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陸日目その2
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拠点へと戻った弐沙は布団を敷いて怜を寝かせる。
まだ怜の意識が戻りそうにはなかった。
「体内に毒が回っているのか……、しかし、2日くらいすれば怜でも解毒出来るだろう」
そう呟きながら掛け布団をかける弐沙。
怜の額に手を当てると、まだ熱が下がりきっていないらしく熱い。
「んー……」
弐沙の手の冷たさで気が付いたのか、怜がうっすら目を開く。
「傷にひびくぞ、寝ていろ」
「まさか弐沙に助けられるとはねー。っつー」
喋ると振動で腹部に痛みが走り、怜は顔を歪ませる。
「大人しくしていろ」
「……はーい」
再び怜は目を閉じた。
その様子をじっと見つめる弐沙。
「まさか、暴き手を直接的に襲撃するようになったか。まだ狩り手サイド以外には私が暴き手とばれていないから私が死んでも強制終了は恐らくありえない。ソレが狙いか」
弐沙は怜の顔をみる。怜は安心しきった顔で寝ている。
「私があの時怜の名前を呼んだから、きっと私のことを始末し損ねたことを理解しているはずだ。明日も襲撃してくるのだろうか。怜には黙って雑木林にでも誘き寄せようか。あそこなら罠が幾つか解除していないのがある。その気になれば傷の一つくらい負わせられる」
はぁ……と弐沙はため息をついた。
「こんな神暴きはこれが始めだ。もはや、これは祭りなんかじゃない……」
弐沙は民家に取り付けてあった監視カメラを睨みつけながら呟いた。
「た だ の 殺 戮 ゲ ー ム だ」
「ははっ。ただの殺戮ゲームですか。実に良いセンスをしている」
監視モニターの前で人影が笑っていた。
「ねぇ、貴方もそう思いません? 村長さん」
爆笑の余り涙を零しながら影は村長に訊ねる。
「神聖な祭りをゲームに揶揄するなんて許せん」
「あー、これだから頭の固い人は困りましたねぇ。もっとユーモアを持ってもらわないと。えーっと一人称は何でしたっけ? あー、“僕”でいいや。僕は面白い人の方が好きなので」
そういって影は頬杖をつく。
「ところで、どうしてアイツをいきなり襲撃しようとなんて思ったんです? 僕は泳がせておけと言ったはずですが?」
ギロリと影は白い人を睨んだ。
「私が頼んだ。これ以上奴の好きにはさせていられないとね」
「そんな余計な事をすれば、更にコチラサイドが危うくなっていくのが何故分からないんです。まぁ、いいでしょう。お陰でもう一人の動きを封じることが出来ました。そこだけは褒めましょう」
クツクツと影は笑う。
「アイツの始末がしたいのなら、僕の、いやこの一人称はこの場面では似合わないな、“私”に責任が回らないようなところでやってくださいね。もし何かあの方達の怒りに触れるようなところがあれば、私の首が飛んでしまうので」
あぁ、物理的にね、と影は付け加えた。
「かしこまりました」
白い人は影に一礼をし、何処かへと去っていった。
「それにしても楽しくなってきましたねぇ、神暴き。そろそろ次のシナリオへと移すことにしましょう」
影はモニターの下から鉈を取り出した。
「今宵の生贄は私自らが“処分する”としましょう。狩り手ではなく、神自ら手を下す。まさに神暴きの原点だ」
そう笑う影の持つ鉈はこれから始まる惨劇を待ちわびるかのように光輝いていた。
パンッ。
夜。弐沙は何やら乾いた音が聴こえて目を覚ました。
「……銃声?」
気になって弐沙は外へと出た。
僅かな光源を頼りに門の方まで向かい、門の更に先を、目を凝らして確かめてみるが、辺りは暗く向こうの様子を確認することは出来ない。
「朝を待つしかないか」
仕方なく、自分の拠点へと戻っていく弐沙。
その様子を白い人は物影からずっと見つめていたのだった。
「アイツ、アイツさえいなければ……」
まだ怜の意識が戻りそうにはなかった。
「体内に毒が回っているのか……、しかし、2日くらいすれば怜でも解毒出来るだろう」
そう呟きながら掛け布団をかける弐沙。
怜の額に手を当てると、まだ熱が下がりきっていないらしく熱い。
「んー……」
弐沙の手の冷たさで気が付いたのか、怜がうっすら目を開く。
「傷にひびくぞ、寝ていろ」
「まさか弐沙に助けられるとはねー。っつー」
喋ると振動で腹部に痛みが走り、怜は顔を歪ませる。
「大人しくしていろ」
「……はーい」
再び怜は目を閉じた。
その様子をじっと見つめる弐沙。
「まさか、暴き手を直接的に襲撃するようになったか。まだ狩り手サイド以外には私が暴き手とばれていないから私が死んでも強制終了は恐らくありえない。ソレが狙いか」
弐沙は怜の顔をみる。怜は安心しきった顔で寝ている。
「私があの時怜の名前を呼んだから、きっと私のことを始末し損ねたことを理解しているはずだ。明日も襲撃してくるのだろうか。怜には黙って雑木林にでも誘き寄せようか。あそこなら罠が幾つか解除していないのがある。その気になれば傷の一つくらい負わせられる」
はぁ……と弐沙はため息をついた。
「こんな神暴きはこれが始めだ。もはや、これは祭りなんかじゃない……」
弐沙は民家に取り付けてあった監視カメラを睨みつけながら呟いた。
「た だ の 殺 戮 ゲ ー ム だ」
「ははっ。ただの殺戮ゲームですか。実に良いセンスをしている」
監視モニターの前で人影が笑っていた。
「ねぇ、貴方もそう思いません? 村長さん」
爆笑の余り涙を零しながら影は村長に訊ねる。
「神聖な祭りをゲームに揶揄するなんて許せん」
「あー、これだから頭の固い人は困りましたねぇ。もっとユーモアを持ってもらわないと。えーっと一人称は何でしたっけ? あー、“僕”でいいや。僕は面白い人の方が好きなので」
そういって影は頬杖をつく。
「ところで、どうしてアイツをいきなり襲撃しようとなんて思ったんです? 僕は泳がせておけと言ったはずですが?」
ギロリと影は白い人を睨んだ。
「私が頼んだ。これ以上奴の好きにはさせていられないとね」
「そんな余計な事をすれば、更にコチラサイドが危うくなっていくのが何故分からないんです。まぁ、いいでしょう。お陰でもう一人の動きを封じることが出来ました。そこだけは褒めましょう」
クツクツと影は笑う。
「アイツの始末がしたいのなら、僕の、いやこの一人称はこの場面では似合わないな、“私”に責任が回らないようなところでやってくださいね。もし何かあの方達の怒りに触れるようなところがあれば、私の首が飛んでしまうので」
あぁ、物理的にね、と影は付け加えた。
「かしこまりました」
白い人は影に一礼をし、何処かへと去っていった。
「それにしても楽しくなってきましたねぇ、神暴き。そろそろ次のシナリオへと移すことにしましょう」
影はモニターの下から鉈を取り出した。
「今宵の生贄は私自らが“処分する”としましょう。狩り手ではなく、神自ら手を下す。まさに神暴きの原点だ」
そう笑う影の持つ鉈はこれから始まる惨劇を待ちわびるかのように光輝いていた。
パンッ。
夜。弐沙は何やら乾いた音が聴こえて目を覚ました。
「……銃声?」
気になって弐沙は外へと出た。
僅かな光源を頼りに門の方まで向かい、門の更に先を、目を凝らして確かめてみるが、辺りは暗く向こうの様子を確認することは出来ない。
「朝を待つしかないか」
仕方なく、自分の拠点へと戻っていく弐沙。
その様子を白い人は物影からずっと見つめていたのだった。
「アイツ、アイツさえいなければ……」
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