私のための小説

桜月猫

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32話

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          ☆


「えーと、なんで萌衣がここにいるのかな?」
「作者に1つ言いたいことがあったのでやって来ました」
「そんな簡単に来れる場所じゃないはずなんだけど、まぁいいか。それで、なにかな?」

 すると、萌衣は俺をまっすぐ真剣な眼差しで見てきた。

「私の出番が少なくないですか?」
「いや、そんなことないよ。それに萌衣より出てきてない登場人物もいるし、結局学校がメインだからどうしても出番が少なくなる登場人物もいるよ」

 俺の答えに納得していない萌衣が迫ってきた。

「私の出番をもっと増やしてください。そうじゃないと公様にメイドとして認めてもらえません」
「と、言われても、少しの間出てくる予定はないから」
「えっ?」
「というわけで本編へGO!」


          ☆


 土曜日。
 生徒会主宰のお花見パーティーに参加するために、同じく招待状を受け取った楓や蛍とともに学校にやって来たのだが、その後ろには桜と暁と薫がついてきていた。

「なんでついてきてるんだ?」
「楽しそうだったから~」

 手を上げて答える暁に苦笑した公は桜達を見た。

「桜や薫もそんな感じでついてきたのか?」
「私の場合はなんで公達だけが呼ばれたのかが気になったっていうのもあるわね」

 つまり、「なんで私が呼ばれてないのに公が生徒会主宰のお花見パーティーに呼ばれてるのよ」と嫉妬したってわけね。

「それはないわね」

 はいはい。そういうことにしといてあげるね~。

「ムカつくわね。そのわかってるわよって感じの上から目線の言葉」

 ところで、薫もそんな感じなのかな?

「私は、最近私だけかまってくれない公についてきただけ」

 公の袖を掴んだ薫。
 入学してからの土日は舞や夢とデートしたり、史の仕事の手伝いなどをしていたりして薫にかまってあげれていないので、公は袖を掴む手を振りほどけなかった。
 そうこうしているうちにやって来た校門には警備員が立っていた。

「はい。招待状見せてくれるかな」

 公・楓・蛍の3人は招待状を持っているので見せたが、持っていない3人は首を振った。

「すまないが、今日は招待状を持っている人間しか中に入れないから、持っていない3人はここを通せないんだ」
『えー』

 暁や薫のあげた声に警備員は苦笑していた。

「どうしてもですか?」

 少し粘ってみる桜。

「あぁ」
「見逃してくれませんか~」
「あいにく、今日の私の仕事は招待状を持たない人間を中に入れないことなんでね。こればかりは見逃せないよ」

 警備員の頑なな言葉に3人は諦めて帰っていった。その後ろ姿を見送った公達が中へと入ると、廻が3人を待っていた。

「よく来たな、公、楓。君は公のクラスメートの蛍だな」
「はい」
「俺は生徒会役員の廻。招待状をもらえるか?」

 3人が差し出した招待状を受け取った廻。

「それじゃあついてきてくれ」

 3人を引き連れて廻がやって来たのは生徒会室。
 花見パーティーをするはずなのに生徒会室に連れてこられて不思議がっている3人にニヤリと笑みを向けた廻は、生徒会バッチを壁にあてた。次の瞬間、壁が開いてエレベーターが現れた。

『!!!』

 驚く3人を見て廻は笑いだした。

「まぁ、初めて見るとそういう反応になるよな」
「廻先輩。これは?」
「公に先輩なんて言われると変な感じだが、とりあえず乗れ」

 3人は言われるがままエレベーターに乗り込むと、廻も乗り込んで扉を閉めた。するとエレベーターは勝手に動き出した。

「それで、これはどこに行くんだ?」
「もちろん花見会場に決まってるだろ」

 公のため口など気にしていない廻は笑いながら答えた。

「でも地下に向かってるよな?」

 公のもっともな疑問を笑顔でかわした廻。

「それより、なんで学校にこんな秘密基地みたいな設備があるのかしら?」

 そっちのほうが気になった楓は廻を見た。

「それは作者に聞け。それに、これは秘密基地なんてありふれたものとは全くの別物だしな」
「どういうことなのよ?」
「それは、ついてからのお楽しみだな」

 いたずらっ子のような笑みを浮かべる廻に、楓は困ったようにため息を吐いた。
 そんな中、1人話に入れない蛍は公を見た。

「2人は廻先輩と知り合いなの?」
「あぁ。廻先輩は暁のお兄さんだからな」
「なるほど」

 納得した蛍に廻が微笑みかけた。

「そういうわけだから、暁共々よろしくな」
「よろしくお願いします」

 チンとタイミングよくエレベーターが止まって扉が開くと、その先の光景に3人は驚きの表情で固まった。

「くっくっく。その驚く顔が見たかったぜ」

 3人の前に広がる光景は、青い空にキレイな緑が広がる岬。その岬の先には1本の大きくキレイな桜が満開に咲き誇っていた。さらには微かに聞こえる波の音。

「え~と………」

 何を言っていいのかわからない公はとりあえず廻の顔を見た。

「驚いたろ?」
「えぇ」
「これは驚きます」
「一体どういうことなんだ?地下におりてきたはずだよな?」
「普通に考えればそうなんだが、作者が言うにはここは学校の地下じゃなくて別世界らしい」

 その通り!ここは季節ごとの行事を行うためだけに作った特殊空間だ!

「ということだから深くは考えるな」
「そうしたほうがいいみたいだな」

 気持ちを切り替えた3人は廻とともにエレベーターをおりて桜の下で待つ夏達のもとへ。そこには夏達と向かい合って座る蛙と雪と男女2人。それをみて公は蛙の隣に座り、楓と蛍も座った。
 最後に廻が生徒会メンバー側に座ると秋が立ち上がった。

「今回は休日にも関わらず、生徒会主宰のお花見パーティーに参加してくれてありがとう。食べ物・飲み物は自由に食べたり飲んだりしてもらってかまわないから楽しんでちょうだい」

 秋の言葉が終わると、男子が手を上げた。

「なにかしら?」
「今日ここに呼ばれた理由はなんですか?」

 すると、秋は夏の腰を肘でつつく。つつかれた夏は渋々といった感じで話し出す。

「今日みんなを呼んだのは生徒会へのお誘いが理由です」
「いきなり新入生を生徒会に入れるのですか?」

 雪は驚いていた。

「はい。もちろん、入るかどうかは皆さんしだいですけどね」

 夏は安心させるように微笑んだ。

「どうしてそんなことをするんですか?」

 蛙の問いかけに、壱が答えた。

「後進の育成のためさ。そのために早いうちに生徒会に入って慣れてもらおうってことさ」
「どうして俺達が選ばれたんですか?」

 公が1番に疑問に思うところはそこだった。1年が生徒会と面と向かって会うのは夏以外ではこれが初めてなのだから。

「それはハイキング合宿でのみんなの行動を観察していた先生達の推薦だからデス」
「それ以外にも、部活に入っていないという条件を満たした新入生からピックアップされたのがここにいる7人ってわけさ」

 ハルと廻の言葉を聞いてもまだ納得しきれない様子の7人を見て、冬が手を叩いた。

「とりあえず、自己紹介をしましょうか」

 とはいっても、すでに登場している人間の紹介を書いても無駄なので、初登場の人間だけ紹介を書こう。

「生徒会執行部の部長をつとめているさばきだ。執行部の仕事は風紀違反の取り締まりなどを行うことだ」
「生徒会の実働部隊と考えてもらっていいわ。そして、私は副部長のきずなよ」

 他に8名いるのだが、名前を考えることがめんどくさいので割愛して、1年の男女2人の紹介にいこう。

「1年9組のりゅうです」
「1年2組の万結まゆです」

 全員の自己紹介が終わった。

「とりあえず、今日は顔合わせ程度にしか考えてないからどうするかはゆっくり考えてみてね。というわけで、あとはぞんぶんにお花見を楽しみましょう」

 しかし、戸惑いのほうが大きいので公達。
 そんな公達の間に生徒会や執行部のメンバーが入って和ますために色々と話をしたり料理を勧めたりして騒ぎ始めた。


          ◇


 お花見パーティーが終わり、帰り道。

「公はどうするの?」

 楓の問いに公は頭を掻いた。

「雰囲気はよかったし、入ってもいいかなとか思ったけど、とりあえずは保留かな」
「そうなんだ」
「そういう楓はどうするんだ?」
「私も保留ね」
「そうか」
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