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トレジャーハント編
その4
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「夕方に竹林の方へ行くって言って帰ってきてないんです!」
女性は目に涙を浮かばせながらそう語った。
「こんな時間になっても帰ってこなくて、心配で皆で探したんですけど、見つからなくって。もしかしてコチラにお邪魔しているんじゃないかと思って……」
「カンちゃん、どうしたの?」
ようやくソファから出てきた史がやってきた。
「どうやら竹林方向へ行って来ると言ったまま帰ってこないらしい」
「えっ! そりゃ大変だよ。捜しに行こう」
史はそう言うと、懐中電灯を自分の荷物から取り出して外へ出ようとするが、靴に履き終えて俺をまじまじと見つめてきた。
「何だ?」
「カンちゃん。怪談話していたおかげで夜道怖い。ついて来て」
史はそう言って俺の袖を引っ張る。
「……誰だよ、怪談話しようって言った奴は」
大事なことなので同じ注意をする。
「お願いします、一緒に捜してください!」
「私からもお願いします」
「確かにこんな時間まで帰ってこないとなると心配だし、捜すか。ただし、もうこんな時間だ、竹林を捜すとさらに行方不明者が出るかもしれない。とりあえずはロッジ周辺だけにしよう」
「それで大丈夫です」
俺の提案に女性も承諾した。
「ありがとうございます。えっと……」
「神那です。こっちは史といいます」
「ありがとうございます。神那さん、史さん。私、緑化栄子(りょっかえいこ)です」
緑化栄子と名乗った女性は俺らに軽く会釈をする。
「とりあえず捜そうよ。居なくなった男性の名前を教えていただきますか?」
「谷崎翔(たにざきかける)です」
「谷崎さんですねー。了解―」
史はそう言って一目散に外へと駆け出した。緑化さんもその後を追う。
今さっきまで怖いからついて来てと言っていた奴には到底思えなかった。
「このまま史を放っておいてもいい気がしてきた」
「いや、そこは捜してあげようよカンナ兄。俺も行こうか?」
いつの間にかチトセも外にでる準備を整えて玄関へとやって来ていた。
「チトセはここで待機してくれ。すぐに戻ってくるとは思うけど、何か起こった場合は対処できるようにしたいし」
「分かった。気をつけてね」
チトセに見送られて俺は外を出た。
***
外に出ると、史と緑化さんの他にもう一人男性が居た。
彼も良く見ると昼ごろにおじさんに追いかけられていた一人だった。
「どうも。福島羽流(ふくしまはる)です」
彼は聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で自己紹介をする。
「よーし、このメンバーでロッジ周辺を捜すぞー!」
おー!っと史は一人だけ張り切って拳をあげた。
「史、そんなに元気なら俺居なくてもいいよね?」
「えっ!? 駄目駄目、絶対に居ないと駄目!」
はいはい、と俺は呆れてため息が漏れる中、谷崎さんの捜索が始まった。
***
――一時間経っても結局、谷崎さんは見つからなかった。
もう、時間も時間なので捜索を切り上げ、明日また捜そうということで意見がまとまり、解散となった。
「見つからないなんて。まさか神隠しに?」
ロッジに戻ってチトセが淹れてくれたコーヒーを飲みながら史が口を開く。
「まさか。俺の予想だと竹林に入ったけどおじいさんに追いかけられて、何処かで隠れているんじゃないか?」
「可能性はあるね」
チトセは俺の意見に同意しながらコーヒーをすする。
「明日、お宝探しするついでに人捜しだね」
史は、そう明日に向けて意気込む。
「がんばれー。明るい時間帯は史一人でも大丈夫だろ? 俺はここで待機―」
「やっぱり!? いいもん、一人で捜すよーだ。コーヒーご馳走様。俺は寝るよ!」
史は飲んでいたマグカップを置き、寝室へと歩いていった。
***
翌朝。軽く朝食を済ませて、史はお宝と人捜しに元気に出て行った。
そんな昼下がり、俺はチトセと一緒に作業部屋に篭もり、チトセは楽曲製作、俺は【テリトリー】で何か面白いものはないかとネットサーフィンをしていた。
「そういえば、聞いてよカンナ兄。俺、“ノイサン”に出演が決まったんだよ」
“ノイサン”、Noisy Sounds Fes。FM上箕島が主催で開催している。夏の音楽フェスのことだ。
このフェスには人気ミュージシャンが多数出演することで有名で、このフェスにオファーがかかること=人気が確立されていることを意味している。
「へぇ。良かったじゃん。というかまだアーティスト発表されてないけど、俺に言ってもいいのか?」
「カンナ兄だから言ったんだよ。一応FM上箕島の関係者だし、どうせ面倒臭がって誰にも喋らないだろ?」
「確かに」
俺はパソコンから目を晒さずにそう答えた。
「ところで、カンナ兄は何見てるの?」
チトセがオフェスチェアごとゴロゴロ移動しながら俺のパソコン画面を覗く。
「……強盗事件?」
画面には【テリトリー】で調べた上箕島市近郊強盗事件の検索結果が映し出されていた。
「山にお宝を隠されているとしたら、どんなものが隠されているのかなぁと思って」
「カンナ兄もやっぱりお宝気になってるんじゃん」
チトセは冷ややかな視線を俺に向けた。
「別に気になっているわけじゃない。ってか、暗号の答えが分かったから何となくお宝も予想できるし」
「えっ!? そうなの? カンナ兄教えて!」
「仕方ないなぁ。史には教える気はないけど、チトセには教えようか」
俺がチトセに暗号の答えを耳打ちで教える。
「……それがお宝?」
「多分なー」
「なーんだ。どうせなら未解決の強盗事件の盗品とかが埋まっているとかだったら面白いのに」
チトセは少しつまらなそうに、再び作業に戻った。
「確かに山には隠しやすそうだよな。しかも、神隠しの噂のある場所なら尚更だ」
俺はそう呟きながら、ある新聞記事を見ていた。
俺とチトセは夕方まで作業部屋に篭もって、ダラダラしていた。
一方、史はというと……。
――深夜を過ぎても戻ってくることはなかった。
女性は目に涙を浮かばせながらそう語った。
「こんな時間になっても帰ってこなくて、心配で皆で探したんですけど、見つからなくって。もしかしてコチラにお邪魔しているんじゃないかと思って……」
「カンちゃん、どうしたの?」
ようやくソファから出てきた史がやってきた。
「どうやら竹林方向へ行って来ると言ったまま帰ってこないらしい」
「えっ! そりゃ大変だよ。捜しに行こう」
史はそう言うと、懐中電灯を自分の荷物から取り出して外へ出ようとするが、靴に履き終えて俺をまじまじと見つめてきた。
「何だ?」
「カンちゃん。怪談話していたおかげで夜道怖い。ついて来て」
史はそう言って俺の袖を引っ張る。
「……誰だよ、怪談話しようって言った奴は」
大事なことなので同じ注意をする。
「お願いします、一緒に捜してください!」
「私からもお願いします」
「確かにこんな時間まで帰ってこないとなると心配だし、捜すか。ただし、もうこんな時間だ、竹林を捜すとさらに行方不明者が出るかもしれない。とりあえずはロッジ周辺だけにしよう」
「それで大丈夫です」
俺の提案に女性も承諾した。
「ありがとうございます。えっと……」
「神那です。こっちは史といいます」
「ありがとうございます。神那さん、史さん。私、緑化栄子(りょっかえいこ)です」
緑化栄子と名乗った女性は俺らに軽く会釈をする。
「とりあえず捜そうよ。居なくなった男性の名前を教えていただきますか?」
「谷崎翔(たにざきかける)です」
「谷崎さんですねー。了解―」
史はそう言って一目散に外へと駆け出した。緑化さんもその後を追う。
今さっきまで怖いからついて来てと言っていた奴には到底思えなかった。
「このまま史を放っておいてもいい気がしてきた」
「いや、そこは捜してあげようよカンナ兄。俺も行こうか?」
いつの間にかチトセも外にでる準備を整えて玄関へとやって来ていた。
「チトセはここで待機してくれ。すぐに戻ってくるとは思うけど、何か起こった場合は対処できるようにしたいし」
「分かった。気をつけてね」
チトセに見送られて俺は外を出た。
***
外に出ると、史と緑化さんの他にもう一人男性が居た。
彼も良く見ると昼ごろにおじさんに追いかけられていた一人だった。
「どうも。福島羽流(ふくしまはる)です」
彼は聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で自己紹介をする。
「よーし、このメンバーでロッジ周辺を捜すぞー!」
おー!っと史は一人だけ張り切って拳をあげた。
「史、そんなに元気なら俺居なくてもいいよね?」
「えっ!? 駄目駄目、絶対に居ないと駄目!」
はいはい、と俺は呆れてため息が漏れる中、谷崎さんの捜索が始まった。
***
――一時間経っても結局、谷崎さんは見つからなかった。
もう、時間も時間なので捜索を切り上げ、明日また捜そうということで意見がまとまり、解散となった。
「見つからないなんて。まさか神隠しに?」
ロッジに戻ってチトセが淹れてくれたコーヒーを飲みながら史が口を開く。
「まさか。俺の予想だと竹林に入ったけどおじいさんに追いかけられて、何処かで隠れているんじゃないか?」
「可能性はあるね」
チトセは俺の意見に同意しながらコーヒーをすする。
「明日、お宝探しするついでに人捜しだね」
史は、そう明日に向けて意気込む。
「がんばれー。明るい時間帯は史一人でも大丈夫だろ? 俺はここで待機―」
「やっぱり!? いいもん、一人で捜すよーだ。コーヒーご馳走様。俺は寝るよ!」
史は飲んでいたマグカップを置き、寝室へと歩いていった。
***
翌朝。軽く朝食を済ませて、史はお宝と人捜しに元気に出て行った。
そんな昼下がり、俺はチトセと一緒に作業部屋に篭もり、チトセは楽曲製作、俺は【テリトリー】で何か面白いものはないかとネットサーフィンをしていた。
「そういえば、聞いてよカンナ兄。俺、“ノイサン”に出演が決まったんだよ」
“ノイサン”、Noisy Sounds Fes。FM上箕島が主催で開催している。夏の音楽フェスのことだ。
このフェスには人気ミュージシャンが多数出演することで有名で、このフェスにオファーがかかること=人気が確立されていることを意味している。
「へぇ。良かったじゃん。というかまだアーティスト発表されてないけど、俺に言ってもいいのか?」
「カンナ兄だから言ったんだよ。一応FM上箕島の関係者だし、どうせ面倒臭がって誰にも喋らないだろ?」
「確かに」
俺はパソコンから目を晒さずにそう答えた。
「ところで、カンナ兄は何見てるの?」
チトセがオフェスチェアごとゴロゴロ移動しながら俺のパソコン画面を覗く。
「……強盗事件?」
画面には【テリトリー】で調べた上箕島市近郊強盗事件の検索結果が映し出されていた。
「山にお宝を隠されているとしたら、どんなものが隠されているのかなぁと思って」
「カンナ兄もやっぱりお宝気になってるんじゃん」
チトセは冷ややかな視線を俺に向けた。
「別に気になっているわけじゃない。ってか、暗号の答えが分かったから何となくお宝も予想できるし」
「えっ!? そうなの? カンナ兄教えて!」
「仕方ないなぁ。史には教える気はないけど、チトセには教えようか」
俺がチトセに暗号の答えを耳打ちで教える。
「……それがお宝?」
「多分なー」
「なーんだ。どうせなら未解決の強盗事件の盗品とかが埋まっているとかだったら面白いのに」
チトセは少しつまらなそうに、再び作業に戻った。
「確かに山には隠しやすそうだよな。しかも、神隠しの噂のある場所なら尚更だ」
俺はそう呟きながら、ある新聞記事を見ていた。
俺とチトセは夕方まで作業部屋に篭もって、ダラダラしていた。
一方、史はというと……。
――深夜を過ぎても戻ってくることはなかった。
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