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消えたデータ編
その6
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スパーン!!
FM上箕島内の会議室に軽快な音が響き渡った。
「いってぇ……」
放送作家の白樺鬼軍曹に進行表で思いっきり殴れ、俺は頭を押さえて悶絶する。
「毎回毎回、会議中に寝るとは良い度胸しているじゃねぇか、あ?」
進行表を手のひらでポンポンと叩きながら話す鬼軍曹の目は笑っていない。
「色々あって寝不足なんだよ。そこは察して寝かせてくれるものじゃないのか?」
「いや断固として寝かせないぞ。そんなに眠いなら、目覚まし代わりに食らいやがれ」
スッパパパパパーン!!
鬼軍曹の猛烈なアタックに声も出ない。
「……っつー。少しはDJを敬え。この鬼作家め」
「敬って欲しいなら寝ずにちゃんと会議に参加することだな」
「うっ」
鬼軍曹の言葉に、俺が言葉を濁す。
「会議ついでに、話があってだな。カンナ君、今度……」
鬼軍曹が話を始めたそんな時、俺のスマホが振動。着信相手を見ると、史からだった。出ようかどうしようかと考えていると、
「どうせ、あの刑事の兄ちゃんからの電話だろ? この話はまた今度するから、気にせずに電話に出てやれ」
「すまん」
鬼軍曹に一礼を入れて、俺は会議室を出て電話に出る。
「もしもし?」
「ごめん、カンちゃん、もしかして打ち合わせ中だったんじゃない? 今日が月曜日だったってことすっかり忘れてた。今日の担当は例の鬼軍曹さんだし、都合が悪かったらかけ直すけど?」
「いや、大丈夫だ。それより、スティーブ氏と話が出来たか?」
俺の問いに、電話先の史はバッチリ!と答えた。
「犯人の姿は見ていないらしいけど、犯人に大体の見当はついているってさ。それで、カンちゃんの言っていた通り、そのこと前もって察知したから専門機関に通報して、来日したらしいよ」
やっぱり。スティーブ氏は自分が狙われることを想定して通報していたんだ。それで、あの人が……。
「それで、データの在り処は?」
「データバンクに入れているらしいよ。URLしか教えて貰えなかったから、今から送るけど、強固なセキュリティをかけてあるらしいよ。まぁ、【テリトリー】ならものの数秒じゃないかなぁ? セキュリティ突破するの」
「いいのか、警察がそんな反応で。一応、犯罪なんだが」
「カンちゃんは別に悪いことに使わないからノーカンだよ。多分」
史はそんなあやふやなことを言うので、俺は重いため息が出た。
「そうそう、通報した専門機関っていうのが……」
「それは既に分かって、接触済み」
俺の答えに、えー!と耳を劈くような声が返ってきた。
「カンちゃん早いっ! というか、あっちの人に会ったの!? いいなー、うーらーやーまーしーいー。俺も会いたかったよー! 本場の人―!!」
「本場の人って……お前。さて、コレで犯人をどう誘き寄せるかなと」
「誘いに乗ってくれるかなぁー?」
そこは問題ないだろう。だって、あれだけ欲しがっているデータがあるのだから。
「そういえば、彼がデータを欲しがっていた目的ってなんだったんだろう?」
「それも、既に機関が調査済みなんだそうだ。目的は……」
俺は、史に犯人の目的を話す。
「え、そんな事に使おうとしてたの? 完全な悪じゃないですか!」
「既に、関連するところにはマークが入っているらしいぞ。で、あちらサイドと取引をしたから、後は犯人を釣るだけなんだが……」
「カンちゃんさ……」
史は急に真面目な声のトーンで俺に問う。
「どうした?」
「その犯人を釣ろうとしているの、楽しんでない?」
ギクッ。
「あ、今、心の中でギクッて言わなかった?」
こういう時の史の読みは鋭い。俺の心の中が見透かされるようだった。
「踏ん反り返っているヤツをギャフンと言わせると思うと、楽しくならないか?」
「確かに。楽しいかもしれない!」
「だろ? さぁて、どうギャフンと言わせてやろうかなぁ」
「うわぁ……カンちゃんこわーい」
「おっと、そろそろ切るぞ。番組も始まるから」
「あ、ゴメン。頑張ってねー」
史との通話が終わった直後、【テリトリー】経由でデータバンクのURLが送られてきた。
URLを開くと、史の言っていた通り、複数のパスワードがかけられているようなのだが、
「本当だ、コレくらいのセキュリティなら、あっという間に突破できるな」
大丈夫なのか? 重要なデータなんだろ? 企業秘密でももっと頑丈にしているぞ、と思いつつ、【テリトリー】でセキュリティをどんどん突破していく。その間10秒未満。
出現したデータを見て、俺はため息をついた。
「必死に手に入れたいデータがコレねぇ……バッカじぇねぇの? さて、電話するか」
俺はナカタニ氏の名刺を取り出し、スマホから電話を掛けた。
「あ、どうも。先日会った如月ですが、データが見つかったらしいので、ご連絡を……、はい、では、明日の13時に……、場所は……がいいんですね? 了解です。それでは、失礼します」
一通りの約束を取り付けて、俺は電話を切った。
「さて、どう料理してやろうかな?」
明日の作戦を脳内に練りつつ、俺は収録スタジオへと向かった。
ナカタニ氏から受け取り場所と指定されたのは、市内のとある廃工場。
なかなか、サスペンスっぽい感じが漂っている。主に、俺がやられてしまう的な雰囲気の。
「いやいやすまないね。こんな場所を指定してしまって」
「いえいえ、こちらこそ、急にご連絡をいれてしまって」
お互い、心の中を悟られないように、一定の距離を保っていた。
さぁて、これから、ギャフンと言わせる魅惑の解決ショーが始まる。
FM上箕島内の会議室に軽快な音が響き渡った。
「いってぇ……」
放送作家の白樺鬼軍曹に進行表で思いっきり殴れ、俺は頭を押さえて悶絶する。
「毎回毎回、会議中に寝るとは良い度胸しているじゃねぇか、あ?」
進行表を手のひらでポンポンと叩きながら話す鬼軍曹の目は笑っていない。
「色々あって寝不足なんだよ。そこは察して寝かせてくれるものじゃないのか?」
「いや断固として寝かせないぞ。そんなに眠いなら、目覚まし代わりに食らいやがれ」
スッパパパパパーン!!
鬼軍曹の猛烈なアタックに声も出ない。
「……っつー。少しはDJを敬え。この鬼作家め」
「敬って欲しいなら寝ずにちゃんと会議に参加することだな」
「うっ」
鬼軍曹の言葉に、俺が言葉を濁す。
「会議ついでに、話があってだな。カンナ君、今度……」
鬼軍曹が話を始めたそんな時、俺のスマホが振動。着信相手を見ると、史からだった。出ようかどうしようかと考えていると、
「どうせ、あの刑事の兄ちゃんからの電話だろ? この話はまた今度するから、気にせずに電話に出てやれ」
「すまん」
鬼軍曹に一礼を入れて、俺は会議室を出て電話に出る。
「もしもし?」
「ごめん、カンちゃん、もしかして打ち合わせ中だったんじゃない? 今日が月曜日だったってことすっかり忘れてた。今日の担当は例の鬼軍曹さんだし、都合が悪かったらかけ直すけど?」
「いや、大丈夫だ。それより、スティーブ氏と話が出来たか?」
俺の問いに、電話先の史はバッチリ!と答えた。
「犯人の姿は見ていないらしいけど、犯人に大体の見当はついているってさ。それで、カンちゃんの言っていた通り、そのこと前もって察知したから専門機関に通報して、来日したらしいよ」
やっぱり。スティーブ氏は自分が狙われることを想定して通報していたんだ。それで、あの人が……。
「それで、データの在り処は?」
「データバンクに入れているらしいよ。URLしか教えて貰えなかったから、今から送るけど、強固なセキュリティをかけてあるらしいよ。まぁ、【テリトリー】ならものの数秒じゃないかなぁ? セキュリティ突破するの」
「いいのか、警察がそんな反応で。一応、犯罪なんだが」
「カンちゃんは別に悪いことに使わないからノーカンだよ。多分」
史はそんなあやふやなことを言うので、俺は重いため息が出た。
「そうそう、通報した専門機関っていうのが……」
「それは既に分かって、接触済み」
俺の答えに、えー!と耳を劈くような声が返ってきた。
「カンちゃん早いっ! というか、あっちの人に会ったの!? いいなー、うーらーやーまーしーいー。俺も会いたかったよー! 本場の人―!!」
「本場の人って……お前。さて、コレで犯人をどう誘き寄せるかなと」
「誘いに乗ってくれるかなぁー?」
そこは問題ないだろう。だって、あれだけ欲しがっているデータがあるのだから。
「そういえば、彼がデータを欲しがっていた目的ってなんだったんだろう?」
「それも、既に機関が調査済みなんだそうだ。目的は……」
俺は、史に犯人の目的を話す。
「え、そんな事に使おうとしてたの? 完全な悪じゃないですか!」
「既に、関連するところにはマークが入っているらしいぞ。で、あちらサイドと取引をしたから、後は犯人を釣るだけなんだが……」
「カンちゃんさ……」
史は急に真面目な声のトーンで俺に問う。
「どうした?」
「その犯人を釣ろうとしているの、楽しんでない?」
ギクッ。
「あ、今、心の中でギクッて言わなかった?」
こういう時の史の読みは鋭い。俺の心の中が見透かされるようだった。
「踏ん反り返っているヤツをギャフンと言わせると思うと、楽しくならないか?」
「確かに。楽しいかもしれない!」
「だろ? さぁて、どうギャフンと言わせてやろうかなぁ」
「うわぁ……カンちゃんこわーい」
「おっと、そろそろ切るぞ。番組も始まるから」
「あ、ゴメン。頑張ってねー」
史との通話が終わった直後、【テリトリー】経由でデータバンクのURLが送られてきた。
URLを開くと、史の言っていた通り、複数のパスワードがかけられているようなのだが、
「本当だ、コレくらいのセキュリティなら、あっという間に突破できるな」
大丈夫なのか? 重要なデータなんだろ? 企業秘密でももっと頑丈にしているぞ、と思いつつ、【テリトリー】でセキュリティをどんどん突破していく。その間10秒未満。
出現したデータを見て、俺はため息をついた。
「必死に手に入れたいデータがコレねぇ……バッカじぇねぇの? さて、電話するか」
俺はナカタニ氏の名刺を取り出し、スマホから電話を掛けた。
「あ、どうも。先日会った如月ですが、データが見つかったらしいので、ご連絡を……、はい、では、明日の13時に……、場所は……がいいんですね? 了解です。それでは、失礼します」
一通りの約束を取り付けて、俺は電話を切った。
「さて、どう料理してやろうかな?」
明日の作戦を脳内に練りつつ、俺は収録スタジオへと向かった。
ナカタニ氏から受け取り場所と指定されたのは、市内のとある廃工場。
なかなか、サスペンスっぽい感じが漂っている。主に、俺がやられてしまう的な雰囲気の。
「いやいやすまないね。こんな場所を指定してしまって」
「いえいえ、こちらこそ、急にご連絡をいれてしまって」
お互い、心の中を悟られないように、一定の距離を保っていた。
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