私のための小説

桜月猫

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35話

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「なぜ俺はこんなことしてるんだろ?」

 そんな疑問を口にするのはお昼休みに購買に向かって走っている公。
 普通なら桜達と教室でお弁当を食べているはずの公がなぜここにいるかと言うと、お弁当の中身が無くなっていたから。

 ホントに災難だね。モグモグ。

「お前が食ったからだろうが!作者!」

 いや、やっぱり1度は購買戦争に参加してもらおうと思ってね。そのためのに仕方なくだよ。

「なにが仕方なくだ!」

 でも美味しいね。さすが萌衣のお弁当だね。

「くそ~」
「おっ、公」

 走る公の隣にやってきたのは壱だ。

「こんにちは、壱先輩。壱先輩も購買ですか?」
「あぁ。お前もか」
「えぇ。作者のせいで」
「それは災難だな」

 公は苦笑を返した。

「忠告だけど、ムリはするなよ。お昼の購買は戦争だからな」

 壱の忠告を聞きながら角を曲がり、見えてきた購買の前はすでにそこそこの人が集まっていて殴る蹴るの応酬が始まっていた。
 その光景に公の走るスピードが少し緩んだ。

「ムリそうだったら食堂に行けよ」

 ざんね~ん。すでに食堂への道は封鎖されてこのまま購買戦争一直線コースに入りました。

「ホントに災難だな」

 壱に労われた公は、頷きながら大きくため息を吐いて覚悟を決めた。

「いきます!」
「ならさらに忠告だ。殴ることをためらうな。その甘さが命とりだからな」

 そう言って壱は先に購買戦争に参加した。

「よし!」

 気合いを入れて購買戦争に突入した公だが、いきなり横からやってきた拳を慌てて避ける。

「おら!」

 さらに別の方向からやってきた蹴りと拳を連続して避けながらカウンターで蹴ってきた男子を殴ってダウンさせる。

「戦争っていうより、乱闘って感じだな!」

 公が叫んでいると、後ろから殴られた。

「イッテー」

 なんて言ってる間にもさらに拳が飛んでくるのだが、それは壱が止めて相手を殴り倒した。

「油断するな!」
「はい!」
「邪魔するな!壱!」
「残念だけど、俺にかまってる暇はねーぞ!」

 壱が指差す方向から向かってくる集団。

「運動部か!」

 しかし、その集団でもすでに争いは起こっていて、その争いも一緒に合流したことでさらに争いが激化した。
 そんな中、公は男子にタックルされそうになったが、飛んで避けながら踏みつける。
 そこへ飛び蹴りがきたので軽く横に避けて足を脇に挟むと、振り回して投げ飛ばす。

「ドスコイ!」

 飛ばした方向には力士がいて、張り手でさらに吹っ飛ばされていた。

「ドスコイ!」

 力士の張り手でさらに数人吹っ飛ぶ。そこへ男子2人がタックルして止めにかかった。

「ふんぬっ!」

 力士がタックルしてきた2人を振り払おうとしたが、タックルをしている2人の背中を踏み台にして飛んだ壱が顔に飛び蹴りをくらわせた。

「ぬっ!」

 しかし、それでも倒れないのはさすが力士。

「ドスコイ!」

 力士はしがみつく2人を吹き飛ばすと壱に狙いをつけたので公が背後から膝裏に蹴りを打ち込んで片膝をつかせることに成功。

「よし!」
「ナイス!」

 周りからも誉めの言葉が飛んできた。そして、このチャンスを逃すまいと力士への一斉攻撃で倒しにかかった。
 そんな中、公は1人の少女が乱闘の中を何事もなく歩いていく姿に驚いてると少女と一瞬目があった。
 直後、頬に拳をくらった。
 痛みをこらえて相手を殴り返して少女のもとへいこうとするが、すぐに拳が飛んできて足を止められた。

"さっきの少女は?"

 公は攻撃を避けながら少女を探すが、見つからない。そのことを不思議に思っていると、

「カツサンド売り切れだよー!」

 売店のおばちゃんの言葉に「あー!」という叫び声があがったが、それでも争いは終わることはない。
 公はさらに1人を殴り倒したが、直後背後からタックルを受けて吹っ飛ばされた。

「ぐっ!」

 背中の痛みに耐えていると、女子の蹴りをお腹にくらった公。しかし、すぐに足を掴んで軸足をはらってこかすと、前宙からのかかと落としをお腹にくらわして倒した。
 公が起き上がると左右から拳が飛んできたのでしゃがんで避けたのだが、そこへ女子の低空ドロップキックがきたので腕をクロスさせて受け止めたが吹っ飛ばされた。

「ドスコイ!」

 まだ倒れていなかった力士が最後のあがきで手当たり次第に張り手を打ちまわる。
 さすがにこれでは力士に近づけない。

「めんどくせー!」

 誰かの叫びに残ってる生徒は頷いた。
 すると、数人の男子で力士の両手を押さえつけると前からは男子、後ろからは女子が攻撃してようやく力士が倒れた。

『よっしゃー!』

 力士を倒したことへの雄叫びがあがったが、すぐに争いが再開された。
 公のところにも5人やってきた。
 ダメージが蓄積されてきている公は内心で「クソッ!」と毒ついていると、拳や蹴りが飛んできたので公は諦めて攻撃をくらって気絶した。


          ◇


 目が覚めた公は体に痛みがないことに違和感を感じた。

 あぁ。それは午後の授業に支障がでないように治るようになってるからね。

「大丈夫ですか?」

 その声に慌てて横を見ると、先ほど争いの中をスイスイと歩いていた少女がいた。

「大丈夫ですか?」
「あっ、はい」
「そうですか。よかったです」

 微笑んだ少女はレジ袋からあんパンを公のお腹に置くと、自分はカツサンドを取り出して食べ始めた。

「えっと………。これくれるんですか?」

 少女は食べながら頷いた。

「ありがとうございます」

 公がお礼を言っていると、壱がレジ袋を持ってやってきたのだが、少女がいることに驚いていた。

「よう、つき。やっぱり今日もきてたんだな」
「壱先輩。もちろんです。購買で買わないと私のお昼がなくなるです」
「そうだったな」

 壱は苦笑しながら公を見ると、公があんパンを持っていることに驚いた。

「公。そのあんパンはどうしたんだ?」
「貰いました」

 そう言いながら公が月を見ると、月が頷いた。それを見て壱はさらに驚いて固まってしまった。

「壱先輩?」

 公が声をかけるも、壱の反応はない。
 そのことに公は首を傾げるが、月は気にした様子もなくカツサンドを食べ続けていた。
 どうしていいかわからない公が月を見ると、カツサンドを食べる手を止めた月は首を傾げた。

「あんパン嫌いですか?」
「いえ。そんなことはないです」
「そう。ならよかったです」

 微笑んでまたカツサンドを食べ始めた月を見てから壱に視線を戻すとまだ壱は固まっていた。

「壱先輩!」
「ハッ!」

 ようやく我に返った壱に公はホッとしていた。

「そんなに珍しいことなんですか?」
「あぁ」

 頷きながら壱が月を見ると、カツサンドを食べ終わった月は壱を見返した。

「彼は私に気づいて驚いていた時に殴られていたです。だから、そのあんパンは驚かしてごめんなさいという謝罪のあんパンです」
「なっ!」

 壱はかなり驚いた様子で公を見たが、公は申し訳なさそうに月を見ていた。

「お金は」
「いらないです」

 そう言って月は立ち去ってしまった。なので、公は困り顔で壱を見た。

「月がいいって言ってるんだから貰っとけ。しかし、よく新月状態の月を気づけたな」
「新月状態?」
「あぁ。月には2つの状態、満月と新月があって、新月状態の月は姿が見えず、気配も感じられないから誰も月の邪魔をできないんだよ」
「あぁ。だからあの中を普通に歩いていけたんですね。スゴいですね」

 感心して公が頷いていると、壱は額に手を当てた。

「それを見つけたお前も十分スゴいからな」

 そう言いながら壱は公にメロンパンを差し出した。

「これは」
「いきなりあの中を生き残ることはできないと思ってたからついでに買っといたからやるよ」
「じゃあお金を」
「購買デビュー祝いだからお金はいらないさ」

 壱は手を振って教室に帰っていってしまったので、公はあんパンとメロンパンを持って教室に帰った。

「おかえり。購買はどうだった?」
「確かにスゴかったな」

 公は桜の隣に座った。

「でも、ちゃんとパンは買ってこれたんだな」
「あぁ。これは自力で買ったパンじゃなくて貰い物だよ」

 公はあんパンにかぶりついた。
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