私のための小説

桜月猫

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12話

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「それでは、実力テストを返却します」
「ギャー!」「あー!」「イヤー!」

 と、半分の生徒の阿鼻叫喚がおきた。

「静かに」

 しかし、今回は阿鼻叫喚がおさまることはなかった。

「し!ず!か!に!」

 向日葵が怒るとさすがに阿鼻叫喚がおさまった。

「では、実力テストを返却します。まず、全教科の平均点を発表します」

 向日葵は各教科の平均点を黒板に書いた。

「国語が56点、数学が50点、社会が49点、理科が53点、英語が55点です。小説高校では平均点から20点引いた点数が赤点なので今回の実力テストでは、国語が36点、数学が30点、社会が29点、理科が33点、英語が35点になります。赤点は1つでも取ると補習で、取りすぎると留年することになるので気を付けてね」

 また阿鼻叫喚が巻き起こる。しかし、今回叫んだのは4分の1だけ。つまり、それだけの生徒が点数に自信がないということだ。
 阿鼻叫喚を止めることなく向日葵は話を続けた。

「テストは春の実力テスト。1・2学期は中間と期末があり、3学期は期末だけの計6回あるから頑張ってね。では実力テストを返却します。出席番号1番から取りにきてください」

  次々と生徒達がテストを取りにいき、公達もテストをもらった。テストを全員に返し終えると向日葵はまた話始める。

「このあとですが、部活や同好会の紹介があるので体育館に移動します。体育館ではクラスごとに並ばないでいいですから自由に座ってください」

 というわけで、クラスの外で公達が立っていると桜達が集まってきたので体育館に向かって歩きだした。

「みんなは部活どうするの~?」

 暁はみんなを見た。

「俺と朧月は漫才研究会だな」

 庵は朧月と肩を組んだ。朧月はイヤがっていないので、朧月も漫才研究会に入るのだろう。

「じゃあ、蛙も漫才研究会に入るのか?」
「俺は入らないな」
「他に入りたい部活があるの?」

 桜の問いに蛙は少し考えた。

「とりあえず今は無いかな」
「蛍は~?」

 暁が蛍を見ると蛍は微笑んだ。

「僕も今はないけど、体が弱いから入るとしても文化部だね。暁は?」
「僕は料理部だね~」
「暁って料理するのか?」

 驚いていた庵は暁を見た。暁は笑顔で頷いた。

「公も料理できるよ~」
「できたほうがなにかと便利だからな」
「僕も料理はするよ」

 蛍も料理すると言ったので、庵はかなり驚いていた。

「ってか、今は部活の話だろ」

 脱線し始めた話を公がもどした。

「そういう公はどうなんだよ」
「俺も決めてないな。桜はやっぱり卓球部なのか?」
「そうね。そうしよう思ってるわ」
「楓はどうするんだい?」
「私も決めていないわ。光は?」

 会話に入ってこないから忘れているかもしれないが、光もちゃんと蛍にくっついてついてきている。しかし、光からの返事はなく、代わりに蛍が答えた。

「光が入るとしたら文芸部じゃないかな」
「クラスでもよく本を読んでいますからね」

 同じクラスの楓はそのことを知っているので蛍の言葉に頷いた。そんなことをしていると体育館にやって来たので適当な席に座った。他のクラスの1年が全員集まると、舞台上に秋が立った。

「今から部活、同好会の紹介が始まります。みなさんはその紹介を見て入りたい部活や同好会があるか探してみてください」

 秋が舞台袖に引っ込むと、アナウンスが流れた。

「では、野球部のみなさん。どうぞ」

 アナウンスの指示で野球部が舞台に上がってきて紹介を始めた。

「どうも、野球部です!僕達野球部は毎日れんし」

 そうして部活・同好会の紹介がどんどん進んでいった。

"ちょっと待て。まだ野球部が部紹介しているのに切るなよ"

 でも、たくさんの部活や同好会の紹介を書いてたらめんどくさいし、読者もそんなの読みたくないでしょ。

"まぁ、それはそうだけど"

 だから大半の部活や同好会はパスね。

「アメフト部、ラグビー部、柔道部、剣道部は諸事情により紹介をカットさせていただきます」

"作者。これは?"

 理由は公達が1番知ってるでしょ?

 私の言葉で公達は昨日の朝のことを思い出していた。

"なるほど"

「次は………」

 さらに部活・同好会の紹介が進んでいき、全てが終わる頃には昼休みになったので、公達は3組に集まってご飯を食べていた。

「そういえば、返ってきた実力テストはどうでした?」

 楓の言葉に固まった庵。

 実力テストの結果は私から発表しよう。

  | 国  語 | 数  学 | 社  会 | 理  科 | 英  語 |
公 |57点|59点|52点|53点|50点|
桜 |59点|55点|58点|55点|60点|
楓 |83点|72点|79点|77点|85点|
暁 |65点|71点|73点|80点|58点|
蛍 |82点|81点|83点|87点|83点|
光 |92点|95点|90点|89点|90点|
庵 |49点|47点|50点|45点|46点|
朧月|42点|96点|74点|99点|38点|
蛙 |89点|90点|88点|93点|91点|

 となっていて、国語と社会では光がトップ、数学と理科では朧月がトップ、英語では蛙がトップだったね。

「確かに庵の点数は全体的に低いわね」

 桜はあっさりとそこに踏み込み、庵にダメージを与えていた。

「公や桜は言ってた通り平均的だね」
「光や蛙はほぼ90点台ってスゴいね~」
「蛍や楓もけっこういい点数じゃんか」

 庵はすねながら蛍や楓を見た。しかし、庵や蛙以外のメンバーは1番気になる朧月を見ていた。

「なんだよ」
「いや、ホントに得意と不得意の差がスゴいなと思ってな」
「理系はほぼ満点なのに~文系は赤点ギリギリってね~」
「ここまで差がある人ってのも珍しいよね」
「苦手科目だと庵にも負けているわね」
「そのくけにあれだけ余裕でいれるんだぜ!」

 ムカついてきた庵は朧月を殴ろうとしたが、朧月は庵の手首を掴んで止めた。

「食事中だぞ」
「ちっ」

 舌打ちした庵は手を引っ込めた。

「でも、なんでそんなに差が出てしまうんだ?」
「わかんねーな」

 首を傾げた朧月はお弁当を食べ続けた。本人が首を傾げてしまったので公達は蛙を見たが、蛙も首をすくめるだけだった。

「で~。公達はなにかいい部活や同好会は見つかった~?」

 暁の問いに、まだ部活や同好会を決めていなかったメンバーは首を振った。

「決まってる暁達は今日から仮入部行くのか?」
「行くよ~」
「もちろん」
「あぁ!」
「そうだな」

 そんなことを話していると昼休みも終わり、桜達は教室に帰っていき、代わりに向日葵が教室に入ってきた。

「今から来週にあるハイキング合宿のしおりを配りますね」

 配られたしおりを見た生徒達は首を傾げた。その中で朧月が手を上げた。

「先生。ハイキング合宿ってなんですか?」
「そうですね。その説明から始めないといけませんでしたね」

 朧月の指摘でそれに気づいた向日葵は頭を掻いて照れていた。

 ハイキング合宿とは、新入生がお互いのことを知って仲良くなるための合宿なんだよ。

「おい作者。先生の説明を勝手にするなよ」

 同じ説明なんだからだれが説明してもいいじゃない。

「そうですね」

 ほら、向日葵もこう言ってるんだからいいでしょ。

「先生。作者を甘やかしたらダメですよ!」
「そうなんですか?」
「そうですよ!」

 公は作者に厳しすぎるんだよ。

「もういい。先生、説明を続けてください」
「わかりました。作者から説明があった通り、新入生がお互いのことを知って仲良くなるための合宿です。合宿は2泊3日で行き先などはしおりを確認してください」

 生徒達は早速しおりを確認し始めた。

「しおりに班が書いてあるので、ハイキング合宿ではその班で動いてもらいますので、名前を確認して班で集まってみてください」

 公が班のページを確認すると1班になっていたので手を上げた。

「1班集まれ!」

 すると、他の生徒達もそれぞれの班で集まり始めた。
 公のところには蛍と少年1人に少女2人が集まったのだが、公は少年の姿を見てなんとも言えなくなった。なぜなら、少年は金髪で右目に眼帯、左腕の肘から下には包帯とあまりにもとんでもない姿だったからだ。公の隣では蛍も苦笑していた。

「とりあえず自己紹介からだな。俺は公だ」
「僕は蛍です」
「わ、私は由椰ゆやです」
牡丹ぼたんでーす!」
「我の名前は中二ちゅうにだ!」

"うん。わかりやすい名前だな"

 中二の名前を聞いた瞬間に公は内心頷き、1つの結論をだした。それは、中二はイタい中二病だという結論だ。

 その通りだよ。公。うまいこと手綱を引かないと暴走するから気を付けてね。

"気を付けてね。じゃねーよ!なんてキャラ作ってんだよ!"

「おい。公。黙りこんでどうした?もしかして我のこの力に恐怖しているのか?」

 そう言いながら中二は左腕を押さえた。

「心配するな。我と敵対しないかぎり、この力がお前に向くことはない」

 見事な中二病発言に公は先がおもいやられ、蛍は苦笑、由椰はひいていて牡丹は笑っていた。蛍はもちろんなのだが、由椰とも意識共有ができそうで公はホッとしていた。

「班で集まったら班長を決めてください」
「ならば我がするしかなかろう!」
「僕は公がするのがいいと思うけど」
「なに!?」

 反論があると思っていなかった中二はかなり驚きながら蛍を見た。

"班長をやる気はなかったのだが、中二にやらせるぐらいなら自分でやるほうがマシか"

 そんな結論を出した公は由椰と牡丹を見て問いかけた。

「2人はどう思う?」
「わ、私は公でいいと思います」
「私は中二じゃなければ誰でもいいよー!」

 2人の答えに中二はさらに驚き、いきなり左腕押さえだした。

「やめろ!こいつらはまだ敵と決まったわけじゃない!おさまれ!」

 また始まった中二による中二病言動。その光景を見ながらため息を吐いた公は中二の頭を叩いた。

「うるさい」
「なにをする!我がこうして押さえていなければ、この腕の力が貴様らを襲うのだぞ!」
「なら、試してやるよ」

 公は中二の左腕の手首と肘の下を掴むと折りにかかった。

「イタタタタタタ!」
「ほら、力を見せてみろ」
「イタい!ギブギブだから!」

 中二が公の腕をタップしてきたので、公は手を離した。

「もし、中二病の言動で話や行動のジャマをしたら、容赦しねーからな」
「貴様!魔王の生まれ変わりか!」

 こりずに中二病発言を中二がしたので、アイアンクローで頭を掴み、握りつぶすいきおいで力を入れた。

「アイタタタタタ!イタい!頭が潰れる!潰れるから!」

 腕をタップされたが、今回はすぐには離さずにたっぷり30秒間力を入れ続けてから離した。アイアンクローから解放された中二は床に倒れこみ、動かなくなった。

「やっぱり公が適任だね」
「わ、私もそう思います」
「だね!」

 3人のお墨付きが出たことで班長は自然と公に決定し、公はハイキング合宿での苦労を考えて大きなため息を吐くのだった。
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