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《祠》の章
【眥】
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「おい、弐沙。いい加減起きろ」
弐沙は頬に痛みが走るのと、誰かが自分の名前を呼んでいる声に気が付く。
目をあけると、其処には、
「い、イリサ……?」
白衣と服を真っ赤に染めた、イリサの姿が其処にあった。
「どうしてお前が朱絆神社なんかに、どうやって」
「弐沙が取り込まれた後にイリサがすぐにやって来たんだ。そして、ものの数分であんな状態さ」
怜が弐沙にそう言って、指をさす。
指された先には、既に沈黙した肉塊が山のようになっていた。
「ベリベリまるで玉葱の皮を剥がすかのように、あの異形を剥がしていって弐沙を引っ張り出したってワケさ」
「……なるほど。不本意ながらイリサに助けられたってわけか」
弐沙は凄く嫌そうな顔をする。
「勝手に所有物が他人に横取りされるのは幾ら僕が怒らない性格とは言え、流石に癪だからな。まんまと罠に引っ掛かりおって」
イリサはそういうと、弐沙の額にデコピンを食らわせる。
「いってぇ」
「よし、痛覚は現存しているな問題なし」
イリサはそう言ってニヤリと笑った。
「……ところで、朱禍は何処へいった」
弐沙は周囲を見回すが、肉の塊が転がっているだけど、朱禍の姿は何処にも見えない。
「あれ? イリサが乗り込んできた時は居たのに。すぐにみそぐを倒していたときは唖然とした顔をしていたよ? 彼」
怜も同じ様に周囲を見回すが、やはり朱禍の姿は見えない。
「……まさか……ドサクサに紛れて逃げたのか?」
『全く、君たちには驚くことばかりだよ……』
何か重いものを引き摺る音と共に物置小屋へ現れたのは、
馬鹿でかい鉈を引き摺る、単眼の赤い髪の鬼だった。
「……朱禍」
弐沙はそんな武器を担いできた朱禍を見上げる。
「まさか、みそぐがすぐにやられるだなんて思わなくてねぇ、準備に手間取ってしまったよ。あとは……」
微笑むように朱禍が笑うと、すでに死んだみそぐの塊の許へと歩みを進める。
そして、まるで慈母のように優しく撫でた。
「今までご苦労であったな、みそぐ。お前の思いは俺が引き継ごう」
そう言って肉を一掴み掴むと。
それを口に入れた。
「く、食った……」
みそぐだったものを次々と口にいれる光景に怜は驚いていたが、弐沙とイリサはその様子をただただ黙って見つめていた。
その間にも、朱禍は肉をもぎっては口にいれ、口は次第に真っ赤のドロドロになりつつあった。
静寂の中に、ぐちゃぐちゃと汚い咀嚼音が木霊する。
「ふぅ、コレで最後だ」
肉の塊が綺麗サッパリと無くなった後、朱禍の手には親指の第一関節くらいまでの大きさの黒い塊みたいなものがあった。
「それが、核か」
「そうだよ。これがみそぐに植えられていた核さ」
そう言って、それをゴクリと飲み込む朱禍。
すると、体全身に無数の眼が生え、ギロッと弐沙達を一斉に睨んだ。
「これだけ、沢山のものに見られると流石に身震いするな」
「へぇ、弐沙は本当に人気者だねぇ、所有者の僕でも嫉妬してしまいそうだ」
弐沙が冷や汗を流しながらそういうと、イリサは冗談交じりにそう返す。
「嫉妬が加速して、さらに呪うとかやめてくれよ。……一沙(いさ)」
「さぁね、それは、弐沙の頑張り次第じゃないかなぁ?」
イリサはそうせせら笑った。
「二人ともそこで痴話喧嘩しない! 朱禍をどうにかしないと」
そんな二人の攻防戦を止める怜。
その最中、朱禍は左腕に異形を宿してクツクツと笑っていた。
「よそ見して怪我をしても知らないよ」
そう言って飛び出したのは、朱禍の方だった。
瞬時に弐沙の目の前までやってくる朱禍、大きな鉈を振り上げる。
「くっ……」
「遅いよ」
弐沙は咄嗟に朱禍の攻撃を避けようとするが、タイミングが遅く、彼の触手に薙ぎ払われるような格好で軽く吹っ飛ばされる。
「くっそ、まるで水を得た魚のように生き生きしてやがる」
体を強打したため起き上がろうとすると、顔が自然と歪む弐沙。
「そりゃ、核ごと体へと取り込んだからだろうな。呪(のろ)いの機構がそのままダイレクトにあやつに力を与えている。核を壊すか取り除くかしか方法は無いだろうね」
そう説明するイリサはどこか他人事のように話す。
「イリサも来たということは、手伝ってくれるんだろうな?」
「まさか。力仕事は僕にとって不得意分野だから、君たち二人にお任せするよ。そもそも、君たちが解決すべき問題だからね。がんばれー」
「イリサは早速高みの見物ってことか。まぁ、いい。あとの治療は頼んだからな!」
弐沙は頬に痛みが走るのと、誰かが自分の名前を呼んでいる声に気が付く。
目をあけると、其処には、
「い、イリサ……?」
白衣と服を真っ赤に染めた、イリサの姿が其処にあった。
「どうしてお前が朱絆神社なんかに、どうやって」
「弐沙が取り込まれた後にイリサがすぐにやって来たんだ。そして、ものの数分であんな状態さ」
怜が弐沙にそう言って、指をさす。
指された先には、既に沈黙した肉塊が山のようになっていた。
「ベリベリまるで玉葱の皮を剥がすかのように、あの異形を剥がしていって弐沙を引っ張り出したってワケさ」
「……なるほど。不本意ながらイリサに助けられたってわけか」
弐沙は凄く嫌そうな顔をする。
「勝手に所有物が他人に横取りされるのは幾ら僕が怒らない性格とは言え、流石に癪だからな。まんまと罠に引っ掛かりおって」
イリサはそういうと、弐沙の額にデコピンを食らわせる。
「いってぇ」
「よし、痛覚は現存しているな問題なし」
イリサはそう言ってニヤリと笑った。
「……ところで、朱禍は何処へいった」
弐沙は周囲を見回すが、肉の塊が転がっているだけど、朱禍の姿は何処にも見えない。
「あれ? イリサが乗り込んできた時は居たのに。すぐにみそぐを倒していたときは唖然とした顔をしていたよ? 彼」
怜も同じ様に周囲を見回すが、やはり朱禍の姿は見えない。
「……まさか……ドサクサに紛れて逃げたのか?」
『全く、君たちには驚くことばかりだよ……』
何か重いものを引き摺る音と共に物置小屋へ現れたのは、
馬鹿でかい鉈を引き摺る、単眼の赤い髪の鬼だった。
「……朱禍」
弐沙はそんな武器を担いできた朱禍を見上げる。
「まさか、みそぐがすぐにやられるだなんて思わなくてねぇ、準備に手間取ってしまったよ。あとは……」
微笑むように朱禍が笑うと、すでに死んだみそぐの塊の許へと歩みを進める。
そして、まるで慈母のように優しく撫でた。
「今までご苦労であったな、みそぐ。お前の思いは俺が引き継ごう」
そう言って肉を一掴み掴むと。
それを口に入れた。
「く、食った……」
みそぐだったものを次々と口にいれる光景に怜は驚いていたが、弐沙とイリサはその様子をただただ黙って見つめていた。
その間にも、朱禍は肉をもぎっては口にいれ、口は次第に真っ赤のドロドロになりつつあった。
静寂の中に、ぐちゃぐちゃと汚い咀嚼音が木霊する。
「ふぅ、コレで最後だ」
肉の塊が綺麗サッパリと無くなった後、朱禍の手には親指の第一関節くらいまでの大きさの黒い塊みたいなものがあった。
「それが、核か」
「そうだよ。これがみそぐに植えられていた核さ」
そう言って、それをゴクリと飲み込む朱禍。
すると、体全身に無数の眼が生え、ギロッと弐沙達を一斉に睨んだ。
「これだけ、沢山のものに見られると流石に身震いするな」
「へぇ、弐沙は本当に人気者だねぇ、所有者の僕でも嫉妬してしまいそうだ」
弐沙が冷や汗を流しながらそういうと、イリサは冗談交じりにそう返す。
「嫉妬が加速して、さらに呪うとかやめてくれよ。……一沙(いさ)」
「さぁね、それは、弐沙の頑張り次第じゃないかなぁ?」
イリサはそうせせら笑った。
「二人ともそこで痴話喧嘩しない! 朱禍をどうにかしないと」
そんな二人の攻防戦を止める怜。
その最中、朱禍は左腕に異形を宿してクツクツと笑っていた。
「よそ見して怪我をしても知らないよ」
そう言って飛び出したのは、朱禍の方だった。
瞬時に弐沙の目の前までやってくる朱禍、大きな鉈を振り上げる。
「くっ……」
「遅いよ」
弐沙は咄嗟に朱禍の攻撃を避けようとするが、タイミングが遅く、彼の触手に薙ぎ払われるような格好で軽く吹っ飛ばされる。
「くっそ、まるで水を得た魚のように生き生きしてやがる」
体を強打したため起き上がろうとすると、顔が自然と歪む弐沙。
「そりゃ、核ごと体へと取り込んだからだろうな。呪(のろ)いの機構がそのままダイレクトにあやつに力を与えている。核を壊すか取り除くかしか方法は無いだろうね」
そう説明するイリサはどこか他人事のように話す。
「イリサも来たということは、手伝ってくれるんだろうな?」
「まさか。力仕事は僕にとって不得意分野だから、君たち二人にお任せするよ。そもそも、君たちが解決すべき問題だからね。がんばれー」
「イリサは早速高みの見物ってことか。まぁ、いい。あとの治療は頼んだからな!」
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