私のための小説

桜月猫

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74話

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「……………う。お……て………う。起きて、公」

 声に反応して目が覚めた公だが、体が動かないので顔だけを動かして状況を確認すると、両腕にハルと秋がくっついてきて、体の上には夏が乗っていた。

"なるほど。体が動かないわけだ"

 納得しつつ、ふと思う。

"3人はまだ寝てる。なら、誰が俺を起こした?"

【公さん。おはようございます】
【おはよう、幽】
【すいません。私も必死に起こしてみたのですけど、起こしきれませんでした】

 幽がなにに対して謝っているのかわからない公が不思議に思っていると、

「ようやく起きたか、公」

 その声がした方向に顔を向けると、腕を組んだ冬を先頭に、楓や絆や雪や万結といった生徒会の女性陣がいた。

「えっと………」

 公は状況を理解し、幽の謝罪の意味も理解した。

「今何時ですか?」
「もうすぐお昼よ」

 楓の返事でかなり寝すぎたのだと理解し、そのせいでこういう状況になったのかと思った公。

「朝になって豪雨と雷が止んでいたのになかなか4人が山から下りてこないから見に来たらこういう状況だったのだけど、ちゃんと説明してくれるのよね?」

 威圧感たっぷりの冬の言葉にもちろんとばかりに頷く公。

「ところで、壱先輩達はどうしたんですか?」
「秋達が水着姿だったからリビングで待ってもらっているわ」

 絆の言葉に公が納得していると、冬達が3人を起こし始めた。3人の中で1番に起きたのは夏だ。

「ふぁ~。おはよう」
「おはようございます、夏先輩」

 下から聞こえてきた公の声に夏が視線を下げると公と目が合った。
 それから数秒。
 ようやく思考が動き始めた夏は状況を理解すると、顔を赤くして慌ててズザザ!と後ずさるのだが、当然後ずさればベッドから落ちるわけで、

「キャッ!」

 落ちた夏を冬が受け止めた。

「大丈夫?」

 冬の問いに夏は振り返り、そしてみんながいることを確認すると、さらに顔を赤くしてうずくまってしまった。
 次に起きたのは秋だ。

「ん~」

 伸びをした秋は周りを見回し、冬達がいることを理解したうえで公にに抱きついた。

「公くんおはよう」

 この行動に公は苦笑し、ため息を吐いた絆は秋の頭を叩いた。

「いたっ。絆。なにするのよ」
「いいからこっち来なさい」

 そのまま秋は絆に引っ張られて部屋を出ていった。
 最後に起きたのはハル。
 しかし、まだ寝ぼけているため、公の体に抱きつき始めた。

「ハル先輩。起きてください」

 公が揺するとようやく完璧に目覚めたハル。

「グッドモーニング」
「おはようございます」

 挨拶してきたのでとりあえず挨拶を返した公。

「とりあえず、離れてくれませんか?」
「おっ、ソーリ」

 公から離れたハルは、ようやく冬達がいることに気づいて驚いていた。

「Ohー!冬達がどうしてここにいるのですか!?」

 驚いているハルを見ながら公が苦笑していると、冬が公の肩を叩いた。

「向こうの部屋で話をしましょう」

 その言葉に頷いた公は冬のあとについて部屋を出て、隣の部屋に入った。楓と雪もついてきた。

「それで、どういう理由であんな状況になったのかしら?」

 当然の疑問に対して公は状況の説明を始めた。
 豪雨や雷が作者の仕業だったこと。濡れたので水着に着替えたこと。そして、寝るためのベッドが作者のせいで1つしかなく、秋先輩達の頼まれて一緒に寝ることになったこと。
 公の説明を聞き終えた冬達は作者に対して呆れていた。

「よく考えれば、この空間も作者が作り出したものだから、天候を自由に操ることができるのよね」

 別にこの空間だけじゃなくて、小説の中なら俺はなんでもできるぞ。なんたって作者で神なんだからな!

「こんな迷惑な神ならお断りよ」
「ロマと交代してください」

 しないよ。したら俺が楽しめないだろ。

「私達にはあんたを楽しませる気はないのよ」

 冬の言葉に3人も頷いていた。

 まぁ、君達に楽しませる気がなくても、俺が勝手に楽しくなるようにするがな。

「やっぱり最悪ね」
「駄作者ですね」
「迷惑以外のなにものでもないな」
「そもそも、昨日のメモの時点でおかしいとは思っていたのよ。でも、寝ていて直接執筆していないから大丈夫と思ってノコノコとこのロッジに来てしまったのが間違いだったのよ」

 冬が後悔しているがすでに後の祭りである。

 なんせ、俺の術中にはまりきったあとなんだからな。くっくっく。

「ムカつくわね」

 拳を握りしめる冬だが、あいにくその拳を向ける相手がいないのでため息を吐いて拳を下げた。

「それで、服は乾かしたの?」
「それが、このロッジには洗濯機や乾燥機だけじゃなく、ドライヤーや干すためのハンガーすらなかったので乾いてないと思います」

 冬は額に手を当てた。

「もしかして、これも」

 そう!俺のせい!

「やっぱり」

 みんなして呆れたりため息を吐いたりしていた。

「とことんバカなことしかしねーな」

 バカとはなんだ。ちゃんと意味があるんだからな。

「絶対ねーだろ」

 あるさ。服が乾かないことで夏達が水着姿のままいないといけなくなるから読者へのサービスカットにもなるし、夜寝る時も水着のままで寝たほうが間違いが起きる確率も高くなるし。

「やっぱり意味がねーじゃねーか」

 そうだね。よくよく考えれば、家で薫から散々エロ攻撃されてもピクリとも反応しない公に間違いが起きることを期待するのが間違ってたんだよな~。でも、予想外のプチ修羅場に発展したのは面白かったよ。

「意図していないところで作者を喜ばせてしまうなんて、最悪ね」

 いやはや。相変わらずヒドい言われようだ。あっ、そうそう。もう面白い場面も見れたし、サービスカットもたくさんもらえたから服は乾かしといたよ。

 公は大きくため息を吐いた。

 なに?乾かさなかったほうがよかった?もっと夏達の水着姿を見てたかった?

「いや、服を乾かしてくれたことにはしたくないけど感謝するよ。でも、乾かした理由に対しては呆れてため息しか出ねーんだよ」

 再度公がため息を吐いていると、服を持ったハルが入ってきた。

「公!服が乾いていたので持ってきマシタヨ!」
「ありがとうござ………」
「どうかしマシタ?」

 公はすぐにハルのもとに行くと、服を受け取った。

「持ってきてくれたのは嬉しいのですけど、なぜ下着を1番上に見せつけるように持ってきたのですか?」
「それはもちろん、下着を1番最初に履くからデス!」

 納得できなくはないが、公はため息を吐いた。

「俺が恥ずかしいので止めてください」
「Oh~、Sorry。そうデスヨネ。恥ずかしいデスヨネ。それなのに私っタラ。お詫びに私の下着を見せマス」

 直後、ハルはシャツを捲りあげてピンクのブラジャーを公に見せた。

「ぶっ!」
「こらっ!」

 予想外のことに吹き出す公と、慌ててシャツを下ろさせる冬。

「お詫びにならなかったデスカ?」

 公の反応に首を傾げるハル。

「いえ。お詫びにはなったので大丈夫です」

 そう言わないと、次になにをしでかすかわからないので慌てて公は言った。

「そうですか!よかったです!」

 ハルの笑顔に公はホッとした。

「着替えるので出ていってもらえますか?」
「わかったわ。終わったらリビングに来てもらえる?」
「はい」

 冬達が出ていったのですぐに着替えを終えてリビングに行くと、夏や秋も服に着替えて集まっていた。
 そして、冬から朝の状況の説明があり、みんなが納得し、公の誤解は解けた。
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