだ。

「うん。じゃあね」
「じゃあな」
「またね~」

 桜達と挨拶をかわして別れると、公達は保育園を出た。

「今日はなにして遊ぶ?」
「サッカーしようよ」
「いいね」

 公と黒が笑いながら話していると、1匹の猫が横断歩道に飛び出し、そこへ車が迫った。

「あっ!」

 黒が咄嗟に飛び出して猫を抱き抱えた。

「黒!」

 公も黒のあとを追って横断歩道に飛び出して黒を押し飛ばした。

「公!」「お義兄さま!」「お兄ちゃん!」

 史達の叫び声を聞きながら公は車に吹っ飛ばされた。

≪バッドエンド≫


          ◇


「って!バッドエンドってなんだよ!」

 公が机を叩きながら立ち上がった。

 公。なんで死んでしまったんだ。

「お前が殺したんだろが!」

 公は机を叩き出した。

「公。落ち着きなさい」

 桜がなだめた。

「しかしな」
「まぁ~まぁ~」

 暁にもなだめられてようやく落ち着いた公は椅子に座り直した。

「で、なんで公が死んでしまってるの?」

 話の流れ。

「流れ、じゃねーよ!じゃあ今ここにいる俺はなんなんだよ!」

 なんだろう?

「おい!」

 わかったわかった。ちゃんと81話で修正するから。

「ならいいけど」
「そういえば、幼稚園のあの歌はなんなの?」

 えっ?普通じゃない?

「普通じゃないわね」
「普通じゃないね~」
「私が保育士か~」

 彩は嬉しそうに呟いた。

「彩~。それだと今の彩は30歳以上になっちゃうよ~?」
「あっ!」

 ハッとした彩の姿を見て暁は苦笑した。

 そうなっちゃうね。

「だったらなんで彩が保育士としているんだよ」

 めんどくさいから。

「やっぱり駄作者だな」

 うるせー。面白くなるんだからいいだろ?

「いいわけあるか。読者が混乱するだろが」

 あはは。それはそれで面白いな。

「面白いな、じゃねーよ」

 じゃあ、過去編の続きに行こ~。

「おい!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

~千年屋あやかし見聞録~和菓子屋店主はお休み中

椿蛍
キャラ文芸
大正時代―――和菓子屋『千年屋(ちとせや)』 千年続くようにと祖父が願いをこめ、開業した和菓子屋だ。 孫の俺は千年屋を継いで只今営業中(仮) 和菓子の腕は悪くない、美味しいと評判の店。 だが、『千年屋安海(ちとせや やすみ)』の名前が悪かったのか、気まぐれにしか働かない無気力店主。 あー……これは名前が悪かったな。 「いや、働けよ」 「そーだよー。潰れちゃうよー!」 そうやって俺を非難するのは幼馴染の有浄(ありきよ)と兎々子(ととこ)。 神社の神主で自称陰陽師、ちょっと鈍臭い洋食屋の娘の幼馴染み二人。 常連客より足しげく通ってくる。 だが、この二人がクセモノで。 こいつらが連れてくる客といえば―――人間ではなかった。 コメディ 時々 和風ファンタジー ※表紙絵はいただきものです。

お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

ma-no
キャラ文芸
 お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……  このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。  この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。 ☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。  この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。  1日おきに1話更新中です。

夫より強い妻は邪魔だそうです

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

マスクなしでも会いましょう

崎田毅駿
キャラ文芸
お店をやっていると、様々なタイプのお客さんが来る。最近になってよく利用してくれるようになった男性は、見た目とは裏腹にうっかり屋さんなのか、短期間で二度も忘れ物をしていった。今度は眼鏡。その縁にはなぜか女性と思われる名前が刻まれていて。

お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。

雪桜
キャラ文芸
✨ 第6回comicoお題チャレンジ『空』受賞作 阿須加家のお嬢様である結月は、親に虐げられていた。裕福でありながら自由はなく、まるで人形のように生きる日々… だが、そんな結月の元に、新しく執事がやってくる。背が高く整った顔立ちをした彼は、まさに非の打ち所のない完璧な執事。 だが、その執事の正体は、なんと結月の『恋人』だった。レオが執事になって戻ってきたのは、結月を救うため。だけど、そんなレオの記憶を、結月は全て失っていた。 これは、記憶をなくしたお嬢様と、恋人に忘れられてしまった執事が、二度目の恋を始める話。 「お嬢様、私を愛してください」 「……え?」 好きだとバレたら即刻解雇の屋敷の中、レオの愛は、再び、結月に届くのか? 一度結ばれたはずの二人が、今度は立場を変えて恋をする。溺愛執事×箱入りお嬢様の甘く切ない純愛ストーリー。 ✣✣✣ カクヨムにて完結済みです。 この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※第6回comicoお題チャレンジ『空』の受賞作ですが、著作などの権利は全て戻ってきております。

ぬらりひょんのぼんくら嫁〜虐げられし少女はハイカラ料理で福をよぶ〜

蒼真まこ
キャラ文芸
生贄の花嫁は、あやかしの総大将と出会い、本当の愛と生きていく喜びを知る─。 時は大正。 九桜院さちは、あやかしの総大将ぬらりひょんの元へ嫁ぐために生まれた。生贄の花嫁となるために。 幼い頃より実父と使用人に虐げられ、笑って耐えることしか知らぬさち。唯一の心のよりどころは姉の蓉子が優しくしてくれることだった。 「わたくしの代わりに、ぬらりひょん様に嫁いでくれるわね?」 疑うことを知らない無垢な娘は、ぬらりひょんの元へ嫁ぎ、驚きの言葉を発する。そのひとことが美しくも気難しい、ぬらりひょんの心をとらえてしまう。 ぬらりひょんに気に入られたさちは、得意の洋食を作り、ぬらりひょんやあやかしたちに喜ばれることとなっていく。 「こんなわたしでも、幸せを望んでも良いのですか?」 やがて生家である九桜院家に大きな秘密があることがわかり──。 不遇な少女が運命に立ち向い幸せになっていく、大正あやかし嫁入りファンタジー。 ☆表紙絵は紗倉様に描いていただきました。作中に出てくる場面を元にした主人公のイメージイラストです。 ※エブリスタと小説家になろうにも掲載しておりますが、こちらは改稿版となります。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...