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16話
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ハイキング合宿1日目。
校庭に集まった1年生達の点呼を担任がとり、全員が集まったのを確認したらバスに乗り込んだ。
1班の公達はバスの1番後ろの5人席に座ることになったのだが、中二が真ん中に座ると騒ぎ出したので公がアイアンクローで黙らせて端に座らせ、その隣に公が座り、その隣から蛍・牡丹・由椰の順に座った。
他の班も決められた席に座ると先生が人数を確認するとバスが動きだし、ガイドのお姉さんがマイクを持って前に立った。
「みなさん。おはようございます」
『おはようございます!』
「元気でいいですね」
ガイドさんが微笑むと、一部の男子が叫んだ。
「目的地の高原までの短い間ですけど、みなさんをご案内するガイドです。よろしくお願いします」
『お願いします!』
元気いっぱいの返事が特に男子達から返ってきた。
「みなさんは今年入学されたばかりの新入生のみなさんだと聞きましたが」
「そうでーす!」
庵が立ち上がったが、横から伸びてきた手によってすぐに座らされた。
「元気がいいのはいいことなんですが、危ないので立たないでくださいね」
「ふっ。これぐらい我にとっ!」
危ないから立つなと言われたのに早速立った中二のわき腹に拳を打ち込んで座らせた公。
「え~と」
苦笑ぎみのガイドさんだが、そこはプロなので、すぐに気持ちを切り替えた。
「新しい友達はできましたか?」
『はーい』
クラスの半分が返事をした。
「新しい友達ができた人もできていない人もこの合宿で新しい友達ができるといいですね」
『イェーイ!』
みんなはどんなテンションで叫んでいるのだろうか?
「さーな。なにも考えてないんだろう」
公は冷静にクラスメート達を見ていた。
そうだな。じゃないとあんな変なテンションにならないよな。
「友達を作りたいかー!」
『イェーイ!』
「100人作りたいかー!」
『イェーイ!』
「ハワイに行きたいかー!」
『イェーイ!』
なんかガイドまで変なテンションになってきてるな。
「お前がそう仕向けてるんだろ?」
イェーイ!
というわけで、変なテンションのまま目的地の高原に到着。
「それぞれのロッジに荷物を置いたらバーベキュー場に集合だから、ロッジでダラダラしないように。遅いと昼食は抜きですからね」
向日葵が注意事項を言い終えると、公達はロッジに向かった。
10人用のロッジにはすでに他のクラスの人達がいて思い思いの壁際に荷物を置いていたので、公と蛍も壁際に置いたのだが、中二は部屋の真ん中に荷物を置いた。
「フハハ。我こそこのロッジの支配者!」
また中二が中二病発言をし始め、他のクラスの人達はひいていた。
ため息を吐いた公はドロップキックで中二をぶっ飛ばし、足を持ってひきずって回収する途中で荷物も蹴っ飛ばして一緒に回収する。
「うちのバカが騒がせてすまなかったな」
公が謝ると、周りからは「苦労してるんだな」という視線と苦笑が返ってきた。そんなみんなに苦笑を返した公は中二の頬を叩いて起こす。
「き、貴様………」
「早くしないと昼食なしになるぞ」
中二を放置し、蛍だけを連れてロッジを出た公。
「待てよ!」
慌てて追ってきた中二と一緒にバーベキュー場にやって来た。生徒全員が集まると、学年主任が前に立った。
「しおりを見てわかっていると思うが、今日の昼と夜、明日の夜はここで自分たちでご飯を作ってもらう。
食材と食器は先生の後ろにある食堂の中から使う量だけ持っていくといい。ただし、食材はちゃんと使いきった上で食べきること。残したら次からはこちらから作る料理と食材の量を指定させてもらうからな。あと、食器もきちんと返すこと。割ったりもするなよ。食器を片付けなかった場合は最終日の掃除をその班だけでやってもらうからな。刃物と火を使うから気をつけろよ。ふざけている班は飯抜きにするからな。昼食の時間1時まで。あとは班ごとに話し合って行動しろ」
注意事項を聞き終えたので、早速行動を始める公達。
「中二。火を起こしておいてくれ」
「ふっ。我に火を起こせだと?なぜそんなくだらんことをしないといけない!」
「働かなかったら飯は食わせねーからな」
そう言い残して公は蛍達と食堂へ入った。
「牡丹と由椰は食器を先に運んで置いてくれるか?」
「わ、わかりました」
「了解!」
2人の返事を聞いた公は蛍とともに食料庫へ。食料庫の入り口に置いてあったかごを手に中に入る2人。
先週の話し合いで中二以外の全員が料理できるとわかったので、今日の昼は蛍、夜は牡丹と由椰、明日の夜は公が主体となって料理を作ると決めていた。なので、蛍の指示通りの食材をかごに入れていく公。
食材の確保が終わり、調理器具を持って調理場所に戻ると、
「フハハ!燃えろ!燃えろ!」
中二が中二病全開で炎の前に立っていた。
「ふむ」
頷いた公は食材と調理器具を調理台に置くと、後ろからアイアンクローで頭をおもいっきり握ってやった。
「イタタタタタタ!」
「飯を食いたければおとなしく、マトモに作業しろ。次、中二病な言動しやがったら問答無用で飯抜きにするぞ」
「わ、わかったから!離してくれ!」
不安はあるが、了承したので公が離してやると、中二は頭を抱えてうずくまった。
「食器持ってきたよ~!」
牡丹と由椰が帰ってきたので調理を始める。
蛍の考えたお昼の献立はご飯に鰆の塩焼きに肉じゃが、玉子焼きにおひたしにお味噌汁と和風の献立だ。
「蛍。なにから始めるんだ?」
「肉じゃがの下ごしらえからだから、公は野菜の皮をむいて適当な大きさに切り揃えてね」
「了解」
「私は?」
蛍は昆布と水を鍋に入れて牡丹に渡した。
「牡丹はこの鍋を火にかけて、沸騰したら昆布出してね」
「はーい」
出汁から味噌汁作るんだね。
「そのほうが美味しいし、それほど時間がかかるようなことでもないからね」
そうなのかもしれないけど、でもやっぱりその手間がめんどくさいんだよね~。
「ふふ。そうかもね」
笑いながら蛍がお米を洗っていると、由椰が蛍に近づいてきた。
「わ、私はなにをすればいいんですか?」
「由椰はおひたしにするほうれん草を茹でてくれる?」
「わかりました」
拳を握った由椰はほうれん草と鍋を持っていった。
「中二」
「我を呼んだか?」
蛍はお米と水を入れた飯ごうと炊き方の書いた紙を中二に渡した。
「この紙に書いてあるやり方でご飯炊いてね」
「我に任しておけ。最高のご飯を炊いてやろう」
飯ごうを持っていった中二と入れ替わりに公がやって来た。
「野菜切り終わったぞ」
「ありがとう」
蛍が野菜と肉と調味料を鍋に入れている姿を見ていた公は、こちらに走ってくる少女に気づいた。
「牡丹ー!」
少女は鍋から昆布を出していた牡丹に抱きついた。
「蘭。どうしたの?」
「助けてー!」
蘭は牡丹に泣きついた。
「ちょっと待ってね。蛍。沸騰したから昆布あげたよ~」
「は~い」
蛍の返事を聞いた牡丹はまず蘭を落ち着かせた。
「それで、どうしたの?」
「私達の班に料理できる人がいなかったから」
それは災難だったね~。
「簡単に作れる料理にしようってなったんだけど」
それが無難だろうね~。
「男子2人の意見が対立しちゃって」
またまた災難だね~。
「作者。いちいち入ってくるな。読者が読みづらいし聞きづらいだろが!」
2人のもとに公がやって来た。
いや。2人の会話を公が聞いてる必要はないんじゃない?
「あー。ついついツッコんじまったな」
頭を掻いた公は2人に苦笑を向けた。
私達、女の子の会話を盗み聞きしたり入ってきたらダメだよ。
「お前が言うと違和感バリバリだよ!」
今の私は女だよ!
「コロコロ性別変わってるヤツがなにいってやがる!」
「アハハ。おもしろいね、君」
蘭の笑い声で公はハッとする。
「すまん。急いでいるのに邪魔しちゃって」
「そうだった!早くどうにかしないとお昼が終わっちゃう!」
蘭は頭を抱えた。
「ここで悩んでも仕方ないし、とりあえず君の班の調理場所に行かない?」
公の提案に蘭はどうすればいいかわからずに牡丹を見た。蘭の視線を受けた牡丹は公を見た。
「一緒に行ってくれるの?」
「男子同士の争いだからな。蛍、由椰。俺と牡丹抜けていいか?」
「いいよ」
「が、頑張ります」
「行こう」
2人の返事を聞いた公は牡丹と蘭を促した。
「蘭行こ」
「うん」
蘭を先頭に公達は走り出した。少しして、にらみ合う男子2人に諦めモードの女子2人が見えてきた。
「みんなー!」
男子2人はまだ睨みあっているが、女子2人は蘭の声に反応して公達を見た。
「蘭。その2人は?」
「助っ人だよ」
蘭は笑顔で公と牡丹を2人に紹介した。
「2人はなにとなにで争って睨みあってるんだ?」
「カレーと焼きそばよ」
答えを聞いた公は少し考えてすぐに結論を出した。
「牡丹。焼きそばの材料を持ってきてくれるか?」
「いいの?」
「あぁ。あの2人は俺が説得しとくよ」
できるの?
「やるしかねーだろ」
その言葉を聞いた牡丹は1度公を見てから材料を取りに行った。そのあとを蘭も追った。その後ろ姿を見送った公は男子2人の間に割り込んだ。
「誰だテメェ!」
「邪魔するな!」
「そうやって睨みあってる間にも時間は無くなっていくんだぞ」
「だったらさっさと作れるカレーだろ!」
「それよりか焼きそばのほうが簡単だって言ってるだろ!」
「やかましい!」
公はためらうことなく2人の頭を殴った。
おう。大胆だね~。
"手っ取り早く黙らすには1番だからな"
『イテーな!』
2人の抗議はもっともなもなだが、公は聞く耳をもたない。
「料理したことないヤツがあーだこーだ言ったところで意味ねーんだよ」
『なんだと!』
「じゃあ聞くが、5人分に必要な材料の量はどれだけだ?材料の下ごしらえには何分かかって、調理には何分かかる?後片付けの時間は何分かかるんだ?」
『…………………………』
公の問いには男子達だけじゃなく女子達もなにも言えなかった。
「それがわからないくせにあーだこーだ言うんじゃねーよ」
「じゃあ、お前は分かるのかよ!」
反撃とばかりに男子が公に噛みついた。
「わかるからこうして止めに入ったんだよ」
「公。焼きそばの材料持ってきたよ~」
タイミングよく牡丹と蘭が帰ってきた。
「あとは俺1人で大丈夫だから牡丹は班のほうに戻ってくれ」
「それじゃあ頼んだね~」
牡丹はあっさりと走っていってしまった。
「さて、手伝うから焼きそば作るぞ」
「なんで焼きそばなんだよ」
カレーをおしていた男子がすねていた。
「今から素人と一緒につくるなら焼きそばのほうが簡単なんだよ」
「………わかったよ」
しぶしぶ受け入れた男子。
「なら、最初は………」
男子が納得したので早速公は指示をしながらみんなで焼きそばを作り、無事に人数分の焼きそばを作り上げて班のほうに戻ってきた。
テーブルの上にはすでに料理が出来上がっていて、みんな公が帰ってくるのを待っていた。
「おつかれ~。ありがとうね」
「お疲れ様」
「お、お疲れ様です」
「遅いぞ」
1人文句が飛んできたが、公は気にすることなく着席した。
「それじゃあ食べようか」
蛍の言葉で5人は手を合わせ、
『いただきます』
校庭に集まった1年生達の点呼を担任がとり、全員が集まったのを確認したらバスに乗り込んだ。
1班の公達はバスの1番後ろの5人席に座ることになったのだが、中二が真ん中に座ると騒ぎ出したので公がアイアンクローで黙らせて端に座らせ、その隣に公が座り、その隣から蛍・牡丹・由椰の順に座った。
他の班も決められた席に座ると先生が人数を確認するとバスが動きだし、ガイドのお姉さんがマイクを持って前に立った。
「みなさん。おはようございます」
『おはようございます!』
「元気でいいですね」
ガイドさんが微笑むと、一部の男子が叫んだ。
「目的地の高原までの短い間ですけど、みなさんをご案内するガイドです。よろしくお願いします」
『お願いします!』
元気いっぱいの返事が特に男子達から返ってきた。
「みなさんは今年入学されたばかりの新入生のみなさんだと聞きましたが」
「そうでーす!」
庵が立ち上がったが、横から伸びてきた手によってすぐに座らされた。
「元気がいいのはいいことなんですが、危ないので立たないでくださいね」
「ふっ。これぐらい我にとっ!」
危ないから立つなと言われたのに早速立った中二のわき腹に拳を打ち込んで座らせた公。
「え~と」
苦笑ぎみのガイドさんだが、そこはプロなので、すぐに気持ちを切り替えた。
「新しい友達はできましたか?」
『はーい』
クラスの半分が返事をした。
「新しい友達ができた人もできていない人もこの合宿で新しい友達ができるといいですね」
『イェーイ!』
みんなはどんなテンションで叫んでいるのだろうか?
「さーな。なにも考えてないんだろう」
公は冷静にクラスメート達を見ていた。
そうだな。じゃないとあんな変なテンションにならないよな。
「友達を作りたいかー!」
『イェーイ!』
「100人作りたいかー!」
『イェーイ!』
「ハワイに行きたいかー!」
『イェーイ!』
なんかガイドまで変なテンションになってきてるな。
「お前がそう仕向けてるんだろ?」
イェーイ!
というわけで、変なテンションのまま目的地の高原に到着。
「それぞれのロッジに荷物を置いたらバーベキュー場に集合だから、ロッジでダラダラしないように。遅いと昼食は抜きですからね」
向日葵が注意事項を言い終えると、公達はロッジに向かった。
10人用のロッジにはすでに他のクラスの人達がいて思い思いの壁際に荷物を置いていたので、公と蛍も壁際に置いたのだが、中二は部屋の真ん中に荷物を置いた。
「フハハ。我こそこのロッジの支配者!」
また中二が中二病発言をし始め、他のクラスの人達はひいていた。
ため息を吐いた公はドロップキックで中二をぶっ飛ばし、足を持ってひきずって回収する途中で荷物も蹴っ飛ばして一緒に回収する。
「うちのバカが騒がせてすまなかったな」
公が謝ると、周りからは「苦労してるんだな」という視線と苦笑が返ってきた。そんなみんなに苦笑を返した公は中二の頬を叩いて起こす。
「き、貴様………」
「早くしないと昼食なしになるぞ」
中二を放置し、蛍だけを連れてロッジを出た公。
「待てよ!」
慌てて追ってきた中二と一緒にバーベキュー場にやって来た。生徒全員が集まると、学年主任が前に立った。
「しおりを見てわかっていると思うが、今日の昼と夜、明日の夜はここで自分たちでご飯を作ってもらう。
食材と食器は先生の後ろにある食堂の中から使う量だけ持っていくといい。ただし、食材はちゃんと使いきった上で食べきること。残したら次からはこちらから作る料理と食材の量を指定させてもらうからな。あと、食器もきちんと返すこと。割ったりもするなよ。食器を片付けなかった場合は最終日の掃除をその班だけでやってもらうからな。刃物と火を使うから気をつけろよ。ふざけている班は飯抜きにするからな。昼食の時間1時まで。あとは班ごとに話し合って行動しろ」
注意事項を聞き終えたので、早速行動を始める公達。
「中二。火を起こしておいてくれ」
「ふっ。我に火を起こせだと?なぜそんなくだらんことをしないといけない!」
「働かなかったら飯は食わせねーからな」
そう言い残して公は蛍達と食堂へ入った。
「牡丹と由椰は食器を先に運んで置いてくれるか?」
「わ、わかりました」
「了解!」
2人の返事を聞いた公は蛍とともに食料庫へ。食料庫の入り口に置いてあったかごを手に中に入る2人。
先週の話し合いで中二以外の全員が料理できるとわかったので、今日の昼は蛍、夜は牡丹と由椰、明日の夜は公が主体となって料理を作ると決めていた。なので、蛍の指示通りの食材をかごに入れていく公。
食材の確保が終わり、調理器具を持って調理場所に戻ると、
「フハハ!燃えろ!燃えろ!」
中二が中二病全開で炎の前に立っていた。
「ふむ」
頷いた公は食材と調理器具を調理台に置くと、後ろからアイアンクローで頭をおもいっきり握ってやった。
「イタタタタタタ!」
「飯を食いたければおとなしく、マトモに作業しろ。次、中二病な言動しやがったら問答無用で飯抜きにするぞ」
「わ、わかったから!離してくれ!」
不安はあるが、了承したので公が離してやると、中二は頭を抱えてうずくまった。
「食器持ってきたよ~!」
牡丹と由椰が帰ってきたので調理を始める。
蛍の考えたお昼の献立はご飯に鰆の塩焼きに肉じゃが、玉子焼きにおひたしにお味噌汁と和風の献立だ。
「蛍。なにから始めるんだ?」
「肉じゃがの下ごしらえからだから、公は野菜の皮をむいて適当な大きさに切り揃えてね」
「了解」
「私は?」
蛍は昆布と水を鍋に入れて牡丹に渡した。
「牡丹はこの鍋を火にかけて、沸騰したら昆布出してね」
「はーい」
出汁から味噌汁作るんだね。
「そのほうが美味しいし、それほど時間がかかるようなことでもないからね」
そうなのかもしれないけど、でもやっぱりその手間がめんどくさいんだよね~。
「ふふ。そうかもね」
笑いながら蛍がお米を洗っていると、由椰が蛍に近づいてきた。
「わ、私はなにをすればいいんですか?」
「由椰はおひたしにするほうれん草を茹でてくれる?」
「わかりました」
拳を握った由椰はほうれん草と鍋を持っていった。
「中二」
「我を呼んだか?」
蛍はお米と水を入れた飯ごうと炊き方の書いた紙を中二に渡した。
「この紙に書いてあるやり方でご飯炊いてね」
「我に任しておけ。最高のご飯を炊いてやろう」
飯ごうを持っていった中二と入れ替わりに公がやって来た。
「野菜切り終わったぞ」
「ありがとう」
蛍が野菜と肉と調味料を鍋に入れている姿を見ていた公は、こちらに走ってくる少女に気づいた。
「牡丹ー!」
少女は鍋から昆布を出していた牡丹に抱きついた。
「蘭。どうしたの?」
「助けてー!」
蘭は牡丹に泣きついた。
「ちょっと待ってね。蛍。沸騰したから昆布あげたよ~」
「は~い」
蛍の返事を聞いた牡丹はまず蘭を落ち着かせた。
「それで、どうしたの?」
「私達の班に料理できる人がいなかったから」
それは災難だったね~。
「簡単に作れる料理にしようってなったんだけど」
それが無難だろうね~。
「男子2人の意見が対立しちゃって」
またまた災難だね~。
「作者。いちいち入ってくるな。読者が読みづらいし聞きづらいだろが!」
2人のもとに公がやって来た。
いや。2人の会話を公が聞いてる必要はないんじゃない?
「あー。ついついツッコんじまったな」
頭を掻いた公は2人に苦笑を向けた。
私達、女の子の会話を盗み聞きしたり入ってきたらダメだよ。
「お前が言うと違和感バリバリだよ!」
今の私は女だよ!
「コロコロ性別変わってるヤツがなにいってやがる!」
「アハハ。おもしろいね、君」
蘭の笑い声で公はハッとする。
「すまん。急いでいるのに邪魔しちゃって」
「そうだった!早くどうにかしないとお昼が終わっちゃう!」
蘭は頭を抱えた。
「ここで悩んでも仕方ないし、とりあえず君の班の調理場所に行かない?」
公の提案に蘭はどうすればいいかわからずに牡丹を見た。蘭の視線を受けた牡丹は公を見た。
「一緒に行ってくれるの?」
「男子同士の争いだからな。蛍、由椰。俺と牡丹抜けていいか?」
「いいよ」
「が、頑張ります」
「行こう」
2人の返事を聞いた公は牡丹と蘭を促した。
「蘭行こ」
「うん」
蘭を先頭に公達は走り出した。少しして、にらみ合う男子2人に諦めモードの女子2人が見えてきた。
「みんなー!」
男子2人はまだ睨みあっているが、女子2人は蘭の声に反応して公達を見た。
「蘭。その2人は?」
「助っ人だよ」
蘭は笑顔で公と牡丹を2人に紹介した。
「2人はなにとなにで争って睨みあってるんだ?」
「カレーと焼きそばよ」
答えを聞いた公は少し考えてすぐに結論を出した。
「牡丹。焼きそばの材料を持ってきてくれるか?」
「いいの?」
「あぁ。あの2人は俺が説得しとくよ」
できるの?
「やるしかねーだろ」
その言葉を聞いた牡丹は1度公を見てから材料を取りに行った。そのあとを蘭も追った。その後ろ姿を見送った公は男子2人の間に割り込んだ。
「誰だテメェ!」
「邪魔するな!」
「そうやって睨みあってる間にも時間は無くなっていくんだぞ」
「だったらさっさと作れるカレーだろ!」
「それよりか焼きそばのほうが簡単だって言ってるだろ!」
「やかましい!」
公はためらうことなく2人の頭を殴った。
おう。大胆だね~。
"手っ取り早く黙らすには1番だからな"
『イテーな!』
2人の抗議はもっともなもなだが、公は聞く耳をもたない。
「料理したことないヤツがあーだこーだ言ったところで意味ねーんだよ」
『なんだと!』
「じゃあ聞くが、5人分に必要な材料の量はどれだけだ?材料の下ごしらえには何分かかって、調理には何分かかる?後片付けの時間は何分かかるんだ?」
『…………………………』
公の問いには男子達だけじゃなく女子達もなにも言えなかった。
「それがわからないくせにあーだこーだ言うんじゃねーよ」
「じゃあ、お前は分かるのかよ!」
反撃とばかりに男子が公に噛みついた。
「わかるからこうして止めに入ったんだよ」
「公。焼きそばの材料持ってきたよ~」
タイミングよく牡丹と蘭が帰ってきた。
「あとは俺1人で大丈夫だから牡丹は班のほうに戻ってくれ」
「それじゃあ頼んだね~」
牡丹はあっさりと走っていってしまった。
「さて、手伝うから焼きそば作るぞ」
「なんで焼きそばなんだよ」
カレーをおしていた男子がすねていた。
「今から素人と一緒につくるなら焼きそばのほうが簡単なんだよ」
「………わかったよ」
しぶしぶ受け入れた男子。
「なら、最初は………」
男子が納得したので早速公は指示をしながらみんなで焼きそばを作り、無事に人数分の焼きそばを作り上げて班のほうに戻ってきた。
テーブルの上にはすでに料理が出来上がっていて、みんな公が帰ってくるのを待っていた。
「おつかれ~。ありがとうね」
「お疲れ様」
「お、お疲れ様です」
「遅いぞ」
1人文句が飛んできたが、公は気にすることなく着席した。
「それじゃあ食べようか」
蛍の言葉で5人は手を合わせ、
『いただきます』
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