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消えたデータ編
その5
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朝7時、けたたましい着信音で目が覚めた。
史からの着信だ。
俺は、なかなか開けられない目を何とか開けてスマホを掴み、電話に出た。
「カンちゃん、おはよ!」
俺の低いテンションとは正反対で、史はいつもにも増してテンションが高い。
「朝からテンション高いなお前は」
「そうかなぁ? あ、きっと寝てないからだ。ずっとスティーブ氏の病室で見張りしてたから」
どうやら、コイツは寝てないと更にテンションが高くなるらしい。
「それはそれは、お疲れ様だな。で、電話の用件はなんだ?」
「あ、そうだ。スティーブ氏の意識が戻ったよって連絡しようと思ってたんだ。とりあえず、ナカタニ氏にはまだ連絡してないんだけど、した方がいいかな?」
「ナカタニ氏にはまだ連絡するのはやめておいた方がいいんじゃないか?」
「あ、やっぱり?」
どうやら、俺も史もナカタニ氏が一番怪しいと踏んでいるらしい。
「カンちゃんと意見が合うだなんて、これってもしかして運m」
「史君? それ以上言うと俺、起きてすぐの不機嫌モードだからさ、今からそっちへ言って、はっ倒しちゃうぞ?」
「あ、すいません、言い過ぎました。許してください」
電話先の史の声は震えていた。変なことをいうからこんなことになるんだ、全く。
「スティーブ氏に話は聞き出せそうか?」
史はちょっと待っててと電話を保留にした。数分の間の後、
「看護師さんに確認して来たけど、数十分くらいなら大丈夫だろうって。カンちゃん、こっちへ来る?」
「いや、俺は別の用事があるから、史、お前が今から俺が言う質問を聞きだしておいて」
「待って、メモを取るから」
電話先でガサゴソと暫く音がした後、いいよと史の返事が返ってきた。
「いくぞ? スティーブ氏に『覚えていたら、誰にどうして襲われたのか?』、『データは今何処に隠しているのか?』の2点と、あと……」
「『何処かに、こうなることを予期して通報したか』の合計3点を聞いといて」
「通報? こっちにはそんな通報無かったはずだよ」
史は不思議そうな声で答える。
「別に、日本の警察に通報しないといけない訳じゃないからな」
そう、警 察 的 な 組 織 は 世 界 中 に あ る 。
「また、【テリトリー】で何か発見しちゃった感じ?」
「そんな所だな」
「やっぱり【テリトリー】で便利だなぁー。早く俺も欲しい! 作って!」
「いやだ」
「ちぇっ。とりあえず、これから聞いてくるよ。分かったら、メールするね!」
「おう。あ、もしスティーブ氏が例のデータを持っているのなら、【テリトリー】経由で送ってもらえるように頼んでくれると助かる」
「いいけど、どうするの? まさか、カンちゃんが悪用!?」
「んなわけ無いだろ? ちょっと、釣りで大物でも引っ掛けようかと思ってね」
俺の回答に史は理解出来なかったようで、へぇ、としか返事が返ってこない。
「まぁ、追々分かるさ。後は頼んだぞー」
「あいあいさー」
史のテンション高い返事が聞こえた後、電話が切れた。
「え? ミエラ教授の連絡先を知りたい?」
史との電話の後、俺はリビングでだらける様にくつろいでいた親父に話しかける。
「ちょっと、話があってさ。親父よりは有益な研究してそうだし、ラジオのネタになるかなって思って」
「そんなぁ……、父さんだって有益な研究してるよぉ……。父さんも敬ってよぉ」
そう言って、俺に抱きつきスリスリと頬ずりをする親父。
「やめろ! 離れろ! 親父とは何時でも話せるだろ! ネタには今度してやるから、さっさとミエラ氏の連絡先を教えやがれ!」
俺は無理矢理親父を引き剥がす。引き剥がされた親父は、すこししょんぼりとした様子で、メモにミエラ氏の連絡先を書き込んだ。
「今居る彼女の宿泊先の電話番号だよ。絶対に、ラジオで父さんネタを言ってくれるんだよな?」
よっぽど、親父は俺のラジオで自分のことをイジって欲しいらしい。
「あー、いつかはな。連絡先貰っていくからな」
「約束だぞ! 絶対だぞ! あと、神那」
「ん? どうかした」
突然、親父が俺を引き止める。
「余り無茶なことはしちゃダメだぞ。と、いやぁ、たまには親らしい台詞が言ってみたかったんだよー」
「……最後の一言が余計だけどな」
部屋に戻った俺は、親父から貰ったミエラ氏の宿泊先の連絡先に電話を掛けて、ミエラ氏の宿泊している号室を伝える。
暫くすると、ミエラ氏本人が出てきたので、夕方3時にミエラ氏の宿泊先のホテルでお話が出来ないかということを伝える。
「どうして?」
「ちょっと、聞きたいことがあって……」
彼女は暫し考えた後、
「いいわよ。私が答えられる範囲ならいくらでも」
「ありがとうございます。では午後3時にそちらに向かいます」
午後3時。俺はミエラ氏の宿泊先であるホテルに到着した。
各国のVIPが泊まってそうなホテルにちょっと腰が引けながらも、俺はフロントで待ち合わせて来たと伝えると、一枚のカードキーを受け取った。どうやら、ミエラ氏はそこで待っているとのこと。
エレベーターで10階まで上がり、指定された番号の部屋の前へと向かう。
カードキーに書かれていた【1018】の部屋の前でカードキーを翳すと、ガチャと音がし、鍵が開いた。
俺が恐る恐る扉を開けると、そこには、
「Hi, Come in!」
ミエラ氏が椅子に座って俺のことを手招いていた。
俺は促されるまま、椅子に腰掛ける。
「で、聞きたい話っていうのは、一体何?」
「ミエラさん……」
俺はわざわざ持ってきたノートパソコンを開いて、ミエラ氏に見せる。
「俺と、取引しませんか?」
史からの着信だ。
俺は、なかなか開けられない目を何とか開けてスマホを掴み、電話に出た。
「カンちゃん、おはよ!」
俺の低いテンションとは正反対で、史はいつもにも増してテンションが高い。
「朝からテンション高いなお前は」
「そうかなぁ? あ、きっと寝てないからだ。ずっとスティーブ氏の病室で見張りしてたから」
どうやら、コイツは寝てないと更にテンションが高くなるらしい。
「それはそれは、お疲れ様だな。で、電話の用件はなんだ?」
「あ、そうだ。スティーブ氏の意識が戻ったよって連絡しようと思ってたんだ。とりあえず、ナカタニ氏にはまだ連絡してないんだけど、した方がいいかな?」
「ナカタニ氏にはまだ連絡するのはやめておいた方がいいんじゃないか?」
「あ、やっぱり?」
どうやら、俺も史もナカタニ氏が一番怪しいと踏んでいるらしい。
「カンちゃんと意見が合うだなんて、これってもしかして運m」
「史君? それ以上言うと俺、起きてすぐの不機嫌モードだからさ、今からそっちへ言って、はっ倒しちゃうぞ?」
「あ、すいません、言い過ぎました。許してください」
電話先の史の声は震えていた。変なことをいうからこんなことになるんだ、全く。
「スティーブ氏に話は聞き出せそうか?」
史はちょっと待っててと電話を保留にした。数分の間の後、
「看護師さんに確認して来たけど、数十分くらいなら大丈夫だろうって。カンちゃん、こっちへ来る?」
「いや、俺は別の用事があるから、史、お前が今から俺が言う質問を聞きだしておいて」
「待って、メモを取るから」
電話先でガサゴソと暫く音がした後、いいよと史の返事が返ってきた。
「いくぞ? スティーブ氏に『覚えていたら、誰にどうして襲われたのか?』、『データは今何処に隠しているのか?』の2点と、あと……」
「『何処かに、こうなることを予期して通報したか』の合計3点を聞いといて」
「通報? こっちにはそんな通報無かったはずだよ」
史は不思議そうな声で答える。
「別に、日本の警察に通報しないといけない訳じゃないからな」
そう、警 察 的 な 組 織 は 世 界 中 に あ る 。
「また、【テリトリー】で何か発見しちゃった感じ?」
「そんな所だな」
「やっぱり【テリトリー】で便利だなぁー。早く俺も欲しい! 作って!」
「いやだ」
「ちぇっ。とりあえず、これから聞いてくるよ。分かったら、メールするね!」
「おう。あ、もしスティーブ氏が例のデータを持っているのなら、【テリトリー】経由で送ってもらえるように頼んでくれると助かる」
「いいけど、どうするの? まさか、カンちゃんが悪用!?」
「んなわけ無いだろ? ちょっと、釣りで大物でも引っ掛けようかと思ってね」
俺の回答に史は理解出来なかったようで、へぇ、としか返事が返ってこない。
「まぁ、追々分かるさ。後は頼んだぞー」
「あいあいさー」
史のテンション高い返事が聞こえた後、電話が切れた。
「え? ミエラ教授の連絡先を知りたい?」
史との電話の後、俺はリビングでだらける様にくつろいでいた親父に話しかける。
「ちょっと、話があってさ。親父よりは有益な研究してそうだし、ラジオのネタになるかなって思って」
「そんなぁ……、父さんだって有益な研究してるよぉ……。父さんも敬ってよぉ」
そう言って、俺に抱きつきスリスリと頬ずりをする親父。
「やめろ! 離れろ! 親父とは何時でも話せるだろ! ネタには今度してやるから、さっさとミエラ氏の連絡先を教えやがれ!」
俺は無理矢理親父を引き剥がす。引き剥がされた親父は、すこししょんぼりとした様子で、メモにミエラ氏の連絡先を書き込んだ。
「今居る彼女の宿泊先の電話番号だよ。絶対に、ラジオで父さんネタを言ってくれるんだよな?」
よっぽど、親父は俺のラジオで自分のことをイジって欲しいらしい。
「あー、いつかはな。連絡先貰っていくからな」
「約束だぞ! 絶対だぞ! あと、神那」
「ん? どうかした」
突然、親父が俺を引き止める。
「余り無茶なことはしちゃダメだぞ。と、いやぁ、たまには親らしい台詞が言ってみたかったんだよー」
「……最後の一言が余計だけどな」
部屋に戻った俺は、親父から貰ったミエラ氏の宿泊先の連絡先に電話を掛けて、ミエラ氏の宿泊している号室を伝える。
暫くすると、ミエラ氏本人が出てきたので、夕方3時にミエラ氏の宿泊先のホテルでお話が出来ないかということを伝える。
「どうして?」
「ちょっと、聞きたいことがあって……」
彼女は暫し考えた後、
「いいわよ。私が答えられる範囲ならいくらでも」
「ありがとうございます。では午後3時にそちらに向かいます」
午後3時。俺はミエラ氏の宿泊先であるホテルに到着した。
各国のVIPが泊まってそうなホテルにちょっと腰が引けながらも、俺はフロントで待ち合わせて来たと伝えると、一枚のカードキーを受け取った。どうやら、ミエラ氏はそこで待っているとのこと。
エレベーターで10階まで上がり、指定された番号の部屋の前へと向かう。
カードキーに書かれていた【1018】の部屋の前でカードキーを翳すと、ガチャと音がし、鍵が開いた。
俺が恐る恐る扉を開けると、そこには、
「Hi, Come in!」
ミエラ氏が椅子に座って俺のことを手招いていた。
俺は促されるまま、椅子に腰掛ける。
「で、聞きたい話っていうのは、一体何?」
「ミエラさん……」
俺はわざわざ持ってきたノートパソコンを開いて、ミエラ氏に見せる。
「俺と、取引しませんか?」
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