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トレジャーハント編
その6
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「史! いるかー! 居るなら出て来い」
「栄子! 谷崎! 何処だぁー」
竹林へ入って三十分くらい経っただろうか。歩きながら時折史たちの名前を叫ぶが、彼らが出てくる様子はやはりない。
「居ないですね……」
「そうですね。竹林はこれで一周かな?」
俺はスマホを確認しながら口を開く。
「そいつらは勝手に竹林に入ったから、神隠しに遭ったんじゃよ。コレだけ探しても見つからないのならそういう事じゃろうよ」
「神隠しなんかあるわけ無いじゃないですか。史たちが居なくなったのは神隠しじゃありません」
俺の一言に余国氏の眉が吊りあがる。
「その根拠は?」
「根拠はのちのち分かるとして、少し息抜きしませんか? 近くに腰が掛けられそうな岩があったので、そこで休憩しましょう」
「……」
俺はそう言って余国氏と福島氏を案内する。
岩が丁度三つ等間隔に置かれている場所に着き、俺たちはゆっくりと腰掛けた。
「突然の余談話ですが、皆さん、窃盗事件の時効って何年かご存知ですか?」
「藪から棒に何かと思えば、そんなことは知らぬ」
「……」
余国氏はフンと鼻を鳴らし、福島氏は無言でこちらの様子を伺う。
「窃盗は盗んだ日から七年になると刑法では時効となるんですよ。案外短くて俺がビックリしたっていう話なんですけど。今日、そんな窃盗の時効を迎える案件があると言ったら更にビックリしますよね? ねぇ、福島さん」
俺に突然話を振られ、福島氏は表情を強張らせる。
「えっ? そ、そりゃビックリしますよ。まさか、窃盗で盗まれたモノが竹林にあるとか?」
福島氏は目を白黒させながら答える。
「あれ? 良く分かりましたねぇ、すごい。福島さんはエスパーか何かですか?」
俺はワザとらしく福島氏を褒めてみる。
「その盗まれたモノが宝伝説の由来か? くだらん」
「いえ、宝は別のものですよ。さて、時効の話に戻りましょうか。犯人、いや、正確には犯人達はお宝伝説に託けて、刑法での時効の今日を狙い竹林へ行って盗んだものをまんまと自分たちのものにしようとしていた」
「しかし、竹林には余国氏が目を光らせ入れない。しかも、困ったことに犯人の相方が盗品を丸々自分のものにしようとするし、こんな時に限って、一般人もお宝探しに乱入してくる始末。そこで、犯人は考えた。黒石山の神隠しの如く、邪魔な奴は隠してしまおうと……ね。そうですよね、福島さん?」
俺は福島氏を見る。彼は尋常じゃない量の汗が流れ出していた。
「わ、私は何も」
「俺が史のことを警察官と言ったときの貴方の動揺の仕方でピンときました。あ、コイツ、史を神隠しした張本人だってね。あと、史の帰りを待っている間に未解決の窃盗事件を調べたら、今日が時効じゃないかなぁと思われる事件も見つけて、谷崎さんと緑化さんが居なくなった理由が何となく分かりましたよ。調べる時間を頂きありがとうございます」
俺の推理に福島氏は悔しそうな顔をする。
「ちなみに、盗品の隠し場所はココですよね?」
俺たちが座っている三つの岩で囲まれた中心を指差すと、彼は更に汗がダラダラと流れた。
「史たちを探すフリをして竹林を一周しましたが、目印になるような所ってココしかないんです。いくら七年間も隠し通さないといけないとは言え、目印は必要ですもんねぇ?」
「くっ……」
「待て、竹林で迷子になったというのは嘘じゃったのか!?」
「迷子になったかもしれない、とは言いましたが、竹林で迷子になったとは言ってません。あと、史たちの居場所も実は分かっていたんですよ。コレでね」
俺はそう言ってスマホを二人に見せる。スマホの画面にはロッジ周辺の地図と赤い印が点滅しているのが映し出されている。
点滅している場所は、俺たちの借りているロッジの2軒先の無人ロッジだ。
「史が寝ているうちに内緒で服に発信機を忍ばせていたんです。もしもの時の為にね」
そう。史が寝ている間にコッソリと発信機を忍ばせていたのだ。もし、行方不明になっても居場所が特定できるようにしていたのだ。
「チクショウ。隠し場所も居場所も知られていただなんて!」
福島氏は悔しそうに岩を拳で叩く。
「あ。ちなみに、刑事罰にはならないかも知れませんが、民法では不法行為から二十年までは訴えられるので、残念でしたねぇ?」
「そ、そんなぁ……」
俺の宣告に福島氏はガックリと落胆した。
「さて、一つの目の事件は解決したことだし。余国さん」
「なんだ?」
「五十年ほど前に起こった神隠しの“タネ明かし”とでもいきましょうか?」
「なんじゃと!」
「栄子! 谷崎! 何処だぁー」
竹林へ入って三十分くらい経っただろうか。歩きながら時折史たちの名前を叫ぶが、彼らが出てくる様子はやはりない。
「居ないですね……」
「そうですね。竹林はこれで一周かな?」
俺はスマホを確認しながら口を開く。
「そいつらは勝手に竹林に入ったから、神隠しに遭ったんじゃよ。コレだけ探しても見つからないのならそういう事じゃろうよ」
「神隠しなんかあるわけ無いじゃないですか。史たちが居なくなったのは神隠しじゃありません」
俺の一言に余国氏の眉が吊りあがる。
「その根拠は?」
「根拠はのちのち分かるとして、少し息抜きしませんか? 近くに腰が掛けられそうな岩があったので、そこで休憩しましょう」
「……」
俺はそう言って余国氏と福島氏を案内する。
岩が丁度三つ等間隔に置かれている場所に着き、俺たちはゆっくりと腰掛けた。
「突然の余談話ですが、皆さん、窃盗事件の時効って何年かご存知ですか?」
「藪から棒に何かと思えば、そんなことは知らぬ」
「……」
余国氏はフンと鼻を鳴らし、福島氏は無言でこちらの様子を伺う。
「窃盗は盗んだ日から七年になると刑法では時効となるんですよ。案外短くて俺がビックリしたっていう話なんですけど。今日、そんな窃盗の時効を迎える案件があると言ったら更にビックリしますよね? ねぇ、福島さん」
俺に突然話を振られ、福島氏は表情を強張らせる。
「えっ? そ、そりゃビックリしますよ。まさか、窃盗で盗まれたモノが竹林にあるとか?」
福島氏は目を白黒させながら答える。
「あれ? 良く分かりましたねぇ、すごい。福島さんはエスパーか何かですか?」
俺はワザとらしく福島氏を褒めてみる。
「その盗まれたモノが宝伝説の由来か? くだらん」
「いえ、宝は別のものですよ。さて、時効の話に戻りましょうか。犯人、いや、正確には犯人達はお宝伝説に託けて、刑法での時効の今日を狙い竹林へ行って盗んだものをまんまと自分たちのものにしようとしていた」
「しかし、竹林には余国氏が目を光らせ入れない。しかも、困ったことに犯人の相方が盗品を丸々自分のものにしようとするし、こんな時に限って、一般人もお宝探しに乱入してくる始末。そこで、犯人は考えた。黒石山の神隠しの如く、邪魔な奴は隠してしまおうと……ね。そうですよね、福島さん?」
俺は福島氏を見る。彼は尋常じゃない量の汗が流れ出していた。
「わ、私は何も」
「俺が史のことを警察官と言ったときの貴方の動揺の仕方でピンときました。あ、コイツ、史を神隠しした張本人だってね。あと、史の帰りを待っている間に未解決の窃盗事件を調べたら、今日が時効じゃないかなぁと思われる事件も見つけて、谷崎さんと緑化さんが居なくなった理由が何となく分かりましたよ。調べる時間を頂きありがとうございます」
俺の推理に福島氏は悔しそうな顔をする。
「ちなみに、盗品の隠し場所はココですよね?」
俺たちが座っている三つの岩で囲まれた中心を指差すと、彼は更に汗がダラダラと流れた。
「史たちを探すフリをして竹林を一周しましたが、目印になるような所ってココしかないんです。いくら七年間も隠し通さないといけないとは言え、目印は必要ですもんねぇ?」
「くっ……」
「待て、竹林で迷子になったというのは嘘じゃったのか!?」
「迷子になったかもしれない、とは言いましたが、竹林で迷子になったとは言ってません。あと、史たちの居場所も実は分かっていたんですよ。コレでね」
俺はそう言ってスマホを二人に見せる。スマホの画面にはロッジ周辺の地図と赤い印が点滅しているのが映し出されている。
点滅している場所は、俺たちの借りているロッジの2軒先の無人ロッジだ。
「史が寝ているうちに内緒で服に発信機を忍ばせていたんです。もしもの時の為にね」
そう。史が寝ている間にコッソリと発信機を忍ばせていたのだ。もし、行方不明になっても居場所が特定できるようにしていたのだ。
「チクショウ。隠し場所も居場所も知られていただなんて!」
福島氏は悔しそうに岩を拳で叩く。
「あ。ちなみに、刑事罰にはならないかも知れませんが、民法では不法行為から二十年までは訴えられるので、残念でしたねぇ?」
「そ、そんなぁ……」
俺の宣告に福島氏はガックリと落胆した。
「さて、一つの目の事件は解決したことだし。余国さん」
「なんだ?」
「五十年ほど前に起こった神隠しの“タネ明かし”とでもいきましょうか?」
「なんじゃと!」
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