77 / 125
76話
しおりを挟む
黒服達が去っていくのを確認した幽は、生け垣の裏に隠れている公に報告した。
【黒服達は去っていったよ】
【ありがとう】
幽にお礼を伝えた公はホッと一息吐いた。
「追っ手は去っていったみたいだな」
公の言葉に白もホッと息を吐いた。
「よかった。でも、まさか生け垣に回転扉がついているなんて驚いたわ」
そう。公達が隠れたのは黒服達があり得ないと思った道の左側の生け垣の裏だった。
「ここの家のじいさんの趣味でね。この家には様々なからくりが仕掛けられているんだよ」
そして、そのからくりは初心者には攻略不可能だから、白は私がじいさんのもとに連れて行って状況説明しとくから、公はからくりを攻略しながら頑張ってじいさんのもとまで来てね。
「なっ」
驚いている公の前から白の姿が消えてなくなると公はため息を吐いた。
「行くしかないか」
公は一息吐くと家の方へ歩きだした。
だが、3歩歩いた時、地面の両サイドから板がはね上がってきて公を挟もうとしてきたので、公は前に飛び込むことで回避した。
直後、前方の地面から飛び出してきたハンマーを公が左へ避けていると、屋根の上にバレーボールを撃ち出す機械が出てきて公へ集中砲火を始めた。
「めんどくせー!」
叫んだ公はバレーボールを避けたり打ち払って進んでいった。しかも、打ち払う場合は前に向かって打ち払うことで、前方のからくり、ハリセンや落とし穴を発動させていった。
【お手伝いします】
幽が公の前に飛んできた。
【大丈夫だ】
【でも】
【いつものことだし、ケガをすることもないから大丈夫だ】
【そういうのでしたら】
幽は公の前から退いた。
それから少しして、縁側まで到着したことでバレーボール攻撃が止まり、公は一息吐いた。
しかし、すぐに気を引き締めると靴を脱いで縁側にあがった。
直後、ふすまが開いたかと思うとバネ仕掛けのパンチが飛んできたので左に避ける。
そこへ廊下の向こうから先端にゴムの吸盤がついた矢が飛んできた。
「おっと」
先端がゴムの吸盤なのでくらってもいいのだけど、くらうと負けた気がするので公は全て避けていく。
【そういえば、どこに向かっていくのですか?】
【じいさんは2階にいるから2階に向かう】
というわけで、矢が飛んできた方へ走り出す公。
突き当たりまで走りきり、角を曲がるとハリセンの横なぎがきたので公はスライディングで下を滑って避ける。
立ち上がって再度走り出そうとした公だが、直感的に立ち止まると、壁が開いて竹刀が振り下ろされた。
「あっぶね~」
公は竹刀を飛び越えて先へ進む。
すぐに階段が右手側に現れたのだけど、公は階段をスルー。
【公さん!階段通りすぎましたよ!】
幽は慌てて公に声をかける。
【わかってる】
公は歩くスピードを落とさずに答えた。
【いいのですか?】
幽は首をかしげながら公のあとについていった。
【いいの。ここはからくり屋敷なんだから、ああいう普通の階段は偽物の囮なんだよ。多分、登ろうとしたら段が引っ込んで滑り台になるだろうね】
【厄介ですね】
幽の言葉に公は苦笑しながら直感で和室に入っていった。
【ここに階段があるのですか?】
幽は部屋を見回すが、当然階段などはなく、普通の部屋にしか見えない。
【多分だけどね】
公は部屋を見回すと、顎に手を当てて考える。
そして、一点を見つめた。その見つめた先にあるのは掛け軸。
【あの掛け軸が気になるのですか?】
【そうだな】
掛け軸に近づいた公はじーっと見つめた。
すると、公は掛け軸に手をかけたかと思うと、絵が書かれている紙だけを一気にはがした。
【なっ!】
驚く幽をよそに、公は掛け軸を見て頷いた。
絵がはがされて残った掛け軸にはこう書かれていた。
『たたみなさい』
【つまり、この掛け軸をたためばいいのですね】
【そうだとも言えるな】
【?】
幽が首を傾げているのをよそに公は掛け軸の裏を確認。
そこは四角く凹んでおり、金庫などについているダイヤルが直接壁についていた。
「………」
壁にダイヤルだけがあるって違和感しかないわね。
【そうですね。それで公さん。番号はわかるのですか?】
【わからない。だけど】
公は掛け軸を見直した。
【これがどうかしたんですか?】
幽も掛け軸をしっかりと見つめ始めた。
【別になにも変わったところはないですよ?】
それがそうでもないのよね。
【え?】
【そうなんだよな】
『たたみなさい』
さて、読者のみなさんはこの1文に隠された謎、わかりますか?
「いきなりなに言ってるだ?」
なに言ってるって、私から読者のみなさんへの挑戦状よ。
「挑戦状って」
でも、殺るか殺らないかはあなた次第!
「漢字がおかしいぞ!」
あれ?
「あれ?じゃねーよ!」
まぁいいじゃない。みなさん。考えてみてください。答えは77話で。
◇
時間をさかのぼること数分。白はおじいさんとおばあさんの前に座っていた。
「えっと………」
白は、いきなり知らない人の前に連れてこられて困惑していた。
「作者。この人達は?」
この2人がこの家の主人のからくり爺とからくり婆よ。
「どうも」
「よろしくね」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
白が軽く会釈をしていると、からくり婆が白の前にお茶を差し出した。
「ありがとうございます」
お茶を一口飲んでホッと一息吐いた。
その姿を見て微笑んだからくり爺・婆。
「それで、この娘は誰なんだ?作者」
からくり爺・婆にとっても白は初めて会う人なので、困惑していないわけじゃなかった。
この子は公が助けた子で、名前は白。
「公が助けた娘か」
「公は相変わらずですね」
2人が優しく微笑む姿を見て白は公に助けを求めたのは間違いじゃなかったと確信した。
それで、初心者にこのからくり屋敷を公と一緒に回るのは不可能だから先に連れてきたってわけなの。
「なるほど」
だから、そろそろ公の攻略が始まるよ。
私の言葉に、からくり爺が机を叩くとモニターが現れた。そこには公がハンマーを避ける姿が映し出されていた。
「あれってからくりというより、侵入者撃退用のワナに見えるのですけど?」
軽く冷や汗を流しながら白は2人を見た。
「あれはからくりだよ。侵入者撃退用のワナはもっとえげつないからな」
「それに、そこら辺の管理はAIのトラちゃんがちゃんと管理してますし」
「その通りだぜ」
モニターにトラが現れた。
「そこはしっかり俺が管理しているから、入ってきた相手によってしっかりとワナとからくりを入れ換えてるぜ!」
「だから、大丈夫よ」
「はぁ」
どこか納得しきれないでいる白を見てからくり爺・婆は苦笑していた。
「まぁ、見ていれば大丈夫だってわかるさ」
そう言って2人はモニターを見つめるので、白もモニターを見つめて公の無事を祈るのだった。
【黒服達は去っていったよ】
【ありがとう】
幽にお礼を伝えた公はホッと一息吐いた。
「追っ手は去っていったみたいだな」
公の言葉に白もホッと息を吐いた。
「よかった。でも、まさか生け垣に回転扉がついているなんて驚いたわ」
そう。公達が隠れたのは黒服達があり得ないと思った道の左側の生け垣の裏だった。
「ここの家のじいさんの趣味でね。この家には様々なからくりが仕掛けられているんだよ」
そして、そのからくりは初心者には攻略不可能だから、白は私がじいさんのもとに連れて行って状況説明しとくから、公はからくりを攻略しながら頑張ってじいさんのもとまで来てね。
「なっ」
驚いている公の前から白の姿が消えてなくなると公はため息を吐いた。
「行くしかないか」
公は一息吐くと家の方へ歩きだした。
だが、3歩歩いた時、地面の両サイドから板がはね上がってきて公を挟もうとしてきたので、公は前に飛び込むことで回避した。
直後、前方の地面から飛び出してきたハンマーを公が左へ避けていると、屋根の上にバレーボールを撃ち出す機械が出てきて公へ集中砲火を始めた。
「めんどくせー!」
叫んだ公はバレーボールを避けたり打ち払って進んでいった。しかも、打ち払う場合は前に向かって打ち払うことで、前方のからくり、ハリセンや落とし穴を発動させていった。
【お手伝いします】
幽が公の前に飛んできた。
【大丈夫だ】
【でも】
【いつものことだし、ケガをすることもないから大丈夫だ】
【そういうのでしたら】
幽は公の前から退いた。
それから少しして、縁側まで到着したことでバレーボール攻撃が止まり、公は一息吐いた。
しかし、すぐに気を引き締めると靴を脱いで縁側にあがった。
直後、ふすまが開いたかと思うとバネ仕掛けのパンチが飛んできたので左に避ける。
そこへ廊下の向こうから先端にゴムの吸盤がついた矢が飛んできた。
「おっと」
先端がゴムの吸盤なのでくらってもいいのだけど、くらうと負けた気がするので公は全て避けていく。
【そういえば、どこに向かっていくのですか?】
【じいさんは2階にいるから2階に向かう】
というわけで、矢が飛んできた方へ走り出す公。
突き当たりまで走りきり、角を曲がるとハリセンの横なぎがきたので公はスライディングで下を滑って避ける。
立ち上がって再度走り出そうとした公だが、直感的に立ち止まると、壁が開いて竹刀が振り下ろされた。
「あっぶね~」
公は竹刀を飛び越えて先へ進む。
すぐに階段が右手側に現れたのだけど、公は階段をスルー。
【公さん!階段通りすぎましたよ!】
幽は慌てて公に声をかける。
【わかってる】
公は歩くスピードを落とさずに答えた。
【いいのですか?】
幽は首をかしげながら公のあとについていった。
【いいの。ここはからくり屋敷なんだから、ああいう普通の階段は偽物の囮なんだよ。多分、登ろうとしたら段が引っ込んで滑り台になるだろうね】
【厄介ですね】
幽の言葉に公は苦笑しながら直感で和室に入っていった。
【ここに階段があるのですか?】
幽は部屋を見回すが、当然階段などはなく、普通の部屋にしか見えない。
【多分だけどね】
公は部屋を見回すと、顎に手を当てて考える。
そして、一点を見つめた。その見つめた先にあるのは掛け軸。
【あの掛け軸が気になるのですか?】
【そうだな】
掛け軸に近づいた公はじーっと見つめた。
すると、公は掛け軸に手をかけたかと思うと、絵が書かれている紙だけを一気にはがした。
【なっ!】
驚く幽をよそに、公は掛け軸を見て頷いた。
絵がはがされて残った掛け軸にはこう書かれていた。
『たたみなさい』
【つまり、この掛け軸をたためばいいのですね】
【そうだとも言えるな】
【?】
幽が首を傾げているのをよそに公は掛け軸の裏を確認。
そこは四角く凹んでおり、金庫などについているダイヤルが直接壁についていた。
「………」
壁にダイヤルだけがあるって違和感しかないわね。
【そうですね。それで公さん。番号はわかるのですか?】
【わからない。だけど】
公は掛け軸を見直した。
【これがどうかしたんですか?】
幽も掛け軸をしっかりと見つめ始めた。
【別になにも変わったところはないですよ?】
それがそうでもないのよね。
【え?】
【そうなんだよな】
『たたみなさい』
さて、読者のみなさんはこの1文に隠された謎、わかりますか?
「いきなりなに言ってるだ?」
なに言ってるって、私から読者のみなさんへの挑戦状よ。
「挑戦状って」
でも、殺るか殺らないかはあなた次第!
「漢字がおかしいぞ!」
あれ?
「あれ?じゃねーよ!」
まぁいいじゃない。みなさん。考えてみてください。答えは77話で。
◇
時間をさかのぼること数分。白はおじいさんとおばあさんの前に座っていた。
「えっと………」
白は、いきなり知らない人の前に連れてこられて困惑していた。
「作者。この人達は?」
この2人がこの家の主人のからくり爺とからくり婆よ。
「どうも」
「よろしくね」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
白が軽く会釈をしていると、からくり婆が白の前にお茶を差し出した。
「ありがとうございます」
お茶を一口飲んでホッと一息吐いた。
その姿を見て微笑んだからくり爺・婆。
「それで、この娘は誰なんだ?作者」
からくり爺・婆にとっても白は初めて会う人なので、困惑していないわけじゃなかった。
この子は公が助けた子で、名前は白。
「公が助けた娘か」
「公は相変わらずですね」
2人が優しく微笑む姿を見て白は公に助けを求めたのは間違いじゃなかったと確信した。
それで、初心者にこのからくり屋敷を公と一緒に回るのは不可能だから先に連れてきたってわけなの。
「なるほど」
だから、そろそろ公の攻略が始まるよ。
私の言葉に、からくり爺が机を叩くとモニターが現れた。そこには公がハンマーを避ける姿が映し出されていた。
「あれってからくりというより、侵入者撃退用のワナに見えるのですけど?」
軽く冷や汗を流しながら白は2人を見た。
「あれはからくりだよ。侵入者撃退用のワナはもっとえげつないからな」
「それに、そこら辺の管理はAIのトラちゃんがちゃんと管理してますし」
「その通りだぜ」
モニターにトラが現れた。
「そこはしっかり俺が管理しているから、入ってきた相手によってしっかりとワナとからくりを入れ換えてるぜ!」
「だから、大丈夫よ」
「はぁ」
どこか納得しきれないでいる白を見てからくり爺・婆は苦笑していた。
「まぁ、見ていれば大丈夫だってわかるさ」
そう言って2人はモニターを見つめるので、白もモニターを見つめて公の無事を祈るのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
あやかし神社へようお参りです。
三坂しほ
キャラ文芸
「もしかしたら、何か力になれるかも知れません」。
遠縁の松野三門からそう書かれた手紙が届き、とある理由でふさぎ込んでいた中学三年生の中堂麻は冬休みを彼の元で過ごすことに決める。
三門は「結守さん」と慕われている結守神社の神主で、麻は巫女として神社を手伝うことに。
しかしそこは、月が昇る時刻からは「裏のお社」と呼ばれ、妖たちが参拝に来る神社で……?
妖と人が繰り広げる、心温まる和風ファンタジー。
《他サイトにも掲載しております》

俺の知らない大和撫子
葉泉 大和
キャラ文芸
松城高校二年三組に在籍する諏訪悠陽は、隣の席にいる更科茉莉のことを何も知らない。
何故なら、彼女は今年の四月に松城高校に転入して来たからだ。
長く綺麗な黒髪で、まるで大和撫子が現代に飛び出したような容姿をしている茉莉は、その美貌も重なって、瞬く間に学校中の人気者になった。
そんな彼女のせいで、悠陽の周りは騒がしくなってしまい、平穏な学校生活を送ることが出来なくなっていた。
しかし、茉莉が松城高校に転入してから三週間ほどが経った頃、あることをきっかけに、悠陽は茉莉の秘密を知ってしまう。
その秘密は、大和撫子のようなお淑やかな彼女からは想像が出来ないもので、彼女の与えるイメージとは全くかけ離れたものだった。
そして、その秘密のせいで更に悠陽は厄介事に巻き込まれることになり……?
(※こちらの作品は小説家になろう様にて同時連載をしております)

俺、きのこです。
禎祥
キャラ文芸
朝起きたら、きのこになってました。
…えっ?何で?どういうこと?誰か説明プリーズ!
取り敢えず歩けるみたいなんで、元の姿に戻れる方法を探しにいってみようか。
歩くきのこの珍道中ショートショート。
果たしてきのこはちょっぴりセンチメンタルな最終回へと辿り着けるのか?これは、最終回から始まり最終回へと至るための物語。
※最終回はアレですが基本ギャグです。
*印のついた話は閲覧注意
本作品は横書き表示推奨です。
表紙絵は巴月のん様よりいただきました(*´∇`*)
全色パレット
ニスヒ
キャラ文芸
あらすじ
部活を何をやっても駄目な主人公、大無田裕子(おおむだゆうこ)が新しい部活、パレット部を作り、十九人の部員達と一人の顧問に助け合いながら本当の彩りを知る物語。

霊救師ルカ
不来方しい
キャラ文芸
目に見えない者が見える景森悠(かげもりはるか)は、道に迷った外国人ルカを助けると、彼も見える人だった。 祖母が亡くなり、叔父に遺品である骨董品を奪われそうになったとき、偶然にも助けた外国人は美術鑑定士だった。 美術鑑定士は表向きの仕事で、本来は霊救師(れいきゅうし)として動いているという。霊の声を聞き、話をし、失踪者を捜し事件の謎を解く。霊が見える悠に、ルカはぜひ店に来てほしいと言われ……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる