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拾日目その1
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「やはり、今回は金上だったのか」
朝、盛られていた薬の効果が切れ、弐沙達はすぐさま金上を捜索に走った。
そして見つかったのは集会場の中であった。
集会場では体が真っ二つになっていた金上の姿が見つかった。
「断面が荒いけど、綺麗にスパンと切られているね。チェーンソーか何かかな?」
怜は金上の死体をじろじろと見ながら考察を始める。
その様子を集会場の外で見る、酒井と杉溝。
「あれー? 皆、中に入って見ないの」
怜はそのことが気になって外を覗く。
「いや、俺は遠くからでいいです」
「さすがに臓物を間近に見る趣味は生憎ないので」
二人とも怜の誘いを断り、その場から動かない。
「チェーンソーが使われたとなると、相当の騒音が聞こえるはずだよね。私達は薬を盛られていて眠ってしまっていたが、お前らはどうなんだ?」
「あら、やはり薬が盛られていたのね。どおりで昨晩は眠すぎてたまらなかったわけだわ」
「俺も昨日晩は直ぐに寝てしまっていました」
「……そうか」
弐沙は二人の回答を聞いて、返事をする。
「ねーねー、弐沙、これ」
怜は何かを見つけたらしく、弐沙にその場所を指差した。
それは、金上の右手人差し指辺りで、何やら文字が書いている様にも見える。
「なんだか、『ごめ』って見えるなーって」
「……『ごめん』か?」
文字からそう察する弐沙。
「今更懺悔したとしても、もう遅いだろうに……」
弐沙はそう吐き捨てた。
『さぁ、いよいよ残る日はあと一日を残すのみ』
館のとある一室にはスピーカーからそんな声が聞こえた。
「いやぁゾクゾクしてきましたなぁ」
「私も皆さんと同じ気持ちですわ」
館の男女はそのような談笑を始めていた。
「やはり、君に任せておいてよかったよ」
『お褒めに預かり恐悦至極』
「これであの男も翻弄されているし、そろそろ消えてもらうしかないな」
「でも、どうしますの? あの男、弐沙はどんな手を使っても殺せないのですのよ?」
女の言葉に周りがざわつき始める。
「そうだったな、あの男は殺せない。では、どうする?」
『殺せないのであるなら、我々の邪魔をさせないようにするのですよ』
「というと?」
恰幅な男がスピーカーの声に問う。
『“肉体”ではなく“心”を殺すまでです』
スピーカーからは冷酷な声が聞こえた。
「君らしい素晴らしいアイディアだ」
「すばらしい!」
男女は素晴らしいとスピーカーの声の主を賞賛する。
『ありがとうございます。さぁ、神暴きの素晴らしいフィナーレに向けて、皆さん乾杯致しましょう』
スピーカーの声の合図で、男女はワイングラスを手に掲げた。
『我らの神への第一歩に乾杯!』
「乾杯!」
周りはワイングラスを軽くぶつからせ、チンという軽快な音が部屋に鳴り響いた。
「全く呑気な奴らだ」
モニタールームから男女が乾杯している姿を村長は見て嫌な顔をした。
「まぁまぁ、こんな素晴らしい祭りがそろそろ最後なんですから、馬鹿騒ぎだってしたいと思いませんか。ねぇ、村長?」
影はそう言って、モニターをコロコロと切り替えていく。
「弐沙は悩んでいるみたいですねぇ」
モニターに映る、考えあぐねている弐沙の映像を見て、影はニヤッと笑った。
「さぁ、どんどん考えろ。そして、底なしの沼に沈めばいいんだ」
「お前も、アイツによほどの恨みがあるみたいだな」
そんな様子を見て村長が訊ねる。
「村長みたいに恨みなんてありませんよ。“僕”が弐沙に抱くのは強烈な“憧れ”のみです。そんな憧れをこの手に完膚なきまでに叩き潰す、それが“私”の幸せなんですよ」
「理解しがたいな」
「別に理解してくれようだなんて、思っては居ませんよ。だって、“僕”はオカシイ人間なのですから」
「そうか……」
村長はそう一言だけ言ってモニタールームから席を外した。
「弐沙、僕は君が羨ましいよ。君の話を聞いたときにどれだけ興奮して心が躍ったことか。だから、僕はこの神暴きに君を招き、最高のシナリオの作り上げたんだ。早く、君が真実を暴いて、この私が君を再起不能なまでに壊したいんだ。さぁ! さぁ! さぁ!」
モニタールームには影の狂った笑い声が木霊する。
「さぁ、君の処刑日も間もなくだ。それまでは、せいぜい考えて考えて考え抜くんだな。思考の沼に嵌るがいいさ」
そして影は弐沙の映像をドアップして、手でそっと触れた。
「そして、君も私の考えたシナリオの中でもがき踊るといいさ」
朝、盛られていた薬の効果が切れ、弐沙達はすぐさま金上を捜索に走った。
そして見つかったのは集会場の中であった。
集会場では体が真っ二つになっていた金上の姿が見つかった。
「断面が荒いけど、綺麗にスパンと切られているね。チェーンソーか何かかな?」
怜は金上の死体をじろじろと見ながら考察を始める。
その様子を集会場の外で見る、酒井と杉溝。
「あれー? 皆、中に入って見ないの」
怜はそのことが気になって外を覗く。
「いや、俺は遠くからでいいです」
「さすがに臓物を間近に見る趣味は生憎ないので」
二人とも怜の誘いを断り、その場から動かない。
「チェーンソーが使われたとなると、相当の騒音が聞こえるはずだよね。私達は薬を盛られていて眠ってしまっていたが、お前らはどうなんだ?」
「あら、やはり薬が盛られていたのね。どおりで昨晩は眠すぎてたまらなかったわけだわ」
「俺も昨日晩は直ぐに寝てしまっていました」
「……そうか」
弐沙は二人の回答を聞いて、返事をする。
「ねーねー、弐沙、これ」
怜は何かを見つけたらしく、弐沙にその場所を指差した。
それは、金上の右手人差し指辺りで、何やら文字が書いている様にも見える。
「なんだか、『ごめ』って見えるなーって」
「……『ごめん』か?」
文字からそう察する弐沙。
「今更懺悔したとしても、もう遅いだろうに……」
弐沙はそう吐き捨てた。
『さぁ、いよいよ残る日はあと一日を残すのみ』
館のとある一室にはスピーカーからそんな声が聞こえた。
「いやぁゾクゾクしてきましたなぁ」
「私も皆さんと同じ気持ちですわ」
館の男女はそのような談笑を始めていた。
「やはり、君に任せておいてよかったよ」
『お褒めに預かり恐悦至極』
「これであの男も翻弄されているし、そろそろ消えてもらうしかないな」
「でも、どうしますの? あの男、弐沙はどんな手を使っても殺せないのですのよ?」
女の言葉に周りがざわつき始める。
「そうだったな、あの男は殺せない。では、どうする?」
『殺せないのであるなら、我々の邪魔をさせないようにするのですよ』
「というと?」
恰幅な男がスピーカーの声に問う。
『“肉体”ではなく“心”を殺すまでです』
スピーカーからは冷酷な声が聞こえた。
「君らしい素晴らしいアイディアだ」
「すばらしい!」
男女は素晴らしいとスピーカーの声の主を賞賛する。
『ありがとうございます。さぁ、神暴きの素晴らしいフィナーレに向けて、皆さん乾杯致しましょう』
スピーカーの声の合図で、男女はワイングラスを手に掲げた。
『我らの神への第一歩に乾杯!』
「乾杯!」
周りはワイングラスを軽くぶつからせ、チンという軽快な音が部屋に鳴り響いた。
「全く呑気な奴らだ」
モニタールームから男女が乾杯している姿を村長は見て嫌な顔をした。
「まぁまぁ、こんな素晴らしい祭りがそろそろ最後なんですから、馬鹿騒ぎだってしたいと思いませんか。ねぇ、村長?」
影はそう言って、モニターをコロコロと切り替えていく。
「弐沙は悩んでいるみたいですねぇ」
モニターに映る、考えあぐねている弐沙の映像を見て、影はニヤッと笑った。
「さぁ、どんどん考えろ。そして、底なしの沼に沈めばいいんだ」
「お前も、アイツによほどの恨みがあるみたいだな」
そんな様子を見て村長が訊ねる。
「村長みたいに恨みなんてありませんよ。“僕”が弐沙に抱くのは強烈な“憧れ”のみです。そんな憧れをこの手に完膚なきまでに叩き潰す、それが“私”の幸せなんですよ」
「理解しがたいな」
「別に理解してくれようだなんて、思っては居ませんよ。だって、“僕”はオカシイ人間なのですから」
「そうか……」
村長はそう一言だけ言ってモニタールームから席を外した。
「弐沙、僕は君が羨ましいよ。君の話を聞いたときにどれだけ興奮して心が躍ったことか。だから、僕はこの神暴きに君を招き、最高のシナリオの作り上げたんだ。早く、君が真実を暴いて、この私が君を再起不能なまでに壊したいんだ。さぁ! さぁ! さぁ!」
モニタールームには影の狂った笑い声が木霊する。
「さぁ、君の処刑日も間もなくだ。それまでは、せいぜい考えて考えて考え抜くんだな。思考の沼に嵌るがいいさ」
そして影は弐沙の映像をドアップして、手でそっと触れた。
「そして、君も私の考えたシナリオの中でもがき踊るといいさ」
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