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消えたデータ編
その3
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パシャ パシャ
あの後、すぐに救急車と警察を呼び、倒れていた男性は近くの病院へと搬送されていった。
パシャ パシャ
救急車が出ていった後、警察も到着し、捜査が始まったわけなのだが、
パシャ パシャ
「おい」
「ん?」
「俺の写真を何枚撮ったら気が済むんだ」
史も現場へと駆けつけていて、俺の姿を発見するなり、無言でスマホを取り出し、俺に向けて、カシャカシャと撮影を始めたのだ。
「だって、万年パーカー姿のパーカー族代表のカンちゃんが、スーツを着ているんだよ! これは撮らないとダメでしょ。天然記念物モノだよ!」
そう言って真剣な目つきで更に撮影を続行する史のスマホを俺は取り上げた。
「あー。返してよー」
「長月! 遊んでないで働け」
「はーい。ちぇー、怒られた」
史は俺からスマホを取り返すと、しょんぼりとした表情になる。
「お。誰だと思えば、史君じゃないか」
俺達が現場で話していると、会議室の方から親父とミエラさんがやってきた。
「おじさんじゃないですかー! お久しぶりです。帰国してたんですねぇー」
史は親父に深々とお辞儀をした。
「あぁ、学会が日本であったのでね」
「ところで、おじさんの隣にいる超絶美女は誰ですか? まさか、おじさんのコレ!?」
史はそう言って親父に向けて、小指を立てる。
「愛人じゃないよ。この人は、一緒に共同研究をしているミエラ・ジョンソン教授」
「Hi,」
「は、はぁい?」
史も俺と同じく英語がダメらしく、ミエラさんの挨拶にタジタジになっていた。
俺はすかさず【テリトリー】を起動して、ミエラさんの挨拶を翻訳してやる。
「またもや、【テリトリー】が進化してるんだけどーーーー!」
「デジャヴな反応だなぁ。そんな事より捜査はいいのかよ」
「あ、そうだった」
史は急いで持ち場へと戻っていった。
「彼、慌しい人なのね」
「ただ単に、抜けているだけですよ」
ミエラさんとそんな話をしていると、いきなり俺達の間を一人の中年らしき男が割り込んできた。
「おっと」
「スティーブは、スティーブは、無事なんですか!」
男は、捜査をしている史のもとへと行き、凄く焦っているような声で訊ねていた。
「倒れた男性のことですか? 病院へと運ばれましたが、未だ意識は取り戻してないみたいですよ」
「そうですか……。あっ、しまった!」
男は史から被害者の現状を聞くや否や、慌てて控え室の方へと走り去っていった。
「何かしら、アレ」
「さぁ、何だろうねぇ」
「俺、ちょっと気になるから見てきます」
何故か、俺はそんな男のことが少し気になったので、彼の後を追って控え室の方へと行ってみることにした。
控え室の前の廊下。男が入っていったところを確認し、外で中の様子を伺う。
男は何やら、鞄をガサガサと漁っているようだった。
「無いっ。此処にも無い。スティーブの奴め。管理はしっかりしておけと言ったのに」
男は控え室の机の上に、鞄の中身をザバーと撒き散らせ、更に捜索を始めていた。
「あの男は一体何を捜しているんだ?」
「カンちゃんこそ、何しているの」
「!!!!!!」
いきなりの史の出現に、ビックリして大きい声が出そうになったが、急いで口を塞いだことにより、難を逃れた。
「口なんて塞いで、どうしたの?」
「シッ。静かにしろ。ちょっと、あの男の様子が気になったんだよ」
俺は、控え室の中にいる男をこっそりと指さす。
「あー、確かに気になるねぇ。言って聞いてくるよ」
「あ、コラッ。待て」
俺の制止を聞かずに、史は堂々と控え室にいる男のところへと向かった。
「すいませーん、警察ですが、ここで何をされているんですか?」
「な、何って、別に悪いことなんてしていない」
「でも、その鞄、貴方のでは無さそうですよね? ちょっと事情をお話くださいませんかねぇ?」
「……」
男は史の尋問に応じる気は無いらしい。黙秘を貫いていた。
「あんなに乱暴に粗探ししていたんだ。貴方にとって、大切なものなんですよね? 警察に相談したほうがいいんじゃないですか?」
いてもいられず、俺も控え室へと入る。しかし、男は未だに沈黙。
「そんなに言いたくないんですか?」
「……出来れば言いたくないが、しかし、アレが世間に洩れたりしたら一大事だ」
「出来れば内密にして頂きたい」
男の目は真剣そのものだった。
「いいですよ。このカンちゃんに任せてください!」
史は突然俺の肩を叩く。
「えっ、何で俺!?」
「だって、俺は捜査があるし、カンちゃんなら、【テリトリー】で何とかなるでしょ?」
史はさぞ当たり前かのように答える。勝手に、俺に仕事を押し付けるな。
「まぁ、いいでしょう。で、貴方は一体何を探しているのですか?」
「スティーブが持っていたデータだ」
「データ?」
「そうだ。しかし、ただのデータではない」
男は、一息呼吸を置いて続ける。
「終身刑の犯罪者の精神心理データだ。これが、スティーブが何者かに襲われてから消えてしまったんだ」
「ソレが消えてしまったら、どんな事が起きてしまうのですか?」
俺の質問に、男は顔面蒼白になって答える。
「もし、このデータが盗まれ、悪用されてしまったら……」
「下手すれば、殺戮兵器が生まれてしまう!!」
「!?」
「お願いだ。データを探してくれ! この通りだ」
男は俺に土下座までしてきた。
これは、また、変なことに巻き込まれたなぁ。
そんなことを考えた頃の方がまだマシだった。
あの後、すぐに救急車と警察を呼び、倒れていた男性は近くの病院へと搬送されていった。
パシャ パシャ
救急車が出ていった後、警察も到着し、捜査が始まったわけなのだが、
パシャ パシャ
「おい」
「ん?」
「俺の写真を何枚撮ったら気が済むんだ」
史も現場へと駆けつけていて、俺の姿を発見するなり、無言でスマホを取り出し、俺に向けて、カシャカシャと撮影を始めたのだ。
「だって、万年パーカー姿のパーカー族代表のカンちゃんが、スーツを着ているんだよ! これは撮らないとダメでしょ。天然記念物モノだよ!」
そう言って真剣な目つきで更に撮影を続行する史のスマホを俺は取り上げた。
「あー。返してよー」
「長月! 遊んでないで働け」
「はーい。ちぇー、怒られた」
史は俺からスマホを取り返すと、しょんぼりとした表情になる。
「お。誰だと思えば、史君じゃないか」
俺達が現場で話していると、会議室の方から親父とミエラさんがやってきた。
「おじさんじゃないですかー! お久しぶりです。帰国してたんですねぇー」
史は親父に深々とお辞儀をした。
「あぁ、学会が日本であったのでね」
「ところで、おじさんの隣にいる超絶美女は誰ですか? まさか、おじさんのコレ!?」
史はそう言って親父に向けて、小指を立てる。
「愛人じゃないよ。この人は、一緒に共同研究をしているミエラ・ジョンソン教授」
「Hi,」
「は、はぁい?」
史も俺と同じく英語がダメらしく、ミエラさんの挨拶にタジタジになっていた。
俺はすかさず【テリトリー】を起動して、ミエラさんの挨拶を翻訳してやる。
「またもや、【テリトリー】が進化してるんだけどーーーー!」
「デジャヴな反応だなぁ。そんな事より捜査はいいのかよ」
「あ、そうだった」
史は急いで持ち場へと戻っていった。
「彼、慌しい人なのね」
「ただ単に、抜けているだけですよ」
ミエラさんとそんな話をしていると、いきなり俺達の間を一人の中年らしき男が割り込んできた。
「おっと」
「スティーブは、スティーブは、無事なんですか!」
男は、捜査をしている史のもとへと行き、凄く焦っているような声で訊ねていた。
「倒れた男性のことですか? 病院へと運ばれましたが、未だ意識は取り戻してないみたいですよ」
「そうですか……。あっ、しまった!」
男は史から被害者の現状を聞くや否や、慌てて控え室の方へと走り去っていった。
「何かしら、アレ」
「さぁ、何だろうねぇ」
「俺、ちょっと気になるから見てきます」
何故か、俺はそんな男のことが少し気になったので、彼の後を追って控え室の方へと行ってみることにした。
控え室の前の廊下。男が入っていったところを確認し、外で中の様子を伺う。
男は何やら、鞄をガサガサと漁っているようだった。
「無いっ。此処にも無い。スティーブの奴め。管理はしっかりしておけと言ったのに」
男は控え室の机の上に、鞄の中身をザバーと撒き散らせ、更に捜索を始めていた。
「あの男は一体何を捜しているんだ?」
「カンちゃんこそ、何しているの」
「!!!!!!」
いきなりの史の出現に、ビックリして大きい声が出そうになったが、急いで口を塞いだことにより、難を逃れた。
「口なんて塞いで、どうしたの?」
「シッ。静かにしろ。ちょっと、あの男の様子が気になったんだよ」
俺は、控え室の中にいる男をこっそりと指さす。
「あー、確かに気になるねぇ。言って聞いてくるよ」
「あ、コラッ。待て」
俺の制止を聞かずに、史は堂々と控え室にいる男のところへと向かった。
「すいませーん、警察ですが、ここで何をされているんですか?」
「な、何って、別に悪いことなんてしていない」
「でも、その鞄、貴方のでは無さそうですよね? ちょっと事情をお話くださいませんかねぇ?」
「……」
男は史の尋問に応じる気は無いらしい。黙秘を貫いていた。
「あんなに乱暴に粗探ししていたんだ。貴方にとって、大切なものなんですよね? 警察に相談したほうがいいんじゃないですか?」
いてもいられず、俺も控え室へと入る。しかし、男は未だに沈黙。
「そんなに言いたくないんですか?」
「……出来れば言いたくないが、しかし、アレが世間に洩れたりしたら一大事だ」
「出来れば内密にして頂きたい」
男の目は真剣そのものだった。
「いいですよ。このカンちゃんに任せてください!」
史は突然俺の肩を叩く。
「えっ、何で俺!?」
「だって、俺は捜査があるし、カンちゃんなら、【テリトリー】で何とかなるでしょ?」
史はさぞ当たり前かのように答える。勝手に、俺に仕事を押し付けるな。
「まぁ、いいでしょう。で、貴方は一体何を探しているのですか?」
「スティーブが持っていたデータだ」
「データ?」
「そうだ。しかし、ただのデータではない」
男は、一息呼吸を置いて続ける。
「終身刑の犯罪者の精神心理データだ。これが、スティーブが何者かに襲われてから消えてしまったんだ」
「ソレが消えてしまったら、どんな事が起きてしまうのですか?」
俺の質問に、男は顔面蒼白になって答える。
「もし、このデータが盗まれ、悪用されてしまったら……」
「下手すれば、殺戮兵器が生まれてしまう!!」
「!?」
「お願いだ。データを探してくれ! この通りだ」
男は俺に土下座までしてきた。
これは、また、変なことに巻き込まれたなぁ。
そんなことを考えた頃の方がまだマシだった。
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